2015年12月12日,東京のバンダイナムコエンターテインメント本社 未来研究所にて,アーケード用3D対戦格闘ゲーム
「鉄拳7」の世界大会
「THE KING OF IRON FIST TOURNAMENT 2015」のGRAND FINAL大会が開催された。
鉄拳シリーズ20周年を記念した本大会には,世界各国の予選を勝ちあがった
総勢27名の選手が集結。リーグによる予選とシングルエリミネーションの決勝トーナメントにてその頂点が競われた。各国代表選手の内訳は以下のとおりだ。
- 北米枠:アメリカ2名
- 欧州枠:イタリア2名,ポーランド1名
- 20周年特別枠:フィリピン1名
- EVO2015代表枠:日本2名
- 韓国代表枠:8名
- 日本代表枠:11名
大会の模様は,当日ニコニコ生放送による
ストリーミング配信が行われ,戦いの行く末をリアルタイムで見守っていた人も多いことだろう。本稿では激戦に次ぐ激戦が繰り広げられた会場の模様を,写真と共にレポートしていこう。
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日韓対決再び。優勝賞金300万円を掛けた,総勢27名によるバトルが開幕
朝の10:00にスタートした予選リーグ。ここでは27名の選手が8ブロックに分かれて戦い,各ブロックの上位1名のみが決勝トーナメントへと進出できる。中でもとくに注目を集めたのがFブロックで,アメリカ,韓国,日本のトッププレイヤー3名が固まるという,まさに「死のブロック」となった。いったい誰がここから抜け出すのか,会場の観客達も固唾を呑んで見守っていたようだった。
この日の実況・解説を務めた鉄拳開発チームの原田勝弘氏とナカツ氏。そしてゲームライターのハメコ。氏
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ラウンドガールを務めた鉄拳女子部の皆さん
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死のブロックを勝ち抜けたのは,EVO2015優勝者のノビ選手。北米代表のMr.NAPS選手と,韓国代表のSecret選手を倒しての勝ち上がりだ
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総当り戦とはいえ,勝ち抜けられるのは1名のみなので,1敗が命取りとなる。続く厳しい戦いに,選手達も大きなプレッシャーを感じていたようだ
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本大会には女子代表枠があり,各国の女性選手達も,男性選手達に混じって同じ舞台で戦いを繰り広げた。格闘ゲームの大会では,あまり見ない光景と言えるかもしれない
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大会の合間には,原田氏とカプコンの小野義徳氏によるコントムービー(?)も流され,会場の盛り上がりに一役買っていた。両氏が「ある権利」を賭けて対決するという趣旨のこのムービーは,プロゲーマーのウメハラ氏やマゴ氏が出演し,鉄拳7をプレイするというもの。この対決は,イベントの最後に行われた発表の伏線でもあったようだ
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白熱した予選リーグを勝ち上がり,決勝トーナメントへと進出したのは以下の8名だ(選手の並びはA〜Hのブロック順)。
 knee選手(韓国 / デビルジン) 世界最強との呼び声が高い,韓国最強のプレイヤー。前作の鉄拳TAG2では全世界のプレイヤーを段位戦で降格させ続け,暴君のごとき強さを見せつけていた |
 ダブル選手(日本 / ロウ) 北陸地方で幼少期から鉄拳シリーズをプレイし続け,近年では日本を代表するプレイヤーにまでなりつつある「北陸の星」。勝負どころで大技を当てる読みの鋭さが持ち味 |
 たーく選手(日本 / シャヒーン) 山口県のプレイヤーながら,全国にその名を知らしめる強豪。反応の早さを活かした防御的なプレイスタイルが特徴的で,数々の大会で好成績を収めている |
 しゅうでぃ選手(日本 / ジン) 古くからジン使いとして活躍するベテランプレイヤー。MASTERCUPで韓国代表チーム相手に4人抜きをした経験を持つなど,勢いに乗ったときの活躍には目を見張るものがある |
 AO選手(日本 / アリサ) EVO2015準優勝など,多くの国際大会で結果を出し続けるトッププレイヤーの一人。アリサというキャラクターの特性を活かした体力の削り合いが得意で,特に無限ステージで無類の強さを発揮する |
 ノビ選手(日本 / ドラグノフ) EVO2015覇者。数々の全国規模の大会で優勝しており,実力・実績ともに日本最高のプレイヤー。スピーディーな試合展開を相手に押し付けてペースを握るのが得意で,大舞台でも安定して実力を発揮する |
 TONDAKURABU選手(韓国 / デビルジン) 韓国の学生枠代表のプレイヤー。鉄拳シリーズを始めてからまだ2年という経歴ながら,1P・2P側を問わず高速ステップを駆使して相手にプレッシャーをかけていくスタイルで予選を勝ち上がった |
 help me選手(韓国 / ポール) 全キャラクターを使いこなす韓国の古豪。「鉄拳6 BR」では,強すぎて韓国での対戦相手が居なくなり,皆に対戦してもらうために最弱と目されるキャラクターを使ったが,そのキャラクターでも鉄拳神まで登りつめたという経歴を持つ |
決勝トーナメントでは,予選リーグを勝ち抜いたこれらの8名によるダブルエリミネーショントーナメントによって,ただ1人の優勝者が決定される。
