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「この天才科学者が首席になれないとでもいうんですか?」を先行体験。資源変換の“法則”を自ら構築できる意欲作
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印刷2020/10/30 16:58

プレイレポート

「この天才科学者が首席になれないとでもいうんですか?」を先行体験。資源変換の“法則”を自ら構築できる意欲作

 ディライトワークスは,同社が手掛ける新作ボードゲーム「この天才科学者が首席になれないとでもいうんですか?」(以下,この天)を,11月14日から15日にかけて開催される国内最大のアナログゲームイベント「ゲームマーケット 2020 秋」で発売する。

画像集#001のサムネイル/「この天才科学者が首席になれないとでもいうんですか?」を先行体験。資源変換の“法則”を自ら構築できる意欲作

 本作は,「桜降る代に決闘を」などで知られるアナログゲーム制作団体「BakaFire Party」とディライトワークスの共同制作によるボードゲームシリーズの第2弾にあたるタイトルだ。前作「Dominate Grail War -Fate/stay night on Board Game-」は,「Fate/stay night」をテーマにしたボードゲームだったが,今回は完全オリジナル作品となる。

 本稿においては,本作のルールデザインを担当したBakaFire氏と,プロデューサーの立山幸介氏による制作の裏話も語られた,メディア向け先行体験イベントの様子をお届けする。

画像集#002のサムネイル/「この天才科学者が首席になれないとでもいうんですか?」を先行体験。資源変換の“法則”を自ら構築できる意欲作

「この天才科学者が首席になれないとでもいうんですか?」公式サイト



薄いカードを重ね合わせて“レンズ”を組み上げる。法則創造×キャラクター育成ゲーム


 まずは,プロデューサーを務めた立山氏による「この天」の紹介が行われた。立山氏によると本作のコンセプトは,“法則創造×キャラクター育成ゲーム”だという。

プロデューサーの立山幸介氏
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ゲームの舞台となるのは,光に関係する特殊なエネルギー“超光学”を研究する学院だ。プレイヤーは学生の1人として4年間(4ラウンド)の学生生活を送り,その中で獲得した研究成果(勝利点)で主席を目指すことになる
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 “法則創造”は,すなわち「リソース変換システムを自分で自由に構築できる仕組み」を意味している。本作には透明なカード(以下,開発カード)が多数封入されており,これを重ね合わせることで1枚のカードを作れるのだ。
 複数の開発カードを組み合わせたものは1枚の「レンズ」と呼ばれ,左側が消費リソース,右側が産出リソースを示す。完成したレンズは,レイヤーに描かれた通りの形式でリソースを変換できるわけだ。

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開発カードは上下を入れ替えることが可能で,描かれたリソースを消費側したり,産出側にしたりもできる。ただし,一度レンズとして完成させた開発カードは固定され,新たな開発カードを加えたり,動かしたりはできなくなる
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 続く“キャラクター育成”は,読んで字の如し。プレイヤーは固有の能力を持つキャラクターの1人を担当し,それを活用しながらゲームを進めていく。この能力は,スキルツリー形式で管理されており,ゲーム進行に応じて少しずつ成長していく形だ。

 ただし,1回のゲームですべてのスキルツリーは開放できないので,状況に合ったスキルを選ぶ必要があり,使用するキャラクターが同じでも毎回違った立ち回りを楽しめる。なお,詳細なルールは後述するプレイレポート部分で説明している。

キャラクターボードに描かれたスキルツリーにトークンを置くことで,新たな能力が開放されていく。トークンの数には限りがあるので,すべてを網羅することはできない
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 ゲーム内容の解説が終わったところで,本作のゲームデザインを担当したBakaFire氏が登壇し,本作の制作秘話を語ってくれた。

アナログゲーム制作団体「BakaFire Party」の代表・BakaFire氏(写真右)
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 それによると,本作の開発はディライトワークスとBakaFire氏のコラボ第1弾にあたる「Dominate Grail War -Fate/stay night on Board Game-」の制作中に話が持ち上がったタイトルであり,BakaFire氏によると「(法則創造部分の)基礎となるアイデア自体は6〜7年以上前から温めていた」とのこと。

 当時は制作コストやプレイアビリティの問題を解決できなかったため,実現には至らなかったそうだ。しかし,ここ2年ほどで“薄いレイヤーをカードに重ねる”というメカニクスが発明されたことで問題が解決し,本腰を入れて制作に取りかかれるようになったという。

