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レトロンバーガー Order 67:「BEEP!メガドライブ」〜「ドリームキャストマガジン」を振り返って,今だと何ができるんだろうなとか言う編
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印刷2021/08/14 00:00

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レトロンバーガー Order 67:「BEEP!メガドライブ」〜「ドリームキャストマガジン」を振り返って,今だと何ができるんだろうなとか言う編

画像集#001のサムネイル/レトロンバーガー Order 67:「BEEP!メガドライブ」〜「ドリームキャストマガジン」を振り返って,今だと何ができるんだろうなとか言う編

「昨日に学び,今日に生き,明日に希望を持つ」
(Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow)

 出典は不明ですが,1970年代にアメリカ・ペンシルバニア州で流行したことから広まったというフレーズだそうです。近年ではアルベルト・アインシュタインの「昨日に学び,今日に生き,明日に希望を持つ。大事なのは疑問を止めないことだ」という格言として(誤って)知られていたりもしますね。「疑問を止めるな」という格言自体に疑問を持って調べてみたら,なんかそんな感じらしいっすよ。

 誤謬はともかく,「昨日に学び,今日に生き,明日に希望を持つ」というマインド自体は重要です。ただ「今日に生きる」と「明日に希望を持つ」のは盲目的にでも達成できるものの,刮目しなければ難しいのが「昨日から学ぶ」ことですね。こと今日びのSNS時代,新しい情報や概念は適当な発信元をフォローしておけばタイムラインに転がってきますが(とは言え,それも「自分が恣意的に構築したタイムライン」なのでバイアスが強めですが),“昨日”は能動的に掘り返さなければ出会いにくいものです。

 過去は古いというだけで軽視されがちですが,物事は知っていることが多いほど楽しめます。例えば「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」の幅広いゲストキャラクターなんて,新旧のいろんなゲームを知っていてこそ喜べるものです。まして狭い範囲の知識しか無かったら,生物が近親交配を重ねると近交弱勢が現出するように,強いバイアスのかかった物の見方しかできなくなってしまいます。

 それはゲームメディアを読むにあたっても同様です。昔のゲームメディアを知っていると,今のゲームメディアを読むとき「今の時代だとこれができるんだな」と驚いたり,または昔の記事に「今ではこんなのできないよな」と感服したり,ゲームメディア自体をより楽しめます。

 というわけで今回は,7月22日にSBクリエイティブからリリースされた「セガハードヒストリア」でやっていきましょう。本連載には「取り上げるのは現在購入可能なビデオゲーム製品(=関連グッズなどは取り上げない)」という縛りがあったりするのですが,セガハードヒストリアにはPCで実行可能なメガドライブタイトルがDVD-ROMで収録されていますので,広義的に捉えれば全然オッケーです。たぶんオッケーだと思う。オッケーなんじゃないかな。まあちょっとは何とやら。

画像集#002のサムネイル/レトロンバーガー Order 67:「BEEP!メガドライブ」〜「ドリームキャストマガジン」を振り返って,今だと何ができるんだろうなとか言う編

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[2020/12/21 14:35]
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[2021/03/29 18:48]


いろんな意味でミッチリ詰まってます


 製品としての「セガハードヒストリア」は,多数のインタビュー記事や各ハードごとの“読者レース”(ソフトを対象にした投票コーナー)最終結果を収録した本誌と,「BEEP!メガドライブ」「セガサターンマガジン」「ドリームキャストマガジン」の全誌をカタログ化した「歴代セガハード専門誌 全記録集」,D4エンタープライズが運営するプロジェクトEGG準拠のメガドライブソフト10本や「セガのゲームは世界いちぃぃぃ!」の単行本全3巻を収録したDVD-ROM,タカラトミーアーツによるフィギュア「SEGA HISTORY COLLECTION メガドライブ編」のフルセットが同梱されています。ショップ向けの解説文では「近年,セガサターン25周年,メガドライブの30周年,ドリームキャストの20周年,そしてセガの60周年と,さまざまなアニバーサリー・イヤーが続いたことを受け,歴代セガハード専門誌の資産を再結集」と謳われていますが,企画自体は“メガドライブ30周年の一環”として立案されたもので,それがCOVID-19の影響を受けて今年までズレ込んでしまったのだとか。

 価格は“Newニンテンドー3DSの定価とほぼ同額”の1万6500円。ちょっとばかり「学術書かよ」と思ったりもするストロングスタイルですが,中身は“価格に見合う”どころか,製作に投じられた労力を考えると筆者の薄い財布からでも追加で5000円くらい出したくなるくらいほどです。

