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スウェーデン発のゲーマー向け製品ブランド「Mionix」に聞く,その立ち位置と,グローバル企業“らしくなさ”
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印刷2016/10/06 00:00

インタビュー

スウェーデン発のゲーマー向け製品ブランド「Mionix」に聞く,その立ち位置と,グローバル企業“らしくなさ”

Carsten Berger氏(Head of Sales, Mionix)
 Mionix(マイオニクス)というゲーマー向け製品ブランドの知名度は,4Gamer読者の間でどれくらいあるだろうか。
 日本語公式Twitterアカウント日本語公式Facebookページまで開設済み,しかも日本市場における製品の入手性もそれほど悪くないということもあって,聞いたことはあるというゲーマーは少なくないと思う。一方で,その正体がよく分からないという人も多いのではないだろうか。

 今回4Gamerでは,そんなMionixのセールス部門トップであるCarsten Berger(カースティン・ベルガー)氏に,「Mionixとはいかなるブランドなのか」を突っ込んで聞くことができた。時節柄,心拍数&発汗センサー搭載マウス「NAOS QG」の話も込みだが,できる限り,Mionixというブランドの理解が進みそうな質問を用意して臨んだつもりだ。
 日本市場で活動する北欧ブランドが気になる人は,ぜひチェックしてほしい。


そもそもMionixとは何なのか


Mionixのロゴマーク。ムース(ヘラジカ)の心臓がモチーフだという
4Gamer:
 本日はどうぞよろしくお願いします。
 日本のメディアの前でお話しされるのは初めてではないかと思いますが,日本のゲーマーから見ると,Mionixというブランドは,ある日突然,欧州市場に登場したような印象があります。まずは,Mionixの立ち上げからここまでの歴史的なものを簡単に聞かせていただけませんか。

Carsten Berger氏:
 Mionixは2007年に,Peter Nygren(ピーター・ニーグレン)が興した会社です。
 設立当初は,ビジネスというより,創業者の趣味が高じて立ち上がったと紹介したほうが正しいでしょうね。スウェーデン国内向けに,ゲーマー向けの素晴らしい製品を提供しようという目的がありました。

4Gamer:
 何というか,ガレージメーカー的な……。

Carsten Berger氏:
 そう,そんな感じです。
 で,2年半前,2014年のことになりますが,現在のCEOであるCarl Silbersky(カール・シルバースキー)が入社しました。彼は非常にプロフェッショナルな経営者で,「Mionixには素晴らしいゲーマー向けの製品があり,そのポテンシャルを持ってすれば,世界市場で必ず成功できる」と確信したのです。それまではほとんどPeterの趣味みたいな事業だったものを,ワールドワイドへ展開しようという話になりました。
 なので,「ここ3年くらいで突然出てきた」という印象を持たれるのも,無理はないでしょう。

4Gamer:
 Peterさんが立ち上げた創業の時点から,ゲーマー向けマウスを手がけていたのですか。

AVIOR 8200
Mionix
Carsten Berger氏:
 もちろんそうです。2007年から2014年まで,Peterが率いる形で,2つの異なるマウスと,3つの異なるマウスパッドを手がけました。
 製品の形状やデザインはスウェーデンの自社で行い,たとえばゲーマー向けマウス「AVIOR」(エイヴィア)はこのときに始まったプロジェクトです。その後,Carlが入社して「CASTER」(キャスター)などのプロジェクトがスタートしました。

4Gamer:
 私が初めて触ったMionixのマウスはAVIORだったんですよ。確か2013年頃でしたが,その頃はまだ,スウェーデン国内市場向けのローカル企業だったわけですね。

Carsten Berger氏:
 当時は本当に,とても小さい会社でしたね(笑)。

4Gamer:
 Carlさんが入社する直前と現在の規模を比べると,たとえばスタッフの数などはどのくらい増えているのでしょうか。

Carsten Berger氏:
 当時と今とではずいぶん会社は変わりました。会社というのはどこもそうですが,多くの人が入り,また去っていくことで変わっていくものです。
 質問にお答えすると,規模としては当時の2倍くらいになっているでしょうか。スタッフの総数はいま25名ですが,現在もなお,才能のある人を探しています。

