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「Ryzen Threadripper 2950X」レビュー。第2世代の16コア32スレッド対応CPUは,買わない理由が見当たらない!?
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印刷2018/08/13 22:00

レビュー

第2世代の16コア32スレッド対応CPUは,買わない理由が見当たらない!?

Ryzen Threadripper 2950X

Text by 米田 聡


 別途お伝えしているとおり,「2nd Gen. Ryzen Threadripper」(以下,第2世代Threadripper)は,「クリエイターと先端技術開発者向け」という位置づけのWXシリーズ,「PCマニアとゲーマー向け」という位置づけのXシリーズに分かれている。
 AMDがせっかくこうして分けてくれている以上,多くのゲーマーにとってより重要な第2世代ThreadripperはXシリーズということになるわけだが,4Gamerでは,その最上位モデルとして北米時間2018年8月31日に発売予定となっている16コア32スレッド対応モデル「Ryzen Threadripper 2950X」(以下,2950X)を入手することができた。

2950X
Ryzen

 2950Xは,ちょうど1年前の2017年8月にデビューした第1世代Ryzen Threadripper(以下,第1世代Threadripper)の最上位モデル「Ryzen Threadripper 1950X」(以下,1950X)と同じ16コア32スレッド対応モデルだが,Ryzen ThreadripperをゲームPCのCPUとして使いたい人にとっての魅力はどれだけ向上したのか。ベンチマークテストを使ってチェックしていきたい。


基本的にはRyzen Desktop 2000シリーズと同じ特徴を持つ第2世代Ryzen Threadripper Xシリーズ


 WXシリーズを含む第2世代Ryzen Threadripperの特徴は別途西川善司氏がまとめているので,詳しく知りたい人はそちらをチェックしてもらうとして,本稿では「ベンチマークテストを行ううえで押さえておきたい事柄」だけをまずは簡潔にまとめておきたい。

第1世代Threadripperの模式図。シリコンダイに統合された2基のCCXだけでなく,シリコンダイ間もInfinity Fabric(※図中の「∞」マーク)で接続されている
Ryzen
 AMDのZenマイクロアーキテクチャでは,4基のCPUコアを集積した「CPU Complex」(もしくは「Compute Complex」で,公式略称「CCX」。以下略称表記)を1つのシリコンダイに2基集積。デスクトップPC向けのRyzenシリーズでは2基のCCXを集積したシリコンダイを使うことで,8/6/4物理CPUコアのラインナップを実現している。
 そしてそのシリコンダイを2基,MCM(Muti-Chip Module)技術で1つパッケージに搭載し,両シリコンダイ間を高速かつ低遅延のインターコネクト技術「Infinity Fabric」(インフィニティファブリック)で接続することにより最大16コア化したCPUこそが,Ryzenシリーズ初のHEDT(High End DeskTop)市場向けCPUとなる第1世代のThreadripperだった。

 このように,デスクトップPC向けRyzenが採用するのと同じシリコンダイを,MCM技術で複数組み合わせることで,よりコア数の多いCPUが必要な市場に対応するというのが,Zenマイクロアーキテクチャの大きな特徴と言える。

Ryzen
 そんなZenマイクロアーキテクチャのマイナーチェンジとなるのが,「Zen+」マイクロアーキテクチャである。初めてZen+マイクロアーキテクチャを採用したのはデスクトップPC向けの最大8コア16スレッド対応CPUであるRyzen Desktop 2000シリーズだが,同じ2000番台の型番を採用する第2世代Threadripperも,このZen+マイクロアーキテクチャベースだ。
 そのため,第2世代ThreadripperでAMDが特徴として挙げている部分のうち,WXシリーズ独自のもの以外は,実のところRyzen Desktop 2000シリーズとほぼ同じである。

 復習も兼ねて紹介しておくと,要点は次のとおり。

  1. 12nm LPプロセス技術
    〜第1世代Ryzenや第1世代ThreadripperはGLOBALFOUNDRIESの14nm LPP(Low Power Plus)プロセス技術を用いて製造されていたのに対し,Zen+マイクロアーキテクチャベースとなる第2世代Ryzen ThreadripperはGLOBALFOUNDRIESの12nm LP(Leading Performance)プロセス技術を採用。同じ消費電力であれば第1世代Threadripperより高クロック,同じクロックなら第1世代Threadripperより低い消費電力を実現できるとAMDはアピールしている
  2. Precision Boost 2
    〜第1世代Ryzenおよび第1世代Threadripperが採用する自動クロックアップ技術「Precision Boost」は負荷がかかっているコア数で動作クロックが決まっていたが,第2世代Ryzenおよび第2世代ThreadripperではCPUの電圧や電流,コア温度を検出して適切な動作クロックを選択する方式に一新となった。結果として,負荷がかかっているコア数によらず,状況に応じてクロックアップするようになっている
  3. XFR2(Extended Frequency Range 2)
    〜「CPUの温度条件が許せばPrecision Boostの最大クロックを超えてより高いクロックで動作させる「XFR」が第2世代となり,Precision Boost 2と同様にコア数の制限がなくなった。CPUの冷却システムが持つ性能次第で,性能は最大7%向上するという
  4. キャッシュおよびメインメモリのアクセス遅延低減
    〜第1世代Threadripperに対してキャッシュやメインメモリへのアクセス遅延が小さくなっている。L1では最大13%,L2では最大34%,L3では最大16%,メインメモリでは最大11%の改善を実現し,結果的にクロックあたりの命令実行数(IPC,Instruction per Clock)は3%向上したとのことだ

