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[CEDEC 2021]「オンラインリアル脱出ゲームの作り方」聴講レポート。コロナ禍により,リアル脱出ゲームはいかに変化を求められたのか
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印刷2021/08/25 16:54

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[CEDEC 2021]「オンラインリアル脱出ゲームの作り方」聴講レポート。コロナ禍により,リアル脱出ゲームはいかに変化を求められたのか

 ゲーム開発者向けのカンファレンス「CEDEC 2021」の初日(2021年8月24日),「オンラインリアル脱出ゲームの作り方」と題した講演が開催された。オフライン会場に集まって謎を解く「リアル脱出ゲーム」だが,コロナ禍の2年でどのような変化が起こったのか? SCRAPの代表取締役である加藤隆生氏がリアル脱出ゲームの現状について語った。

SCRAPの代表取締役である加藤隆生氏
画像集#002のサムネイル/[CEDEC 2021]「オンラインリアル脱出ゲームの作り方」聴講レポート。コロナ禍により,リアル脱出ゲームはいかに変化を求められたのか

 「リアル脱出ゲーム」は,その名の通り現実の施設を会場とした体験型の謎解き遊びだ。会場のあちこちには,張り紙や小道具といった形でさまざまな謎が配置されており,プレイヤーは自分の足で会場を巡り,制限時間内にこれらの謎を解き施設からの脱出を目指す。現実世界で楽しむアドベンチャーゲームとでもいうべき内容で,さまざまなゲームやアニメともコラボしていることから名前を聞いたことがある読者も多いだろう。

 そんなリアル脱出ゲームを13年前から手がけるのが,今回講演を行った加藤氏が代表取締役を務めるSCRAPだ。リアル脱出ゲームと言えば,遊園地や書店といった既存施設を使って期間限定で開催されるケースもあるが,SCRAPは全国15か所に専用の店舗を構えている。より気軽にリアル脱出ゲームを楽しめる会場が整えられているわけだ。

 しかし,ここまでの話を聞いて,「現実の施設を使うのであれば,新型コロナウイルスが流行している現在はどのように開催しているのか?」と疑問を持つ人も多いことだろう。現実の施設での開催が難しくなったことから創意工夫の結果生まれたのが,リアル脱出ゲームをデジタル化した「オンラインリアル脱出ゲーム」だという。

 新型コロナウイルスの脅威が囁かれ始めた当初,加藤氏はリアル脱出ゲームのデジタル化にはあまり乗り気でなく,いつかはコロナ禍も収束するだろうという考えのもと,従来通りのリアル脱出ゲームを作り続けていたとのこと。というのもデジタルゲームのノウハウを持たない加藤氏にとって,リアル脱出ゲームをデジタル化する仕事は畑違いのものであり,「肩を壊した野球のピッチャーにサッカーを勧めるようなもの」に感じられたと話す。

 しかし,その後もコロナ禍は収まるどころか拡大の一途を辿る。店舗のお客も減少し,緊急事態宣言で一時休業しなければならなくなるなど,状況はどんどんと悪化し,SCRAPは「危機的な状況」であったという。
 そんななかでヒントになったのが,店舗のスタッフが考え出したリモート式リアル脱出ゲームとでもいうべき新手法だった。店舗の会場にスマートフォンを持ったスタッフが待機し,お客は自宅からスタッフに指示を出して会場を探索してもらうのである。この新手法が好評だったため,スタッフを使わない形でのデジタル化が進められることになったと話す。

 初の緊急事態宣言が出されたのが2020年3月,初のオンラインリアル脱出ゲームである「エイリアン研究所からの脱出」の第1回公演が2020年5月1日なのだから,いかに急ピッチの作業であったかが分かる。実際のところ,スタッフたちから同時多発的に出されるさまざまなアイデアに対し,すべてゴーサインが出るような状況だったそうだ。

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 こうして作られたオンライン脱出ゲームは,「公演型」「キット型」「キット+公演型」「ネット完結型」の4種に大別できるという。これらはすべて,Zoom,スマートフォン,Webサイトといった既存のデジタルツールが活用されており,新たな仕組み(ここでは専用ゲームクライアントや特殊なシステムといったニュアンス)を開発せずとも開催できるのが特徴だと話す。

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●公演型(「エイリアン研究所からの脱出」など)
 前述したリモート式と同様,会場でスマートフォンを持って待機するスタッフに対し,お客が遠隔地から指示を出す。

●キット型(「ある2つの通信基地からの脱出」など)
 謎解きキット(謎の問題やシナリオなどが書かれた書籍や小道具などのセット)を郵送で購入。謎が解けたらWebサイトに答えを入力すると物語が進む。

●キット+公演型
 上記2つのハイブリッド。謎解きキットを購入した後,会場のスタッフとリアルタイムでコミュニケーションを取りつつ謎解きを進める。ほかの参加者とリアルタイムでZoomをつなぎ,LINEも併用して登場人物とコミュニケーションを取ったりする「青梅雨に届いた手紙」のような「キット+店舗連動型」も。

●ネット完結型(「封鎖された人狼村からの脱出」など)
 ネット上に用意された動画などを見て謎を解く。「封鎖された人狼村からの脱出」では,村人たちの会話を動画で見て謎を解き,答えをWebサイトに入力する。

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 幸いなことに,オンラインリアル脱出ゲームはいずれも成功を収めているとのこと。リアル会場でのオリジナル(非コラボ)の通常公演と同規模である4万枚ほどのチケットが売れたばかりか,会場の家賃やスタッフの人件費がかからないため,維持費も安く済んでいるそうだ。ネットにデジタルの娯楽が溢れているなか,こうしたノウハウを持たない自分たちが作ったオンラインリアル脱出ゲームが好評を博したことに加藤氏は勇気づけられたという。