4Gamer:
 ちなみに創業当時のメンバーは何人でしたか。

Carsten Berger氏:
 3人か,4人でしたね。Peterが父親からお金を借りて(笑),趣味で立ち上げた会社でしたから。そこから,今の規模まで大きくなったわけです。

4Gamer:
 その小さな会社からいまの規模まで拡大できた要因は何だったとお考えですか? Carlさんの入社が契機なのはよく分かりますが,そのほかにたとえば製品レベルや技術レベルなどでこんなブレイクスルーがあった,とか。

Carsten Berger氏:
 やはりCarlの入社が最大の要因だと思います。彼は多くの人や企業とのコネクションを持っていて,優れた人材を集めてきましたし,彼のコネクションによって,(世界各地にある)販売代理店とのつながりも持てるようになりましたから。
 次に重要なのは,Carlがマーケティングの専門家を雇い入れたことで,結果,エンドユーザーの皆さんに,私達の製品についてメッセージを伝えられるようになったことでしょう。これが会社の規模を大きくすることができた大きな要因です。

4Gamer:
 CEOを招聘した後,創業者のPeterさんはいま何をしているのですか?

Peter Nygren氏。写真を依頼したところ,ビールグラス片手のカットが届いた
Mionix
Carsten Berger氏:
 Peterは今でも私達の仲間の1人ですし,Mionixの株主でもあります。でも,彼は若く,とても好奇心があって,起業家精神に溢れていることもあり,いまの彼のメインフォーカスは「ビール醸造所の立ち上げ」になっていますよ。彼の醸造所がうまくいったら日本にビールを売り込みに来るかもしれません(笑)。

4Gamer:
 マウスからビール! すごい転身ですねそれは。

Carsten Berger氏:
 そんなわけで,Peterは現在,Mionixの経営に,直接は関わっていません。あくまでも株主として関わっているということになります。

4Gamer:
 そして,もう1つ気になるのは,何と言ってもCarlさんです。Mionixのポテンシャルを見抜いて,スウェーデンの小さなメーカーをいきなり世界市場へ持っていくような人ですから,当然,とてつもない経営の才能を持っているのではないかと思いますが,実のところ,彼はどういう経歴の人なんでしょうか。

Carsten Berger氏:
 (彼は私のボスなので)ちょっと注意して発言する必要がありそうですけど(笑)。

4Gamer:
 (笑)。

Carsten Berger氏:
 彼は私にとってSteve Jobs(スティーブ・ジョブズ)と比較することができるくらいの人物です。彼にはメンバーの能力を引き出して,新しいビジョンを実現する力があるんですよ。

4Gamer:
 それはすごい惚れ込みようですね。

Carsten Berger氏:
 実際,彼はMionixを大きく変えました。彼の指揮の下で,素晴らしい製品を世界に送り出し,数年前には想像もできなかったことを実現しました。
 ご質問の「彼の経歴」ですが,以前は個人投資家でした。また,彼はかつて顔認識のソフトウェアを開発する会社も経営していて,その会社はAppleに買収されています。

4Gamer:
 投資家にして起業家,でしたか。

Carsten Berger氏:
 経歴からも想像いただけると思いますが,彼はとても野心的で,ビジョンを実現するモチベーションに溢れた人です。クレイジーなアイデアも,彼ならそれを実現して世界を変える力を持っていると思いますね。
 念の為に言っておきますけど,クレイジーという語はネガティブな意味じゃないですよ(笑)。

4Gamer:
 大丈夫です(笑)。
 確認しますが,つまり,Carlさんは顔認識の技術を持つ会社をAppleに売却して,それで得た資金を元手にMionixへ投資を行い,経営者になったという経緯なんでしょうか。

Carsten Berger氏:
 Carlが彼の会社をAppleに売却したのは事実ですが,それでどれくらいの資金を得たのかは知りません。
 CarlがMionixの経営に参画したのは,彼自身がMionixの製品を使ってみて,これは素晴らしいポテンシャルを持つ製品だと確信したのが理由だと聞いています。その数か月後に,「Mionixをグローバルな企業にしよう」と,CEOに就任したのです。

4Gamer:
 私がチェックした限りですけれども,欧州市場だと,Mionixの製品は通販サイトで頻繁に上位になっているようですね。
 Mionixの立ち位置としては,ゲーマー向けデバイスのトップブランドとしてLogitech GとRazerが君臨していて,その次の第2グループのどこかにMionixがつけている,といった印象を個人的には持っているのですが,ゲーマー向け周辺機器市場におけるMionixのポジションについて,どうお考えですか?