 後方互換性が完全に保証されているのもRyzen Desktop 2000シリーズと同じだ。第2世代Threadripperは,第1世代Threadripperと同じTR4プラットフォームに対応しており,BIOSさえ対応のものへアップデートすれば,Socket TR4に対応した既存の「X399」チップセット搭載マザーボードで利用できる。

TR4パッケージを採用するので,当然だが第1世代のThreadripperとヒートスプレッダの厚さや大きさといったところに違いは見られない。なおOPN(Ordering Part Number)は「YD295XA8UGAAF」となっていた
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 言うまでもないことだが,CPUの取り付け方法も従来から変わっていない。

製品ボックス付属のトルクスドライバーでソケットカバー部を開け,溝からダミーを取り出したうえで,その溝にAMDが「Carrier Frame」(キャリアフレーム)と呼ぶフレームごと差し込んでソケットの上に倒し,トルクスドライバーで締め付ければ取り付け完了だ。なお,詳細は第1世代Threadripperの製品ボックス開封レポートに詳しい
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 少し面白いのは,第2世代Threadripperの発表に合わせ,「StoreMI Technology」(以下,StoreMI)がX399マザーボードでも利用できるようになった点だろう。

 StoreMIは,AMD 400シリーズチップセットで初めて有効になった,SSDとDRAMをキャッシュとして利用することによってHDDの高速化を図る技術である(関連記事)。
 通常版のデスクトップPC向けRyzenの環境だと,StoreMIをサポートするのはAMD 400シリーズチップセット搭載マザーボードだけで,AMD 300シリーズチップセット搭載マザーボードは非対応となるのだが,HEDT(High End DeskTop)プラットフォーム向けのX399環境では例外的に(?)StoreMIの利用が可能になった。X399マザーボードと第1世代Threadripperを組み合わせたシステムでもStoreMIは利用可能だ。


Precision Boost Overdriveもサポートする第2世代Threadripper


Ryzen
 というわけで,入手した2950Xを細かく見ていくことにしよう。
 冒頭でも軽く触れたとおり,2950Xは16コア32スレッド対応のCPUで,動作クロックは定格3.5GHz,最大4.4GHz。TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は180Wとなっている。

 表1は2950Xと1950X,そして競合の10コア20スレッド対応CPUで,価格帯的に2950Xと競合するとAMDが位置づける「Core i9-7900X」(以下,7900X)の主なスペックをまとめたものだが,新要素を除くと,旧製品との違いは動作クロックが定格で100MHz,最大では400MHz上がっていることくらいだ。


 一方でAMD純正のオーバークロックユーティリティソフトである「Ryzen Master」は,バージョン1.4世代で第2世代Threadripper向けの拡張が入った。デザインが変わっただけでなく,Ryzen Threadripper用としては初めて「Precision Boost Overdrive」(以下,PBO)をサポートするに至ったのである。

全世界のレビュワー向けに配布されたRyzen Master(Version 1.4.0.710)を実行したところ。オーバークロック関連の機能としてPBOを利用できるようになった
Ryzen

 PBOはPrecision Boost 2やXFR2の動作クロックの上限を制約している3つのパラメータ,

  • プロセッサ全体への給電量(Package Power Tracking,以下 PPT)
  • マザーボードから持続的に供給可能な電流量(Thermal Design Current,以下 TDC)
  • マザーボードから供給可能なピーク電流量(Electrical Design Current,以下 EDC)

の上限を引き上げ,最大クロックで動作する時間を引き延ばそうという機能である。TR4プラットフォームでは今のところ,Ryzen Masterと第2世代Threadripperの組み合わせでのみPBOが利用可能だ。

 TDCとPPT,EDCのパラメータ上限値は手動で設定できるが,注意が必要なのは「上限値を引き上げた状態での動作はメーカー保証外になる」ところ。確率は高くはないと思うが,引き上げすぎた結果としてCPUやマザーボードが壊れた場合はユーザーの自己責任ということになる。なので,PBOを使ってオーバークロックを行おうという場合は,TDCとPPT,EDCの慎重なトライアンドエラーが必要だろう。

 とはいえ,3パラメータをセットすれば,後の動作はPrecision Boost 2やXFR2のアルゴリズムに任せられるので,UEFI(≒BIOS)などを使ったフルマニュアルのオーバークロックと比べればかなり楽にチューニングできるのは確かだ。少しでも第2世代Threadripperの性能を引き出したいが,オーバークロックの専門家を自負できるほどの知識はないという場合,試す価値がある機能と言っていいと思う。

 なお,Ryzen Masterの設定として「Memory Access Mode」と「Legacy Compatibility Mode」が用意されているのは,第1世代Threadripperと同じだ。