 DVD-ROMに収録のメガドライブソフトは「アンデッドライン」「エリミネートダウン」「エル・ヴィエント」「空牙」「グラナダ」「鮫!鮫!鮫!」「スタークルーザー」「チェルノブ」「ミッドナイトレジスタンス」「ラングリッサー」という通好みなラインナップ。実機ROMの定価は,例えば「アンデッドライン」が9680円+税,「エリミネートダウン」が8500円+税なので,「この2本+その他もろもろで1万6500円」と考えてみると非常にオトクな気がします。まして,この2本は中古市場だとかなりのプレミア価格で取引されていますので,それが1万6500円の製品に含まれているとなったら実質タダみたいなものです(ぐるぐるした眼で)。まあ8月10日にプロジェクトEGGでリリースされた単品の「アンデッドライン(メガドライブ版)」が通常価格550円(キャンペーン価格330円。各税込)だし,そのうち「エリミネートダウン」もリリースされるでしょうみたいな冷静な話は一旦置いといてですよ。置いといて。

「SEGA HISTORY COLLECTION メガドライブ編」を用いた遊び方の一例(※「figma ニパ子」は別売です)
画像集#003のサムネイル/レトロンバーガー Order 67:「BEEP!メガドライブ」〜「ドリームキャストマガジン」を振り返って,今だと何ができるんだろうなとか言う編

 本誌のインタビューに応えているのは,セガの元社長である佐藤秀樹氏,「バーチャファイター」を生み出した鈴木 裕氏,「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」を生み出した中 裕司氏と,錚々たる顔ぶれ。読者の立場から考えると「普通に代表的な人物が並んでている」と思うかもしれませんが,IPホルダ主導だったら普通は出来る限り現職でまとめようとしますし,出版社主導だったら各ビッグネームに個別交渉しなければいけませんし,ざっくり言えば「“まさにセガ”って感じだけどセガ自身には作りにくい,セガに通じた第三者でこそ作れる」という非常にハイレベルな誌面です。


 「歴代セガハード専門誌 全記録集」はダイジェスト的な構成で,当時の誌面は一部の縮小版が掲載されているだけなのは少し残念ですが(「〜全記録集」が“対になるような本を目指した”という,2004年の「Beep 復刻版」で読めた古い記事が面白かったのもあり),記事の概要を見るだけでも楽しめます。シューティングゲームを性行為に例えた「シューティングエクスタシー」(BEEP!メガドライブ 1992年10月号),フォーカスされることが稀な部署にまで取材した「セガ21部署に聞きました!」(セガサターンマガジン 1996年6月14日号),今の時勢なら改めてワンチャンあるんじゃね?と思う「VR.テムジン少女」(セガサターンマガジン 1997年6月6号),普通なら目に入れることがまず無い検討アートや試作モックが多数掲載された「ゲーム工業デザインの今 〜知られざるデザインの世界〜」(ドリームキャストマガジン 2001年4月6・13日号)など,「やっぱりソフトバンク誌は独特の味があったよな〜」とページをめくるたびに思わされます。


 先述のBeep 復刻版で面白かった記事の1つが,パックマンやギル,景清といったメイズ系ナムコキャラのコスプレをしたライターが千葉県に存在したテーマパーク「きみつ砦」の巨大迷路に挑むというネタ企画だったのですが,その他にもセガサターンマガジンの姉妹誌「ザ・プレイステーション」だとライターが「バイオハザード2」の豆腐のコスプレをして大阪・エキスポランドで開催された「バイオハザード ナイトメア」に挑んでいたり,ソフトバンク系のゲーム雑誌では体当たり企画が多くて面白かった印象もありますね。当時の景気とか,紙メディアだと記事バリューと売上が(比較的)近い関係にあるので製作コストを投じやすいとかの外因はあるでしょうが,こういった紙メディア特有のワチャワチャした感じは面白いですよね。件の豆腐の中の人から「谷間みたいな地形の中に会社があったので,路面が凍結したときは右も左も滑って登れずコンビニすら行けない状況に陥った」という話を聞いたことがありますが,それもまたどことなく楽しそうな雰囲気です。

 とくに筆者が好きなのは1997年ごろのセガサターンマガジンです。Vol.40(1997年11月21日号)の「コトバの力」は実誌で読んだ当時も面白かったのですが,今になって思い返すと“特定のゲームの話をしているわけではないけれど,ちゃんとゲームの話をしている”という記事は,真に“ゲームメディアだからこそ”の企画だと感じられます。この頃の号は「ゲームはうざい日常を救うか?」「ゲーマーのからだ110番」など,「読み物として面白くしよう」という狙いで記事を作っている傾向が見受けられますね。

 筆者は2000年頃までゲーム雑誌を散発的に購入していたのですが,ドリームキャストの購入を機に「何か特定のゲーム雑誌を継続的に購読しよう」と思い至り,ドリームキャストマガジンと「ファミ通DC」「ドリームキャストFAN」を買ってきて読み比べ,「俺の感覚にマッチするのは……これだ!」とドリームキャストマガジンの購読を始めました。後にドリームキャストマガジンは「Beep」から続くセガ志向の系譜なのだと知って「俺の勘に狂いはなかった」と思ったものです。もちろんファミ通さんも徳間さんの系列も相応の歴史がありますので,違う選択をしても似た解釈になっていた可能性はありますが。

