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アーケードスティックにゲームパッド,プロゲーマー事情まで――ゲームデバイスの黒船「Mad Catz」に,日本進出のあれこれについて聞いてみた
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印刷2011/10/29 00:00

インタビュー

アーケードスティックにゲームパッド,プロゲーマー事情まで――ゲームデバイスの黒船「Mad Catz」に,日本進出のあれこれについて聞いてみた

 2011年6月28日,北米のゲーム周辺機器メーカーであるMad Catzが,「日本法人を設立する」と公式Webサイトで発表した。
 米国のサンディエゴ市に本社を置く同社は,北米市場において大きな市場シェアを持つゲームデバイスの巨大メーカーだ。日本ではあまり知名度が高くないため,ピンと来ない人が多いかもしれないが,近年は格闘ゲーム用のアーケードスティック製品で,日本でも着実にファンを増やしつつある。

 そのMadCatzが,いよいよ本格的に日本進出を狙うとなれば,4Gamerとしても黙ってはいられない。というわけで,日本法人の業務開始に合わせてインタビューを申し込んでみたところ,東京ゲームショウ2011のタイミングで来日した担当者に話を聞くことができたので,今回は,そのときの内容をまとめてお伝えしようと思う。

 質問に答えてくれたのは,Mad Catz InteractiveのグループプロダクトマネージャーであるChris Carroll(クリス・キャロル)氏と,米Mad Catz プロダクトマネージャーのMark Julio(マーク・フリオ)氏。また日本法人であるマッドキャッツの松浦武敏代表取締役社長にも同席してもらっており,氏には日本法人の今後についても話を聞いている。


「マッドキャッツ」公式サイト



ゲームデバイスの巨大メーカー「Mad Catz」とは何者か


4Gamer:
 まずはMad Catzの沿革からお聞きしたいと思います。というのも,日本から見ると,Mad Catzというのはかなり謎に包まれた会社でして。この機会にぜひ全貌を明らかにしておきたいと。

Chris Carroll氏(以下,Chris氏):
 分かりました(笑)。Mad Catzは,5,6年前までは,ゲーム機の純正コントローラの代わりとして店頭で買ってもらえるような,比較的安価な周辺機器を作る会社でした。その後,より機能や性能の良い製品をブランドとして販売するという方向に方針を変え,今に至ります。現在では開発にも注力していて,このようなラインナップを取り揃えているというわけです。

4Gamer:
 いわゆるプレミアム製品戦略というわけですね。

Chris氏:
 はい。その新しい戦略に基づいて,Saitek(サイテック)TRITTON(トライトン)といったブランドを買収し,現在はMadCatz本体を含めて5つのブランドでマルチブランド展開を行っている状況です。商品ラインナップの拡充という意味では,大きく飛躍できたと考えています。

4Gamer:
 各ブランドの方向性や位置づけについて説明いただけますか。

Mad Catz Interactive グループプロダクトマネージャー Chris Carroll(クリス・キャロル)氏
Chris氏:
 はい。ではまずMad Catzブランドからですが,これは,ゲーム機向けの周辺機器ブランドです。据え置き機から携帯機までを広くカバーし,対象も一般層からハードコアユーザーまで,幅広く対応できるラインナップです。今回紹介したいのは,この「Street Fighter IV Arcade FightStick Tournament Edition S」(以下,TE-S)という……。

4Gamer:
 ああ,これは個人的にも愛用しています(笑)。

Chris氏:
 それはどうも(笑)。これは「ストリートファイターIV」シリーズと連動して展開しているアーケードスティックの製品です。このMark(Mark Julio氏)が製品マネージャーで,カプコンと協力して開発にあたっています。

Mark Julio氏(以下,Mark氏):
 このアーケードスティックは,既存製品にゲームのロゴを付けただけという,“よくあるライセンス製品”とは一線を画したものを目指して開発しました。プレイフィールやデザインなども含めて,格闘ゲームをプレイする楽しさがもっと広がるような製品にしたかったんです。
 今回お持ちしたのはこのアーケードスティックだけですが,「FightPad」というゲームパッドも用意していまして,そちらも一定以上の評価を得ています。

Mad Catz
「Street Fighter IV Arcade FightStick Tournament Edition S」(W)
Mad Catz
「FIGHTPAD」

