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NVIDIA,新型GPU「GeForce RTX SUPER」シリーズを発表。無印比で15%前後の性能向上を謳う
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ラインナップと北米市場におけるメーカー想定売価(税別),および発売日は以下のとおり。
- GeForce RTX 2080 SUPER:699ドル,7月23日発売
- GeForce RTX 2070 SUPER:499ドル,7月9日発売
- GeForce RTX 2060 SUPER:399ドル,7月9日発売
発表に先立つ3週間ほど前,NVIDIAはE3 2019に合わせてメディア向けの説明会を行なった。説明会の情報と,その後に公表となった新GPU,および搭載グラフィックスカードの情報をまとめてみよう。
なお本稿では,説明で明らかになったSUPERの概要を西川善司氏,カードの説明を編集部小西が担当し,後半のベンチマーク部分は宮崎真一氏に協力していただいた。
無印と「Ti」の間に位置し,性能面では無印比で15%ほど
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SUPERグレードは,いわゆる“無印”と,その上位モデルを示す「Ti」の中間に来る新しい接尾辞となるわけだ。不等号で表せばこんな感じか。
20x0 Ti>20x0 SUPER>20x0無印
もちろん,現時点ではGeForce RTX 2070シリーズおよびGeForce RTX 2060シリーズにはTi付きモデルが存在しないので,現状ではシリーズ最上位モデルがSUPERとなる。
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さて,SUPERと無印の違いであるが,Fisher氏によると,「SUPERは無印よりも15%ほど高性能なモデル」であるという。
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公開となったスペックをまとめてみると,GeForce RTX SUPERシリーズの素性が見えてくるだろう。
まず,表1にGeForce RTX 2080 SUPERと既存のGeForce RTX 2080シリーズの仕様をまとめてみた。
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GeForce RTX 2080 SUPERは,GeForce RTX 2080と同じトランジスタ数でありながら,CPUで言うところのCPUコア的な存在である「Graphics Processor Cluster」(以下,
GeForce RTX 2080のGPUコアである「TU104」は,GPCあたりのSM数が8基となるので,フルスペック仕様であればSM数は48基になる計算だ。つまり,GeForce RTX 2080 SUPERは,GeForce RTX 2080で削られていた2基分のSMを有効にした,フルスペック仕様のTU104コアを採用するGPUであると見ていいだろう。
続いてGeForce RTX 2070 SUPERとGeForce RTX 2060 SUPERのスペックをまとめたものが表2だ。
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GeForce RTX 2070 SUPERのGPC数が,5基または6基と幅があるのは興味深いところだ。SM数は40基で,CUDA
さらに,GeForce RTX 2070にはないNVLinkを,GeForce RTX 2070 SUPERがサポートしている点も考慮すると,GeForce RTX 2070 SUPERは,SM数を削減したGeForce RTX 2080であると考えて間違いあるまい。GPC数に幅があるのは,無効化するGPCが1基であっても2基であっても,SM数は同じにできるからであろう。
GeForce RTX 2060 SUPERも同様で,トランジスタ数はGeForce
GeForce RTX 2060 SUPERの方は,GeForce RTX 2070のSM数削減版ということになるだろう。
さて,各仕様をもとに,グラフィックスにおける32bit浮動小数点演算(以下,
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おおむね,Fisher氏の言う「15%ほど高性能」に見合う値と言えそうだ。とくにGeForce 2070 SUPERにおける理論性能の向上具合が目立つ。これは,
最終的なお買い得具合は,国内における実勢価格次第ではあるが,GeForce 2070 SUPERは,無印モデルより一段上の性能を得られる製品として注目を集めることになるだろう。
Founders Editionのカードをチェック
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まず外観だが,基本的には,GeForce RTX 2070 SUPER Founders EditionはGeForce RTX 2080の,GeForce RTX 2060 SUPER Founders EditionはGeForce RTX 2070のFounders Editionを踏襲したもので,カード中央に「SUPER」のロゴマークが付いた鏡のようなプレートがはめ込まれているのが目立つ違いだ。
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外部出力インタフェースは5系統で,DisplayPort 1.4a×3,HDMI 2.0b Type-A×1,USB 3.1 Gen.2 Type-C×1(DisplayPort Alternate Mode対応,以下同)となっている。
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一方のGeForce RTX 2060 SUPER Founders Editionは,カード長がやや短い実測約232mmとなっている。基板全体を覆う放熱ユニット上に2基の90mm径空冷ファンを取り付け,裏面側に金属プレートを備える構造は,GeForce RTX 2070 SUPER Founders Editionと同様だ。ただ,NVLinkインタフェースは備えていないので,SLI接続は利用できない。
外部出力インタフェースは5系統で,DisplayPort 1.4a×2,HDMI 2.0b Type-A×1,USB 3.1 Gen.2 Type-C×1,Dual-Link DVI-D×1となっている。
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なお,両製品とも今回は基板の分解写真が公開されていない。電源部のフェーズ構成なども明らかになっていないのだが,基本的にはそれぞれのベースとなっているGeForce RTX 2080,GeForce RTX 2070から大きな変化はなさそうである。
