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「BitSummit」の会場で見つけた,変わり種のVR・MRゲームを紹介
「Stifled」
音にフォーカスしたVR対応ゲームで,「マイク対応,サウンドをベースとしたステルススリラー」と公式で謳われている。これは,Gattai Gamesが2017年に発売を予定している作品で,会場ではPS VRを装着して,コントローラで操作するという形になっていた。
プレイヤーは夜の闇の中をさまよい歩くことになるのだが,そのままだと周りは真っ暗で何も見えない。実際に声を出してみると,画面の中で音波が波紋となり,その反響によって周囲の様子がワイヤーフレーム的な表現で浮かび上がる。つまり,声がソナーのような働きをするのだが,その効果は一時的なもの。
そのため,声を出し続けていないと前に進むのがなかなか難しいわけだが,うるさくしているとクリーチャーの注意を引いてしまう。しかも,遠くから奇怪な鳴き声(悲鳴?)が響いてくるのだから本当に怖い。血が飛び散ったり,恐ろしい姿の化け物が出てきたりといった直接的な表現ではなく,音だけでうまく恐怖を演出している。
暗闇という人間が持つ根源的な恐怖や,周囲の状況が一瞬だけ分かるという演出,そしてマイクを使った時の感情移入が融合し,想像力が刺激される体験を生み出している本作。ホラーゲームの新基軸というわけで,完成が楽しみだ。
「God of Money」
群がってくる人々にお金をばらまき,幸せにするVRゲーム。大阪電気通信大学の有志スタッフが参加するVR Media Research Projectの作品だ。
ヘッドマウントディスプレイをかぶって,両手にコントローラを持てば準備完了。傍らに置かれたお金に手を突っ込み,トリガーを引いて掴む。続いて物を投げるように手を動かし,トリガーを離せばお金をばらまく。お金が人々に当たると金色の光が飛び散ってなかなか爽快だ。お金を投げるという非日常体験が楽しく,いい意味での一発ネタ的な作品である。
「ピーポーパニック!」
画面には人々が行き来する街が映し出されており,UFOを近づけてこれを吸い込んでいく。多人数プレイも可能で,その時は参加者みんなで協力することになる。
プレイフィールとしては昔懐かしい“磁石つきの竿で魚を釣る玩具”に近いが,こちらのUFOは大量の人間を掃除機のごとく吸い込んでくれるのが気持ちいい。街の建物やバスを吸い込むと中にいた人々が外に逃げたり,制限時間まぎわになれば人通りが一気に増えたりと,この辺りはビデオゲームらしい演出といえるだろう。
ブースには沢山の釣り竿が用意されていたが,取り付けられているUFOの玩具は形も色もまちまち。これでどうやってUFOの位置を検出しているのだろうか。
不思議に思ってスタッフに聞いてみると,UFOの玩具を留めるアタッチメントに,円形の「再帰性反射材」が使われていることに秘密があるという。再帰性反射材とは,交通標識などに使われている,入ってきた光をそのままの方向へ反射する(入射角と反射角が等しくなる)という性質を持った材料のこと。ここに赤外線を当て,反射してきた光をカメラで捉えることによってUFOの位置を検知している。この方式だと,複雑な画像解析を行わなくてもいいし,UFOも自由な形にできるメリットがあるそう。「dotFes2016 渋谷」では来場者に自分の手でUFOのペーパークラフトを彩色・組み立てしてもらい,好評を博したという。
「人のいるところに釣り竿を動かす」だけで楽しめる直感的な内容と,UFOの位置検出にまつわる工夫,ビビッドな色合いのボクセルグラフィックスで描かれた人が動き回るビジュアルの楽しさと,実に印象的な作品だった。
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