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印刷2023/08/25 18:20

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[CEDEC 2023]“リガー”は開発の屋台骨も支える。「FINAL FANTASY XVI事例で知るキャラクターリグの仕事」レポート

 2023年8月24日,ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2023」で,スクウェア・エニックス 第三開発事業本部のリガーである東川聡仁氏,川崎広貴氏による講演「FINAL FANTASY XVI事例で知るキャラクターリグの仕事 そのイロハと魅力」が行われた。

 本講演は「FINAL FANTASY XVI」(以下,FF16)の“キャラクターリグ制作事例”を紹介・解説するというものだ。

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 まずは東川氏から「リガーはどんな仕事をしていて,どのように開発に貢献しているのか」が説明された。

 前提として,3Dゲームにおけるキャラクターは,モデリング時点ではアニメーションさせることができない。そのモデルを動かせるようにセットアップするのが,リガーの主な仕事だ。
 それにはまず,モデルに“ジョイント”と呼ばれる骨を配置し,その骨に対してどれだけ動きの影響を与えるかを“スキニング”の作業で設定する。これにより,モデルの全身は各骨を軸とした形状変形が可能となり,アニメーションの動作を実現させる。
 さらに,アニメーションの作成作業を便利にするコントローラの作成,必要であれば揺れもの(髪の毛や装飾品)も設定するという。

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 東川氏は,ゲームの演出上でどのような構造が必要かを考えてから,ギミックを作っていくと言った。そうしてアニメーション制作に貢献することはもちろん,想像以上の動きが完成した際は,大きな達成感を得られるとのこと。リガーの仕事は「どんな表現を実現したいのか,想像力を広げることを楽しむ」と,良い結果につながるそうだ。

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 リガーはアニメーションだけではなく,「キャラクターのシルエット作り」にも貢献する。例えば,モデルの「着衣状態」と「脱着状態」が同じ調整だと,見た目が不自然なシルエットになってしまう。そのため,状況に応じて見栄えがより良くなる設定を用意することで,最終的なアニメーションのクオリティアップへとつなげるようだ。

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 前述した「コントローラの作成」では,モーション作業の効率化に貢献する。例えば,「翼を持つモデル」が翼を動かそうとしたとき,骨のままだと左右の翼が平行に動いてしまうことがある。そこでコントローラをセットアップし,必要であればアニメーターと相談して,作業のしやすい環境づくりを手伝うそうだ。これにより,アニメーションの制作工程での作業も減り,ひいては開発全体の工数削減につながるという。

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 さらに意外な貢献要素として,開発チームのクリエイティビティを刺激できる(かもしれない)という話も。
 例えば,FF16の主要キャラクターである狼の「トルガル」の場合,仔狼のころの姿「トルガル・パピー」は登場頻度が低く,出番も少なかった。しかし,それでも愛情をもって丁寧にセットアップしたところ,開発チーム内で「トルガル・パピーかわいい」と評判になるだけでなく,出番のあった体験版でも大きな話題を呼ぶに至ったそうだ。

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 次に,FF16のリグ周りにおける「ワークフローの事例」が紹介された。FF16でのリグ班のミッションは,多数のキャラクターへの対応,インゲームとカットシーンで共通となったキャラクターアセットを違和感なく動作させること,それらを踏まえた適切なスケジューリングだった。

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 まず「多数のキャラクターへの対応」では,“骨の共通化”と,作り込みのバランスを調整した。こちらは,共通化された汎用骨を用意することで,アニメーションの流用が可能になり,作業量やデータ容量の削減につながるというもの。要は同じ動きをするザコ敵などだ。しかし,キャラクターとしてのクオリティはそのぶん落ちてしまうため,主人公など明確なメインキャラには固有の骨が用意されるという。

 ここで難しいのは「共通骨か,固有骨か,どちらで制作するべきかが悩ましいキャラクター」だそうだ。そうしたキャラは,出番はあるものの共通骨で制作できないか相談されたり,共通骨で考えていたら固有骨も必要になりそうだったりと,開発現場では急な対応を求められる場面もあり,各班との連携を高める必要があったそうだ。

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ワークフローの例。3つの班を1周する形で制作が回っていく
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実際にあった工程の例。本来は2周で完成するはずだったフェーズが,5周まで増えている
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共有骨を使用するキャラクターのチェック画面。同じ動作をさせて破綻がないか確認する
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 次いで川崎氏から,映像制作のノウハウを活用した「カットシーンのセカンダリアニメーション制作事例」も解説された。ここで言うセカンダリアニメーションとは,キャラクターの動きそのものの次に設定される,髪の毛や服などの揺れものの設定のことだ。

 FF16のキャラクターは,戦闘での激しい動きだけでなく,町では落ち着いた様子を見せるなど動作のバリエーションが豊富なため,どの場面でも気持ちのいい動きになるよう調整を繰り返したという。とくにカットシーンでは,システムで用意した揺れもの設定だけでは不十分なため,細かいめり込みも含めてフレーム単位で確認・修正したり,あえて嘘の揺れ方をさせることで,演出としてカッコよく見せたりしたそうだ。

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 その際の方法としては,主にアニメーションをコントローラで修正するほか,デフォームを用いて修正することもあったとのこと。

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 壇上では再び東川氏にバトンタッチし,「量産・メンテが楽になるプロシージャル風なフェイシャルリグ設計」が解説された。FF16のキャラクターには,人物やモンスターを合わせて合計200種類近くのフェイシャルが必要とされた。そのため,品質と物量を両立する,効率的な作業システムを確立しなければならなかったという。

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 そこでまず,モデルのトポロジーとUVを共通化してもらえたことで,別のキャラクター同士で基本的なウェイトを流用できるようになり,骨の配置もある程度自動化できるようになったとのこと。
 コントローラに関しても,最初にキャラクターサイズの階層を用意して倍率を反映し,加えて骨に保存された初期位置をもとに,骨個別のコントローラの親階層に骨の初期位置を反映させた。それでプロシージャル風にコントローラの着せ替え,モデルの差し替えも可能になったそうだ。

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 そのうえで,ポーズ同士の組み合わせにより破綻が発生しないよう,レイヤードテクスチャノードを使い,ポーズとポーズの間がなめらかにつながるよう設定したほか,表情の度合いでシワのテクスチャがブレンドされるような仕組みも仕込んだという。

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 東川氏はFF16の開発作業を通して,リガーは,モデラーやアニメーターが安定して力を発揮できる状況を作ることが大切だと,あらためて感じたと述べたた。そして最後に「連携を大事にしながら,想像力を働かせて楽しく働きましょう!」という言葉をもって,講演を締めくくった。

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