4Gamer:
 アーケードスティック製品について,もう少し突っ込んで聞かせてください。
 アーケードスティックというのは,マウスなどと比べても構造が単純な製品ですよね? となると,他社製品との差別化や,製品自体の革新が,ほかのジャンルより難しいと思うのですが,そこはどうお考えですか。

Chris氏:
 他社製品との違いはあると思っています。ユーザーからは「Mad Catzはデザイン重視」と思われているかもしれませんが,我々には,長年つちかってきた部品や構造の研究成果,そしてユーザーからのフィードバックがあり,そういうものが,最終的な製品には現れてきます。違いの分かるプレイヤーには,そこは必ず分かってもらえるはずです。

4Gamer:
 では製品の革新という観点ではいかがでしょう。アーケードスティックは,まだ進化の余地を残していますか? 個人的な意見ですが,今のTE-Sがあれば,あと10年はこのまま使い続けてしまいそうです。

Chris氏:
 それはもちろん,余地があると考えています。そもそもTE-Sを含む「Arcade FightStick Tournament Edition」(以下,TE)シリーズ自体が,かつてのスタンダードなアーケードスティックよりも優れた製品を求めた結果として生まれたものですから。今後はTEが基準になり,「次のステップ」に進むことになるでしょう。
 実際TEシリーズだけでも,すでに3製品(TETE-S,そして間もなく発売予定の「STREET FIGHTER X 鉄拳」モデル)がありますが,それらを(登場順に)比べると,その進化は感じていただけると思います。

ウメハラ(DAIGO)選手
4Gamer:
 なるほど。
 ところでMad Catzさんといえば,格闘ゲーマーのプロ化にも積極的ですよね。プロゲーマーとして最初に名乗りをあげたウメハラ選手を皮切りに,「Team Mad Catz」として精力的な活動を行っていますが,「狙い」というのはどこにあるのでしょうか。

Chris氏:
 そうですね……。こと格闘ゲームに関していえば,我々は彼らに,Mad Catzの製品やブランド,あるいは会社そのものを体現し,広める役割を期待しています。なので,「Team Mad Catz」に求められるものは,ただ単純な「強さ」だけではないんです。

4Gamer:
 というと?

Chris氏:
 例えばプレイスタイルであったり,人柄であったり,コミュニティにおける影響力であったり。もちろんイベントやインタビューなどでの露出もありますから,そのすべてですね。例えばDAIGO(=ウメハラ選手)であれば,その強さはもちろん誰もが認めるところですし,人柄やプレイスタイルも,多くの一般プレイヤーから尊敬されている。そこがMad Catzと非常に相性が良いわけです。

4Gamer:
 Mad Catzが始めた「格闘ゲーマーのプロ化」というのは,日本人にとって,初めてプロゲーマーが身近な存在になったことと同義だと思うんですね。もちろんFPSやRTSのプロというのは以前から存在しましたが,FPSやRTS自体が日本ではニッチだったこともあり,どうしても“それはどこか遠い国の話”といった感が否めなかったというか。
 なので日本のゲーマー達は,今プロゲーマーという職業に興味津々で,同時にいろいろと疑問を持っています。たとえば「ゲームだけでほんとうに食べていけるの?」とか「スポンサードする企業にどんなメリットがあるの?」とか。日本のゲーマーに向け,そのあたりについて回答をいただけるとありがたいのですが。

Chris氏:
 プロゲーマーが果たしてゲームだけで生活できるのか,ですが,プロの中でも人それぞれなので,一概には言えないでしょう。
 ただ,我々にとって重要なのは,彼らの活躍の場が世界中に存在していて,事実結果を出していることです。我々はそこにコストを支払って,彼らサポートする。それが成り立っている以上は,プロゲーマーは必要とされる存在です。その意味で質問の回答は,イエスと言っていいと思います。

4Gamer:
 確かに。おっしゃるとおりですね。

Chris氏:
 もう1つ,我々にとってのメリットといった場合には,製品開発とマーケティングの2つの側面が考えられます。
 まず製品開発の側面からお話ししますと,Mad Catzはユーザーからのフィードバックをとても重視する企業です。「フィードバック」は,もちろん一般ユーザーから寄せられたものも含みますが,プロとして活動するトッププレイヤーからの意見というのは,とくに重要ですね。ゆえにプロゲーマーの存在は,非常に有益であるといえます。
 もう一方のマーケティングの側面は,先ほどのブランディングの話ですね。確かにゲームというと少々特殊に思えるかもしれませんが,野球のようなスポーツと一緒だと思っていただいていいのではないでしょうか。

4Gamer:
 Mad Catzがウメハラさんのスポンサードを始めてから,ほかの企業も続々とプロ契約を結ぶようになりましたが,この状況についてはいかがですか?