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emory Access Modeのスライドスイッチを[D]にするとDistributed Mode(UMA),[L]にするとLocal Mode(NUMA)だ。前者が工場出荷時設定で,切り替えるにあたってはPCの再起動が必要になる
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Legacy Compatibility Modeのスライドスイッチを「ON」に切り換えると,片方のシリコンダイが無効になる(※表示は「Disabled」)。切り替えにはこちらもPCの再起動が必要
 両者については第1世代Threadripperのレビュー時に詳しく説明しているほか,別記事で西川善司氏も言及しているので,違いを知りたい人はぜひそれらを参照してほしいと思うが,簡単に紹介すると,Memory Access Modeでは「Distributed Mode」(別名「Uniform Memory Access」,以下 UMA)と「Local Mode」(別名「Non-Uniform Memory Access」,以下 NUMA)の2種類が選択可能だ。ものすごく簡単に紹介しておくと,UMAではメモリバス帯域幅を最大化できる一方,NUMAではシリコンダイと直結したメモリモジュールを積極的に使うためメモリアクセス遅延が小さくなる。

 Legacy Compatibility Modeは動作するシリコンダイの数を1基にするモードで,16基のCPUコアを搭載するPCでは正常に動作しないとか,性能が低下するとかいった古いゲームタイトルがある場合に選択すべき動作モードというのがAMDの主張だ。ひとまず無効で構わないが,どうしても動作しないタイトルがあるときに試してみる価値があるモード,くらいの理解で構わない。


1950Xおよび7900Xと性能を比較


 というわけでテストのセットアップに入ろう。
 今回,2950Xの比較対象としては,1950Xと,前述のとおりAMDが2950Xの競合としている7900Xを用意した。ざっくり言えば1000ドル以下のHEDT向けCPUで性能を比較することになる。

 前段で示したように,Xシリーズ(と第1世代Threadripper)には「Memory Access Modeをどう設定するか」というテーマがつきまとうのだが,今回は,AMDが「ゲームではNUMAが,それ以外ではUMAがどちらかと言えば有利」としていることと,第1世代Threadripperのレビュー時にそれをおおむね裏付ける結果が出ていたことを踏まえ,ゲームのテストではNUMA,それ以外のテストではUMAを用いるので,この点はあらかじめお断りしておきたい。

 今回のテストで扱いが難しいのはPBOで,もちろん理想的にはTDCとPPT,EDCの3パラメータの上限を探って最適なポイントを探すことになるのだが,限られたテスト時間でそれを行うのは難しかったことと,そもそも動作保証外となるため,テスト中に壊れたら元も子もないことから,今回,PBOのテストでは,Ryzen Masterのデフォルト値でただ有効化しただけの状態でもテストを行うことにしている。

 そのほかテスト環境は表2のとおり。第2世代Threadripperのレビュワー向け評価キットにはASUSTeK Computer製のX399マザーボード「ROG ZENITH EXTREME」とG.Skill International Enterprise製PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GBモジュール2枚セット「F4-3200C14D-16GFX PC4-25600 8GB」が2組付属していたのでそれを使う。AMDからはメモリアクセス設定としてXMPを有効化してDDR4-3200とするよう指定が入っているので,すべてのテスト対象においてDDR4-3200(14-14-14-34)で統一した。


 今回はあえてCPUクーラーも表に入れてみたが,「120mmファン×3を取り付けられるラジエータ付き」という条件だと,Socket TR4とSocket R4の両方に対応する簡易液冷クーラーを期限内に用意できなかったため,Socket TR4用としてはENERMAX Technology製の「LIQTECH TR4」(型番:ELC-LTTR360-TBP),Socket R4用はCorsair製の「Hydro Series H150i PRO RGB」を用意した。ポンプユニットの仕様は異なるはずだが,ラジエータサイズとファンのサイズが共通なので,冷却能力にそれほど違いはないだろうと考えている。
 テストにあたってポンプユニットの回転数は最大で固定。3連ファンの回転数も最大で固定した。

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ELC-LTTR360-TBPを取り付けた,Ryzen Threadripperテストシステム。別途120mm角のファンを使って水冷ヘッドおよびVRM部を冷却している。ELC-LTTR360-TBPのラジエータサイズは実測約360(W)25(D)×120(H)mmとなる。なお,写真ではラジエータ部を見せるため,ちょっと配置を変更しているが,実際にはマザーボードの近くにラジエータを立ててテストした
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こちらはHydro Series H150i PRO RGBを取り付けた7900Xのテストシステム。ラジエータの実測サイズはELC-LTTR360-TBPと同じで,リザーブタンクの大きさが少し違うだけだった。ラジエータ部が同じである以上,おおむね似た性能が期待できるだろう

 テストはゲーム系と,ゲーム録画,そして非ゲーム用途の3種類で行う。
 ゲーム系のテストでは基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション21.0を採用するが,レギュレーション22世代を先取りする形で,「Prey」の代わりに「Far Cry 5」,「Forza Motorsport 7」の代わりに「Project CARS 2」を用いる。両タイトルのテスト方法は考察の直前で言及したい。

 テスト解像度は2560×1440ドット,1920×1080ドット,1600×900ドットの3パターン。前述したFar Cry 5とProject CARS 2以外のゲームタイトルにおけるグラフィックス設定はレギュレーションの指定に準じる。

 ゲーム録画では,「Open Broadcaster Software」(Version 21.1.2,以下 OBS)を用いて,ゲーム映像をソフトウェアでリアルタイムにトランスコードするテストを行う。
 非ゲーム用途のテストでは以下のアプリケーションを用いることにした。これらのテスト方法や設定もそれぞれ考察の前で触れることにしたい。