立山氏は本作を,ライトノベルとボードゲームをかけ合わせた「ラノボ」と表現。説明書には登場キャラクターのミニノベルを入れるなどして,より親しみを持って作品に接するための工夫がなされている
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キャラクターの設定はそれぞれ能力にもフィットする内容になっているほか,キャラクターのビジュアルにも設定を踏まえた要素が多数取り込まれているという。気になる人は,デザインとミニノベル,能力それぞれを照らし合わせた全体像を楽しんでみよう
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 また,当初から構想していた“法則創造”にキャラクター育成要素が加わったのは,ディライトワークスから「キャラクターを活用した仕組みを作りたい」という提案を受けたからだそうで,それによって大きく改善された要素もあったという。

 もともと,法則創造の仕組みは非情にバランス調整が難しく,フラットな状態では勝利への道筋がパターン化されやすいという欠点があったのだ。そこに,プレイヤー固有の能力を状況に合わせて成長させる仕組みを導入したことでパターン化が難しくなり,ゲームとしての深みを出すことに成功したとのこと。

 BakaFire氏はこれを,協業によってプロジェクトが大きく前進した例として挙げ,「意見を取り入れた結果,より良い位置に落ち着いていく魔法のような体験でした。自分一人で作るよりも良いものができた,という実感があります」と語っていた。

本作には「他人が作ったレンズを使う」という要素があり,それをコンセプトに据えた能力を持つキャラクターも存在する。これは使用された側にも勝利点が与えられる互恵的なシステムであり,BakaFire氏は「学会の論文引用のようなイメージ」と表現していた
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 BakaFire氏は最後に「(この天は)簡単でもシンプルでもありません。同時に無限に広がる可能性と,何度でも遊べる多様性のある作品になりました。天才的頭脳がスパークするような,クレイジーな体験ができるゲームだとお約束します」と語り,トークステージを締めくくった。

 「この天」はゲームマーケット2020 秋が実施される11月14日から一般販売が開始される予定で,価格は5300円(税込)となっている。

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 ゲームマーケットのディライトワークスブースでは,購入者に向けてオリジナルデッキケースが配布されるほか,体験会も合わせて実施される。現場で体験会に参加した人には,ビジュアルステッカー付きの成績証明書が配られるとのこと。Twitterキャンペーンも開催される予定なので,現地に行けない人も公式Twitterをチェックしておこう。

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成長を取るか,それとも手数を取るか。高い自由度の内側に潜むレンズ構築のジレンマ


 トークステージが終わったところで,いよいよ実戦だ。ゲームの準備段階では,まず6人のキャラクターから1人を選ぶことになる(ランダムでも可)。筆者はメガネっ娘好き,青髪好き,委員長キャラ好きなので,そのすべてを取り揃えた青野春陽(あおの はるひ)を選択。胸に抱えた本には大量の付箋が貼られ,その努力家ぶりがうかがえる。

キャラクターを選んだら,合わせて「学生証」が配られる。学生証の裏にはラウンド中にプレイヤーが実行できるアクション一覧が表示されているほか,内側には各キャラクターのオススメプレイ方針も書かれているので,初心者はとりあえずこれに沿って動きは良さそうだ
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 キャラクターを表示するボードは,プレイヤーが持つ各種リソースを管理する個人ボードとしての役割を持つと同時に,キャラクターの個性となる成長ツリーが用意されている。それによると春陽は,各種アクションの実行に必要なリソース“行動力”を入手する手段に優れ,自分のレンズを起動するときにVP(勝利点)ボーナスを得る能力が豊富に用意されている。

●個人ボードで管理するリソース
名称 保有上限 初期値 役割
発想力 5 1 プレイヤーキャラクターの固有能力を起動する際に利用するリソース。ラウンドごとに+1。
行動力 10 7 アクションを実行する際に必要になるリソース。ラウンドごとに+7。
ロビー なし 4 アクションを実行する際に必要になるリソース。使用したロビーは裏返って“行動済み”に変化し,ラウンド開始時に“未行動”に戻る。
ストック なし 4 ラウンド開始時,ストックから1つを選んでスキルツリーに配置するか,ロビーに未行動状態で配置する。前者を選んだ場合,新たなスキルがアクティブになる。後者を選んだ場合,利用可能なロビーが増える。
アイテム 12 光2
虹2
淀み2
レンズを介して変換可能なリソース。「淀み」は変換効率が悪く,使う先に困りやすいので保有上限を圧迫する。さらに,ゲーム終了時に所持していた「淀み」の数×3の勝利点を失う。

 まず,全体の流れを軽く押さえていこう。ゲームは全4ラウンドで構成され,スタートプレイヤーから時計回りに手番が回ってくる。ラウンドは全員がパスするまで続き,一度パスしたプレイヤーには手番が回ってこない(ハードパス)。最終的にもっとも多くのVPを稼いだプレイヤーの勝利だ。