Chris氏:
 それは格闘ゲームのコミュニティ全体の為にも必要なことだと思いますし,歓迎すべきことだと思います。

Mad Catz プロダクトマネージャーのMark Julio(マーク・フリオ)氏
Mark氏:
 コミュニティ全体にとっても,そのほうが健全です。彼らにとっても,ライバルがいれば,スキルにより磨きをかける必要が出てきますし,プレイスタイルやパフォーマンスの洗練にもつながります。

4Gamer:
 仮に,「では自分もTeam Mad Catzに入ってプロになりたい」と思っている日本の格闘ゲーマーがいたとすると,何をすればいいでしょうか。

Chris氏:
 やはりまずは強くなること(笑)。
 でもそれだけではダメなんです。バスケットボールでも,練習してどんどんシュートを決めていけば,勝率はどんどん上がりますよね。しかし,それだけでは足りない。ほかの人とは違うカリスマ性のようなものが必要です。

Mark氏:
 プロゲーマーの資質というのは,自分が強いだけではなく,ほかのプレイヤーへの影響力だと思います。だから,たとえばときどマゴがやっているような,コミュニティをサポートしたり,プレイヤー全体のレベルを引き上げたりする活動というのは,そのひとつの答えだと思いますね。


Mad Catzを形作る,5つのブランド


4Gamer:
 なるほど,ありがとうございます。少し逸れてしまいましたので,話を戻しましょう。

Chris氏:
 実はMad Catzブランドでは,さきほどのシリーズとは別に展開する予定の製品がありまして,まずはそちらから説明したいと思います。これは今までのMad Catzブランド製品とはある意味対極的な位置づけにあるもので……(と言って,下の写真に示したゲームパッドを取り出す)。

Mad Catz「Major League Gaming Pro-Circuit Controller」

4Gamer:
 おお,これは……。

Chris氏:
 これは「Major League Gaming」(MLG)というe-Sports競技に参加する層をターゲットにした,プロ仕様のゲームパッド製品です。Xbox 360のこのタイトルのときにはこう使いたい,PlayStation 3のこのタイトルではこう使いたい,といった細かなニーズに対応するために用意したものになります。それらを個別に提供するのではなく,ユーザー自身で自由にカスタマイズしてもらおう,というわけですね。

Mad Catz
上はセガサターンパッド準拠,左下はPlayStationのDualShock準拠,右下はXbox 360準拠とされる各D-Padモジュール。Xbox 360準拠とされるD-Padモジュールだけは,Xbox 360互換というより,オーソドックスな“十字キー”風に見える
Mad Catz
アナログスティックモジュールも,中央が膨らんだPlayStationタイプと窪んだXbox 360タイプの2種類が用意されている
4Gamer:
 なるほど。アナログキーとD-Padがコンポーネントになっていて,その配置を自由にできるんですね。……いや,アナログスティックやD-Padの形状すらも選べるのか。これは(とD-Padコンポーネントの1つを手に取り)いわゆるセガサターンパッド準拠。なるほど格闘ゲームならこれですね(笑)。

Chris氏:
 はい。アナログスティックとD-Pad,3つの“方向キー”すべてが取り外し可能で,好きな形状のものに換装できます。アナログスティック(のコンポーネント)も,配置だけでなくプレイ感覚を揃えられるよう,PlayStationスタイルのものと,Xbox 360スタイルのものも用意しています。背面部に錘(おもり)を入れて,重さを変更することも可能です。

4Gamer:
 現状の完成度はどの程度ですか。

Chris氏:
 まだ開発中ではありますが,ほぼ最終段階ですね。

4Gamer:
 製品としてはPlayStation 3とXbox 360両対応として登場するんでしょうか。

Chris氏:
 今回お持ちしたのはPlayStation 3用で,最終的にはPlayStation 3用とXbox 360用,2バージョンを用意する予定です。もっとも,採用する部品は共通ですが。
 ちなみに,フェイスプレートもマットと光沢の2種類があります。ケーブルも長いものを採用してまして,ディスプレイから離れて操作する場合にも便利ですよ。

Mad Catz
Mad Catz Mad Catz

4Gamer:
 なるほど……これはかなり魅力的ですね。ちなみに同様のコンセプトの製品が,以前Saitekから「Cyborg Rumble」として販売されていましたが,今回の製品はその改良版と考えればいいのでしょうか。

Chris氏:
 確かにありました。ですが,今回の製品はまったく新しいコンセプトによるものだとお考えください。過去の製品よりも小型で,かつ機能性が高い。実際に手に持ったときの感覚も,純正のコントローラとほとんど変わりません。

Mad Catz
4Gamer:
 ここ(と,ゲームパッド中央部を指さして)にMLGというロゴがありますが,これは?

