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6月17日には,基調講演が行われた。メインテーマは,次期Unreal Engineとなる「Unreal Engine 6」(以下,UE6)だ。
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Unreal Fest 2026では,Epic Gamesの創設者兼CEOであるTim Sweeney氏がステージに立ち,UE6がどのようなものになるのかを具体的に語った。本稿では現地での取材を踏まえて,内容をまとめたい。
●目次
UE5.8+UEFN=UE6
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UEFNはもともと,UE5から派生したプロジェクトであり,分断されていたのはやむを得ない面もある。ただ,Sweeney氏は,UE6でこの2つを統合したいという考えに至ったようだ。
最初から統合できなかったのは,UEFNが「Fortniteの世界を,ユーザーやコミュニティが自由にカスタムできるようにする」という実験的なプロジェクトだったためだ。
当時は,Fortniteユーザーに受け入れられるかどうかも不透明だった,ともいえよう。
結果としてUEFNは,(異論はあるだろうが)数少ないメタバースの具体的な成功例の1つとなった。筆者調べではあるが,登録アカウント数の単純比較では,UEFNとFortniteの総ユーザーアカウント数は,「Minecraft」を上回る規模に成長している。
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Sweeney氏も,UEFNがさらに成長していくには,UE本体の進化をUEFNの進化に直結させる必要があると考えたのだろう。
今回の基調講演では,UE5の最新版となる「Unreal Engine 5.8」(以下,UE5.8)が発表となった。UE6では,UE5.8とUEFNを統合し,一般的なゲーム開発とUEFN向けの拡張開発の両方を,コンソールストア,PCストア,モバイルストア,Fortniteエコシステム,さらに他社が構築するUE6ベースのゲームエコシステムへ展開できるようにする構想のようだ。
まとめると,UE6は,従来型のゲームエンジンにとどまらず,マルチプラットフォーム配信基盤やユーザー生成コンテンツ(UGC)基盤,相互運用基盤の3要素を1つにまとめる構想だと言い換えられる。
グラフィックス機能の強化は先送り?
NVIDIAが近年強く推しているグラフィックス技術である「パストレーシング」について,UE6で特別な対応が進んでいる様子は,今回のイベントでは見られなかった。
筆者の理解では,Epic GamesはUE5,そしてUE6でも,当面はラスタライズ+レイトレーシングの現実的な最適解として,「Lumen」を推していく方針のようだ。
また直接光の表現については,「MegaLights」を重視していく方向だと見ている。
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つまり,プログラミング言語であるVerseと統一APIによって,ゲーム間,あるいはプロジェクト間で,コードとコンテンツを相互運用しやすくする狙いがある。
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Verseとは,関数型プログラミング言語「Haskell」の主要開発者の1人であるSimon Peyton Jones氏らが,Epic Gamesに参画して設計した次世代プログラミング言語だ。
本稿では詳しく掘り下げないが,Haskellに代表される関数型言語の考え方に,論理型プログラミング言語の特性を組み合わせた,ハイブリッド型の言語といえる。
Verseは,実験的な意味合いも兼ねて,UEFNに先行導入されていた。テキストベースのプログラミング言語でありながら,C++より安全で学習しやすい。そのため,UEのビジュアルスクリプティング機能「Blueprint」では複雑になりがちなロジックを,比較的すっきり記述できる言語という位置付けを目指している。
いわば,C++とBlueprintの橋渡し役というわけだ。
話をUE6に戻そう。UE6は,UE5を単に洗練させるものというより,ゲームプレイやアセット,オンライン運用,エコシステムをまたいだ互換性を,Verseによって構築することを目指している。
UE5がLumenや「Nanite」といったグラフィックス技術のパラダイムシフトだったとすれば,UE6は,アーキテクチャとエコシステムのパラダイムシフトになるといっていいだろう。
UE6の中心となるVerse
Sweeney氏は基調講演で,「UE6の新しいゲームプレイフレームワークはVerseから始まる」とまで言い切っている。とくにSweeney氏が強調していたのは,Verseによって実現される「Software Transactional Memory」(ソフトウェアトランザクショナルメモリ,STM)という概念だ。
大雑把にいえば,STMは,データベースにおける「トランザクション処理」の考え方を,プログラミングに応用した技術である。
マルチコアCPUが当たり前になった現在,複数のスレッドで同時に処理を進める「並行処理」は必須だ。しかし,複数のスレッドが同じメモリ上のデータ(変数など)を同時に書き換えようとすると,競合や不整合が発生する。
これを防ぐために使われるのがロック機構だ。ただ,ロックをソフトウェアで扱うと,複雑で原因を特定しにくいバグの温床になりやすい。
そこでSTMでは,各スレッドが自分専用のメモリ空間で各種データを扱い,計算などの処理を進める。処理が終わると,その計算結果を元のデータへ反映してよいかどうかを確認する。
問題がなければ,計算結果を反映し,不整合が起きる可能性があるため書き換えられない場合は,現在の結果を破棄(ロールバック)してから,最新のデータで計算をやり直す(リトライ)。
オーバーヘッドは大きくなり,不整合が起きた場合は,それまでの計算が無駄になる。ただ,ソフトウェアの実行方式としては,安全性を重視したやり方といえよう。
この考え方は,大人数の同時プレイを想定したマルチプレイゲームの開発に役立つ。具体的には,Fortniteのようなメタバース的コンテンツの制作に向いている。
UE6はUnityに近いアーキテクチャになるのか?
