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「FORIS FS2333」レビュー。低遅延IPSパネル搭載のナナオ製ディスプレイを,従来製品「FS2332」と比較してみる
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印刷2012/07/31 00:00

レビュー

新しくなった「IPSパネル搭載のナナオ製低遅延液晶ディスプレイ」は買いか

EIZO FORIS FS2333

Text by 米田 聡


FORIS FS2333
メーカー:ナナオ
問い合わせ先:EIZOコンタクトセンター
実勢価格:3万5000〜4万円程度(※2012年7月31日現在)
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 2011年に登場し,ヒット作となったナナオのゲーマー向け液晶ディスプレイ「FORIS FS2332」(以下,FS2332)。その後継となる製品「FORIS FS2333」(以下,FS2333)が,2012年7月13日に発売となった。
 視野角が広く高速なIPS液晶パネルと低遅延性,ナナオ独自の超解像技術というFS2232の特徴はまるごと引き継ぎつつ,プロゲームチーム「Fnatic」との共同開発によってゲーマー向けの要素を強化したと聞けば,4Gamerとしてもチェックせざるを得ないだろう。

 今回,FS2333の製品版を入手したので,新機能,そして性能テストの結果をお伝えしたい。


基本的にはFS2332を踏襲しつつ

細かな改良も見られるハードウェア


 FS2333は,表面がノングレア(非光沢)加工されたIPSパネルを採用する23インチワイド液晶ディスプレイだ。解像度1920×1080ドット。FS2332直接の後継製品ということもあり,FS2332の特徴だった超解像技術「Smart Resolution」(スマートレゾルーション)やコントラスト強調技術「Power Gamma」(パワーガンマ)といったところはそのまま引き継いでいる。

基本デザインはFS2332を踏襲。本体下部にスピーカーとボタン類を用意する点や,付属の「カラーシート」によってワンポイントをカスタマイズできる点も変わりなしだ。ただ,カラーシートは,FS2332の本体左右を貫くような長いものから,FS2333では本体中央に置かれる文字どおりのワンポイントになった。自己主張が過ぎる外観は好ましくないという個人的立場からいえば,FS2333の見た目は悪くない
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最大輝度は250cd/m2で,コントラスト比は1000:1。IPSパネルということもあり,角度を付けても色が大きく変わって見えるということはない(※右の写真で左奥が白く見えるのは撮影環境による映り込みである。ご了承のほどを)
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ナナオが公開している「独自開発の新世代映像プロセッサ」のイメージ
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 なので,そのあたりが初耳という人は,先にFS2332のレビュー記事をチェックしてもらえればと思うが,FS2333はFS2332を強化した製品ということで,FS2332では中間調(Gray-to-Gray)の応答速度が6msだったのに対し,FS2333では3.4msまで高速化しているのが大きな特徴だ。あくまでスペックシート上の話だが,5月に三菱電機が発表した「Diamondcrysta WIDE RDT272WX(BK)」の3.5msを抜いて,7月末時点ではIPSパネル搭載モデルとして国内最速ということになる。

 また表示遅延は,FS2332の1msに対し,FS2333では公称0.05フレーム――リフレッシュレート60Hzで0.8ms――と,若干の高速化を果たした。

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FS2333は液晶パネル本体側とスタンドの2ピース構成。前者が1kgほど軽くなり,持ち上げるのに便利な凹みも取っ手として用意されたことで,組み立てやすくなった
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本体の奥行きはFS2332よりもわずかに薄くなった
 本体は液晶パネル部とスタンド部の2ピース構造で,液晶パネル部のサイズは545(W)×54(D)×348.5(H)mm。FS2332と比べると背は40mm低く,厚みは4mm薄くなった。
 本体重量もFS2332の公称6.4kgからFS2332では同5.4kgと1kgも軽くなっており,実際に両手でつかんで持ち上げてみても,ずいぶん軽くなったと実感できるほどの違いがある。

 そしてこの軽量化は組み立てやすさに直結している印象だ。液晶パネル側の脚をスタンド部に付属の蝶ネジで留める仕様はFS2332から変わっていないため,組み立てるときは液晶パネル側を持ち上げてやる必要があるのだが,1kg違うと作業はかなりラクになる。さらにFS2333では本体上部背面に取っ手となる凹みが用意されていたりして,持ち上げやすいという特徴もある。