Chris氏:
 これは先ほどお話しした,Major League Gamingのロゴですね。e-Sportの大会では,一番大きな組織です。そのライセンスをMad Catzが得て,コラボレーションの形で展開する予定です。

4Gamer:
 ああ,なるほど。

Chris氏:
 Mad Catzブランドではもう1つ,Xbox 360向けのステアリングコントローラがあります。これはワイヤレス接続で,かつ公式ライセンスのものです。「Forza Motorsport 4」のライセンスこそありませんが,開発チームとは連絡をとって,最適化を図っています。かなり大型の商品なので,今回はお持ちできなかったのですが……。

4Gamer:
 ほう,それも興味深いですね。

Chris氏:
 次はCyborg(サイボーグ)のブランドですが……この製品はご覧になったことありますか?(と,マウスを取り出す)

Cyborg「R.A.T.」
Mad Catz Mad Catz

4Gamer:
 はい。……そうそう,Cyborgはかつて,Saitekのサブブランドという位置づけでしたよね。現状では,それが独立して1ブランドになっていますが,まずはCyborgブランドの立ち位置を聞かせていただけますか。

Chris氏:
 現在のSaitekは,フライトシム製品に特化したブランドという位置づけです。そして,旧Saitekにおけるマニアックなフライトシム向け製品以外が独立してCyborgになったというイメージですね。
 今回お持ちしたマウスは「R.A.T.」と言いますが,Cyborgブランドの製品で,一見して分かるとおり,非常に特徴的な構造になっています。通常のマウスだと,レーザーセンサーを筐体が覆うような構造になっていますが,R.A.T.の場合は筐体部がフレーム構成になっていて,さまざまな部分をユーザーがカスタマイズできるようになっているのが特徴です。
 単にDPIを変更したり重さを変えたりできるだけのゲーマー向けマウスとは,一線を画する製品です。

Cyborg「Cyborg X Flight Stick」
Mad Catz
4Gamer:
 つまりこのような近未来的なデザインのものは,全部Cyborgブランドと考えていいわけですか(笑)。

松浦氏:
 そうですね(笑)。Saitekとの切り分けという意味では,Cyborgからは,格好よさや,ゲームとしての機能性を重視したものを,一方のSaitekでは,いわゆる本物志向な製品を,と考えてもらって良いと思います。
 ただ,先に日本市場で発表した「Cyborg X Flight Stick」は,過渡期の製品ということで,Cyborgブランドとして展開していきます。

4Gamer:
 これは先日プレスリリースを掲載させていただきました。

松浦氏:
 はい。これと「Cyborg V.1 Flight Stick」はCyborgブランドですね。日本法人のマッドキャッツとしては,この2製品が初の商品となります。いずれもユーザーからのニーズが多い製品ですし。
 北米で展開しているSaitekブランドの製品――ペダルやヨークなどを備えたセスナ対応のものなども,引き続き日本のユーザーにお届けしていく予定です。

TRITTON「Gears of War 3 Dolby 7.1 Surround Sound Headset for Xbox 360」
Mad Catz
Chris氏:
 次のTRITTONは,最近,約1年半前にMad Catzに加わったブランドで,ヘッドセット製品を主に展開しています。特長としては,PCからPlayStation 3まで,1つの製品で多くのプラットフォームに対応する点が挙げられますね。最近ではMicrosoftとのコラボレート製品も展開しています
 ヘッドセットという製品カテゴリーは,近年のゲームデバイス市場の中で最も急成長を遂げています。なかでもTRITTONは北米市場においてかなり支持されているブランドなのですが,今後はそれを世界中に広げていきたいと思っています。

Mark氏:
 もう1つeclipseというブランドもありますが,これはゲームデバイスというよりは,スモールオフィス,もしくはホームユーザー向けのブランドになります。日常的にPCを使う際に,もう少し格好いい,あるいは使い勝手のいい製品を探しているユーザー向けのラインナップになっていて,以上の5つがMad Catzで展開しているブランドのすべてになります。


