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DeToNator代表の江尻氏が語る「eSportsビジネス論」とは。企業向けセミナー“ゲーミングチームとの向き合い方”基礎知識編をレポート
DeToNator代表 江尻 勝氏 |
セミナーは江尻氏がプロゲーマーチームDeToNatorを8年間運営してきた中で,実際にあった出来事などの体験談をベースとしている。ゲーマーチームと関係を持ちたいと思っている企業向けの内容ではあるが,プロゲーマーチームを運営する側も参考になるだろう。
なお,今回行われたセミナーはあくまで「e-Sportsのことを全く知らない企業」を対象にしたものとのことだ。
今回のセミナーは「ゲーミングチームと企業の橋渡し」を目的としたもので,スポンサードする企業側に対して知識をつけてもらおうという主旨だ。というのも,「e-Sports」という言葉が徐々に浸透してきている中,「このチームは何者なのか?」という若干「ネガティブ」な要素が入った相談が増えてきたそうだ。そうした状況に,江尻氏はe-Sports業界的な危機感を感じて,今回のセミナーを開催することにしたという。
基礎知識編として行われた今回のセミナーでは,「スポンサードするうえでゲーミングチームをどう評価するか」というポイントを,江尻氏が8年間の経験をもとに解説した。
セミナーの中心となったのは,ゲーマーチームと企業の信頼関係をどう構築するかという話だ。メールの内容やレスポンスの速さ,一般的なモラルがあるかなど,基本的なビジネスマナーに加え,これまでの実績はどういうものか,継続して運営できているか,また将来の展望はあるのか,SNSでの暴言などはないか,などがゲーマーチームをビジネスパートナーとするうえで見るべきポイントだと江尻氏は語る。
ゲーマーチームから企業にスポンサー契約の提案があったとき,資料すら提示されない場合もあったそうだ。現状そういった提案で良しとする企業もあるようだが,ビジネスとして関係を構築する以上は,ビジネスパートナーとして信頼がおけるゲーマーチームが求められる。業界の発展のためとはいえ,企業側がそういったチームを甘やかす必要はないと述べていた。
ゲーマーチームの実績についてもそうで,自分たちの活動に基づいた数字ではなく,海外のデータなどを中心に売り込みをするチームには注意が必要だそうだ。
また,SNSのフォロワー,配信時間といった数字が本当に効果的な数字なのか,調べる必要があるという。例えば,フォロワー数の多い人が,自動でフォローした相手をフォローし返す機能を使って水増ししていないか,どういった情報を発信して,フォロワーが何を求めているのか,数字の内容を調べていくことが重要とのことだ。
次にチームとしての継続性について。雨後の筍のごとくゲーマーチームが誕生している現状では,残念ながら解散するチームも多く存在している。そうした継続性はWebサイトや選手の配信活動の状況,これまでの活動実績などを見ると判別できるそうだ。これまで安定して運営してきたチームは,これからも継続していく可能性は高いだろうという話で,スポンサードを受けるためにどれだけ準備をしてきたか,どれだけ活動してきたかが評価となる。
また,目標に対して具体性を持っているかというのも重要な指標になるという。そのチームが一体どこを目指しているのか,設立した目標に対する具体的な計画はあるのか,パートナー企業に対して何をもたらしてくれるのか。それらを見れば,ゲーマーチームがスポンサードを得るためにどんな活動をしてきたのかを推し量れるわけだ。
そして今回のセミナーの最後を締めくくる項目は「身辺調査」だ。字面それだけを見ると難しい言葉だが,要するに対象のチームの評判はどんなものか,トラブルを起こしていないか,といったことだ。プロと呼ばれるゲーマーチームにおいても,ゲーム中の暴言などのトラブルが起きているケースもあるそうだ。
江尻氏は,スポンサードした以上は企業にもトラブルの責任が発生する可能性があり,企業としてのイメージを落としかねないことが危惧されるとしたうえで,契約を結ぶチームの動向を調べることはもちろん,契約を結ぶ際にそういった事案に対応できるようにしておくことが重要だと語っていた。
また,江尻氏は今後チームに求められることとして,「徹底した教育による選手の質の向上」をあげていた。プロゲーマーチームの顔は選手であり,大会への出場,ゲームの実況配信,SNSでの情報発信など,多くの場面で表に出ることになる。ゲームの実力はもちろん,こうした場での行動や言動は,チームにとってもパートナー企業にとっても大事なものであり,あらゆる意味で選手の質を向上させることが必要になるようだ。
BRZRK氏 |
BRZRK氏は,現在の日本のe-Sportsシーンに対して「海外のコンテンツを日本に持ってきても,文化の違いから日本では流行らない」とコメント。欧米に10年遅れているといわれる日本が追いつくためには,真似ではなく現状をしっかりと理解した独自のコンテンツを生み出すことが重要だという考えを述べていた。
こうした思いは裏を返せば,現状のゲーマーチームがしっかりとした信頼を獲得できているのか,ということであり,そのあたりで2人の意見が危惧する方向で一致したということは,それだけe-Sportsを取り巻く現状に思うところがあるのだろう。
一方で,当然ながら江尻氏とBRZRK氏は,e-Sportsのさらなる発展を願っていることでも一致している。BRZRK氏は「日本から世界を目指すようなハングリー精神あふれるチーム,あるいはゲームタイトルが出現することに期待している」と語り,江尻氏は「チームが沢山生まれればそれだけe-Sportsが盛り上がることは間違いないので,賑やかになってほしい」と締めくくった。
「DeToNator」公式サイト
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