 組み立て後のサイズはスタンド部によって規定される奥行きが実測200mmほど。FS2333ではスタンドの高さが固定だったのに対し,FS2333では高さ調整が行えるようになっているのもポイントだ。高さは390〜450mmの範囲で調整できる。

高さ調節機構により,最大60mm高くできる。脚の部分が無段階で伸張する仕掛けだ
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スタンド部を底面側から見たところ。スイーベル機構が組み込まれている
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 調整といえば,スイーベル(首振り)が可能になったのも大きなポイントだろう。台座部分が回転し,左右に合計172度まで振れるようになった。IPS液晶パネルの特徴でもある左右178度という広視野角と合わせ,1台のディスプレイを使って複数の人とゲームを楽しむとき,首振りは便利に使えそうである。
 一方,チルト(前後傾け)は,上に25度までとなった。FS2332の場合,上に20度,下に5度となっていたが,下に向けるケースは少ないと判断されたのか,調整範囲が変更されている。

チルトのイメージ。本文では下方向のチルトがなくなったと述べたが,実際に写真を取ってみると,ほんのわずかに下へ向けることはできた
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 接続インタフェースは,本体向かって左側面のヘッドフォン出力(3.5mmステレオミニ)×1を除くと本体背面部に下向きで並んでおり,内訳は,下に示した写真で左から順にHDMI×2,DVI-D×1,アナログRGB(D-Sub 15ピン)×1,アナログライン入力(3.5mmステレオミニ)×1,アナログライン出力(3.5mmステレオミニ)×1。
 FS2332との違いは,アナログのライン出力端子が用意されたところ。HDMIやアナログ端子から入力したサウンドを,内蔵スピーカーやヘッドフォン端子から出力するだけでなく,外部アンプやアンプ内蔵スピーカーセットに対して出力できるようになったわけだ。

接続インタフェース仕様は基本的にFS2332を踏襲。ただし,アナログのライン出力が新たに追加された。ヘッドフォン出力を本体向かって左側面に搭載するのは従来どおりだ
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内蔵スピーカーの音質に過度の期待は禁物。ただ,カジュアルに楽しむ場合,ヘッドフォン出力やライン出力ともども選択肢があるのはいい
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 いまスピーカーの話が出たが,2chスピーカーを内蔵するのはFS2332と同じ。音質は端的に述べて「オマケ程度」であり,少なくとも音楽鑑賞に堪えられるようなものではないが,とりあえずゲームの音を鳴らしたいという場合には重宝するだろう。
 前述のとおり,本機ではそれに加えて外部出力の手段が用意されたため,FS2333にPCとゲーム機を接続し,音も含めた簡易AVセレクター的に使いたい場合,サウンド出力の選択肢が増えたのはありがたい。

 そんなスピーカーに挟まれる形で,本体前面中央には操作ボタンやセンサーが並んでいる。基本操作はここから可能だ。ただ,ボタンでの操作はお世辞にも行いやすいとはいえない。付属のリモコンを使うべきだろう。
 そのリモコンだが,FS2332では非常に安っぽかったのが,FS2332では一新され,ボタンに存在が出てきたことで,「安価なテレビに付属のリモコン」程度の雰囲気は出てきた。高級感があるとはお世辞にも言えないものの,大きな進歩とはいえるだろう。

本体前面の操作ボタンはFS2332と変わらず,入力切替(SIGNAL)とボリューム+/−,電源のみ(左)。右の写真で示した付属リモコンなしに細かな操作は行えないと考えておいたほうがいい。2つ並んだセンサーは,片方がリモコン用,片方が調光用だ
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Smart Functionsメニューには,本機の特徴でもある機能系の設定が集中している。メインメニューから辿る場合は「カラー調整」→「Smart Functions」で済むため,FS2332と比べると一段浅くなった
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 そんなリモコンの使い勝手を大きく向上させているのが,[Smart]ボタンだ。
 FS2332における独自機能は,メインメニューから「カラー調整」→「詳細設定」→「Smart Resolutions」と下っていかなければ設定できなかったのに対し,FS2333では,呼称が「Smart Functions」と改められた独自機能メニューを,[Smart]ボタンから直接呼び出せるようになっているのである。Smart Functionsメニューには調整したくなる項目が詰まっているので,ボタン一発で呼び出せるというのは大きい。