こちらがセットアップが完了した状態のゲームの全体図。意外と小さくまとまっている
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 各ラウンドに実行できるアクションは,ざっくり分けて2種類。実行にあたって“行動力”だけを使うアクションと,行動力に加えて未行動の“ロビー”を行動済みにするアクションに分類できる(固有能力を除く)。TCGやDCGを遊んでいる人向けに言うなら,行動力は次のターンまで持ち越し可能なトークンで,ロビーは使っても次のターンに所有数まで再度利用可能になるが持ち越せないマナのようなものだ。

 前者は研究日誌(マーケット)に配置された開発カードの獲得をはじめとして,さまざまな用途に使用する。後者は,主に完成したレンズの起動と,ラボ(汎用アクション)に設定されたアクションに使用することになる。

汎用アクションが表示されているラボシート。通常,最初にパスをしたプレイヤーがスタートプレイヤーを獲得するが,ラボの“根回し”を使ったプレイヤーは強制的に次のスタートプレイヤーを獲得できる。また,ラボに表示された“課題”を達成することで最大3個まで新たなロビーを獲得できるなど,今後の計画を立てるうえで重要になる
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開発カードのマーケットにあたる研究日誌シート。左側の3×3マスは資源変換の開発カードが,右1列にはVPを獲得できる特殊な開発カードが置かれている
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 なにはともあれ,レンズが完成しなければゲームが始まらない。というわけで筆者は,行動力を豊富に入手できる春陽の特性を活かして,強力な開発カードをバリバリ獲得していく。どうやら,レンズから精製できる資源「光」と「虹」を集め,それを勝利点に変換するのが王道のようだ。

とりあえず開発カードを収集。組み合わせや回転は,レンズを完成させる時に決められる
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主に使用する3種類の資源。虹>光>淀みの順で変換効率が高い
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 レンズは開発カードと土台カードによって完成するのだが,完成させるには2つのルールに従う必要がある。
 1つは,入力と出力の価値を符合させること。開発カードの四隅には“入力側として使ったときの価値”と“出力側として使ったときの価値”が表示されており,レンズ作成時は「入力より出力の価値が高くなってはいけない」というルールを守らなければならない。

土台カードには,起動時に行動力を支払うことで価値の差を埋められるものも存在する。土台カードは,レンズ作成時に必ず使用する必要がある
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このレンズの場合,入力側の価値が4,出力側の価値が5なので,土台に描かれた追加コストで差を補わなければならない
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 もう1つは,資源が描かれている位置の制限だ。開発カードの資源欄は上段/中段/下段の3種類があり,同じ段に資源が描かれているカードを重ねられない。なので,うっかり同じ位置に資源が描かれた開発カードを獲得しないよう注意したい。

価値の一覧も3つの枠に別れている。上下を頻繁に入れ替える関係でパッと見で把握しづらい場合もあるので,数字の表記部分で判断するクセをつけるとプレイがスムーズになる
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 というわけで最初に作ったのは,虹資源1つを光資源3つに変換できるレンズだ。価値の面では少しロスが出てしまっているが,ロスにこだわって機会を逃したら意味がないのでテンポを優先する。この判断が吉と出るか凶と出るかは,後の展開次第といったところだろうか。

基本的にレンズを作成したらその手番の行動は終了だが,手元に未行動のロビーが残っていれば即座に起動できる。ロビーの行動状況も確認しつつ,アクションの順番を決めよう
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 全員がパスしたら細かな処理を経て次のラウンドに移るわけだが,そこでストックに置かれたトークン1つを,新たなアビリティの獲得(成長)に使うか,ロビーとして使用するかを選べる。
 今回のプレイは春陽のアビリティを前提として戦略を組み立てているため,トークンはすべて成長に投資。新たなレンズ用の開発カードを揃える手間も考えつつ,行動力を獲得できるアビリティを中心に伸ばしていくことにした。

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 そんなこんなでゲームを進めていくと,なかなか良い香りを漂わせる開発カードが舞い込んでくる。開発カードに表示されている主な資源は光や虹だが,そのカードには“成長”を意味するアイコンが描かれていた。

 成長を出力側に置けば変換時に新たなアビリティを1つ獲得でき,入力側に置いた場合はツリーに置いたトークンをストックに戻すことで価値を支払える。つまり,うまくすれば成長ツリーにトークンを置いたり外したりを繰り返しつつ変換を行えるわけだ。そこに春陽の能力「成長(新たなアビリティを獲得)するたびに行動力+2」が加わると……こ,これはなかなかヤバいことになるのではなかろうか。

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 というわけで,持ち前の行動力で必要になる開発カードをババッと収集してエンジンを作成。最初に作ったレンズで吐き出した大量の光資源を使って成長させ(ついでに虹資源も獲得できる),成長を取り消すことで勝利点を産み出す強烈なエンジンが出来上がった。フハハ,初プレイにして最強レンズを完成させてやったぞ!