Carsten Berger氏:
 まずお伝えしたいのは,ゲーマー向け周辺機器の市場は,ここ2年でもずいぶんと変わっているということです。また,確かにグローバルなマーケットだとその2ブランドが強いですが,地域によっては必ずしもそうではありません。市場の動きがとても速いので,シェアの移り変わりも頻繁ですね。

 それを踏まえてお答えしますが,もちろん,Mionixの市場シェアは小さいですけれども,我々は自分たちが何をしたいのか,あるいはどうなりたいのかをしっかりと見据えています。小さい分だけリスクを取ることができるのが強みですし,楽しく,また自由に活動しています。数年後には,私達のやり方が正しかったのだと,分かってもらえると思っています。

4Gamer:
 いまのMionixの市場のポジションについてはあまり気にしていないということですね。

Carsten Berger氏:
 そうですね。ゲーマー向け周辺機器の市場は,たとえば10年後にどうなっているか分かりません。ですので私達は「いまMionixができること」をやっていくということに尽きます。市場においてこれくらい成功しなければならないとか,売り上げランキングでどこまで上がるとか,そういったことはあまり気にしていないのです。

4Gamer:
 いまお話にもありましたが,グローバルと各地域(=ローカル)の市場では,いろいろと異なる部分がありますよね。それぞれに向けてMionixがどういう動きを取ろうとしているのか,その点を聞かせていただけませんか。

Carsten Berger氏:
 私達はゲーマー向けデバイスがどのように成長しているのか調査を行っているのですが,グローバルな市場と地域ごとの市場には,同じところも違うところもあります。

4Gamer:
 ええ。

Carsten Berger氏:
 たとえばよく言われているように,日本市場はスマートフォンやタブレットといったモバイルの市場が大きいわけです。世界市場ではここ半年で40%の成長を遂げていますが,日本はすでに十分な大きさに育って,成長率自体は下がってきています。
 また,ゲームデバイスについて言えば,日本のゲーマーは新製品に目がない人が多いというデータもあります。

 ここから導ける話は,「日本市場の動向は,他のマーケットに対する先行指標として役立つ」というものです。日本市場で確認できた傾向は,数年後に,他のマーケットでも見られるようになる可能性が高いわけで,ここが日本市場の興味深い点です。

4Gamer:
 その点は,日本市場を分析した海外メーカーの方が本当によくおっしゃっていますね。

Carsten Berger氏:
 また,面白い点としては,日本のゲーマー向け周辺機器市場だと,成長率自体は2〜3%程度なのですが,それ以上に単価が上がっている(ため,売り上げはより高いレベルで成長している)点です。安いマウスを使い倒して,どんどん買い換えるのではなく,高価なマウスを長く使うゲーマーが多いのではないでしょうか。

 そういうわけですので,日本市場はとても注意深く見ていますし,それがグローバル市場とどう関わるのかも注視しています。いまのは日本市場の例ですが,そういう風に,グローバルとローカルの各市場をチェックしているのです。

4Gamer:
 ところで,グローバル展開という点では,製品名がどれだけ呼びやすいのかという話も議論の対象になるかと思います。Mionixの製品は読み方が難しい製品が多く,なかなか親しみが湧きにくいというケースがあったりするわけですが,その点はどうお考えですか。
 できればMionixが,読み方を逐一説明してくれるといいと思うのですが。

ふたご座α星からその名が取られたCASTOR(レビュー記事
Mionix
Carsten Berger氏:
 まず,Mionixの製品の名前は星にちなんで付けています。Castor(※ふたご座α星カストル),Naos(※とも座ζ星ナオス),Avior(※りゅうこつ座ε星アヴィオール)といった具合ですね。今後も製品には星の名前を続けて使っていくことになるでしょう。製品に星の名前をつけて,自分たちの製品に誇りを持つというのが我々のやり方なのです。

