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日本のIPを採用したタイトルの“逆輸入”も。現在は中国向けにスマホゲーム「スラムダンク」を開発中のDeNA ChinaのCEOにインタビュー
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印刷2018/08/28 12:00

インタビュー

日本のIPを採用したタイトルの“逆輸入”も。現在は中国向けにスマホゲーム「スラムダンク」を開発中のDeNA ChinaのCEOにインタビュー

DeNA China CEO 任 宜氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / 日本のIPを採用したタイトルの“逆輸入”も。現在は中国向けにスマホゲーム「スラムダンク」を開発中のDeNA ChinaのCEOにインタビュー
 中国・上海で2018年8月3日から6日まで開催されたゲームショウ「ChinaJoy 2018」で,DeNA Chinaが大々的にブース出展を行った。今回は中国向けに開発を進めているスマートフォン向けゲーム「スラムダンク」など,日本のIPを使った複数のタイトルを展開しており,ステージイベントも大きな盛り上がりを見せていた。

 そのゲームショウの会期中,DeNA ChinaのCEOを務める任 宜氏に直接話を聞く機会が得られた。4Gamerとしては前回から2年ぶりとなる今回のインタビューでは,ChinaJoyの出展経緯や中国におけるスマホゲーム市場の動向,そして同社の戦略を中心に聞いた次第だ。


ChinaJoy 2018にスマホゲーム「スラムダンク」などを大々的に出展


4Gamer:
 今回はお忙しいなかご対応いただき,ありがとうございます。
 DeNA Chinaにとって,ChinaJoyのBtoC(※一般来場客向けエリア)は2年ぶりになります。今回はどういった経緯で出展をされたのでしょうか。

DeNA China CEO 任 宜氏(以下,任氏):
 近年のBtoCでは,大企業が大きなブース面積を使って大々的にアピールする傾向が強く,それが中国のゲーム市場で一種のステータスにもなっています。
 DeNA Chinaは設立から約12年が経過しており,日本のIPを使ったゲーム作りが得意なメーカーという評価をいただいています。これをより強固なものにするべく,思い切って出展しました。

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ChinaJoy 2018のDeNA Chinaブース。ちなみに同社が出展しているホールの面積は東京ゲームショウ(会場は幕張メッセ)の1ホールより広いが,そこにはたったの6個(社)しかブースが設けられていない。1ブースあたりの大きさが伝わるだろうか
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4Gamer:
 実際にDeNA Chinaのブースを拝見しましたが,とにかく大きいですね。東京ゲームショウなどとは違った迫力を感じます。

任氏:
 そうですよね!
 東京ゲームショウはホールの真ん中に大きなメーカーさんがブースを構えて,その周囲に中小のブースが点在した構成になっています。ああいったブース構成も賑やかで良いのですが,ChinaJoyでは訪れた人が必ずこのブースを目にするので,アピールを行う側としてはすごく効果的なんです。

4Gamer:
 ブース内を見る限り,今回はスマホゲームの「スラムダンク」がイチオシになるのでしょうか。

任氏:
 我々としてはすべてのタイトルがイチオシなのですが(笑),お客様の反応などを見ると,やはりスラムダンクの熱量がとくに高いですね。
 このタイトルに関しては,アニメ・漫画の博覧会である「CCG EXPO」(※中国国際動漫游戯博覧会)でお披露目していますが,ゲームの博覧会であるChinaJoyでもアピールしたかったんです。この会場内の盛り上がりを見て,やはり出展して良かったと思いました。

4Gamer:
 スラムダンクって中国でもこんなに人気があったんだ,と驚かされました。一方,プレイアブル出展ではなかったのが,ちょっと意外でしたが。

任氏:
 今回の出展ではスラムダンクの世界観などをあらためてアピールし,PVを放映するとともに,このIPのゲーム化そのものを知ってもらうことに注力しています。もちろん今後の配信に向けて,イベントへのプレイアブル出展なども検討していきますよ。

画像集 No.003のサムネイル画像 / 日本のIPを採用したタイトルの“逆輸入”も。現在は中国向けにスマホゲーム「スラムダンク」を開発中のDeNA ChinaのCEOにインタビュー


