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オブイェークト! 戦車の王国へようこそ。「World of Tanks」の世界大会に合わせて行われた「クビンカ戦車博物館ツアー」をレポート
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印刷2012/10/06 00:00

イベント

オブイェークト! 戦車の王国へようこそ。「World of Tanks」の世界大会に合わせて行われた「クビンカ戦車博物館ツアー」をレポート

画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / オブイェークト! 戦車の王国へようこそ。「World of Tanks」の世界大会に合わせて行われた「クビンカ戦車博物館ツアー」をレポート

 皆さん,オブイェークト! さて,2012年9月24日に掲載した記事でもお伝えしたとおり,ベラルーシのゲームメーカーであるWargaming.netは,ロシアの首都モスクワで「Ural Steel Championship 2012 Grand Finals」を開催した。これは,同社がサービス中のオンライン戦車ゲーム「World of Tanks」の世界一のチームを決める世界大会だ。今回で2回目となるが,日本を含め,世界中の強豪チームが集まったビッグイベントで,ロシアのテレビ局が中継までしていたというから驚き。日本チームの結果を含め,トーナメントの詳細は掲載した記事を参照していただくとして,ここでは,その前日に開催された「クビンカ戦車博物館ツアー」の模様をお伝えしようと思う。

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「World of Tanks」公式サイト


クビンカ戦車博物館の入口に立つ,アイドルの天海春香さん(17歳)。
(撮影協力:「アイドルマスターモバイルi」
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 2006年の「ムンスター戦車博物館」に続く,4Gamer戦車博物館シリーズの第2回となる今回だが,そんなシリーズ初めて聞くという人も安心してほしい。言ってるほうも初めて言っているからだ。オブイェークト! 総合ゲームサイトである4Gamerがなぜ,戦車博物館の記事を? という人もいるかもしれないが,「ゲームサイト」じゃなくて,前のほうの「総合」の部分のことじゃないかと思っていただければ幸いだ。

 そうは言うものの,自慢じゃないがモスクワへ行くのはこれで3度め,クビンカ戦車博物館へは2度めとなる。えっへん。あ,自慢しちゃった。はわわ。最初にモスクワに行ったのは1990年のことで,当時はソビエト連邦と呼ばれていた国の首都だった……え,まだ生まれてない? うっそー。時はまさに東西冷戦の真っ最中(というか,終わりそうだったけど)であり,ソ連の情報はほとんど伝わってこない時代。だが,いわゆる鉄のカーテンの向こう側ではペレストロイカなるものが進行中だったらしく,「トロとイカは分かるが,ペレスが分からない」などとくだらないことを言っていたら,1991年にソ連は崩壊した。

ゲートをくぐると,戦車がお出迎え。たちまち異世界へ。オブイェークト!
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 2度めの訪問は,崩壊の翌年となる1992年のことだ。ソ連がロシアになり,情報公開が進み,それまで秘密のベールに包まれていたクビンカ戦車博物館に一般の人でも行けることになったので,物好きな人達がわざわざ出かけていったのだが,その中の一人が私だった。現在の私はにわかプロデューサーだが,当時の私はソ連の戦車,それも現用ソ連戦車の専門家であり,ソ連戦車ファンのタワーリシチ達と喫茶店でよくソ連戦車談義に花を咲かせていたのだが,自分で書いてて,キモッ!

 もっとも,なぜソ連現用戦車なのかというと,それは,具体的な情報がほとんどなくて,適当な想像をしゃべっていれば大丈夫だったからだ。しかし,ソ連崩壊に伴って多数の情報が入るようになり,ほどなく私は馬脚をあらわすことになる。そのとき以来,実に20年ぶりの訪問だ。この20年,私にもロシアにもいろいろなことが起きたが,まさか,今日に至るまでまだ独身だとは想像もしていなかった。

クビンカ戦車博物館の至宝,マウス重戦車。狭くてカメラが引けないうえに,対象がやたらでかいので,全部をフレームに収めるのは無理
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 クビンカ戦車博物館はモスクワの郊外にあり,バスでだいたい1時間半ほどかかる。途中でメディアの一人がトイレに行きたくなり,適当な場所でバスを停めてもらったのだが,そのメディアの一人とは私のことだ。いやほら,歳とるとトイレが近くなってね。

マウス重戦車とアイドルの天海春香さん(17歳)
(撮影協力:「アイドルマスターモバイルi」
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 クビンカ戦車博物館はロシア軍のクビンカ基地に隣接して建てられており,以前は赤軍の装甲車両研究施設だった。後述するようにテストコースも用意してあり,戦車兵の教育にも使われている。
 博物館のコレクションは300両以上と言われており,第二次世界大戦のアイテムとしては,ドイツが開発したマウス重戦車が非常に有名だろう。マウス重戦車は,1941年末頃からスタートしたドイツの超重戦車開発計画に基づき,作ったり止めたりの紆余曲折を経て終戦間際に2両だけが完成した。戦後,一両は放置された状態で,もう一両は爆破処理された状態でソ連軍に鹵獲され,各種試験に供されたのち,2両を組み合わせる形で1両が組み立てられ,最終的にここクビンカに落ち着いた。まるで見てきたように書いているが,そういうことらしい。