 ちなみに,今回はFS2333とFS2332と並べて試用したのだが,筆者が確認した限り,リモコン信号は同一だった。[Smart]ボタンはFS2332だと用意されていないため反応もないが,それ以外は新旧両モデルが同じリモコンで反応する。また,家電製品によくある“リモコンモードの切り替え”といった機能も用意されていないので,「FS2333を購入したら,手持ちのFS2332をセカンダリディスプレイにしたい」などと考えている場合は注意が必要だろう。
 幸いにして(?)リモコン受光部の有効角度は±30度と意外に狭いので,リモコンの角度をうまく変えれば対処できそうだが。


敵を見えやすくする「Smart Insight」は

まあまあ効果あり


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 ところで,ナナオはFS2333の発売にあたり,最大のウリが,新機能「Smart Insight」(スマートインサイト)であるとしている。Fnaticが開発に協力しているのはこのSmart Insight関連であり,これにより「暗いところに潜む敵が見えやすくなる」として,ちょっとびっくりするくらい“一点突破”的に推しているので,気になっている人も多いのではなかろうか。
 なお,先ほどナナオの独自機能群はSmart Functionsにまとめられたと述べたが,Smart InsightもまさにこのSmart Functions以下に用意されている。

 さて,「暗いところに潜む敵が見えやすくなる」というキーワードから,Smart Insightを「コントラストや明度を変えて,暗い部分の表示を浮き上がらせる機能」だと考える読者は多いだろう。実際,それでほとんど正解だが,それだけに留まらないとナナオは説明している。
 具体的には,「画面内の反射光を検出して物体の反射率を変える」処理を,内蔵の映像エンジンで行い,コントラストが出づらい暗部を浮かび上がらせているのだそうだ。コントラストや明度を変えるだけだと,暗部を“持ち上げる”ときに明るいところが白飛びしてしまうことが多いのに対し,Smart Insightならそういう問題が起きづらい,というわけである。

 設定項目は「RTS(Low)」「RTS(Medium)」「RTS(High)/FPS(Low)」「FPS Medium」「FPS High」という5段階で,RTS Lowが最も弱くかかり,FPS Highが最も強くかかるとされている。
 言わずもがなだが,設定名にRTSとつくのがRTS向け,FPSとつくのはFPS向けで,中間にあるRTS(High)/FPS(Low)というのは,「RTS用としては最も強く,FPS用としては最も弱くかかる」という意味だ。

 というわけで,さっそく適用結果を見てみよう。下に示したのは,Smart Insight以外の画質調整項目を無効化したうえで,Smart Insightの設定を変更しながら,「Battlefield 3」(以下,BF3)のシングルプレイモードから,やや暗めのシーンで画面を比較したものになる。

(C)2011 EA, EA SPORTS, EA Mobile and POGO are trademarks of Electronic Arts Inc. Battlefield: Bad Company, Battlefield 2, Battlefield 3 and Frostbite are trademarks of EA Digital Illusions CE AB. Xbox and Xbox 360 are trademarks of the Microsoft group of companies and are used under license from Microsoft. “PlayStation” is a registered trademark of Sony Computer Entertainment Inc. All other trademarks are the property of their respective owners.
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 基本的には,設定を強くするほど,映像中の暗い部分が浮き上がって見えることを確認できる。これはナナオの説明どおりなのだが,その観点に立ったときやや不思議なのは,RTS(High)/FPS(Low)よりもFPS(Medium)のほうが暗く見えることだ。サンプルで撮影したスクリーンショットだけでなく,筆者が実際にBF3をプレイしてみた印象でも,FPS(Medium)のほうがRTS(High)/FPS(Low)より暗かった。
 RTS(High)/FPS(Low)からからFPS(Medium)への切り替えでは,コントラストや明るさなど,映像エンジン側の演算のパラメータが直線的には変わらないようになっていて,それが原因なのかもしれないが,はっきりしたことは分からない。