UEFNではすでに,「Scene Graph」が成熟しつつある。
Scene Graphとは,3Dグラフィックスやゲームエンジンにおいて,空間内の各種オブジェクト,たとえばキャラクターや背景,ライトやカメラなどを管理するための階層型データ構造のことだ。
具体的には木構造のデータ形式で,どのオブジェクトが親で,どのオブジェクトが子かという関係を整理した,家系図のような構造ともいえる。
Schmidt氏は,これがUE6の基盤になると説明している。
UEFNでは,Scene Graphがカスタムアイテムやインベントリ,カスタム武器,アニメーションなどの新しい仕組みを支えている。今後は,「Gameplay Attributes」「Gameplay Abilities」「Scene Graph UI」を追加していく予定だ。
UE6では,Verseランタイムと既存のUEシステム,たとえばレンダリング,物理エンジン「Chaos」,オーディオシステム「MetaSounds」などの上に,「Verse Scene Graph Framework」が置かれることになる。
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これは,実質的にUE6が,競合である「Unity」の「Prefab」に近いワークフローや,ランタイムでの合成に対応した新しいゲームコンポーネントフレームワークへ移行することを意味する。
つまり,C++とBlueprint/Actorを中心としたUE5以前のような開発スタイルから,Verse+Scene Graphとコンポーネント化されたスマートアセットを軸とする開発スタイルへ移行する構想といえよう。
UnityのPrefabに近い,柔軟なコンポーネント指向への転換である。
さらに,ゲーム内のあらゆる素材,たとえば3Dモデルやエフェクトなどを,Verseという安全性を重視した言語の「型」で厳密に管理することで,巨大で複雑な3D空間やメタバース空間でも,クラッシュしにくい堅牢なシステムを作ろうとしているわけだ。
Schmidt氏はさらに,「UE6では,マテリアル,メッシュ,Niagaraシステムなどのエンジン内アセットが,Verseクラスとして公開され,静的に検証可能なAPIを持つようになる」と説明している。
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機能を組み込んだスマートアセット
UE6では,Epic Gamesのアセットストア「Fab」で購入したアセットを,単なる3Dモデルのメッシュやアニメーション付き素材ではなく,機能を備えた「スマートアセット」として利用できる世界を想定しているという。
基調講演では,Fabで車のアセットを入手した場合,単なる車の3Dモデルではなく,Verseモジュールを含む「動かせる車」として,複数のゲームでそのまま機能するという未来像が語られた。
これにより,プログラムコードと3Dコンテンツの大規模な共有を進め,Verseの後方互換性を保証することで,エコシステムを継続的に育てていく狙いがあるようだ。
これは,これまでのUEにはなかった,UE6の野心的な構想といえよう。
従来のUEにおけるFabの役割は,UEエコシステムで使える素材を共有する「アセットマーケットプレイス」に近かった。UE6ではそこから一歩進み,挙動や機能まで含めた「ゲーム部品の共有」へ移行しようとしているわけだ。
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Verseで「ソードアート・オンライン」の世界が実現される?