 ……などと浮かれていられたのも束の間,同ラウンド内で早くも最強レンズ戦略にヒビが入り始める。なんとなく感付いた人もいるかもしれないが,これまでラウンド開始時に得られるトークンをすべて成長に注ぎ込んでいたため,ロビーが足りずにエンジンを回しきれなくなってしまったのだ。

 そのうえ,本作では他人が作ったレンズを借用できるため,これまでラウンド開始時のトークンをロビー増加に充ててきたプレイヤーたちまで強力なアビリティを獲得し始めたではないか。もちろん借用されたぶんVP(+2)は得られるが,なんとも釈然としない。

 仕方がないので別の戦略を考える。レンズ起動時の効果を高めるスキルや,ロビーを消費して行うレンズの再起動(もう一度レンズの効果を使う)の行動力コストを減らすスキルを取得し,最小限の動きで虹資源を勝利点に変えるレンズを作成。これを併用して勝利点を伸ばすことにした。

青いトークンは春陽のものだが,それ以外は他人が使用しているレンズだ。おまえらーっ! おまえ……春陽がなーっ! 作ったレンズをなーっ! ゆるさーん!
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 そこからなんとか方向転換に成功。結果的に獲得したスキルのいくつかがうまく作用し,最終的には93点の得点を叩き出して優勝できた。

中盤に足踏みしてしまった結果,100点には及ばなかった。くやしい!
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 以上,約2時間で今回のプレイは終了となった。春陽は自分の場をコツコツと作り上げていくタイプのキャラクターだったが,それ以外にも他人のレンズを借用すると勝利点を得られるコミュ強や,邪魔な淀みを使うことがメリットに反転するマッドサイエンティストなど,それぞれ個性的なキャラクターが揃っている。各キャラクターごとに強い動きを考えるだけでも十分に楽しめそうだ。

 直接的な妨害要素は存在せず,レンズの借用にあたっても互いに利益が与えられる仕組みになっているため,戦略がキッチリハマらないことはあっても,やりたいことがまったくできずにゲームを終えるような事態は起こらない。実に“ユーロゲーム的”な作品と言えるだろう。

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 目玉である“レイヤー”を重ね合わせてカードを強化していく仕組みは,John D. Clair氏が手掛けた「ミスティック・ベール」や「カスタムヒーローズ」などで世に知れ渡ったメカニズムだが,本作では少し違ったアプローチでこの仕組みを採用しているように感じられた。

 これらのタイトルは,主にシャッフルや交換といったカード的な動きにレイヤーを追従させるためにこのメカニクスを採用しているが,本作は手札としてカードを持つ必要はない。レイヤーを固定するためのスリーブなどがオミットされているのも,そのためだろう。

 本作におけるレイヤーの意義は,資源の変換に関わる情報を1枚のカード(UI)の大きさに集約させることにあるのではないかと思う。極論,カードを並べれば解決する話ではあるのだが,本作では1つのレイヤーに複数の機能を持たせているため,レイヤーを採用せずに現在のシステムを実現させようとしたら,個人ボードがおそろしく巨大なものになる。

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 カードとしての機能を拡張するために生まれたであろう“レイヤー”のメカニクスにおける,いわば付随効果である“UIの整理・拡張能力”に着目したシステム構築は非情に面白く感じられた。実際,かなり情報量が多い作品にも関わらず,仕組みを理解すればサクサク気持ちよくゲームを進められたので,その目論見は見事にハマったと言えるだろう。

 難点を挙げるなら「いくら動かさないとはいえ,レイヤーをズラさずに重ねて置くのは割と難しい」という点だろうか。レイヤーを大量に製品に含めるだけでも製品としては値が張ってしまうので封入は難しそうだが,何度もプレイするならプレイヤー側でカードローダーなどのレンズを固定できるアクセサリを用意したいところ。

 BakaFire氏がトークステージで語ったように「この天」は簡単なゲームではないが,ゲーム中に楽しめる試行錯誤の厚みと,それを完璧にブン回した瞬間の喜びは相当なもの。ビジュアルから受けるライトな印象からは想像もつかない独特なプレイ感のある作品なので,興味を持った人はぜひ遊んでみてほしい。

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「この天才科学者が首席になれないとでもいうんですか?」公式サイト

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