日本市場への進出,その狙いと戦略


4Gamer:
 これら5つのブランドすべてが,日本でも展開される予定だと考えていいのでしょうか。

Chris氏:
 そうですね。これは日本のマッドキャッツの戦略というよりも,Mad Catz本体のグローバル戦略によるものなので,変更はありません。
 もちろん現実的に,すべてのブランドを一斉に始められるわけではありませんが,最終的には全ブランドを展開する予定です。

4Gamer:
 とくにこの製品,このブランドを推していく,というような戦略は考えているのでしょうか。

マッドキャッツ 松浦武敏 代表取締役社長
松浦氏:
 とくに何か1つを推すということは,今のところ考えていません。先ほどお話ししたように,出る順番では確かにCyborgが最初ですが,Cyborgブランドをとくに優遇しているわけではなく,たまたまですね。
 Chrisも言ったように,マルチブランド展開は本社の方針ですので,そこは変わりません。ただ個々の製品について言うなら,日本市場で人気のあるジャンルやタイトルがありますから,タイミングによってはラインナップに偏りが生じることはあると思います。

4Gamer:
 それぞれのブランドにおいて,競合製品があると思います。たとえばアーケードスティックだと,これまで日本ではHORIさんの製品が支配的でした。そこにMad Catzが乗り込んで来た形ですが,この日本市場でMad Catzはどう戦っていくのでしょうか。

松浦氏:
 アーケードスティックについて言えば,Mad Catz製品を広く展開する機会自体はこれまでもありましたが,日本支社が存在しなかったことでそのチャンスを逃していたという認識です。それは純粋に供給量の問題であったり,ユーザーサポートだったりしたわけですが,こうして日本支社ができたことで,それは大きく改善されることになります。

4Gamer:
 つまり,これまでよりずっと手に入れやすくなると?

松浦氏:
 当然そうなります。でなければ,何のための日本法人だって話ですよね(笑)。少なくともフラグシップ製品は,世界中のどの地域でも,同じタイミングで供給することが,我々Mad Catzの目指すところです。

4Gamer:
 サポートなども日本語での対応が行われるわけですね。

松浦氏:
 もちろんです。日本語でのサポートを行わない選択は,まったく考えていません。Mad Catz本社では,サポートチームを社内に置いていますし,それによってユーザーからの声を製品に反映させてきました。日本はまだチーム自体が小さい段階ではありますが,Mad Catzの精神にのっとって,まずそこから手をつけていくつもりです。

4Gamer:
 ちなみに北米のアーケードスティック市場では,Mad Catz製品の普及率というのはどの程度なんでしょうか。

Chris氏:
 向こうのトーナメント会場などでは,ほとんどのプレイヤーがTEシリーズを使っていますね。

4Gamer:
 ただ,市場規模だけ見ると,日本の格闘ゲーム市場は,海外の10分の1くらいですよね。北米でそこまでの市場占有率があって,それでもなお日本へ進出しようと考えた理由はどこにあるのでしょう。これは格闘ゲームに限らない話ですが,それもグローバル戦略によるものですか。

Chris氏:
 1つはおっしゃるとおりのグローバル戦略から。現在,Mad Catz本社の売り上げのうち,北米市場が占める割合は6割弱ですが,この割合は下がり続けています。それはつまり,北米外ので売上が伸びているということで,もっともっと各国のユーザーにMad Catz製品を届けたいという気持ちがあります。

 また,日本支社設立を発表した時のプレスリリースにも書かせていただいたのですが,確かに日本の市場は,全世界から見ると8%から10%くらいです。市場的に見れば,確かにそう大きくないかもしれない。
 しかし我々のような本社の人間からすると,ゲームやトレンド,そして文化などの面で,日本をリスペクトする部分が非常に大きい。それはもう,単純な数とか金額とかでは表せない,大切な部分なのです。そういう意味において,自分達の手で日本法人を設立するというのは,すごく意味のあることなんですよ。

松浦氏:
 簡単に言えば,いつかやりたいとずっと思っていたことに,ようやく手をつけられた,という感じですね。



ゆくゆくは“日本発”といえる製品を作りたい


4Gamer:
 製品開発について聞かせてください。たとえばSaitekは本拠が英国でしたよね。開発拠点も英国だったと記憶していますが,Saitekブランドも含めて,開発の指揮系統はどうなっているのでしょう? すべて北米に集約している,もしくはしていくのですか。