Verseを中核としたSTMの概念,そして機能やロジックを統合したゲームパーツ的なスマートアセットなど,Sweeney氏は,こうした仕組みをUE6で,分散サーバーへ広げる構想についても語った。
これは,単一スレッド風に書かれたVerseコードを複数のサーバーへ分散し,必要なオブジェクトが別サーバーにある場合は,トランザクションをロールバックしたうえでオブジェクトを移動して,処理を再実行するというモデルだ。
これにより,従来よりはるかに多くのプレイヤーや,広範囲に伝播するシミュレーションを扱えるゲーム基盤を,安全に,つまり難解なバグを生みにくい形で開発できるようになるだろう。
Webの世界がHTMLとJavaScriptという共通規格によって世界中のサーバーとつながっているように,Sweeney氏は,ゲームや3D空間の世界も,同じような概念で相互につなぎたいと考えているようだ。
現在,ゲームや3D空間を構築するための共通基盤としては,アセットの標準規格である「Universal Scene Description」(USD)や「glTF」がある。Sweeney氏はそこに,ロジックの標準規格としてVerseを位置付けたい,と考えているのだろう。
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氏はこれを,「Open UE6 Modules」,あるいは「Open Specifications for Interoperability」と呼んでいた。
この世界が実現すれば,まず思いつくのは,UE6で作ったゲーム要素を,他社のゲームエンジンにそのまま導入したり,融合させたりできるようになるということだ。
さらにこの概念を発展させれば,あるRPGで作った自分のキャラクターをゲーム内で成長させ,まったく別のシューティングゲームへ転送するようなことも可能になる。
もちろん,転送先のゲーム世界を破綻させないための調整は必要になるだろうが。
ちなみに,Epic GamesのCEOであるSweeney氏は,「真のオープンメタバースは,1つの企業が独占,あるいは囲い込む技術の上には成り立たない」という考えを,かねてから主張してきた。UE6では,その哲学が徐々に具現化していく気配を感じる。
それにしても,「これは『ソードアート・オンライン』の世界観に近いのではないか」と感じた人もいるのではないだろうか。
UE6構想の布石は,重要技術のオープンソース化と無償化
UE6のEarly Access版は,2027年末頃に提供される予定だ。正式リリースはその12〜18か月後とされているので,2028年末から2029年になると見てよさそうだ。
新しいUEのリリースは,新世代ゲーム機の登場と歩調を合わせることが多い。この時期が,次世代ゲーム機の登場時期と重なる可能性もある。
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ひとつめは,「MetaHuman DevKit」(関連記事)のMITライセンス化。つまり,オープンソース化と,商用利用を含む無償提供を宣言したわけだ。
これにより,ゲーム開発スタジオは,Epic GamesのMetaHuman技術を,任意のゲームエンジンに組み込んで利用できることになる。
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Loreは,ソースコードと巨大なバイナリデータの両方を,超大規模な分散チームで高速かつ安全に管理できる,新しいオープン規格として提唱されている。
つまり,プログラマーにとっての「Git」や,長年ゲーム業界の標準として使われてきた「Perforce」の対抗馬となるインフラ技術として位置付けられているのだ。
しかも,LoreもMITライセンスで提供するという。
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これも,Verseを中心としたUE6のオープンエコシステム構想を成立させるための,重要な布石といったところだろう。
UE5の今後はどうなる?
今回のイベントでは,UE5世代の最新版にして,最終版となる可能性もあるUE5.8が発表された。このあたりは回を改めてフォローするが,UE5に対する今後の取り組みについても紹介しておこう。
Verseの中核化に伴い,ActorとBlueprintはUE6の初期版に残るとされている。ただ,Verseを中心とする仕組みが十分に成熟した段階では,非推奨になるという。
もちろん移行にあたっては,変換ツール群が提供される見込みだ。
また,UE6では,パーティクル/エフェクトシステムである「Cascade」が廃止される。そのため,「Niagara」への移行は必須だ。
UE5世代では,UE5.8が最終版とされているものの,「UE6の開発状況やUE5系を取り巻く状況によっては,UE5.9の登場も否定しない」という説明もあり,会場の笑いを誘っていた。
