  • CINEBENCH R15(Relase 15.038)
  • PCMark 10(Version 1.1.1739)
  • DxO PhotoLab(Version 1.2.1 Build 3131)
  • ffmpeg(Nightly Build Version N-86691-gc885356)
  • 7-Zip(Version 1805)


2950Xのゲーム性能は1950Xと同程度。PBOの効果はタイトルによる


 グラフ中,Ryzen Threadripperは括弧書きでMemory Access Modeを記載し,また2950XはPBOを有効化した状態を当該括弧内に加えると述べたうえで,テスト結果を見ていこう。
 グラフ1は3DMarkのDirectX 11テストである「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。
 総合スコアのとくに「Fire Strike Ultra」と「Fire Strike Extreme」においてはGPUがスコアを左右する傾向にあることもあり,今回用意したCPU間に違いはほとんど見られない。最も描画負荷の低い“無印”だと2950Xが1950Xに対して約1%,7900Xに対しては約4%それぞれ高いスコアを示し,PBOを有効化した2950Xがそこからさらに1%高いスコアを示しているが,その程度とも言える。


 続いてグラフ2は総合スコアからGPUテストである「Graphics test」のスコアを抜き出したものだが,GPUが「GeForce GTX 1080」で揃っているため,スコアはほとんど誤差程度にしか違わない。Fire Strikeで2950Xのスコアが7900Xに対して約99%となったのが少し気になるが,ここもブレの範囲という可能性はありそうだ。


 一方,CPU性能を測る「Physics test」の結果をまとめたグラフ3だと相応のスコア差が生じている。
 2950Xは1950Xに対して4〜10%高いスコアだ。2950Xは1950Xと比べて定格クロックで約3%,最大クロックで約10%高いので,おおむね妥当な結果と言っていいように思う。また,7900Xに対して17〜21%程度高いスコアというのも,コア数の違いからして順当だろう。
 PBOを有効化した2950Xだが,Fire Strike UltraとFire Strike Extremeでは“素”の2950Xと比べて約1%高いスコアを示す一方,Fire Strike“無印”では約99%のスコアになってしまった。先ほど触れたとおり,“無印”の総合スコアではPBO有効時のほうが約1%高いスコアを示していたので,それとは矛盾した結果となっているが,なぜこうなっているのか。


 その答えを探るヒントとなりそうなのが,グラフ4にまとめた「Combined test」である。というのも,ここにおいてPBOを有効化した2950Xはそうでない2950Xに対してFire Strike“無印”で約6%高いスコアを示しているのだ。
 なぜこうなったのかは推測の域を出ないが,Combined testはGPUとCPUの両方を使うテストなので,CPU負荷がPhysics testより低い。結果としてPrecision Boost 2やXFR2が機能しやすくなり,それをブーストするPBOの効果がより大きく出た,という可能性も考えられるだろう。


 グラフ5は3DMarkのDirectX 12テストとなる「Time Spy」の総合スコアをまとめたものだ。ほとんど横並びの中,Time Spy“無印”で2950Xが7900X比で約97%とスコア差を付けられているのが目を惹く。


 Time Spyの「Graphics score」「CPU score」とまとめたものがグラフ6,7である。
 Graphics scoreでは2950Xが1950Xやi9-7900Xに対し若干低めのスコアだが,これはブレの範囲かもしれない。むしろ興味深いのはCPU scoreのほうで,「Time Spy Extreme」で2950Xは7900Xに対して約8%高いスコアを示す一方,“無印”だと逆に約81%にまで沈んでしまっているのだ。
 どうしてこうなるのかはULが出している資料にも手がかりがなく,正直,謎と言うほかない。

 対1950Xだと2950Xは5〜7%程度高いという,極めて順当なスコアを残している。一方でPBOを有効化すると“無印”で無効時の約98%へと逆にスコアが落ちてしまった。
 Precision Boost 2やXFR2によるクロック制御は,CPU温度などが上限に達するとCPUクロックをいったん大きく落とすような挙動を示すことがRyzen Desktop 2000シリーズでは確認できている(関連記事)。第2世代Threadripperでも同様の制御が入っているとすると,「CPUクーラーが追随できない,瞬間的なCPUコア温度の上昇」がPBOによって生じたとき,CPUクロックが抑えられてむしろ逆効果になるといったことは十分に考えられよう。
 原因は何にせよ,PBOをただ有効化にしても常に好成績が得られるわけではないという例の1つと見ていいのではなかろうか。


 3DMarkに続いて実ゲームのテストを見ていこう。
 Far Cry 5では「最高」プリセットを選択し,ゲームに組み込まれているベンチマークツールを使ってフレームレートを計測することにした。低い解像度ではややブレが見られたため,テスト対象の解像度すべてにおいて2回実行し,平均をスコアとして採用している。