Chris氏:
 現在はサンディエゴ本社と香港,そして英国の3拠点で製品開発を行っています。Saitekブランドは,英国チームの占める割合が今でも大きいですが,サンディエゴにデザイナーがいたり,香港にエンジニアがいたりして,それぞれ役割を分担しています。

4Gamer:
 かなりグローバルな形でチームが作られているというわけですね。そういう開発体制を敷くメリットはどこにあるのでしょうか。単純に考えれば,ブランドごとに1つの拠点にチームを集中させたほうがいいように思えるのですが。

Chris氏:
 地理的にはグローバルに分散したチームであっても,各人が自身のパフォーマンスを十分に発揮させながら,全体が1つの目的に向けて動ける開発環境を構築しています。これはネットワークを介したビデオカンファレンスなどを簡単に行えるようになったこともありますけれども,古くからマルチブランドを展開してきたMad Catzだからできる,我々ならではのアドバンテージとも考えています。

4Gamer:
 では,ちょっと意地悪な質問かもしれませんが,いまおっしゃった「過去の蓄積」と,先ほどから強調されている「ユーザーからのフィードバック」。それに「エンジニア/デザイナーのアイデア」と「部品の技術改良」を加えて,この4つに対して優先順位をつけるとしたら,Mad Catzの方針としてはどういう順になるでしょうか。

Chris氏:
 ……それは非常に難しい質問です。何かが欠けていては,決していい製品やサービスはなりませんので。たとえ製品がよくてもパッケージングが悪いようでは話になりませんし,その逆もしかりです。

4Gamer:
 なるほど。なぜ今の質問をしたのかというと,繰り返しおっしゃられているユーザーからのフィードバックが,果たしてどれだけ拾ってもらえるのか,というところをお聞きしたかったのです。
 ここは単によい悪いの問題ではなく,メーカーによって位置づけが大きく違うところです。不具合については対応するけれど,ポリシーは絶対曲げないメーカーがあれば,ユーザーからの意見ならばポリシーすら曲げる,というメーカーもあります。Mad Catzとして,どちらに近いスタンスなのかだけでも聞かせていただけますか。

Chris氏:
 その答えの1つは,先ほどのプロゲーマーに関するお話の中にもあったかと思います。彼らからのフィードバックで重要視されていない機能は,おそらくより広い層にも受け入れてはもらえない。そういう意味で,彼らの意見は非常に重要だと思っていますし,それこそがMad Catzのポリシーでもあります。
 それだけではなく,βテストを行ったり,TwitterやFacebookから幅広いユーザーの意見を吸い上げたりすることもありますし,東京ゲームショウ2011のように,ブースを出展してユーザーさんと直接コミュニケーションを取らせてもらうことだってあります。

松浦氏:
 日本法人の設立の大きな狙いとしても,単純に製品を販売するというだけでなく,日本のユーザーからの意見を反映した製品展開をしていきたい,というものがあります。
 なので第一歩こそ,「まだ日本に入ってきていない製品を紹介し,広めていくこと」ですが,ゆくゆくは日本発と言える製品を作りたいと思っています。なので,「こんな製品があったらいいな」とか「これなら売れるんじゃないか」というフィードバックはどんどんいただきたいです。それをすべて本社に持ち帰って,検討する。これが日本法人の位置づけだと考えていただければと。

4Gamer:
 分かりました。日本法人の今後の活動に期待しています。本日は長時間,ありがとうございました。




 日本の格闘ゲーマー達にMad Catzの名を知らしめた「Street Fighter IV FightStick Tournament Edition」,思えばその存在がいかに画期的だったか。機能的な面もさることながら,アーケードスティックといえば,HORIの「リアルアーケードPro.」シリーズしかなかった状況を一変させ,プレイヤーに選択肢を与えた功績は,極めて大きい。またChris氏がインタビュー中に語ったとおり,アーケードスティックという製品ジャンルを「次のステップ」に進めた意義も計り知れない。

 5つのブランドを携えて,本格的な日本進出に乗り出した“黒船”Mad Catz。今回のインタビューは,彼らの“本気”の度合いを推し量るに,十二分な時間だったといえよう。アーケードスティックのみならず,彼らの登場によって国内のゲームデバイスの「革新」が,加速することに期待するばかりだ。
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