GeForce RTX 2070 SUPERと2060 SUPERの性能を簡易チェック
さて,お待ちかねのベンチマークで性能検証……といきたいところだが,今回は申し訳ないことに,評価の時間が十分にとれず,比較対象を用意しての本格的なテストまで踏み込めなかった。そこで,GeForce RTX 2070 SUPERおよびGeForce RTX 2060 SUPERの両Founders Editionを用いて,簡易的な性能計測だけを行っている。
実行したテストは,「3DMark」(Version 2.9.6631)と,「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチ)の2タイトルだ。3DMarkは4Gamerベンチマークレギュレーション22.1(以下,レギュレーション22.1)に準拠した設定のまま使用。FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチは,レギュレーション22.1における「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の設定を流用して計測している。解像度は3840×2160ドットと2560×1440ドット,および1920×1080ドットの3パターンとした。
テスト環境は表6にまとめたとおりだ。
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それでは結果を見ていこう。グラフ1は,3DMarkのDirectX 11世代テストである「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。テスト環境や3DMarkのバージョンが異なるので,直接比較はできないが,GeForce RTX 2070 SUPERのスコアは,過去に計測したGeForce RTX 2070以上,GeForce RTX 2080未満の範囲に,GeForce RTX 2060 SUPERのスコアは,GeForce RTX 2060以上,GeForce RTX 2070未満の範囲に収まっている。
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グラフ2は,Fire Strikeの結果から「Graphics test」のスコアを抜き出したものだ。こちらも2種類のSUPERが,無印モデルの上,上位モデルの下に来る傾向に違いはない。
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グラフ3は,ソフトウェアベースの物理演算テスト結果を「Physics score」として抜き出したものだが,ほぼ横並びで誤差も1%未満と,当然の結果となった。
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GPUとCPU両方の性能がスコアに影響する「Combined test」の結果(グラフ4)も,総合スコアやGraphics scoreと変わらない傾向が出ている。計ったように無印同士の間にSUPERシリーズのスコアが来ているのは,NVIDIAの狙いどおりだろう。
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DirectX 12世代のテストとなる3DMarkの「Time Spy」の総合スコアをまとめたものが,グラフ5となる。基本的な傾向はFire Strikeと変わらない。SM数の差が2基ということもあってか,テストによっては上位モデルに近いの性能を発揮できるようだ。
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グラフ6は,Time SpyのGPUテスト結果を抜き出したもので,こちらも傾向に違いはない。
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グラフ7は,Time SpyのCPUテスト結果をまとめたもので,両製品とも横並びという妥当な結果となっている。
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FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチの総合スコアをまとめたのがグラフ8となる。こちらは4Gamerでは初となる計測なので,直接結果を比較できる過去のスコアはない。ただ,傾向としては,従来のFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチよりも負荷が高くなり,結果として低解像度になってもスコアがさほど伸びないようだ。
さて,GeForce RTX 2070 SUPERとGeForce RTX 2060 SUPERのスコア差は,解像度が低くなるにつれて縮まるという,過去のテストでも見られた傾向が今回も現れている。GeForce RTX 2060 SUPERが,4K解像度でも「非常に快適」の目安である7000を超えているのは驚きだ。とはいえ,伝統的にFFXIVベンチの示す「非常に快適」と,プレイヤー感覚での快適さが一致するとは限らない。4Gamerのベンチマークレギュレーションでは,合格ラインを「非常に快適」より高めに設定していることもあり,FFXIV漆黒のヴィランズでの合格ラインはまだ決まっていないのだが,FFXIV紅蓮のリベレーターのときには,「非常に快適」のさらに上の8500を基準としていた。その基準に照らすと,今回のGeForce RTX 2070 SUPERでも超えられていないことになる。
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各解像度における平均および最小フレームレートをまとめたのがグラフ9〜11となるが,4K解像度では,両製品ともハイエンド環境の目安である60fpsは超えられなかった。一方,2560×1440ドット以下では,最小フレームレートも30fps以上となっているので,これらの解像度であれば快適にプレイできそうに思える。
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少なくとも,GeForce RTX SUPERシリーズが,無印よりも高く,上位グレードのGPUよりも低い性能を有することは,テストを通して確認できた。
いずれにせよ,GeForce RTX 2070 SUPERとGeForce RTX 2060 SUPERは,NVIDIAがアピールしている程度の性能は有しているようなので,あとは国内での販売価格次第というところだろうか。とくにGeForce RTX 2070搭載カードの実勢価格が5万円台後半からであることを考慮すると,GeForce RTX 2070 SUPERが,6万円台以下で出てくるならば,なかなか魅力的かもしれない。
NVIDIAのGeForce RTX 20シリーズ製品情報ページ
- 関連タイトル:
GeForce RTX 20,GeForce GTX 16
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