 結果はグラフ8〜10のとおりだ。平均フレームレートに着目すると,GPU負荷が高くなる2560×1440ドットでこそはっきりした傾向は出ていないものの,1920×1080ドット以下の解像度ではPBOを有効化した2950X,2950X,1950Xの順できれいに並んでいる。7900Xに対して2950Xが1950Xよりも明らかにスコア差を詰めているのも見どころと言えるだろう。
 一方で気になるのはPBOを有効化した2950Xで2560×1440ドット時と1920×1080ドット時の最小フレームレートが2950Xよりも低く出ている点だ。2条件で同じ傾向が出ているだけでなく,最も描画負荷が低く,CPU性能の違いも出やすい1600×900ドットでスコアが揃っていることからしても,偶然ではなさそうだ。
 「平均フレームレートは良好だが最小フレームレートが落ち込む」というのは,「フレームレートのブレが大きい」ことと同義だが,PBOで極端になったPrecision Boost 2やXFR2によるクロックの上下動の大きさがこの結果を生んだ可能性はある。


 次にグラフ11〜13は「Overwatch」のテスト結果だが,1920×1080ドット以下だとはっきりした傾向が見られなかった。Overwatchは非常に描画負荷の低いタイトルなので,低解像度だと相対的なCPUボトルネックが生じてCPU性能差が出てこないのかもしれない。
 2560×1440ドットの最小フレームレートはPBO有効の2950X,2950X,1950Xとキレイに並び,7900Xと比較してもRyzen Threadripperは見劣りしないスコアが出ている。


 グラフ14〜16は「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)の結果である。
 2950Xはすべての解像度で平均フレームレートや最小フレームレートで1950Xに及ばないという,困った結果になった。PBOも1920×1080ドット以外ではむしろ逆効果になっている。
 なぜこうなるかはさっぱり分からないが,「Ryzen Threadripper勢が全般的に7900Xより良好なスコアを出している」ことは断言できる。「Ryzen Threadripperだから何か問題が生じている」のではないわけだ。


 「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)のテスト結果はグラフ17〜19にまとめた。
 1920×1080ドット以上ではRyzen Threadripperの3条件でスコアが逆順になってしまっている一方,1600×900ドットではPBOを有効化した2950X,2950X,1950Xの順にスコアが並んでいる。ただ,1920×1080ドットだと最小フレームレートの並びは期待どおりなので,少なくとも最小フレームレートではCPUの性能差が反映されている可能性がありそうだ。
 2560×1440ドットだとGPU性能でフレームレートが頭打ちになり,CPU性能が反映されない形になっているのかもしれない。

 全体として見れば,Ryzen Threadripperは7900Xと互角以上に立ち回っている。


 続いてグラフ20〜22は「Tom Clancy’s Ghost Recon Wildlands」(以下,Wildlands)のテスト結果だが,ここでは平均,最小フレームレートのいずれにおいても2950Xが1950Xに及ばないという結果になった。PBOの効果はあるが,PBOを有効化してようやく1950Xのスコアに戻るという挙動である。
 WildlandsはどちらかといえばIntel製CPUが有利なタイトルなのだが,平均フレームレートでそれほど置いて行かれていないのは救いだろうか。


 興味深い結果を残したのが「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」の公式ベンチマーク(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)である。総合スコアはグラフ23にまとめたとおりだが,PBO有効時の2950Xが2560×1440ドットで若干スコアを落としたのを除くと,PBOを有効化した2950X,2950X,1950X,7900Xというキレイな逆さ階段状になった。CPUコア数とクロックの違いを反映した,非常に美しい結果である。


 グラフ24〜26はFFXIV紅蓮のリベレーターベンチの平均及び最小フレームレートをまとめたものだが,1600×900ドット時の7900Xが高めの最小フレームレートを残しているのを除けば,全体として,総合スコアを反映したものになっていると言えるだろう。


 ゲーム系テストの最後はProject CARS 2だ。ここではゲームのグラフィックス設定から可能な限り負荷の高いものを選び,それを「高負荷設定」としたうえで,4Gamerで独自に用意したリプレイデータを再生することにした。再生したリプレイデータの開始後2分間をFrapsから追い,2分間の平均および最小フレームレートを計測して,2回の平均をスコアとして採用する。
 結果はグラフ27〜29のとおりだ。ほぼ横並びではあるのだが,よく見ると,2560×1440ドット条件を除き,2950Xの平均フレームレートは1950Xに対してわずかながらも届いていない。PBOも有効化はむしろ逆効果といった結果である。


 以上,ゲーム系のテスト結果を見てきたが,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチのように前世代に対して2950Xが期待どおりのスコアを示すことがある一方,1950X以下のスコアに留まるタイトルも散見されたというのが特徴的である。
 原因として考えられるのは,今回2950Xのスコアが伸びなかったタイトルでは,CPUIDを使ってCPU種別を判定したうえで,Ryzen系に対する最適化を行っている可能性があるということだ。2950Xは新登場のCPUなので,この種の処理を行っているタイトルだと「不明なCPU」と判定され,ポテンシャルを発揮できないという可能性は十分にある。
 もしそうであれば,2950Xが十分な性能を発揮できない問題は,多くの場合,時間が解決するということになるだろう。


OBSを使ったゲームの録画ではPBOが逆効果に!?


