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【西川善司】Wii UのGPU性能と新型コントローラに秘められた「コアゲーマー求心」の裏戦略
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印刷2011/06/25 00:23

連載

【西川善司】Wii UのGPU性能と新型コントローラに秘められた「コアゲーマー求心」の裏戦略

西川善司 / グラフィックス技術と大画面とMAZDA RX-7を愛するジャーナリスト

(善)後不覚

blog:http://www.z-z-z.jp/blog/


【西川善司】Wii UのGPU性能と新型コントローラに秘められた「コアゲーマー求心」の裏戦略
Wii U
【西川善司】Wii UのGPU性能と新型コントローラに秘められた「コアゲーマー求心」の裏戦略
Wii Uの専用コントローラ。いまのところ正式名称はなし
 E3 2011は,久々に新ハードの登場に沸いた開催となりました。
 「人生」「生活」を変える可能性を秘めた携帯ゲーム機ということで,「NGP」が,ラテン語で「Life」に相当する言葉「Vita」を冠する「PlayStation Vita」になったというのは,4Gamer読者ならもうご存じでしょう。

 そして,もう1つの主役が任天堂の「Wii U」です。噂や,まことしやかなリーク情報は事前にあったものの,スペックやコンセプトが公開されるのは今回が初めてでしたから,衝撃度は相当なものでした。
 ゲーム機は「ソフトがないとただの箱」と言われたりもしますが,やはり新ハードが出てくると盛り上がりが違いますよね。

 PlayStation Vitaもいろいろとトピック満載のハードですが,今回は,「Wii U」のほうにスポットを当ててみたいと思います。


Wii UのGPUはATI Radeon HD 4000系


 E3会期中,AMDは,「Wii U」のGPUに関するプレスリリースを配信しました。その内容は「Wii UにはAMD社のGPUが搭載されています」という,それ以上でもそれ以下でもない内容で,もうちょっと知りたいと思った人は多いでしょう。

Marc Diana氏(Channel Marketing Manager, AMD)
【西川善司】Wii UのGPU性能と新型コントローラに秘められた「コアゲーマー求心」の裏戦略
 実のところ,AMDはWii UのGPUのスペックについてある程度話す用意があったようで,筆者のアポなし取材を普通に受けてくれました。
 まず,Wii UのGPUは一体何ベースなのかという点ですが,AMDのチャネルマーケティングマネージャーであるMarc Diana(マーク・ディアナ)氏は,ATI Radeon HD 4000系であることを明かしてくれています。

 ATI Radeon HD 4000系の開発コードネームは「RV770」。2008年,Windows Vista時代のGPUです。
 任天堂のプラットフォームですから,当然,開発キットは独自システムになるはずです。グラフィックスはOpenGL 4.x世代でしょうか。そんな事情のため,DirectXの世代で表現することに意味があるかというとアレなのですが,Wii Uのグラフィックスポテンシャルは,DirectX 10.1世代,Shader Model 4.1(SM4.1)ということになります。

上段がPS3やXbox 360のGPUレンダリングパイプラインを図化したもの。中段がWii U,下段は最新のPC向けGPUのものだ(※出典:『ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術』(西川善司著/インプレスジャパン刊)
【西川善司】Wii UのGPU性能と新型コントローラに秘められた「コアゲーマー求心」の裏戦略
 PlayStation 3(以下,PS3)のGPU「RSX」は,2005年のGPUであるNVIDIAのGeForce 7ベース。こちらはDirectX 9.0c/Shader Model 3.0世代です。一方,Xbox 360のGPU「Xenos」は,旧ATI Technologies(現AMD,以下便宜的にAMDと表記)のカスタム設計で,設計思想的には,2007年のGPUであるATI Radeon HD 2000系を先取りしたような統合型シェーダアーキテクチャを採用していましたが,プログラマブルシェーダ世代はDirectX 9.0c/Shader Model 3.0でした(※ATI Radeon HD 2000系はDirectX 10.0世代のGPUです)。
 つまりWii UのGPUは,現行の家庭用据え置き型ゲーム機のなかで最も先進的なグラフィックス性能を持つことになります。

 ちなみにこれは余談ですが,家庭用ゲーム機の歴史で,そのグラフィックス性能が当該世代のPCを上回れなくなったのは,PlayStation 2&Xboxの頃くらいからだと言われています。PS3とXbox 360のグラフィックス機能も,「PCのグラフィックス技術を組み込み機器向けにカスタマイズしたようなもの」になっていましたし,「見たこともない映像でゲームを楽しめるワクワク感」が,据え置き機に期待できなくなってしまったのは残念なことです。いろんな意味で,「家庭用ゲーム機のあり方」というものが変わってきている気がします。

 そういう時代にあって,任天堂がWiiでモーション入力システムを採用してきたり,今回のWii Uで“びっくりドッキリメカ”的な新コントローラを採用してきたあたりからは,「ゲームグラフィックス以外でワクワクさせよう」という,「映像面以外でのワクワク感の演出」の意図が強く感じられます。


