2019年4月23日22:00,NVIDIAは,ノートPC向けGeForce GTX 16シリーズの新製品となる「
GeForce GTX 1660 Ti」(以下,GTX 1660 Ti)と「
GeForce GTX 1650」(以下,GTX 1650)を発表した。いずれも,Turing世代のGPUコアを採用しつつ,リアルタイムレイトレーシングアクセラレータの「RT Core」や,深層学習アクセラレータの「Tensor Core」を持たないタイプの単体GPUだ。標準的なモデルに加えて,薄型ノートPCへの内蔵を可能とする技術「Max-Q Design」に対応するGPUもラインナップするという。搭載製品は,各ノートPCメーカーから順次発表となる予定である。
なお,GeForce GTX 1650は,デスクトップPC向けの単体GPUも同時に発表となっているが,本稿ではノートPC向けについての情報だけまとめていることをお断りしておく。
NVIDIAのスライドにあった新GPU搭載ノートPCを並べたイメージ。AcerやASUSTeK Computer,DellやGIGA-BYTE TECHNOLOGYのほか,HP,Lenovo,MSI,Razerなどから搭載製品が登場するようだ
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通例であれば,新GPUのスペックはNVIDIAから事前に情報開示が行われるのであるが,今回のノートPC向けGTX 1660 TiおよびGTX 1650については,本稿執筆時点でも,詳細なスペック情報の開示が行われていない。そのため,スペックに関する情報は後日追記するとして,まずはNVIDIAがアピールした新GPUの特徴について説明しよう。
メジャーなeスポーツタイトルで100fpsを超えるフレームレートを実現
NVIDIAは資料によって,GeForce RTX 20シリーズのことを「Turing RTX」,GTX 16シリーズのことを「Turing GTX」と呼び分けていることがあるので,本稿でも,その呼称でGPUの世代を呼ぶことにする。
ノートPC向けGTX 1660 TiおよびGTX 1650は,Turingアーキテクチャを使用しつつ,RT CoreやTensor Coreを持たないTuring GTXベースのGPUであるが,それ以外のTuring世代における特徴は継承している
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冒頭でも触れたとおり,Turing GTXベースのノートPC向けGTX 1660 TiおよびGTX 1650は,RT CoreとTensor Coreを持たない一方で,それ以外のTuring世代における特徴,つまり整数演算(INT32)と浮動小数点演算(FP32)の並列実行や,キャッシュメモリアーキテクチャの変更,NVIDIAが「Adaptive Shading」と呼ぶ新しいレンダリングパイプラインの概念への対応といった要素は,そのまま継承しているという(
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Pascal世代GPUになかった特徴を備えるTuring GTXの高性能が,今回の新GPUにおけるトピックというわけだ。
NVIDIAでは,GTX 1660 Tiの性能を,2015年に登場した「
GeForce GTX 960M」(以下,GTX 960M)と比較しているのだが,たとえば「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)や「フォートナイト」,「Overwatch」や「Apex Legends」といったメジャーなeスポーツタイトルの場合,100fpsを超えるフレームレートで表示可能で,性能面では4倍に達すると,NVIDIAは主張している。
メジャーなFPSまたはTPSタイプのeスポーツタイトルで,GTX 1660 Tiのフレームレートは100fpsを超えるというスライド
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eスポーツ以外のゲームタイトルにおいても,表示性能は3倍を優に超えているとのことだ。
NVIDIAが示したGTX 1660 Ti搭載ノートPCと,GTX 960M搭載ノートPCの,ゲームタイトルにおける性能比較グラフ。解像度1920×1080ドットで高画質設定の場合,GTX 1660 Ti搭載ノートPCは,GTX 960M搭載ノートPCの3〜4倍の性能を発揮するとのこと
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また,単純にGPU性能だけでなく,GTX 1660 Ti搭載ノートPCは,GTX 960M世代と比べて,高リフレッシュレート表示可能な液晶パネルやSSDの採用,薄型軽量といった特徴を備えているのも,買い換えにおける魅力であるとNVIDIAはアピールしていた。
ASUSのノートPC同士による比較。GTX 1660 Ti搭載ノートPCは,GTX 960M搭載ノートPCと比べて,高性能で表示能力にも優れ,そのうえ薄くて軽いのが利点であるという
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一方,Pascal世代前のGPUであるノートPC向け「
GeForce GTX 1060」(以下,GTX 1060)を搭載するPCと比較した場合,GTX 1660 Ti搭載ノートPCは,1.2〜1.5倍程度の性能を有するとのことだ。
ノートPC向けGTX 1660 TiとGTX 1060のゲームにおける性能を比較したグラフ。GTX 1060を基準とした場合のグラフで,2016年以降に登場したゲームタイトルにおける描画性能は,新しい世代のゲームになるほどGTX 1660 Tiに有利となっている
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もう1つ,Turing世代GPUにおける重要な要素としてNVIDIAが挙げているのが,GPUに統合されたビデオエンコーダ「NVENC」の強化である。詳しくは
2019年2月の記事を参照してほしいが,Turing世代GPUの新型NVENCは,CPUによるエンコード処理を行う場合よりも,高い映像品質を実現しながらフレームレートへの悪影響を抑えられるという。その利点を,GTX 1660 Ti搭載ノートPCでも得られるというわけだ。
CPUによるエンコードと,GTX 1660 Ti内蔵のNVENCによるエンコードの画質やフレームレート,CPU使用率への影響を比較したスライド
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GTX 1660 Tiと同様に,ノートPC向けGTX 1650は,やはり2015年登場の「
GeForce GTX 950M」と比べて2.5倍程度,ノートPC向け「GeForce GTX 1050」と比べても1.7倍程度の性能を有しており,先述したeスポーツタイトルで60fpsの表示が可能なのが特徴であるそうだ。
GTX 1650は,メジャーなeスポーツタイトルにおいて60fpsの表示が可能で,GeForce GTX 950M比で2.5倍,GeForce GTX 1050比で1.7倍の描画性能を誇るという
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画質設定次第の面もあるだろうが,フォートナイトやApex Legendsを60fpsでプレイできるとなれば,比較的安価なエントリー市場向けノートPCの価値を高めることになるだろう。