 続いてOBSを使ったソフトウェアエンコードによるゲームの録画の結果をチェックしてみたい。録画はマルチコアの性能が要求されるゲーム関連のテストと言っていいだろう。

OBSの録画設定。第1世代Threadripperのレビューに準じた設定を用いた
Ryzen
 録画の設定は第1世代Threadripperのレビューに準じている。エンコーダとして「x264」を使い,「fast」プリセットをベースに「animation」チューニングを加えたうえで,ゲームを実行中のPC上からリアルタイムで10MbpsのVBR録画するわけである。

 今回は録画対象として,Wildlandsのベンチマークを用いることにした。画面の動きに強弱があり,エンコードが追いつかないときのカクつきが分かりやすく,しかも画面内で常にフレームレートを確認できる利点があるためだ。
 なお,ここではMemory Access ModeとしてUMAを選択しているが,これは第1世代Threadripperのレビュー時にゲーム録画ではUMAのほうがやや有利という結果が出ているためである。

 今回は解像度2560×1440ドットと1920×1080ドットの2条件でテストを行ったが,ベンチマークの段とは異なり,ここではより低解像度である1920×1080ドット時の結果から見ていくことにしよう。下に示したのは,PBOを有効化した2950X,2950X,1950X,そして7900Xの順で録画した結果を1本のムービーにまとめたものだ。画質ではなく,スムーズさを見るものなので,YouTubeにアップロードしたもので問題なくチェックしてもらえると考えている。


 再生してみると,すべてのCPUがそつなくこなしているように見える。7900XがRyzen Threadripperよりスムーズに見えるかもしれないが,これはフレームレートが数fpsだけ7900Xのほうが高いからだろう。
 いずれにせよ,「トランスコードが追い付かずにカクつく」といった問題は生じていない。

 続いては2560×1440ドット時である。


 まず気になるのが動画開始約30秒のところで,PBOを有効化した2950Xのみ,大きなカクつきが見られる。2950Xと1950X,7900Kだとこれほど大きなカクつきは生じていない。
 原因として考えられるのは,PBOで極端になる可能性があるPrecision Boost 2やXFR2の動作だろう。3DMarkの考察時に述べたとおり,PBOによってクロックの上下動が激しくなり,結果としてカクつきを生んだ可能性はあると見ている。

 また,開始3分過ぎの「崖に向かってカメラが移動するシーン」で7900Xがスムーズさを欠いているのに気付いた人もいるだろう。このシーンで比較すると,2950Xや1950Xのほうが滑らかで,ここには統合するCPUコア数の違いが出ているように思う。
 なお,2950Xと1950Xの違いはほとんど分からない。気持ち2950Xのほうがスムーズかなという気はしないでもないが,基本的には同レベルと見ていい。

 結論としては,ソフトウェアエンコードを使ったゲーム録画という非常に重い処理を課した場合,2950Xは16コアCPUらしい働きを見せるが,1950Xとの間に明確な違いはなく,またPBOはむしろ逆効果になり得るという感じである。


非ゲーム用途で妥当な性能向上を見せる2950X


 続いて非ゲーム用途のテスト結果を見ていこう。まずはマルチスレッド性能がスコアに大きな影響を与える3DレンダリングベンチマークのCINEBENCH R15からだ。
 今回はCINEBENCH R15を2回実行して良い方のスコアを採用するという方法を採用したが,その結果がグラフ30となる。

 2950Xのスコアは,1950X比で約5%,7900X比で約42%高い。スコア3000の壁を2950Xが楽々と越えてきたのは評価していいだろう。ただし,PBOを有効化すると2950Xのスコアは若干低下した。


 続いてはUL製のPC総合ベンチマークであるPCMark 10の結果だ。今回はCPUのテストなので,「PCMark 10 Extended」を選択し,「Custom」タブからOpenCLアクセラレーションを無効化したうえで実行している。そのため,総合スコアを得られない点に注意してほしい。

 結果はグラフ31のとおりで,Webブラウジングやアプリケーションの起動の速さといった日常の快適さを見る「Essentials」で,2950Xは1950Xに対して約2%高いスコアを記録した。同時に,PBOを有効化した2950Xは1950Xに対して約3%高いスコアを示している。アプリケーションの起動などには瞬発力的な速度が求められるため,PBOの効果は多少あるようだ。
 ビジネスアプリケーションの快適さを見る「Productivity」では2950Xが1950Xに対して約7%高いスコアを記録している。クロック差からみて妥当な伸びだ。ただ,PBOを有効化した2950Xは逆にスコアを落としてしまっている。
 3Dレンダリングなどマルチコアが効く「Digital Content Creation」だと,2950Xは1950X比で約2%高いスコアとなった。一方でPBOを有効化した2950Xは1950Xより約5%高いスコアを示し,PBOの効果を確認できる。
 「Gaming」は3DMarkのFireStrikeをウインドウモードで実行するテストだが,ここでは2950X PBOが大きくスコアを落としてしまった。原因は不明だが,3DMarkのテストでは2回実行してスコアの良いほうを選択していることが,こうした違いにつながっている可能性はある。

 7900Xとの比較だと,2950Xでスコア差は確実に詰まっているが,全体としてはあと一歩といったところか。


 グラフ32はDigital Content Creationが含むテストの中から,マルチコアが性能を発揮しやすい「Rendering and Visualization Score」のスコアを抜き出したものだ。
 2950Xは1950Xに対して約4%高く,PBOを有効化すると約5%高いスコアを示しており,スコアの伸び自体は順調だ。ではなぜ16コア32スレッド対応の2950X(や1950X)がDigital Content Creationで10コア20スレッド対応となる7900Xの後塵を拝しているのかと言えば,Rendering and Visualization Scoreに代表されるDigital Content Creationのテストが,「AVX2」など,Ryzen Threadripperが苦手とする命令セットを含んでいるためである。


