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[SIGGRAPH]「Oculus Rift」に対抗!? NVIDIAがサングラススタイルの立体視対応HMDを披露
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印刷2013/07/24 00:00

イベント

[SIGGRAPH]「Oculus Rift」に対抗!? NVIDIAがサングラススタイルの立体視対応HMDを披露

SIGGRAPH 2013の会場となるAnaheim Convention Center。今年のテーマは「Left Brain+Right Brain」(左脳と右脳)とのこと
画像集#002のサムネイル/[SIGGRAPH]「Oculus Rift」に対抗!? NVIDIAがサングラススタイルの立体視対応HMDを披露
 コンピュータグラフィックスとそのインタラクティブ技術の学会である「SIGGRAPH 2013」が,米国時間の21日に開幕した。今年も4Gamerでは,3Dグラフィックスとゲーム関連の話題を中心にレポートしていきたい。
 今年のSIGGRAPHは,PlayStation 4やXbox Oneの発売直前に開催されることもあって,次世代ゲーム機のグラフィックスに関連したセッションもあるとのことだ。4Gamer読者にも興味深いレポートをお届けできるだろう。

 ちなみに,SIGGRAPHというイベントは,毎年開催地を変えては定期的にロサンゼルスに戻る(2012年はロサンゼルス開催)といったパターンを繰り返しているが,今年はロサンゼルスのやや南東にある,アナハイム市での開催となった。アナハイムは元祖ディズニーランドがある街で,夏休みの真っ最中である今は,街中(まちじゅう)が家族連れの観光客で溢れている。SIGGRAPH 2013の会場であるAnaheim Convention Centerも,ディズニーランドのすぐ近くに立地しているため,通りにはディズニー関連の旗や広告が並んでいて,なんとも賑やかで楽しげだ。

商用化や実用化前の先端技術を使った展示が見られる展示会場「Emerging Technologies」の様子
画像集#003のサムネイル/[SIGGRAPH]「Oculus Rift」に対抗!? NVIDIAがサングラススタイルの立体視対応HMDを披露
 そんなSIGGRAPH 2013だが,例年同様,初日は入門者向けのセッションが中心であるため,まずは毎年ユニークな展示で来場者を引きつけて止まない,展示会場「Emerging Technologies」から見ていくことにした。すると,人がNVIDIAブースに人が溢れかえっているのを見つけたので,まず第一報はNVIDIAブースレポートからとしてみたい。


NVIDIAのHMD「Near-Eye Light Field Displays」は

重さわずか約110g


 なぜNVIDIAブースに来場者が詰めかけていたのか。その答えは,同社が開発中のヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)「Near-Eye Light Field Displays」(以下,Near-Eye LFD)にあった。
 ソニーのHMZシリーズやOculus VRの「Rift」,方向性は異なるがGoogleの「Google Glass」などが登場したことにより,ゲーム業界やグラフィックス業界では今,HMDがミニブームといった状況にある。そんな中でNVIDIAが独自開発のHMDを初出展するというのだから,注目度が高いのもうなずけるというものだ。

Near-Eye LFDを装着した状態。見た目やサイズは,HMDというより立体視用メガネに似ている
画像集#004のサムネイル/[SIGGRAPH]「Oculus Rift」に対抗!? NVIDIAがサングラススタイルの立体視対応HMDを披露

 今回,NVIDIAが披露したNear-Eye LFDは,1280×720ドットの有機ELディスプレイパネル2枚を,左右の眼にそれぞれ割り当てるタイプのHMDである。
 外観からして特徴的で,目にあてがう部分(メガネのレンズ部分)の厚みは,わずか10mmしかない。たとえばHMZシリーズだと,ディスプレイやレンズで構成される光学系の奥行きが40mmもあるわけだが,それと比較すれば非常に薄いのが分かるだろう。重さも約110gしかなく,サイズと重さで考えれば,HMDというよりも,3D立体視対応液晶ディスプレイと組み合わせて使う,アクティブシャッター式メガネに近い。

Near-Eye LFDとその構成部品一式。これらはアクリルケース内に置かれていた
画像集#005のサムネイル/[SIGGRAPH]「Oculus Rift」に対抗!? NVIDIAがサングラススタイルの立体視対応HMDを披露

 奥行き10mmの光学系を実現できた秘密は,レンズの構造にある。HMZシリーズに代表される一般的なHMDは,複数レンズを組み合わせた「拡大光学系」で構成されるのに対し,Near-Eye LFDでは,焦点距離わずか3.3mmの「Micro Lens Array」(マイクロレンズアレイ,以下 MLA)シートを使っているのである。これに有機ELディスプレイパネルを重ねてケースにはめ込んだだけなので,わずか10mm厚の表示部を実現できるというわけなのだ。