 いずれにせよ,Smart Insightが行っているのは,コントラストや明度の調整だけだ。ただ,設定を上げていっても画面が白飛びしたりしないのは見事であり,このあたりは,Fnaticとともに調整を追い込んできた効果があったとはいえるかしれない。暗いシーンが多いゲームをプレイするとき,あれこれ考えなくてもプリセットを選ぶだけでいいというのは(ナナオが一押しとするだけの価値があるかはともかく)メリットといえそうである。

PSO2のゲーム画面をデモモードで表示させたところ。左の黄枠内でRTS(High)/FPS(Low)が有効化されている
(C)SEGA
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 念のため,BF3以外の画面も示しておこう。右に掲載したのは,「ファンタシースターオンライン2」(以下,PSO2)から,やや明るめの戦闘シーンで,RTS(High)/FPS(Low)に設定したときのものだ。
 ここではFS2333をデモモード――Smart Functionsメニューでリモコンの[BRIGHT+]ボタンを長押しすることで有効化可能な,画面を2分割して有効無効を比較できるモード――にして比較している。
 見比べると,Smart Insightの有効化でコントラストがきつめに調整され,岩肌が見やすくなるが,同時に,やたらと白飛びしたりしていないのも確認できるはずだ。

 次に,FS2332から受け継がれた超解像処理機能,Smart Resolutionの挙動もチェックしておきたい。
 Smart Resolutionというのは,解像度の低い映像にスムージングやエッジ拡張などを施し,キレイに見せようというもので,適用レベルを5段階から選べるのはFS2332と同じ。ただし,画面内で動いている部分(≒動画部分)のみ補正を行う「動画領域補正」周りにアップデートが入っている。

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 まずはメニュー周り。FS2332では,Smart Resolutionメニューの下に「動画領域補正」という項目が用意され,「有効」「無効」から選択できるようになっていたのだが,この「無効」は「動画領域補正をやめて,全画面で超解像技術を適用する」という意味であり,分かりにくかった。そこでFS2333では,「Smart Detection」というメニューが新設され,「フルスクリーン」と「動画領域補正」から選ぶという形になっている。超解像技術の対象を選択する機能としてSmart Detectionというキーワードが作られ,選択肢もそれに沿うよう変更された,といったところだ。

 もう1つは,超解像処理の不自然さ低減だ。FS2332の場合,動画領域補正を有効化すると,ゲームでは画面の一部分だけ超解像処理されて不自然に見えることがあった。挙動はレビュー記事でお伝えしているとおりだが,FS2333ではそれが目立ちにくくなっている。

 その理由を調べてみたが,どうやら,「『動画だ』と判定される領域がFS2333で変更されている」のがキモのようだ。下に示したのは,FS2333とFS2332の両方でデモモードを有効化してBF3を実行し,「動画領域だ」と判定された部分がシアンの枠で囲まれるようにしたものである。
 ここでは,木だけが風に揺られて動いているのだが,FS2332ではその木が動画と判定されて,木だけに超解像処理がかかるのに対し,FS2333では判定がなされていない。

FS2333(左)では動画判定されない木がFS2332(右)が動画判定され,そこだけ超解像処理されている
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 また,多くの木が風でたなびくシーンでは,FS2332だと動いている部分だけが動画判定されるのに対し,FS2333では画面全体が動画として判定されるようになったという違いも確認できた。

画面内に表示される木がすべて風で動いているようなシーンだと,FS2332は画面の上5分の4が動画エリアと判定されているのに対し,FS2333では画面全体が動画扱いされている
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 要するにFS2333では,「ゲームにおいて,画面の一部分だけ超解像処理され,されていないところと見栄えが変わってしまう」ようなことを減らす仕組みが取り入れられており,結果として,超解像処理における不自然さが減ったということのようである。
 ただし,動画領域補正を有効化すると,ゲームでは場面場面で超解像処理が有効になったり無効になったりとせわしなく変化するので,どうしても気になってしまう。ウインドウモードでプレイするのでもない限り,「Smart Detection」の設定は「フルスクリーン」にするか,Smart Resolution処理自体を無効化するかになるだろう。