 ある地域で読み方が分からないということですが,25年前に欧州で似たような事例がありました。日本の富士通がSiemens(ジーメンス,日本では「シーメンス」)と合弁してFujitsu Siemens(※Fujitsu Siemens Computersのこと)を立ち上げたんですけれども,このとき欧州では「Fujitsu」を誰も読めなかったんですよ。

4Gamer:
 そもそも富士通の元になった富士電機製造の「士」が,Siemensの「ジ」だというのも,欧州ではまず知られてないでしょうしね。

Carsten Berger氏:
 そのときFujitsu Siemensは社名を繰り返すラジオスポットコマ―シャルを繰り返し流して,周知を図りました。

4Gamer:
 へえ,そうなんですか。

Carsten Berger氏:
 そんなわけで,「Mionixとして呼び名をアナウンスしてほしい」という提案はよく分かるのですが,国によっては発音しにくいとか,そういう例もあるので,なかなか難しいというのが正直なところです。

4Gamer:
 ただ,日本の消費者は製品の名前にこだわる傾向にあるんですよね。先ほども話題に上がりましたが,製品を長く使うので,製品の読みや,由来を知りたいという気持ちが強くなるんだと思います。

 個人的には,以前AVIORを手にしたときに製品名の由来を調べて,ああ,これは「アヴィオール」と読むんだなと納得していたら,日本のMionix公式Twitterアカウントが読みは「エイヴィア」としていて(関連リンク),「あれ,英語読みなの!?」と混乱した記憶があります。

Carsten Berger氏:
 確かにそこは難しいですね。
 なら,音声としてアナウンスすればいいのか,するとしてどうすればいいのかという課題はありますが,ただ,「呼び名を明らかにする」というアイデアは,Mionixとして検討してみたいと思います。

原稿執筆時点である2016年9月末のMionixトップページ。最近の同社は「MIO」と「NIX」を区切って縦に並べることをよくやっているが,それはさておき,トップページだけ見ると,あまりゲーマー向け製品ブランドっぽくない
Mionix
4Gamer:
 ぜひお願いします。
 大枠の話としては最後になりますけれども,春頃……でしたか,MionixのWebサイトは背景が突然白くなりました。その理由は何ですか?

Carsten Berger氏:
 これまでゲーム用デバイスというと,暗い色を使うのが定番でしたが,「それはちょっと違うんじゃないか」という意見があったのです。
 10年前は,ゲームというと,社会性のないナード(Nerd,オタク)が一人で,暗く薄汚い部屋でしているものというダークなイメージでしたが,いまはずいぶん変わりました。

 定型的な例はe-Sportsです。e-Sportsのゲーマーは世間の注目を集めていますし,とてもファッショナブルですよね。そして,彼ら自身,世間の注目を集めていることに誇りを持っています。このように,ゲーマーは陰の場所から,スポットライトを浴びる世界へと移ったのです。
 すでに,ゲーマーといえば黒一色という時代は終わり,青や黄色,ピンクのTシャツを身につけていますし,自分はゲーマーであると自信を持って言えるようになってきました。私の父親は70代ですが,自分はゲーマーだと言っています。
 なので,そんな新しい世代のゲーマーに向けて色を変えたというわけです。

4Gamer:
 そのプロゲーマーですが,Mionixは必ずしも,プロゲーマー向け,e-Sports向けだとか,勝つためのデバイスだとか,そういったメッセージは出していませんよね。「ゲームを楽しみたい一般ゲーマー」と,プロを含む広義のコアゲーマーとの間で,どうバランスを取っているのでしょうか。

Carsten Berger氏:
 それはとてもシンプルで,e-Sportsはゲームというカテゴリーの中でもごく一部の小さな声に過ぎません。なので,Mionixとしては,そんなe-Sportsの世界の中“だけ”で評価されるデバイスではなく,時代を象徴するようなデバイスを作りたいのです。