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オレ(右)とマウス重戦車(左)
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ちょっとお客さん,戦車の下に潜っちゃダメ

 車体前面には砲弾を受けた跡が数か所確認できるが,マウスが実戦に出たことはないので,ソ連軍が試験を行った際のものだろう。
 World of Tanksでは最強の戦車だったものの,現在は「ちょっと微妙」とされるマウス。見上げるばかりの巨体の前に立つと,まさに鉄の塊,鉄塊であり,ここまでやるかというか,肉食ってるヤツらには勝てないというか,轢かれたらとんでもないことになるというか,そうした大人っぽい感想を抱かざるを得ない。

クビンカ戦車博物館の誇る,第二次世界大戦中のドイツ戦車コレクションの一部を紹介。これはナウなヤングなら誰でも知っているティーガーI
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1号戦車
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2号戦車
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3号戦車
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地雷原啓開用車両
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ヴァッフェントレーガー
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ヤークトパンター
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ティーガーII
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ヤークトティーガー

謎のボール戦車。なんだこれ?
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 このほか,ドイツの有名どころと言えば,小学生でも知っているティーガーIティーガーIIヤークトティーガーヤークトパンター3号戦車などが静かにたたずんでいる。
 珍しいところでは,第二次世界大戦末期に作られた簡易対戦車自走砲,ヴァッフェントレーガー(アルデルト・ラインメタルタイプ)があるが,個人的にはクルップ・シュタイアタイプのほうが好みだ。そんなこと言われても困ると思うが。また,「これは,いったい何なのか」がいまだに分からないボール戦車も,クビンカのコレクションの一つ。なにこれ?

 ちなみに,20年前の初訪問のときは,ロシア軍の佐官が「なんでおれが」みたいな感じで面倒くさそうに戦車の説明をしてくれたが,今回は,説明担当のご婦人が,それぞれの戦車の来歴だのなんだのを立て板に水という感じで詳しく説明してくれた。惜しむらくは,全面的にロシア語だったため,何が何だかさっぱり分からなかったという点だが,これは私が「英語を話す説明担当者のいるグループに入るように」という指示をうわの空で聞いていたせいであり,誰も責めることはできないだろう。

(左)お昼どきには,野戦炊事車が出動し,糧秣を配給してくれた。(右)出されたものは,旧赤軍の食事と同じだとか。味は悪くなかったが,原料が何なのか最後まで分からなかった
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戦車の説明をしてくれたアイドルの……違った,博物館の女性
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 言うまでもなく,旧ソ連戦車のコレクションも豊富で,とくに第二次世界大戦中から戦後にかけての試作重戦車の中には,実物がここにしかないというものも多い。ご存じのように,ソ連重戦車は,大戦中のJS-2から,大戦末期のJS-3,そして戦後のT-10へと進んでいったのだが,その途中やT-10以降,表には出てこなかった,さまざまな試みが行われていたことが分かる。ちなみに現在,「重戦車」というカテゴリはなくなり,「主力戦車」に一本化されているのは,幼稚園児でも知っていることだ。

オブイェークト279のサイズを分かってもらうため,手前に人を立たせてみたが,この人,ちょっと背が低すぎたかもしれない
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オブイェークト279
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 さて,コレクションの中で有名なのはやはり,オブイェークト279だろう。掲載した写真からも分かるように,特徴的な車体形状はまるで円盤のようで,その下には左右2本ずつ,計4本の履帯があるユニークな戦車だ。核戦争下での継戦能力に開発の主眼が置かれており,車体の形状は核爆発の強烈な爆風をやりすごすため,また4本の履帯は,道路も何もかもがなくなった土地での機動力を確保するためのものだという。そう考えると,ちょっと恐ろしいっスね。

 主砲は130mmで,重い砲弾を扱うために装填補助装置が用意され,また,足回りもソ連戦車としては複雑かつ贅沢な作りになっていたので,結局コスト高で不採用になったという。ともあれ,設計図を描いている途中に,「これでいいのかな?」と思わなかったのだろうかという気にさせる逸品だ。

旧ソ連の試作戦車コレクション
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 ここでさり気なくクビンカ戦車博物館そのものの説明をすると,戦車の収蔵された建物は7棟あり,「ソ連,ロシア戦車」「アメリカ,イギリスの戦車」「第二次世界大戦中のドイツ戦車」,そして「その他の国の戦車」といった具合に分類されている。ソ連,ロシアの戦車は,重戦車,中戦車,軽戦車といった感じで3棟に分かれており,年代的には,歴史上初の戦車であるイギリスのMk.Iから現用戦車まで揃っている。
 掲載した写真からも分かると思うが,一両あたりの展示スペースはそれほど広くなく,つかぎゅう詰め状態。採光も良くないので,かなりカメラマン泣かせだ。戦車に近づけないようにロープが張られているが,あまり気にしている人はいなかったようだ。