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光学系のサイズ比較。左がHMZシリーズのもので,右がNear-Eye LFDのもの
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ディスプレイ部を分解したところ。左に見えるのがMLAである

 ただ,そうは言っても,人間の目は3.3mmという超至近距離に焦点(ピント)を合わせることはできない。だからNear-Eye LFDを覗き込んでも,目は普段と同じ焦点距離で見ようとしてしまい,レンズに焦点は合わないはずだ。
 ではどうやってNear-Eye LFDは映像を見せているのだろうか? 少々難しい話になるが,おおまかに説明してみよう。

 そもそも人間が目で見ているのは,視野の範囲にあるすべての光――これを「Light Field」(ライトフィールド)と呼ぶ――から,瞳を調整して光を絞り,ピントや露出を合わせて見たいように切り出したものだ。映像も同じで,目にある水晶体の代わりにカメラのレンズを使って,Light Fieldを見せたい映像になるように切り出したものといえる。

 それを逆に考えると,目が見ているところに見せたい映像の“画素”を配置できれば,任意の奥行きにピントが合った映像を,HMDのユーザーに見せることが可能になる。要するに,「ユーザーが日常の風景を見ているのと同じように目のピントを調整すると,適切な距離に表示されているかのように映像を見られる」というのが理屈で,これを実現したものがNear-Eye LFDというわけだ。


 上のムービーは,NVIDIAによるNear-Eye LFD解説ビデオだ。下には一部切り出したものも示しておくので,このあたりを見てもらうと,理解しやすいかもしれない。

Near-Eye LFDの基本概念図(※NVIDIAが公開しているNear-Eye LFDの説明ビデオより引用)。仮想的なスクリーン上にある映像をディスプレイに表示し(左上),それをレンズアレイを通して左方向,正面,右方向といった具合に見る
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 実はこの技術,裸眼立体視技術にも応用されている「インテグラルイメージング方式」と呼ばれるものが根幹となるものだ。裸眼立体視に対応した東芝の3Dテレビ「グラスレス3Dレグザ」シリーズは,まさにこのインテグラルイメージング方式を採用しているので,ある意味,この考え方をHMDに応用したのが,Near-Eye LFDともいえようか。

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Near-Eye LFDは、遠近の焦点を変えるとそれに合った映像が表示される。左右で異なる映像を表示するので,立体視も可能だ

 下の写真2枚は,Near-Eye LFDで見た映像のイメージを,1枚の画像と撮影する距離で表現したものだ。カメラを離して撮影すると,何が映っているのか分からないが(上),思い切り寄って接写すると,ちゃんとした映像に見える(下)。Near-Eye LFDで見る映像もこれと似たようなものだ。

上がカメラを離して撮影した状態で,下が接写した状態。ディスプレイに表示している画像は同じものだが,カメラの距離によって見えるものが変わる
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強力なGPUが必要なNear-Eye LFDは

GPUの新たな用途提案でもある


 NVIDIAがNear-Eye LFDを開発した理由は,このシステムの開発に,グラフィックス描画が大きく関わっているからだ。MLAを通して目が見る先の画素は無数に存在するので,これをすべてレンダリングしなければならない。つまり,Near-Eye LFDを装着してそこにゲーム画面を表示させようとするなら,強力なGPUが必要になるというわけだ。

 今回のNear-Eye LFDデモ機では,グラフィックスカードに「GeForce GTX TITAN」搭載モデルを使い,NVIDIAのプログラマブルレイトレーシングエンジン「OptiX」を用いて,グラフィックスを描画していたという。
 下の画像は,GPU側でレンダリングした画像をレンズを通さずに可視化したイメージ画像だが,少しずつ異なる画像を大量にレンダリングしているようなものだから,強力なグラフィックス描画能力が必要になるのも分かる。これをNear-Eye LFDで見ると,(見た目は荒いものの)普通の1枚絵に見えるのだから面白い。

GPU側でレンダリングしているイメージを可視化したサンプル画像
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上のサンプル画像をそれぞれNear-Eye LFDで見た場合のイメージ
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 出展されていたNear-Eye LFD試作機が採用していた有機ELディスプレイパネルは,ソニーのHMZシリーズが搭載するのと同じ,15.36×8.64mmサイズの「ECX332A」パネルとのこと。これにパネルと同サイズのMLAを組み合わせているとのことだ。MLAのレンズ1個は1×1mm程度のサイズで,それを横に15個,縦には8個並べてレンズアレイを構成している。