日本のIPを使って独自にゲームを開発できるのがDeNA Chinaの強み


4Gamer:
 日本のゲームメディアとしては,ブース内で出展されている各タイトルが,いずれも日本のIPを採用している点にもあらためて驚かされました。

任氏:
 弊社はDeNAグループなので,日本のIPを使ったゲームの展開が行いやすいという強みがあります。今回の出展ラインナップにも,その強みが存分に反映されていますね(笑)。

4Gamer:
 今回のスラムダンクもそうですが,DeNA Chinaが他社と共同でゲームを開発されていますよね。

任氏:
 そこに関しては紆余曲折がありまして,現在はとりあえずその手法で落ち着いています。
 DeNA Chinaを設立してからこれまで,ゲームのローカライズやグローバル向けのゲームプラットフォームなど,さまざまな事業を手がけてきました。しかし,当時は中国と日本のゲーマーの好みには大きなギャップがあり,単に日本のゲームを持ってくるだけでは通用しなかったんです。

4Gamer:
 一般的なカルチャライズ(ゲーム仕様の現地化)では対応しきれないほどのギャップでしたか。

任氏:
 ええ。たとえばプレイヤーの行動パターンやコンテンツの消費速度が全然違いますし,ネットワークの通信速度など,あらゆる面でゲーム設計の土台から手を加える必要がありました。これら全部に対してカルチャライズを行うなら,DeNA Chinaが中国向けにイチからゲーム開発を行うのが良いと判断したわけです。
 なので正確に言うと,日本のIPを使って“中国向けのゲームを開発できる”のが,現在のDeNA Chinaにとっての強みといえますね。

4Gamer:
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 とはいえ,近年は中国産のアプリが,日本やグローバルで盛り上がるケースも増えています。日中間のギャップは以前と比べて少なくなっているようにも思えますが,作り手としてはどのように受け止めていますか?

任氏:
 おっしゃるとおりです。
 ここ数年で,中国産ゲームはグローバル水準のクオリティに急速に近付いています。これを受けて,さきほどの日中間のギャップをカルチャライズで埋められないか,現在再検証を行っているところです。

 具体的には,日本でも配信中の「聖闘士星矢 ギャラクシースピリッツ」は,DeNA Chinaが他社と共同で開発作業を行っています。つまり,元々は中国向けに開発したアプリを,カルチャライズを施して日本向けに展開しているのですが,行動データなどを見ても,実際に遊んでいる方の満足度はとても高いんですよ。


中国で開発したタイトルを日本へ“逆輸入”


4Gamer:
 「聖闘士星矢 ギャラクシースピリッツ」のように中国から日本へタイトルを持ってくる場合,具体的にどういった部分でカルチャライズを行うのでしょうか。

任氏:
 中国人のプレイヤーは日本人と比較して,コンテンツの消費速度がとても速いです。また,ものすごく課金を行う人と,まったく行わない人の差がハッキリしています。
 これらの特徴を踏まえ,中国向けのアプリでは,コンテンツに対する消費時間を長めに設定したり,アプリ内課金の上限を設けなかったりすることが多いです。日本向けに展開する場合,そういった部分を和らげる必要がありますね。

4Gamer:
 なるほど。

任氏:
 あとは,中国では複雑なゲームシステムでも受け入れられやすいですが,日本ではなるべくシンプルにせねばなりません。これは社内でもよく言われるのですが,日本から中国へ持ってくるときは“加法”(足し算),中国から日本へ持っていくときは“減法”(引き算),というのが弊社の基本スタンスですね。

4Gamer:
 日中間のギャップがカルチャライズで埋められるのなら,今後もDeNA Chinaが開発したタイトルが日本に“逆輸入”という展開にも期待できそうです。

任氏:
 関係者の皆さまにはご相談が必要ですが,当社としては,ぜひそうしたいですよね。
 イチからゲーム開発を行うと,どうしてもコストがかかってしまいますし。グローバルで通用するゲームシステムを作り上げて,カルチャライズで各国に対応するのが理想だと思います。


急速な成長に伴い中国のグローバル化が促進


4Gamer:
 今回はせっかくの機会なので,中国におけるスマホゲーム市場の動向や展望なども聞かせてください。まず,前回のインタビューから2年が経っていますが,その期間のマーケットを振り返り,とくに印象的な出来事などはありますか。