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そのほかの国の戦車のコレクションを,かいつまんで紹介しよう。左は,日本の四式軽戦車(ただし,車体が四式軽戦車のものとは異なる。たぶん現地改造車ではないかと思われている)。右は,特二式内火艇
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ハンガリーのトゥラーン戦車(左)と,同じくハンガリーのズリーニィ突撃砲(右)
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スウェーデンが第二次世界大戦後に使用したStrv.74戦車(左)と,ポーランドの豆タンク,日高,ではなくてTKS(右)
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 というわけで,どれだけいるのかはちょっと分からないが,クビンカに戦車の撮影に行こうと思っている人は,それなりの準備が必要だろう。
 そんな感じで博物館めぐりがいったん終わったあと,管理棟の奥で,メディア向けの立食パーティーが行われ,そのあと,実際に戦車を動かしてくれるというイベントが実施された。「戦車を動かす」って,なんかの聞き違いだろうと思いながら,指定されたテストコースに向かうと,そこにはWorld of Tanksのロゴが貼り付けられたT-34/85戦車が我々を待っていたのだ。おお,すごいかも。

パーティーが行われた基地の管理棟と,右はその内部。一般の人が簡単に入れる場所ではないらしい
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 これは,例えば毎週土曜日にはクビンカで戦車走行のデモがありますとかそういうのではなく,このツアーのために用意されたものであるとのこと。お金かかってます。日本の場合,富士総合火力演習で90式や10式の機動が実際に見られるが,総火演では観客と戦車がだいたい1〜2kmぐらい離れているんじゃないかというのに対し,こちらは目と鼻の先を走ってくれるのだからビックリだ。

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世界のメディアに向けて実動デモを行った,T-34/85
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 まずは,テストコースを一周するT-34/85。当時のままのエンジンを使っているのかどうかは分からないが,エンジン音は思ったよりも静かで,低音が腹にこたえる。もっとも,T-34/85は戦後も多くの国で使われており,就役期間も長く(1990年代のユーゴスラビア紛争でも使われている),その上バリエーションも多いので,どのエンジンなら「当時のまま」なのかと聞かれても,よく考えたら私には答えられないかもしれない。てへっ。
 それはともかく,続いてはメディアを戦車の上に乗せての走行という,輪をかけて信じられないアトラクションが行われた。最初は当然,誰もがおっかなびっくりだったが,一周してくるとさすがに面白そうに思えたのか,我も我もとなった。


戦車の車内
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 メディアをとっかえひっかえ,だいたい6〜7周はしたと思うが,途中で私も誘われたものの,そのときに脳裏に浮かんだのは戦車跨乗兵,つまりタンクデサントの姿だった。
 歩兵は普通APC(装甲兵員輸送車)やトラックで移動するものだが,そのへんの装備が不足しがちだったソ連軍は第二次世界大戦中,多数の歩兵を戦車の上に乗せるタンクデサントを多用したのだ。しかしなにしろ,隠れる場所もない戦車にむき出しの歩兵がしがみついているのだから,損耗率はきわめて高く,近くに砲弾が落下すると大きな被害が出たという。もちろん,疲労のあまり手を滑らせ,転がり落ちる兵士も少なくはなく,なんとなく,悲鳴と共にT-34/85から転がり落ちるアジアのメディアの姿が見えたような気がしたので,ちょっと遠慮しておいた。
 だが,今は反省している。やっておけばよかった。次回はメディアを乗せたまま,大砲を撃ちまくってくれるそうだ。ウソだけど。

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まさにタンクデサント状態。一周回って帰ってきたとき,2〜3人いなくなっていた気がする
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せっかく持って行ったのに
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 以上で今回のクビンカ戦車博物館ツアーは終了となった。帰りのバスの中で,またしてもメディアの一人がトイレに行きたくなり,バスを停めてもらったが,そのメディアの一人とは今回も私だった。いやほら,歳のせいで(以下略)。
 さらに,赤の広場で開催されるはずだった,「天海春香モスクワ公演」も残念ながらうまくいかなかった。モスクワといえば赤の広場。赤キャラといえば春香,という冒頭の一文まで考えていたのだが,よく考えたら赤の広場にディスプレイなんかあるわけねーだろ! PlayStation 3が重いだけだったので,もっと周到な計画が必要だと痛感したのであった。

夜にWargaming.netの人に連れて行かれた「赤の広場」。案の定,迷子になった
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「World of Tanks」公式サイト

「World of Tanks」の世界大会「Ural Steel Championship 2012 Grand Finals」がモスクワで開催。初参加となる日本チームの活躍はいかに


 というわけで,かなり無理矢理だが,World of Tanksを始めるなら今だ。今しかない。個人的にも,来年こそモスクワ公演……じゃなくて,日本チームの優勝が見たいと願っているのでぜひWorld of Tanksにトライしてほしい。

(C)窪岡俊之 (C)NBGI
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