フィルムで実験している高解像度版。前掲したオウムの写真は,この高解像度版によるものだ
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 とはいえ,現状のNear-Eye LFDはあくまで研究室レベルの試作品にすぎない。画面1枚あたりの空間解像度はわずか146×78ドット程度で,画角(Field of View)も水平29度,垂直16度程度。もちろん売り物になるようなものではない。
 そこでNVIDIAは現在,37.5×37.5mmサイズのフィルムに静止画をプリントして,高解像度化に向けた実験を進めているそうだ。今のところ解像度が534×534ドット,画角は水平垂直ともに67度まで実現できているという。

※空間解像度(Spatial Resolution)。Near-Eye LFDはLight Fieldを両目で見るため,一般的なディスプレイでの「平面解像度」ではなく,奥行き情報も含む「空間解像度」という言葉を使って表現していた。

Douglas Lanman氏(Research Scientist,NVIDIA)
画像集#019のサムネイル/[SIGGRAPH]「Oculus Rift」に対抗!? NVIDIAがサングラススタイルの立体視対応HMDを披露
 Near-Eye LFDを担当するNVIDIAのResearch ScientistであるDouglas Lanman氏によれば,開発チームが終始こだわったのは薄さと軽さ,画角の広さ,そして映像を見たときの「違和感の少なさ」の4点だという。

 薄さと軽さは,有機ELディスプレイパネルとMLAの組み合わせで実現された。液晶パネルはバックライトが必要で,ディスプレイ部の厚みが増してしまうために,バックライト不要な自発光デバイスである有機ELディスプレイパネルを選択したのだそうだ。画角の広さは,眼球から数センチ先にディスプレイ部を置く構造から必然的に広くなる。

 「違和感のなさ」は,既存の立体視技術に欠如していた要素をカバーしたことで実現された。現在の立体視対応テレビで採用される視差ベースの立体視は,目の水晶体による焦点調節や,左右の視線を対象物に交差させるように動かす「輻輳」といった要素が欠如してしている。簡単に言えば,肉眼とは異なる不自然な立体視なのだ。その点,Near-Eye LFDでは水晶体による焦点の調整と輻輳の要素を実現できるため,違和感のない自然な立体視ができるのだと,Lanman氏は主張していた。

 また氏は,普段はメガネをかけている人でも,Near-Eye LFDなら裸眼で立体視を楽しめる点も長所としていた。Near-Eye LFDはGPUとディスプレイ,MLAを使ってLight Fieldを作り出す仕組みなので,メガネによる視力補正分の補正パラメータをレンダリング時に盛り込んでしまえば,メガネをかけずとも正しい映像を表示できるというわけである。


DOOM3によるゲームのデモも披露

高解像度の有機ELパネルが登場すれば実用化も


試作機の両目にあたる有機ELディスプレイパネル(下)と,ドライバー回路が載った基板(上)。実用化にはパネルの高精細化が欠かせない。ちなみに,基板側は小型化も可能とのこと
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 Near-Eye LFDは非常に未来を感じさせる技術だが,現在の試作機や実験中の高画質版でも,実用に供するには解像度が低すぎる。最低でもSDビデオ程度の映像が見られないと,いくら遠近や立体感を視覚できるHMDだといったところで,消費者が手を出す商品にはなり得ないだろう。
 会場の試作機では,「DOOM 3」の冒頭部分をプレイできるデモも行われていたのだが,映像の遠近感には驚かされるものの,解像度が低すぎて,狙いを定めて撃つようなプレイはとてもできなかった。

会場ではNear-Eye LFDによるDOOM 3のプレイデモも披露された。左は解説用のイメージ画像で,実際に見える映像は「Prototype Video」で示されているような感じになる。右は実際にプレイしているイベントスタッフ
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 だが,解像度の問題についてLanman氏は,実験に使っている37.5×37.5mmサイズと同サイズの4K(3840×2160ドット)有機ELディスプレイパネルが提供されれば,十分に実現可能だと述べる。これは試作機が使っている有機ELディスプレイパネルと比べて,面積で約4倍,解像度は1.5倍程度なので,有機ELディスプレイパネルの製造技術的にも困難なことではないというのだ。
 「そのサイズと解像度のパネルが存在しないのは,単に応用製品がないからだ。いずれ4K映像関連製品がいろいろと出てくれば登場してくると思う」と,Lanman氏は楽観視している。確かに,NVIDIAとパネルメーカーが本気を出してタッグを組めば,そうした有機ELディスプレイパネルを製造させることだって可能かもしれない。

 いずれにしても,Near-Eye LFDの展示が大きなセンセーションをもたらしたことは事実で,今後の展開にも期待できる。あるいは,NVIDIAのモバイルゲーム機型Android端末「SHIELD」と一体化したりするのも面白いかもしれないと思うのは,筆者だけではあるまい。

Emerging Technologies|SIGGRAPH 2013

SIGGRAPH 2013 公式Webサイト

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