 続いては,DxO PhotoLab 1を使ったRAW現像の性能を見ていこう。
 DxO PhotoLab 1は,これまでも4Gamerで何度かRAW現像アプリケーションのテストに使ってきた「DxO OpticsPro 11」の後継ソフトウェアで,従来からの現像プロファイルはそのまま利用できる。そこで,第1世代Threadripperのレビュー時と同様に,ニコン製デジタルカメラ「D810」を用いて撮影した,解像度7360×4912ドットのRAWファイル60枚に対して,従来と同じベンチマーク用のプリセットを適用し,JPEGファイルとして出力し終えるまでの時間を,スコアとして採用することにした。

 結果はグラフ33のとおりだ。2950Xは1950X比約93%,7900X比約81%の時間で60枚の現像を終えられている。秒数で言えば順に83秒,245秒なので,2950Xは優秀な結果を残していると言っていい。
 なお,PBOを有効化した2950Xも若干の高速化を実現できているのが,データからは読み取れる。


 お次はffmpegを用いた動画のトランスコードだ。
 今回はFFXIV紅蓮のリベレーターで実際にゲームをプレイした7分25秒,ビットレート437MbpsのMotion JPEG形式,解像度1920×1080ドットの録画データをソースとして用意した。
 これを,「libx264」エンコーダによりH.264形式にトランスコードするのに要した時間と,「libx265」エンコーダでH.265/HEVC形式にトランスコードするのに要した時間をそれぞれスコアとして採用する。

 使用したバッチファイルを参考のため以下のとおり掲載しておくが,slowプリセットにanimationチューニングを加え,可能な限り画質の劣化を抑えた変換を行う設定という理解でいい。

del avc.mp4
del hevc.mp4
powershell -c measure-command {.\ffmpeg -i Diademe.avi -c:v libx264 -preset slow -tune animation -crf 18 -threads 0 avc.mp4} >MPEG4_score.txt
powershell -c measure-command {.\ffmpeg -i Diademe.avi -c:v libx265 -preset slow -crf 20 hevc.mp4} >HEVC_score.txt

 結果はグラフ34のとおりで,H.264トランスコードだと2950Xは1950Xの約96%,7900Xの約88%で処理を終えることができている。ただ,PBOの効果はほぼ出ていない。
 H.265トランスコードだと2950Xは1950Xの約94%で処理を終えられる一方,libx265でAVX2が多用されているため,7900Xと比べると約7%,余計に時間がかかっている。ここはlibx265側でRyzen Threadripperへの最適化が進めば状況が変わってくると思われる。


 一般アプリケーションを用いた性能検証の最後は,ファイルの圧縮および解凍性能を,マルチスレッドに最適化されたファイルの圧縮・展開ツールである7-Zipでチェックしてみよう。
 7-Zipの「7-Zip File Manager」にはベンチマークが組み込んであるので,今回は7-Zip File Managerから「ツール」→「ベンチマーク」を開き,いったん[停止]ボタンを押してから「辞書サイズ」を「64MB」に設定。その後,[再開]ボタンをクリックして圧縮&解凍の総合スコアを示す「総合評価」が算出されるまで待ち,さらにテスト回数20回になるまでテストを実行し続けて,20回めの総合評価をスコアとして採用することにした。

 グラフ35がその結果で,2950Xは1950Xよりも約4%,7900Xに対しては約30%,それぞれ高いスコアを示す。一方,PBOを有効化すると逆にスコアは落ちてしまうのも見てとれる。


 以上が非ゲーム系アプリケーションのテスト結果だが,2950Xは1950Xに対して順当に性能を上げているとまとめていいだろう。一方,PBOの効果がプラスになったりマイナスになったりするのは,ゲーム系アプリケーションと変わらないので,ここはPBOを使ううえで要注意のポイントということになりそうである。


アイドル時の消費電力が下がって使いやすくなった第2世代Threadripper


 最後に消費電力を見ておきたい。4Gamerではレギュレーション20世代から,EPS12Vの電流を測り,12を掛けて電力換算する方法も採用している。この方法ならCPU単体のおおよその消費電力が推測できるからだ。
 ただ,読者にとっては,電気代という,割と現実的な運用コストに直結するため,システム全体の消費電力も目安として知りたいところだろう。そこで今回は,システム全体の消費電力を見たうえで,CPU単体の消費電力を見ていくことにしたい。

 グラフ36は,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,各テスト実行時点の最大消費電力と,ディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえでOSの起動後30分間放置した時点(以下,アイドル時)の消費電力をまとめたものになる。

 最も高い消費電力を記録したのはゲーム録画時だが,これはGPUとCPUの双方がフルに働くので当然だろう。ここで2950Xは1950Xに対して約8W,PBOを有効化した2950Xは約16W高いピーク消費電力を記録した。性能が上がっている分だけシステム全体の消費電力も若干上がってしまったわけだ。
 とはいえ,460W台を記録した7900Xと比べると,2950XはPBOを有効化しても20W以上低い水準で留まっている。

