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昭和のアドベンチャーゲームへのオマージュに満ちた「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」。コマンド式ADVの火はまだ消えていない
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印刷2019/02/13 15:00

プレイレポート

昭和のアドベンチャーゲームへのオマージュに満ちた「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」。コマンド式ADVの火はまだ消えていない

 2019年1月24日,フライハイワークスからNintendo Switch用ソフト「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」の配信が開始された。タイトル画面だけを見ればガラケーのアプリのようにも思える本作は,「ファミコン時代のアドベンチャーゲームを再現」するというコンセプトを掲げ,ハッピーミールが開発を担当した完全新作だ。骨太でリアルなシナリオを持っており,刺さる人には刺さるであろうコマンド式アドベンチャーゲームである。

画像(001)昭和のアドベンチャーゲームへのオマージュに満ちた「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」。コマンド式ADVの火はまだ消えていない

「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」公式サイト



夢のような80's──

2019年に降臨する異色のレトロADVゲーム


 グラフィックスにドット絵を使ったり,あえて使用音源をレトロ風にしたりするゲームは昨今でも珍しくない。しかし,それらのほとんどはレトロな雰囲気を身に纏いながらも,実際には細かい部分が現代風に遊びやすく改良されている。使われている素材は古くとも,ちゃんと現代のプレイヤーに寄り添った「現代のゲーム」なのだ。

 その点,「偽りの黒真珠」は「ファミコン時代のアドベンチャーゲームを再現」というコンセプトが徹頭徹尾,貫かれている。なので,ハッキリ言って当時のゲームから(ほぼ)進化していない。1980年代から何も足さず,何も引かない。「あの時点でコマンド式アドベンチャーゲームは完成していたんだ」と言わんばかりの,近年ではまず見られないシンプルな作りが特徴だ。

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文字を大きくしたり,ゲーム画面そのものを拡大することはできる。これらはゲーム中,いつでも切り替えられる
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原色が目に突き刺さる色使いが懐かしい。「場所のイメージ」が色に表れている
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 シナリオも奇をてらわず,実に手堅い。プレイヤーは殺人事件を担当する刑事となって,わずかな手がかりを元に地道な聞き込みを繰り返し,被害者の足取りや関係者を追っていく。
 上野公園で発見された1つの死体を発端に,事件の舞台は伊勢志摩へと移り,“蒼月”と呼ばれる黒真珠を巡って,複雑な人物相関図がその姿を現す。衝撃的な超展開は一切なく,ひたすら地味で堅実な展開が続く。土曜の午後に放映される刑事ものの2時間ドラマを地で行くようなシナリオだ。

現代のアイテムとしてスマホが登場するが,主人公(プレイヤー)はハイテク機器が苦手なので,部下のケンに指示して使わせるという体裁だ。「主人公は助手(若手刑事)に指示を出して捜査を進める」という当時のアドベンチャーゲームのお約束を守っている
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 昔のアドベンチャーゲームの記憶を辿ると,新しい場所に行けるようになるだけで嬉しかったことを思い出す。確実に捜査が進んだことを示すようなものだったからだ。
 アドベンチャーゲームの醍醐味は,ゲーム内の世界にさまざまな思いを巡らせる瞬間にある。色数の乏しいドット絵から実際の景色を思い浮かべ,被害者の遺留品から関係者を想像する。「アイツが怪しいのでは……」と思ったら,その周辺を徹底的に調査し,あえて全然関係なさそうな場所にも行ってみる。その結果,新たな証言を得たり,移動できる場所が増えたりして,「よしよし……」と静かに頷く。この小さな達成感は,「偽りの黒真珠」でも健在だ。

荒井清和氏が描くキャラクターは少ない線で的確に描き分けられていることから,ドット絵との親和性が高い
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ゲーム中に見られる「取り扱い説明書」もファミコン風でイカス! ちなみに,この画面では昭和の雰囲気(とくに土曜の夜)がたっぷりのテーマソングが流れる。ぜひ公式サイト(リンク)でチェックしてほしい
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画像(009)昭和のアドベンチャーゲームへのオマージュに満ちた「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」。コマンド式ADVの火はまだ消えていない