任氏:
 ここ2〜3年の中国におけるスマホゲーム市場では,大きく分けて3つのトピックが挙げられます。
 まずは,我々が思っていた以上に,中国マーケットの成長が速かったことです。DeNAグループは,「中国で商売なんてできるの?」と言われていた2009〜2010年頃から投資を行ってきましたが,その我々から見ても中国マーケットの成長速度には目を見張ります。

4Gamer:
 前回のインタビューでも語られていましたが,そこまででしたか。
 では,2つ目はなんでしょう。

任氏:
 業界の寡占化が思った以上に進んだことです。これはまあ,Tencentさんの動きを見れば,細かく言うまでもないですよね。
 そして3つ目は,マーケットの急速な成長に合わせて,プレイヤーも大きく変化したことです。中国のコアゲーマーの目はとても肥えており,マーケットもグローバルに近づきつつあります。

4Gamer:
 さきほどのカルチャライズにも通じますが,日中間のギャップが埋められてきているという話はとても興味深いです。

任氏:
こちらは「誰ガ為のアルケミスト」の出展ブース
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 「荒野行動」や「アズールレーン」といったお手本があるタイトルだけでなく,NetEaseさんの「陰陽師」のような新規IPも,日本で盛り上がっていますからね。

 それと,さきほど中国から日本へのカルチャライズ事例について紹介しましたが,逆の展開も同時に起こりうるでしょう。つまり,日本向けに作られた高品質なゲームが,中国でも受け入れられるようになりつつあります。
 たとえばDeNA Chinaでは,「誰ガ為のアルケミスト」を中国向けに展開しています。シミュレーションRPGは中国ではあまりメジャーではないのですが,少なくともこのジャンルにおける代表作といえる評価をいただいているんですよ。


クロスデバイス展開とアプリの大型化がトレンドに


4Gamer:
 これからのスマホ向けアプリにおけるトレンドに関しては,どのような見通しでしょうか。

任氏:
画像集 No.006のサムネイル画像 / 日本のIPを採用したタイトルの“逆輸入”も。現在は中国向けにスマホゲーム「スラムダンク」を開発中のDeNA ChinaのCEOにインタビュー
 個人的に,2つの大きな波が来ると考えています。
 ひとつは“クロスデバイス”です。最近の例だと「フォートナイト」が挙げられますが,UnityやUnreal Engineを採用したハイエンドなPC向けタイトルを,大きくスペックダウンせずにスマホに持ってこられるようになってきています。
 そのトリガーとなるのは,スマホ端末のスペック上昇です。遅くとも2〜3年以内には,クロスデバイス展開が当たり前になるでしょう。

4Gamer:
 もうひとつは?

任氏:
 クロスデバイスやグローバル展開が当たり前になることで,アプリの規模がどんどん大型化することです。
 ハリウッド映画を例に挙げると分かりやすいと思います。あれはアメリカだけを見ているのではなく,中国や日本など世界中の市場で回収することを前提に,テーマや配役などを決めていますよね。そして,そういったグローバルで通じるクオリティの作品を手がけると,当然大きなコストがかかります。

4Gamer:
 そういった変化に対し,DeNA Chinaは今後,どのように取り組んでいきますか。

任氏:
 まずは従来どおり,弊社の強みである日本のIPを使ったゲーム開発に取り組んでいきます。先ほども申し上げたとおり,中国だけでなく日本を含むグローバルでも展開したいですね。
 先ほど触れたハリウッド映画的な領域のアプリにもチャレンジしてみたいと私は考えています。DeNAグループはこれまでも各拠点が協力し合ってきましたが,こうしたことをやり遂げるにはDeNA China単独ではなく,DeNAグループ全体でさらに協力する必要も出てくるでしょう。すでにDeNAグループ全体で,各国の関連会社が協力する方針を打ち出しており,今後1〜2年以内に何らかの成果につなげていければと考えています。

4Gamer:
 期待しています。今回はお忙しいなかご対応いただき,ありがとうございました。

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スマホ版「スラムダンク」公式サイト(中国語版)

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