4Gamer:
 おお,ずばっときました。

Carsten Berger氏:
 車とかメガネとかは,「これはいいな,欲しいな」と思って買いますよね。そしてそれを気に入って楽しむわけです。我々が作りたい製品はまさにそれと同じです。
 たとえば,日本では660万人がゲームを楽しんでいるというデータがありますが,私達は,その30%とか40%とかの人が「いいな」と思って使ってくれるような製品を作りたいと考えています。そして,買った人が,「これは素晴らしい。とても気に入った」と思ってくれることを目指しているのです。


NAOS QGと,Mionixが見ている市場


NAOS QG
Mionix
4Gamer:
 具体的な製品の話に移りますが,いまお話があった多くの人が楽しめるデバイスとして心拍数&発汗センサー搭載マウスであるNAOS QGが,ついに正式発表となりました(関連記事)。
 このNAOS QGは,まさにそんな「多くの人が楽しめるデバイス」なのですか。それとも別の狙いがあるのでしょうか。

Carsten Berger氏:
 お答えするのが難しい質問ですが,NAOS QGが,これまでとは違う形でゲーマーをサポートする,イノベーションを起こすデバイスとして開発された製品であるとは言えます。NAOS QGはプロゲームシーン向けとか,初心者向けとかではなく,(それぞれの習熟レベルごとに)もっとうまくプレイできるようになりたいと思っているゲーマーをサポートする製品ですね。

 発表以降,いろいろなレスポンスをもらっていますが,非常に高いポテンシャルを持つ製品と評価されています。たとえば,NAOS QGをたとえば仕事に使ってもいいかもしれません。Mionixとして,使い方に何か制約を設けているわけではないということはお伝えしたいですね。

4Gamer:
 そのNAOS QGですが,私はかなり初期の段階でKickstarterのBackerになったんですよ。Kickstarterのメールを確認してみたら,最初に届いたメールでは,2015年7月が出荷開始スケジュールになっていました(笑)。
 ここまで時間がかかった理由はなんでしょうか。

Carsten Berger氏:
 やはり,これまでになかった製品ですから,開発にあたってさまざまな難しい点が出てきます。それに私達としては,製品を市場に出すときには完璧なものに仕上げたいですし,マニュアルを熟読しないと使えないような製品は出したくありません。

 たとえば,ソフトウェアに関しては素晴らしい物にしようと我々の優れたソフトウェア開発チームが日夜働いています。
 その開発プロセスについて詳しくお話するわけにはいかないのですが,スウェーデンの文化として,「出す製品は,完璧でなければならない」というのがあります。本当にお待たせしてしまいましたが,完璧な製品をお届けするための努力をしていたということで,ご容赦ください。

4Gamer:
 「出す製品は,完璧でなければならない」という文化は初めて聞きました。そうならそうとして,それを開発中にアナウンスすればよかったようにも思いますが。

Mionix
Carsten Berger氏:
 スウェーデン人はとても謙虚なのです。何ごとも大げさに言うアメリカ人とはちょっと違うんですね(笑)。
 スウェーデンでは,自分の仕事に自信があるということが当然のことなのです。これは日本も同じだと思いますが,いずれにせよそういう理由で,私達は,それをわざわざアナウンスする必要があるとは考えていないのです。

4Gamer:
 そう言われてしまうと,「なるほど」と頷くほかないですが(笑)。
 さて,NAOS QGの話を続けますが,そうであるなら完璧なものを開発してからアナウンスしても良かった気がします。なぜKickstarterに出したのでしょうか。シンプルに開発費の問題ですか?

NAOS QGのKickstarterプロジェクトページ
Mionix
Carsten Berger氏:
 おっしゃるとおり,NAOS QGはまったく新しいマウスなので,開発費がかなりかかることが予想できました。Mionixは小さな非上場企業で,融資を募ることが難しかったので,Kickstarterでプロジェクトを発表した次第です。
 また,もう1つ,Kickstarterを利用することで,NAOS QGに興味を持った人達が,貴重なフィードバックをもたらしてくれるだろうという期待はありました。

4Gamer:
 期待どおりいきましたか?