 筆者がドリームキャストマガジンから受けた影響は,数あるゲーム雑誌の中でも2番目に大きく(なお1番は「ゲーメスト」,3番は「ゲームサイド」),例えば「デスクリムゾン」新録サントラの発売にあたって行った渡辺邦孝氏へのインタビューなんて,ドリームキャストマガジンが最終号でカラー3ページを費やして「『デストレイン』完全密着レポート2001」を掲載するなどして読者の脳に“デス様”を全力で刷り込んでいたからこそ企画したものです。


 先日ピクセルさんからプレスリリースをいただいた「コンバット越前も大好き! ケンミン焼ビーフン“デスクリムゾンクニタカ”エディション」記事がTwitterでバズりまくっていますが,そんなことになっているのも元を辿ればドリームキャストマガジンの“デス様”推しだったため。さらに元を辿ればセガサターンマガジンの“読者レース”でデス様が逆に人気を博して最下位頂点(セガサターンマガジン最終号での表現)に輝いたため。もっと元を辿ればBEEP!メガドライブで読者レースがスタートしたためです。もちろん,そんなデスクリムゾン史も「セガハードヒストリア」で振り返ることができます。

 BEEP!メガドライブにありがとう。

 デス様にありがとう。

 読者レースの投稿者達にありがとう。

 そしてRTA in Japanでデス様のワールドレコードを更新した,ゆゆキチさんにおめでとう。

(※なお走者は現状1名とのこと)

 そのほかにも「この局面,もしドリームキャストマガジンだったら……行くしかねえ!」と動いたこともありましたし,「セガサターンマガジンがやった大ネタをリバイバルしたいなー!」と思い立ってキーパーソンに連絡を取るも多忙を理由に断られたので「いずれ……いずれは……」と思ったり,いろいろです。また何か珍奇な記事をお届けするときが来るでしょう。

 でも寺田克也氏&黒柳陽子氏によるドリームキャストマガジンの“寺柳”(非常に独特な雰囲気のイラストコラム)なんて,Webだと再現すら難しいんですよね。標準のテキスト+画像貼り付けだとサマになりませんし,かと言って画像1枚ベタ貼りだと記事の体裁になりません。やるとしたらサイト構成のレベルから考える必要があります。筆者的にはセガサターンマガジンの“3”(悪ふざけで9割が構成された,セガAM3研の公認コーナー)が大好きだったので,そういう企画をやってみたいと思っているのですが,Webメディアだと似たものを作っても“単に変な記事”で終わる予感がします。


 紙メディアがWebメディアに対して今でも有利なのが,表現力の高さです。全体のレイアウトで,見出しのレタリングで,絵素材で,フォントで,その他もろもろで“ページの雰囲気”を作ることができます。そういうのは読んでいて楽しいですし,作っていても楽しいものです。まあ「じゃあ,また紙やる?」と言われたら,視線を逸らして「た,待遇次第で……」と歯切れの悪い答えを返しますけど。

 また,紙メディアは掲載形態(盛大な巻頭カラー16Pなのか,デザインから胡散臭くしたモノクロ1Pなのか,はたまた綴じ込み付録なのか……)で「その記事は本の中でどういう立ち位置なのか」を演出することもできます。各記事のフォーマットが基本的に共通のWebメディアでは,ましてキュレーションメディアやSNSを介して記事単体だけが巷に出回るような今日びだと,そういった“雰囲気の演出”は非常に難しくなっています。

 そんな“紙メディアの雰囲気”を綴じ込んだセガハードヒストリアは,単純に読むだけでも面白いですし,メディアやデザインに携わる人なら読むと“発見”があるでしょう。セガの節目を飾るものや,過去のゲーム雑誌を懐かしむものとして価値があるのはもちろんですが,12年分の歴史をまとめたことで,さらなる価値が創出されています。

 ドリームキャストマガジンは「ドリマガ」「ゲーマガ」と誌名を変更していき,“ソフトバンク発”の縁からか4Gamerとコラボしたりしつつ(当時の筆者は他社メディアに携わっていたので内情は知りませんが),2012年に休刊となりました。こう,1986年まで刊行されたBeepをトリビュートしたBeep 復刻版が2004年に発売,2001年まで刊行されたドリームキャストマガジンおよび前身・前々身をトリビュートしたセガハードヒストリアが2021年に発売と来たら,残るドリマガ&ゲーマガをトリビュートしたムックも2030年ごろに出るのでしょうか? 読者的な目線としては,末期のゲーマガは描き下ろしイラストを多用して「誌面の価値」を構築していた印象なので,“らしさ”を収録するならそれらを取りまとめてもらいたいところですが,権利関係の調整が大変そうだなーとも感じられますね。でも出て?(願)

 そして筆者としても,Webメディアなりのできることを掘り下げていきたいですね。例えば動画を使えるのはWebメディアの明確な利点ですが,なかなか活用が難しいのを何かするとか。何かが何なのかは「こう,バーンと!」ぐらいのことしか考えていませんが,とりあえず本連載のモットーである“やっていきましょう”(漠然)でやっていきましょう。
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