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 なお,ディスプレイ製品で一般的なカラープリセットは,FS2333だと(FS2332と同じく)「カラーモード」として用意されている。選択肢は「Game」「Cinema」「sRGB」「Paper」「Eco」および,ユーザーが任意に設定できる「User1」「User2」の計7つ。Gameプリセットを選択するとSmart Detectionによる動画領域補正が有効になる点はFS2332から変わっていないため,Gameプリセットを選んだ結果,動画領域補正の挙動が気になった場合は,Smart Detectionの設定を「フルスクリーン」に変更するか,Smart Resolutionを無効化する必要があるわけだ。

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はっきりした色合いになる「Game」(左上)と,映画館のスクリーンを模したとされる「Cinema」(右上),国際電気標準会議が策定した色空間準拠の「sRGB」(左下),紙に印刷したイメージとされ,映像は黄色がかる「Paper」(中央下),バックライトを暗くしつつ色合いを調整する「Eco」(右)が基本プリセットだ
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 もう1つ,FS2332と比べて,Power Gammaがわずかに変更されていた点も指摘しておきたい。
 冒頭でコントラスト強調技術と紹介したが,簡単にいえば,Power Gammaというのは「クリアではっきりした色合いになる」とされるガンマ設定プリセットのこと。FS2332の「ガンマ設定」メニューには,「1.8」「2.0」「2.2」「2.4」「2.6」「2.8」に加えて「Power1」と「Power2」が用意されていたが,FS2333では数字設定が同じままPower Gammerが「Power」の1つだけになっている。

 下に示したのは比較的くっきりめの設定値となるガンマ設定2.2とPower Gamma設定とを比較したものだが,たしかに「Power」だとはっきりした色合いになる。こればかりは好みなので,どのガンマ設定を使うかは,いろいろ試してみてほしい。
 なお,ガンマ設定が変更できるのは「カラーモード」が「Game」「User1」「User2」のいずれかに設定されている場合のみ。それ以外のカラーモードでは,ガンマ値の変更は行えない。

ガンマ設定2.2(左)とPower(右)で比較してみたが,Powerのほうがはっきりした色合いになる
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FS2332と比べて遅延はわずかに低下

Smart Resolution有効時も遅延は大きくならず


 FS2332は,IPS液晶パネルを搭載しながら,遅延や残像面での性能が良好だったが,カタログスペックでFS2332を上回るFS2333は期待どおりの実力を示せるのか。ここからはFS2333とFS2332とで速度関連の比較を行っていこう。

 今回は両製品の解像度をパネルネイティブの1920×1080ドットに固定。PCからはDVI-Dから垂直リフレッシュレート60Hzで映像を出力し,それをサンワサプライ製DVIスプリッタ「VGA-DVSP2」を使って2つに分割し,FS2333とFS2332とに同じ映像を表示させるシステムを構築して比較することにした。
 ディスプレイ出力した映像は,カシオ製のハイスピードカメラ「HIGH SPEED EXILIM EX-FH100」(以下,EX-FH100)から240fps設定で録画して見比べることになる。

 というわけでまずは,Smart Resolution機能をすべて無効化。表示を滑らかにする機能で,FS2332から継承された機能でもある「オーバードライブ」も無効化し,“余計な”画像処理をカットした状態で比較してみよう。下に示したのは,「LCD Delay Checker」(Version 1.4)を実行したときのものになる。
 端的に述べてほとんど違いはないのだが,外周のドットが次のコマへ移るところで何度か再生を止めたりしてみると,ごくわずかにFS2333のほうが速く進んでいる気配が見て取れる。


 念のため,「Refresh Rate Multitool」(Version 1.4)も実行してみたることにした。Refresh Rate MultiToolは,ユーザーが設定したコマ数に応じて白と黒とを書き換えるような描画を行うことで,液晶ディスプレイの応答速度をチェックするツールである。
 今回は60Hzというリフレッシュレートに合わせて6×10コマの設定を行い,白い長方形が左上から右下まで改行を繰り返しながら1秒で到達するように設定している。