Wii UのGPUにはハードウェアテッセレータが実装される


こちらも拙著からの抜粋で,DirectX 11テッセレーションステージのイメージ図。ATI Radeon HD 2000系やWii UのGPUでハードウェアテッセレーションを用いたレンダリングを行う場合,ハルシェーダもドメインシェーダも利用できない。そのため,ドメインシェーダ的な処理は頂点シェーダで代行することが想定されるわけだ。AMDではこの工程を「Evaluation Shader」と呼んでいたりする
【西川善司】Wii UのGPU性能と新型コントローラに秘められた「コアゲーマー求心」の裏戦略
 Wii UのGPUはATI Radeon HD 4000系なので,ハードウェアテッセレータが搭載されています。ただ,ここで注意が必要なのは,ATI Radeon HD 2000以降で搭載されるハードウェアテッセレータはレンダリングパイプラインの外にあるということです。これはXbox 360のXenosも今回のWii UのGPUも同じなのですが,DirectX 11でいうところのドメインシェーダ的な役割を頂点シェーダ側で代行させてやらねばならないため,テッセレーションの取り扱いにはややクセがあります。

 Xbox 360対応タイトルで,このハードウェアテッセレータを活用したものとしては「あつまれ!ピニャータ」が挙げられますが,マルチプラットフォーム対応のタイトルではほとんど使われていないというのが実情です。Wii Uでは,どの程度活用されるのかは注目されるところですね。

レンダリングパイプラインの外側に置かれるATI Radeon HD 2000系のハードウェアテッセレータ。Wii Uでも構造は同じと見られている
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Wii UのGPUはHD×1+SD×4の5画面出力ポテンシャルがある?


 Diana氏は,「最初のWii Uでは無効化されている,隠された機能」についても語ってくれました。
 それは,ATI Radeon HD 5000シリーズ以降でサポートされるマルチディスプレイ出力機能「Eyefinity」に近いものだそうです。

現時点では,Wii U本体に対して1基の液晶パネル付きコントローラと4基のWiiリモコンとが接続されることになっている。第一世代Wii Uでは,これが最終仕様となる見込み
【西川善司】Wii UのGPU性能と新型コントローラに秘められた「コアゲーマー求心」の裏戦略
 任天堂はいまのところ,Wii U専用の液晶パネル付きコントローラは1台しか使わないという態度なので(関連記事),Wii Uで行えるのは,本体と直結されたテレビへと,液晶パネル付きコントローラへの2画面出力までということになります。しかしDiana氏によると,GPUの設計仕様上は,HD解像度のテレビ出力とは別に,SD解像度で4画面分の出力が可能とのこと。つまり,液晶パネル付きコントローラ4台にそれぞれ異なる映像を出力できるポテンシャルがあることになるわけですね。

 残念ながらコスト的な理由で,この機能は無効化されているそうですが,今後,Wii Uのマイナーチェンジバージョンが登場した暁には,液晶パネル付きコントローラを,4人のプレイヤーがそれぞれ持ってプレイできるようになっているかもしれません。
 Wii Uにはまだ進化と発展の伸びしろがあると言うこともできそうです。


Wii Uのハイスペックに隠された“裏戦略”とは


 Diana氏は,「Wii UのGPUの詳細スペックは開かせないが,確実に言えることが1つだけある。それは,PS3とXbox 360,どちらのGPUよりもパフォーマンスが高いということだ。詳細スペックは,時が来れば明かせるようになるかもしれない」と自信を見せていました。
 ATI Radeon HD 4000といえば,ローエンドの「ATI Radeon HD 4350」からハイエンドの「ATI Radeon HD 4890」までがあります。Xbox 360のXenosだと,汎用シェーダプロセッサ(以下,SP)数は48基でしたから,まあ,きっとこれよりは多いSP数になっているのでしょう。

John Riccitiello氏(CEO, Electronic Arts)
 任天堂は世界各国のメディアに対し,「PS3やXbox 360との性能競争をするつもりはない」というメッセージを発信していますが,実際のところ,各ゲームスタジオに対しては,そのハイスペックぶりを強く訴えているという声も聞かれます。
 その一端は,E3 2011における任天堂プレスカンファレンス,最後の最後に登壇した,EAのJohn Riccitiello(ジョン・リカテロ)CEOによるプレゼンテーションからも窺い知れます。

 Riccitiello氏は「これまでSony Computer EntertainmentやMicrosoftのプレスカンファレンスに登壇したことはあっても,任天堂のプレスカンファレンスに登壇したのは初めてだ」と言って笑いを取りつつ,今回の登壇は,最新世代のエンジンを用いて開発されるElectronic Artsのゲームを動かすのに必要十分なポテンシャルをWii Uが備えているのが大きな理由になっていると示唆していました。
 とくに,「Battlefield 3」の映像を出して,「Wii Uで,フルスペックの『Frostbite Engine』が動作するだろう」とまで述べていたのは印象的です。