Carsten Berger氏:
 ええ。もちろん批判もありますが,それを含めてKickstarterを利用する大きな利点と考えています。

4Gamer:
 となると,今後も素晴らしいアイデアが出た時にはKickstarterのようなクラウドファンディングを使って製品を開発するこということがあり得るわけでしょうか。

Carsten Berger氏:
 将来については何とも言えませんね。スウェーデンの会社は民主主義的で,皆が納得しないとプロジェクトが動きませんから,将来の製品の開発パイプラインがどうなるかは分かりません。

4Gamer:
 さて,最近はNAOS QGにスポットライトが当たっているわけですが,そもそもMionixは,寡作なメーカーという印象が強くあります。現在のところ,Mionixの中ではいくつくらいの新製品開発プロジェクトが動いているのですか。

Carsten Berger氏:
 弊社の素晴らしい開発チームが頭脳を結集して,たくさんのプロジェクトが動いています。ですので,これからを楽しみにしていてください,としか申し上げられません。

4Gamer:
 では質問の仕方を少し変えますが,現在のMionixは,PCゲームの周辺機器メーカーということになっていますよね。一方で,先ほどデータも出していただきましたが,日本ではモバイルが強く,あるいは北米ならゲーム機が強いわけです。さらにはVRにARといったものもありますが,いわゆる保守本流的なPCゲーム以外の市場についてどう考えていますか。

Carsten Berger氏:
 私達はいま,PCゲームの世界に新しい革新的な製品を送り出すことに注力しています。3年後4年後のことは分かりませんが,現在は,デスクトップPCにおけるゲーム体験を素晴らしいものにしていくということにフォーカスしているのです。

4Gamer:
 このご時世に,グローバルのゲーマー向け周辺機器ブランドで,PCゲームだけに注力していると断言しているところは,Mionixくらいではないでしょうか。もちろん,これはいい意味で言っていますが。

Carsten Berger氏:
 複数の分野にフォーカスするというのは(会社の規模からして)どだい無理な話でして,そんなことをすれば不十分な仕事しかできないでしょう。
 先ほどお話したように,スウェーデン人のメンタリティとして,完璧な仕事をするということがあります。1つのことにフォーカスして,その分野で完璧なものを提供していきたいですし,そうあるべきだと考えています。

4Gamer:
 「分からない」というところを突いてしまいますが,今後,モバイルやゲーム機,VRにARを含めたゲーム市場全体は,どうなっていくと思いますか。

Carsten Berger氏:
 そうですね,大枠では,性質の異なる2つのタイプへとゲームは分化していくように思います。1つはモバイルゲームで,もう1つがPCゲームです。
 モバイルゲームでは,さほど複雑な戦略を必要とせず,すぐにプレイできるゲームが主流です。それこそ3分程度でさっとプレイして楽しみ終わらせられるゲームですね。

 一方,PCゲームはモバイルゲームと比べると非常に複雑で,多くのスキルが必要になりますし,深く考えなければプレイできないゲームが多くありますよね。
 PC市場は変化していますし,エントリークラスのPC市場は縮小しているというデータもありますが,そのデータを出している調査会社自体が,ゲーマー向けPC市場は成長しているとも報告しています。そういった点からも,「非モバイルゲーム」的なゲームは,PCゲームの方向へ進んでいくのではないかと見ています。

 もちろん先ほどお話もしたとおり,3年後4年後,5年後にどうなっているのか,なんてことは分かりません。ただ,いずれにせよ私達は当面の間,自分達が面白いと思うことを,面白い場所だと思っているPCゲームの分野で,やっていくことになるでしょう。


グローバル企業らしからぬ開発スタイルを貫くMionix


4Gamer:
 時間も迫ってきました。ここからは,大きなテーマというより,小さな質問をいくつかさせてください。
 他社のゲーマー向け向けマウスは,この製品はどんなゲームに向いているということをアピールしますが,Mionixはそういうアピールをしませんよね。それには理由があると思うのですが,お聞かせ願いますか?