あの当時の説明書らしく,メモ欄も再現されている
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 「偽りの黒真珠」にまったく不満がないわけではない。なんとセーブデータが1つしかないのだ。Nintendo Switchはアカウント別にセーブデータが保存されるし,行き詰まってクリア不可能になるということも(おそらく)ないので,1つでも問題なさそうに思えるだろう。だが,それでは温泉シーン直前のセーブデータを取っておけないんだよ!(血涙)

女の子との温泉イベント。ファミコンのアドベンチャーゲームを知る者ならニヤニヤしてしまうはずだ
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 上の写真では女の子が「あと2ふん」と言っているが,「何のこと?」と首をかしげる人もいるだろう。当時を知る人には「皆まで言うな」とたしなめられそうだが,とあるアドベンチャーゲームに「特定の場面で2分間待つとバスタオルが……」という裏技が存在したのだ。そして,「偽りの黒真珠」にもあります。

 というわけで,温泉シーン直前のセーブデータを残しておきたいのにっ……となったのだが,本作のコンセプトは「ファミコン時代のアドベンチャーゲームを再現」。あの当時はセーブどころか,パスワード方式が主流だったので,欲張り過ぎなのかもしれない。

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 メッセージの一括表示ができない点にも引っかかった。同じ話,同じ反応しか見られなくなるまで,何度も話しかけるのがアドベンチャーゲームの鉄則なので,ゲームを進めるにつれて,徐々にストレスになりやすい部分だ。
 とはいえ,メッセージの表示音の変化によって登場人物の雰囲気を表現したり,メッセージの表示音自体がアドベンチャーゲームの味だったりもする。例えば「同じ話の2回目以降は一括表示可」にしてくれると,ありがたかったなあ……。


ほとばしる“2時間ドラマ”感

コマンド式ADVが秘めた可能性


 「偽りの黒真珠」をクリアして,最初に訪れた感情は「うおおおお! 面白かった! 名作!」という興奮ではない。喪失感というか寂寥感というか,喩えるなら休日の夕方のような「楽しかった時間の終了」を告げられた気持ちになった。刑事ものの2時間ドラマのエンディング,スタッフロールが流れていくときの何とも言えない余韻。本作には,それがある。

画像(013)昭和のアドベンチャーゲームへのオマージュに満ちた「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」。コマンド式ADVの火はまだ消えていない

 コンセプトがコンセプトであるだけに,目や耳に直接訴えかけてくる要素はチープだし,若いゲーマーは「しょぼい」という印象を受けるかもしれない。しかし,ファミコン世代にとっては映像も音楽も懐かしく,心地良さすら感じた。
 「ファミコン時代のアドベンチャーゲームを再現」というコンセプトは間違いなく成功している。前述のとおり,セーブデータの保存数やメッセージの一括表示といった「ゲームプレイにおける快適性」には注文があるものの,往年のコマンド式アドベンチャーゲームと比較しても満足度はまったく遜色ない。これが1000円(税込)で買えるとは……スゴい時代になったものだ。

 「偽りの黒真珠」はファミコン時代のアドベンチャーゲームが,いかに完成されていたものだったのか。そして,キャラクターとシナリオ次第で,このジャンルにはもっと可能性があることを示している。
 コマンド式アドベンチャーゲームは時代の波に飲まれ,いつしか数が少なくなってしまったジャンルだ。しかし,「偽りの黒真珠」は過去に置いてきてしまったものを思い出させてくれる。時代の流れには進化が伴い,取捨選択の末,必ず何かが置き去りにされていく。大抵,それは「しょうがない」と感じるものだが,コマンド式アドベンチャーゲームは「なぜ希少な存在になったのだろう?」と不思議に思った。「まだ全然イケるのに」とも。

画像(019)昭和のアドベンチャーゲームへのオマージュに満ちた「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」。コマンド式ADVの火はまだ消えていない

 先ほど「時代の波」と書いたが,波は「寄せては返す」ものだ。コマンド式アドベンチャーゲームは波に飲まれて消えたのではなく,今まさに,沖へ返った波が再び寄せてきたところなのかもしれない。真珠の養殖には波が穏やかな海であることが条件だというが,「偽りの黒真珠」が健やかに育つために,寄せてきたこの波が穏やかであることを祈ろう……。
 ――と,2時間ドラマの最後に事件を振り返る刑事っぽく締めたい。


「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」公式サイト

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    伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠

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