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Ryzen

 次にグラフ37はEPS12Vを使って計測した,CPU単体のピーク消費電力をまとめたものとなる。

 ここで目立つのは,3DMarkの実行時にPBOを有効化した2950Xが記録している約218Wというピークだ。おそらく何らかの理由でCPUの消費電力が急上昇し,それを測定器が拾ったのだと考えられる。
 もう1つ,DxO PhotoLab実行時に1950Xが記録した232Wというピークも目を惹く。2950Xでこういうデータは出ていないため,これも何らかの理由でCPUの消費電力が急上昇した瞬間を測定器が拾ったのだろう。

 ゲーム実行中のピークを見ると,2950Xは1950Xに対して多少は消費電力が上がっているかもしれないが,ほとんど同程度といった感じである。ただ,PBOを有効化すると消費電力の最大値は高めに出ることが多いようだ。

 一方で注目したいのは,アイドル時における2950Xの消費電力が極めて低い点である。1950Xと比べて約5W低いだけでなく,7900Xと比べると5分の1以下。PCの利用中はアイドル時間が長くなるわけだが,そのアイドル時における消費電力が相当に低いのだから,消費電力はもちろんのこと,発熱が低下することも期待できよう。

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Ryzen

 EPS12Vを使って計測した結果の中央値をまとめたものがグラフ38だ。当該CPUでアプリケーションを実行したときの典型的な消費電力値を並べたものという理解でいい。
 ゲーム実行中における2950Xの中央値を見ていくと,1950Xに対し2950Xはどちらかといえば低いデータを残している。これは「アイドル時の消費電力が1950Xの半分強にまで落ちる」という,2950Xならではの特性を裏付けるものだ。一方でPBOを有効化した2950Xはクロックが上昇しやすいためか,中央値もやや高めに出ていることが読み取れる。

 非ゲーム系のテストにアプリケーションに目を移すと,CPU負荷が高いRAW現像やトランスコードでは,1950Xに対して2950Xの中央値がざっくり20W前後高くなっていた。CPUに負荷をかけたときには性能向上分だけ消費電力も高くなっているというわけである。
 また,PBOを有効化したときのスコアは7-Zipの高さが目立つ。PBOを利用していない2950Xと比べて約30Wも高いのだ。先に触れたとおり,PBO有効時の7-Zipスコアはむしろ下がっていたので,これは割に合わない結果と言っていい。

 もう1つ強調しておかなければならないのは,7900Xの中央値が圧倒的に高いということである。ffmpeg実行時などは219Wと,目を疑いたくなるような中央値を記録した。7900Xの消費電力は明らかに尋常でない。
 システム全体では7900Xもそこまで悪くなかったりするが,これはチップセットやマザーボードを含んだトータルの電力制御が優秀だからだろう。

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Ryzen

 以上,2950XはCPUコアをフル活用させるような用途だと1950Xと比べて消費電力が相応に上がっているものの,アイドル時の消費電力は抑えられており,また,ゲームのようにCPU負荷が一定レベルで留まるアプリケーションであれば絶対値は1950Xと大差ないレベルに留まっている。
 総じて,1950Xよりも扱いやすくなっていると言っていいだろう。


不安材料は国内価格だけ!? 「ゲームもできるHEDT」用CPUとしては現状,選ばない理由がない


製品ボックス。これがどんな構造なのかは開封レポート記事をチェックしてほしい
Ryzen
 長くなったが,第2世代Threadripperの「PCマニアとゲーマー向け」モデルとして北米時間8月31日に発売予定の2950Xが持つ性能を見てきた。
 北米市場におけるメーカー想定売価は899ドル(税別)で,デビュー当時のメーカー想定売価が999ドルだった1950X,そして1000個ロット時単価が999ドルのi7-7900Xに対してざっくり100ドル安価でありながら,ゲーム用途で明確に劣る部分はない。また,マルチコアの実力を発揮できる非ゲーム用途でも,少なくともAVX2が使われていない限りは期待どおりの性能を発揮できる。消費電力も全体としては納得できるレベルで,アイドル時における改善は大きな魅力だ。「HEDTシステムでゲームもプレイしたい」というハイエンド志向の4Gamer読者が2950Xを選ばない理由は,2018年8月13日時点において見当たらない

 未発表の国内価格だけが不安材料だが,北米市場におけるメーカー想定売価と極端に乖離した設定がなされない限りは買いだと断言しておこう。

Ryzen

 もっとも,1950Xとの性能差がAMDが主張するほどには大きくないのもまた確かだ。PBOで積極的に遊んでみたいなどといったマニアックな理由でもない限り,すでに1950Xのユーザーが2950Xへ買い換えても,投資に見合う性能向上は得られないだろう。1950Xユーザーは将来のZen 2世代待ちということでいいのではなかろうか。

西川善司の3DGE:最大32コア64スレッド対応の第2世代Ryzen Threadripper,正式発表。進化のポイントはここだ

「Ryzen Threadripper 2950X」到着。第2世代の16コア32スレッド対応CPUは今回も特殊な製品ボックス入りだ

AMD,第2世代Ryzen Threadripperのラインナップと価格を発表し,実動デモも披露


AMDのRyzen Threadripper製品情報ページ

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