 また,講演では代表的なオンラインリアル脱出ゲームを例に挙げ,ゲームシステムや内容の解説も行われた。

●「封鎖された人狼村からの脱出」
 本作は人狼ゲームとオンラインリアル脱出ゲームを組み合わせたもの。プレイヤーは人狼による被害で外出禁止令が出た村の住民となり,ほかの村人が夜な夜な通信機能を持つ水晶(Zoomのようなもの)で会話する様子をチェックして人狼を探し出す。
 会話はリアルタイムで行われず,事前に収録された動画をWebから再生するのだが,外出禁止やZoom風のビデオチャットといった世相をうまく盛り込んでいるのが特徴だ。多人数プレイでは,プレイヤーどうしがZoomでコミュニケーションを取りつつ,タイミングを合わせてWebの動画再生ボタンを押すという。ローテクな仕掛けだが,それでもリアルタイムで同じ動画を見て話し合う面白さが生まれていると加藤氏は話す。

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●「ある2つの通信基地からの脱出」
 こちらは2人プレイ専用という少し変わったオンラインリアル脱出ゲーム。プレイヤーたちは南極と北極にある2つの通信基地の通信技師となり,暗号化されたセキュリティ解除マニュアルを手に,閉鎖された通信基地からの脱出を目指す。
 使用するツールはZoomとLINEで,2人でコミュニケーションを取りつつプレイを進める。Zoomでのコミュニケーション(南極と北極の通信)は妨害されているという設定で,セキュリティ解除マニュアル(謎解きキット)には,「Zoomの音声を切ってジェスチャーで意思を伝えろ」「Zoomのカメラを切って音だけの状態にしろ」などさまざまな指示が記されている。情報の伝達が制限されたなかで,どのようにして相手に情報を伝えるかが重要なゲームとなっている。脚本の読み上げもプレイヤー自身が行う点がユニークで,加藤氏曰く「オンライン飲み会の延長線上にあるゲーム」だという。

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 リアル脱出ゲームの強みは,「リアルタイム性(制限時間)」「直接コミュニケーションを取る協力感」「実際のモノ(会場に用意された小道具)に触れるリアル感」にあると加藤氏は分析する。そのため,オンラインリアル脱出ゲームを作るうえでリアル感に代わるものが必要であったという。

 そこで加藤氏が目を付けたのが,「PCやスマートフォンの前にいる意味」を物語や設定で与えることだという。例えば,「ある2つの通信基地からの脱出」の妨害された通信を出し抜いて情報を伝えようとする通信技師という設定は,「ゲームをするためにPCの前にいる」のではなく「自分自身が通信技師であり,通信機の前にいる」とリアリティを与えてくれる。

 そして,「封鎖された人狼村からの脱出」では,PCを「村人が使う通信装置である」と見立て,「終わらない公開捜査からの脱出」では,同時にプレイする1万人のプレイヤーに「公開捜査番組に参加する1万人の視聴者」という役割を持たせることでリアリティを与えている。プレイヤーに動機をうまく与えるこの手法は,デジタルのゲーム作りにも参考になるようにも感じられた。

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 今後について加藤氏は,10万人による大規模なオンラインリアル脱出ゲームや,デジタルゲームのノウハウを持つ相手との共同開発を考えているという。これまでは既存のシステムをうまく活用してきたが,デジタルゲームのノウハウを持たない自分たちだけでの開発に限界を感じていると話し,最後に「ぜひお声がけいただき,より面白いものを作っていきたいです」と呼びかけ,講演を締めくくった。

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 余談となるが,リアル脱出ゲームのデジタル化は過去にも例があり,オンラインで遠隔地のプレイヤーたちと謎解きを楽しむ「超破壊計画からの脱出」がニンテンドー3DS向けに発売されている。この作品では,プレイヤーのニンテンドー3DSに爆弾が仕掛けられてしまい,このままでは世界中の3DSが爆発してしまうという危機的状況からゲームが始まる。この設定は,先ほど紹介した“PCの前にいる意味を与える”という取り組みと同様であり,2015年の時点で既に現在のオンラインリアル脱出ゲームに通じる取り組みが成されているのがとても面白い。
 4Gamerでは2015年に加藤氏と任天堂の山上仁志氏にインタビューを行っており,そちらでもデジタル化について触れている。リアル脱出ゲームを取り巻く状況の変化や,オンラインリアル脱出ゲームとの作り方の違いなどがインタビューで語られているので,こちらもぜひ一読してほしい。
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 任天堂とリアル脱出ゲームのSCRAPによって生み出された,「リアル脱出ゲーム×ニンテンドー3DS 超破壊計画からの脱出」。本作は,即席のパーティを組んで3DS本体に仕掛けられた謎に挑むという前例のない作品だ。そんな本作がどのようにして生まれたのか。プロデューサーである任天堂の山上仁志氏と,SCRAPの加藤隆生氏に聞いた。

[2015/12/29 12:10]

 今回の講演はリアル脱出ゲームがどのようにデジタル化されていったか,変化と進化の過程を確認でき,いちリアル脱出ゲーム好きとしても面白く感じられた。「リアル脱出ゲームって何?」という人も本記事で興味が湧いたのであれば,これを機に1度プレイしてみてはいかがだろうか。

「CEDEC 2021」公式サイト

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