 またこのプレスカンファレンス以降,著名ゲームエンジンの開発スタジオもWii U対応に向けて前向きな反応を示しています。
 「Unreal Engine 3」(以下,UE3)の開発元であるEpic Gamesは,筆者の取材に対し,UE3のWii Uサポートを否定しませんでした。それどころか,「任天堂のプレスカンファレンスでヒントになる映像があったはずだ」と笑いかけるほどで,サポートは確実視していいでしょう。
 「Cry Engine 3」(以下,CE3)の開発元Crytekまったく同様で,いわく「CE3でWii Uをサポートしない理由が見つからない」。相当に前向きな姿勢をアピールしていました。

Wii U用タイトルとして任天堂のプレスカンファレンスで紹介された「Batman: Arkham City」(左)と「Aliens: Colonial Maries」(右)はいずれもUE3ベース。「UE3はWii Uをサポートする」と公言しているに等しい
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 実際,筆者とは別口の,欧米メディアからの取材に対しても,Epic GamesやCrytekは同様の反応をしているようです(※参考1参考2)。

岩田 聡氏(任天堂 代表取締役社長)
 ところで,E3 2011の任天堂プレスカンファレンスで,岩田 聡代表取締役社長は「Wiiは確かに,これまでゲームをしない人にゲームに興味を持たせることに成功したが,ハードコアゲーマーの支持をやや失った感はある。その点,Wii Uは,ハードコアゲーマーへの求心力を再び取り戻す能力を秘めている」と述べていました。

 サードパーティからすると,現行型のWii向けのゲーム開発は結構しんどいものだったといえます。グラフィックス表現能力がPS3やXbox 360と比べてかなり低いため,シェーダを剥がしたうえでグラフィックス表現の調整を行ったり,操作系をモーション入力に対応させたりといった,専用の工程が必要になっていたためです。

 Wii Uでは,ここまで説明してきたとおり,前者に関してはPS3やXbox 360と同等以上なので,ほぼそのまま持ってこれます。ただ,それだけではありません。注目すべきは新型の液晶パネル付きコントローラです。
 今のところこれといった名前のない液晶パネル付きコントローラ。液晶パネルの持つ解像度の高さや,タッチセンサーに目を奪われがちですが,実のところ,PS3やXbox 360の純正コントローラと操作系の互換性が高い設計になっていることに気がつきましたか。

Wii Uの液晶パネル付きコントローラ。左が表で右が裏
【西川善司】Wii UのGPU性能と新型コントローラに秘められた「コアゲーマー求心」の裏戦略 【西川善司】Wii UのGPU性能と新型コントローラに秘められた「コアゲーマー求心」の裏戦略

 コントローラの左右には親指で操作可能なアナログパッドがそれぞれ用意されていますし,左右の肩口にはショルダーボタン,そして背面の左右にもトリガーボタンが付いており,PS3やXbox 360的な,[L1][L2][R1][R2]といったボタン操作がサポートされています。
 サードパーティがPS3やXbox 360向けのマルチプラットフォーム対応タイトルをベタ移植するにあたって,Wii Uの操作系は,何の躊躇もいらないものになっているのです。

 もっとも,ただのベタ移植ならば,そうしたタイトルのWii U版をわざわざ選ぶ理由にはならないわけですが,そこで生きてくるのが,タッチ機能付きの液晶パネル部分。力を抜いたWii Uへの移植なら,この部分は武器選択やリロード操作,回復アイテム使用などといった,アイテム選択や簡易操作系インタフェースに活用することが考えられます。

 ただ,もう少し力を入れるならば,ここに別視点のグラフィックスを表示させたりできるはずです。
 レースゲームなら,ライバルの視点や三人称視点を,アクションゲームならば相棒となるAIキャラの視点,RTSならユニット視点の映像を出せたりすると面白そうです。3Dグラフィックス的な観点からすると,シーンのセットアップさえできてしまえば,GPU性能の許す範囲で別視点からの映像をレンダリングするのも難しいことではありません。意地悪い言い方をすれば,Wii Uの液晶パネル付きコントローラは,それほど手間を掛けずにユーザーを楽しませる追加要素を盛り込むのに持ってこいな存在なのです。

 ゲームデベロッパにとってのWii Uは,マルチプラットフォームタイトルを持ってきやすいプラットフォームとなり,ユーザー側からすれば,PS3やXbox 360と同等のゲーム内容を追加の面白要素付きで楽しめるプラットフォームになるというわけですね。


 Wii Uの発売は2012年。
 任天堂が持つ本来の思惑とは異なるかもしれませんが,登場するときのWii Uは,“PS3.5”や“Xbox 480”的な存在になるかもしれません。

■■西川善司■■
テクニカルジャーナリスト。4Gamerの連載「3Dゲームエクスタシー」をはじめ,オンライン/オフラインのさまざまなメディアに寄稿したり,バカゲーを好んでプレイしたり,大画面にときめいたり,観切れないほどBlu-rayビデオを買ったり,オヤジギャグを炸裂させたりして毎日を過ごしている。
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