決勝トーナメントの組み合わせは,抽選後,引いたクジの番号順に自分の入る位置を決める方法で決定された。どの相手を避け,どの相手を狙うのか――この段階で既にかけひきは始まっている
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韓国選手を応援する韓国チーム一同。決勝トーナメントともなると,応援も一層とヒートアップしていた
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knee選手に敗れて悔しそうな表情を見せるAO選手
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決勝トーナメントの試合はどれも好勝負で,その1つ1つをリポートすることはとても叶わない。ぜひ当日のストリーミング配信をタイムシフト視聴してほしいと思うのが,そんな中でも頭一つ抜けたプレイを見せ,FINALまで進出したのは,韓国最強との呼び声高い
knee選手と,日本最強と目される
ノビ選手の2名だった。
ノビ選手はWinner'sサイドから,knee選手はLoser'sサイドからの勝ち上がりとなり,ノビ選手は3試合を先取すれば優勝。一方,knee選手は3試合先取した時点でラウンドリセットとなり,さらに3試合(都合6試合)を先取しなければ,優勝できない仕組みだ。
なお,knee選手をWinner'sからLoser'sに叩き落としたのもまた,ノビ選手だった。一度敗れた相手に6試合選手しなければならないknee選手は,かなりの苦境に立たされた状態でもある
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決勝戦の前口上は,新日本プロレスのリングアナウンサーを務めていたことで知られる田中ケロ氏が担当。また選手の呼び込みは,総合格闘技PRIDEの選手入場コールで知られるレニーハートさんによって行われた。本物の格闘技イベントのような豪華な演出で,会場の緊張感が高まっていく
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FINALの試合内容はというと,ノビ選手が自身の得意とするロシアンフックアサルトを中心に相手を攻め立てるの対し,knee選手がそれを受け止めつつ,要所でリターンの大きい技を当てに行くという展開となった。
お互いに一歩も譲らないまま試合カウントは2-2となり,ノビ選手にとっては優勝がかかった第5試合。ここでノビ選手は,今まで見せていなかったフレキシブルエルボー(避け性能を持つ浮かせ技)で相手の意表をつき,そこから一気にペースを握ってこの試合に勝利。「THE KING OF IRON FIST TOURNAMENT 2015 GRAND FINAL」優勝の栄冠は,見事ノビ選手の頭上に輝いた。
Loser's FINALで惜しくもknee選手に敗れたAO選手は3位となった。同選手には,鉄拳20周年応援マネージャーの佐野ひなこさんから,賞金50万円が贈られた
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FINALで手に汗握る攻防を見せてくれた韓国のknee選手。2位となった同全種には,賞金150万円が贈られた
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本大会のスポンサーであるフィールズが定めるフィールズ特別賞には,ダブル選手が選出された。同選手には,旅行券30万円が贈呈された
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優勝したノビ選手には,賞金300万円のほかトロフィーとデジタルアイテム(限定称号,プレイヤー情報パネルなど),そしてチャンピオンリングが贈られた
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サプライズゲストである芸人の鉄拳さんからチャンピオンリングを贈呈されるノビ選手。なお,鉄拳という同氏の芸名は本作に由来している。11年前の「闘劇'04」でも,鉄拳さん制作による銅像が,優勝の副賞として贈られたこともあるほどだ
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さらなるサプライズとして,この大会のために描いたという,鉄拳さん直筆イラストが公開された。鉄拳シリーズのキャラクターとプレイヤー達が地球を囲んでいるもので,そのコンセプトは「鉄拳を通じて世界を平和にしよう」とのこと
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表彰式後には,この日最大のサプライズとしてシリーズの最新作「鉄拳7 FATED RETRIBUTION」の発表が行われた。同作にはストリートファイターシリーズの豪鬼が,プレイアブルキャラクターとして参戦する(関連記事)。この発表の衝撃は相当なものだったようで,会場のざわめきはかなり長時間続いていた
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かくして衝撃の発表とともに幕を閉じた本大会。公式大会としては過去最高の賞金額というだけでなく,試合の盛り上がりや演出,また豪華なゲストやサプライズを含め,素晴らしい大会となった。
また,今回の大会と発表によって,鉄拳プレイヤー達のモチベーションが一層高まったのも間違いない。すでにアナウンスされている
PlayStation 4版に加え,新バージョンも控えた鉄拳シリーズ。その動向からますます目が離せなくなりそうだ