Carsten Berger氏:
 私達は「マウスをどう使え」と言う側ではありません。ゲームプレイをより良くするマウスを提供する側です。人はそれぞれ異なるので,「より良い一般的な使い方など」というものはないんですよ。
 たとえば,ストラテジーゲームのプレイの仕方はプレイヤーによってさまざまですよね。ですから,我々として,たとえばこのマウスはこう握ると良いよ,というアドバイスくらいはしますが,Minonixとして使い方を縛りたくはないのです。

4Gamer:
 別のメーカーが言っていたことですが,若いゲーマーたちは何を買っていいのか分からない,と。だからメーカーとして,このマウスはどんなゲームに向くのか,どう握るべきか,はっきり伝えたほうがいいという話もあったのですが,それとは見事に逆ですね。

Carsten Berger氏:
 どんなマウスを買っていいのか分からないというケースは確かにあると思います。ただ,今はインターネットがありますから,自分に適していそうなマウスは,オンラインで見つけることができるでしょう。

 そもそも,いまはメーカー側が言うことの重要性がどんどん減っていて,一方で第三者の意見やメディアの意見が重視されるようになっています。ここが,20年ほどで大きく変わった点で,いまはメーカー発表よりもAmazonのレビューを信用する人が多いくらいなんですよ(笑)。
 消費者がメーカーの言うことを信じなくなっているというのは,調査でも明らかになっていることです。ですので,我々がわざわざ何か言わなくても,メディアのレビューなどを確認してくれればいいのではないかな,と思っています。

4Gamer:
 これはさっき「民主主義的」というお話を聞いて,後で質問しようと思っていたことなのですが,Mionixがどのように製品を企画,開発するのか,フローのようなものを教えていただけませんか。

Carsten Berger氏:
 我々が製品を作ろうとするとき,他の会社とはちょっと違やり方をしています。
 まず,CEOやCTOも含めて皆で集まって,自分たちがやりたいことをホワイトボードにすべて書き出します。そして,それが可能かどうかはひとまず置いておいて,リストの中から,「これはいい」と判断したアイデアに,とりあえず取りかかってしまうのです。

4Gamer:
 ひょっとしてそれで「あれ,開発費が」という話になって,NAOS QGではKickstarterにかけたとか,そういう話ですか。

Carsten Berger氏:
 そういうことです。NAOS QGは典型的な例ですね。「こういうのが欲しいね」「これはやりたい」と“始めてしまった”プロジェクトです。

4Gamer:
 実に,グローバル企業らしからぬ動きですね。
 日本国内を相手にしている会社で,似たようなことをやっているところには心当たりもありますが,グローバル展開しているのにそれは本当に面白いです。

Carsten Berger氏:
 Mionixの製品は手に馴染み,使い心地がいいという評価をありがたいことによくいただくのですが,それは,このような開発スタイルを採用しているからでしょう。開発を始めるときには,技術的な限界とか,できる・できないといったことは考えません。
 もちろん,(最終製品まで持っていくためには)どこかで技術的なハードルを越えねばならないのですが,とはいえ,私達は自分たちが欲しいと思うもの,楽しいと思うものを作っています(から,泣き言を言ったりはしません)。

4Gamer:
 Mionixのメンバーが楽しいと思うものを作ればゲーマーも楽しめるはずだ,というわけですね。

Carsten Berger氏:
 そのとおりです。そして,実際に手に取っていただいた皆さんからのフィードバックも,とても楽しみにしています。実際,フィードバックの中に,とんでもなくいいアイデアがあったりするんですよ! それをまた製品に活かしていきたいと思っています。

4Gamer:
 フィードバックをMionixに日本から伝えたい場合は,どうしたらいいでしょうか。

Carsten Berger氏:
 国内の問い合わせ窓口(info@mionix.jpもしくはTwitterアカウント「@MIONIX_Japan」,Facebookアカウント「mionixjapan」)にお寄せいただければ,翻訳のうえ,Mionixに伝わるようになっています。もちろん,英語ができるなら,Mionixに直接,フィードバックを返していただいて構いません。お待ちしています。

4Gamer:
 直近ではNAOS QGのフィードバックが,日本からCarstenさん達のところへ多く届くことになりそうですね。本日は時間をいただき,ありがとうございました。

(インタビュー:佐々山薫郁,構成:米田 聡)

Mionix公式Webサイト(英語)

  • 関連タイトル:

    Mionix

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