 その結果が下のムービーで,こちらでもほとんど変わらないが,やはり,何回かムービーを再生したり止めたりを繰り返すと,白のブロックが次のコマへ進む速度でFS2333のほうがFS2332よりほんのわずかに速いことが分かる。FS2332は,TNパネルを採用して高速応答性を謳う液晶ディスプレイに迫る速度が注目を集めたが,FS2333ではそんなFS2332よりもフレームの切り替わる速度が高速化され,TNパネルのそれに近づいていると見てよさそうだ。


 では,Smart Resolutionによって超解像技術を有効化したらどうなるか。Smart Resolutionではディスプレイ内蔵の映像処理エンジンで画像の加工が行われるため,原理的には遅延が大きくなるはずだ。
 ここでは,FS2333のみSmart Resolutionのレベルを5に設定し,Smart Detectionを「フルスクリーン」にしたうえで,LCD Delay Checkerを実行したところだ。比較対象として用意したFS2332では先ほどと同じく,一切の映像処理を行っていないが,注目したいのは,ここでもFS2333のほうがわずかながら応答が速いことである。
 要するに,Smart Resolutionを無効化しようが有効化しようが応答速度にほとんど違いはないわけで,ナナオ独自の映像処理エンジンは相当に高い性能を持っていることになる。


 最後に,先ほど軽く触れたオーバードライブもチェックしておきたい。
 オーバードライブというのは,残像感を低減して表示を滑らかに見せるという機能で,設定は「オフ」「普通」「強」の3つが用意されている。

 下に示したムービーは,FS2333とFS2332の双方でOver Driveを「強」に設定したときのものだが,残像感に両製品で違いはないので,このあたりはまったく,もしくはあまり変わっていないと見るべきだろう。


 なお,FS2332のレビュー記事でも指摘しているとおり,オーバードライブというのは基本的にビデオ再生用の機能だ。ゲームプレイにあたって不用意に有効化すると,残像感が低減される一方で,マウスカーソルの動きが不自然になったりするので,ゲームプレイ時は無効化しておくことを強く勧めたい。


Smart Insightは使い勝手込みで評価するならアリ

FS2332の後継として全体的な完成度はより高まった


 以上,「低遅延のIPS液晶を搭載するゲーマー向け液晶ディスプレイ」の後継製品として,FS2333がFS2332から何が強化されたのかを中心に見てきた。

画像集#047のサムネイル/「FORIS FS2333」レビュー。低遅延IPSパネル搭載のナナオ製ディスプレイを,従来製品「FS2332」と比較してみる
 最大のポイントは,もともとIPSパネル搭載機として良好だった表示遅延が(わずかながらも)さらに短くなったこと。IPSパネル特有の破綻ない色表現と高速応答性を両立しているというのは,それだけで大きな魅力だ。

 Fnaticと共同開発したとして,ナナオが強くアピールしているSmart Insightは,謳われているほどすごい機能というわけではない。だが「暗い画面を,破綻なく明るくできる機能」をリモコンから簡単に設定できるというのは,使ってみると便利だったりする。使い勝手まで込みで評価するなら,Smart Insightはアリだろう。

 一方,Smart Resolutionやオーバードライブは基本的にビデオ再生向けの機能だ。Smart Resolutionも,解像度が低い旧世代のゲームタイトルを(いわゆるアーカイブやバーチャルコンソール経由などで)プレイするなら意味があるかも,といった程度。オーバードライブは前述のとおり,ゲーム用途なら無効化すべきであり,その意味で,垂直リフレッシュレート120Hzの液晶パネルを搭載した液晶ディスプレイと比べると,残像感はどうしても一段落ちる。この点は押さえておく必要があると思われる。

 その意味でFS2333というディスプレイは,ゲーマー向けでありつつも,あまり尖ることなく落ち着いていたFS2332の不満点を潰して,より完成度を高めてきた製品といえるかもしれない。
 60Hz表示が基本となるゲーム機との接続を前提に,PCでもゲームをしたりビデオを見たり,そのほかさまざまな一般作業をしたりしたい。そしてそれらをディスプレイ1台でまかないたいという人に,FS2333は勧められる製品である。

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ナナオのFS2333製品情報ページ

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