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自由切断の刀はともに世界へ斬り込む意志。「メタルギア ライジング リベンジェンス」制作陣インタビューとスタジオツアー
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印刷2012/11/27 00:00

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自由切断の刀はともに世界へ斬り込む意志。「メタルギア ライジング リベンジェンス」制作陣インタビューとスタジオツアー

画像集#042のサムネイル/自由切断の刀はともに世界へ斬り込む意志。「メタルギア ライジング リベンジェンス」制作陣インタビューとスタジオツアー
 これまでも様々な情報をお伝えしてきているように,KONAMIは2013年2月21日に,「メタルギア ライジング リベンジェンス」(以下,MGR)を発売する予定だ。

 本作は,「メタルギア」シリーズの作品に登場してきたキャラクター,雷電が主人公のアクションゲーム。当初は「メタルギア ソリッド ライジング」(以下,MGSR)として,KONAMIの小島プロダクションで開発が進められていたのだが,プラチナゲームズが参加して生まれ変わることになったという点でも話題となっているタイトルである。

画像集#028のサムネイル/自由切断の刀はともに世界へ斬り込む意志。「メタルギア ライジング リベンジェンス」制作陣インタビューとスタジオツアー

 今回,MGR開発陣へのインタビューやプラチナゲームズ本社の取材を行う海外メディア向けのプレスツアーが開催された。日本のメディアではあるが4Gamerも参加できたので,その模様をお届けしよう。


プラチナゲームズ参加の裏話も披露された

「MGR」開発陣インタビュー


 今回のツアーで行われたインタビューには,コナミデジタルエンタテインメント(以下,KONAMI)小島プロダクションのプロデューサーである是角有二氏,プラチナゲームズのプロデューサーである稲葉敦志氏,同じくプラチナゲームズのディレクター,齋藤健治氏が参加。ゲーム以外にも,プラチナゲームズが開発に参加することになった経緯や,制作現場における小島プロダクションとプラチナゲームズとの共通点などが語られた。

画像集#023のサムネイル/自由切断の刀はともに世界へ斬り込む意志。「メタルギア ライジング リベンジェンス」制作陣インタビューとスタジオツアー
左から稲葉敦志プロデューサー,齋藤健治ディレクター(ともにプラチナゲームズ),是角有二プロデューサー(KONAMI 小島プロダクション)

※冒頭でも軽く触れたが,「メタルギア ライジング リベンジェンス」(MGR)は,当初小島プロダクションが「メタルギア ソリッド ライジング」(MGSR)として開発していたものだ。プラチナゲームズの参加が発表された段階でゲーム性も大きく変わり,タイトル名もMGRへ改題されたという経緯があるので,インタビュー中には「MGR」に加えて,プラチナゲームズ参加前のものを指す「MGSR」という略語も多く登場する。取り違えることがないように読み進めてほしい。


画像集#013のサムネイル/自由切断の刀はともに世界へ斬り込む意志。「メタルギア ライジング リベンジェンス」制作陣インタビューとスタジオツアー
――それではよろしくお願いします。MGRにプラチナゲームズが参加することになったとき,稲葉さんはKONAMIの小島秀夫監督から直々にオファーを受けたとのことですが,そのときの様子を詳しく聞かせてください。

稲葉氏:
 正式なオファーがあるまで,小島さんとは3回会っています。最初はMGSRが発表されてしばらく経った頃。あるパーティで小島さんを見かけて「ライジング,期待していますよ。(開発の状況は)どうですか?」と声をかけたのですが,それに対して具体的な返答がなかったのを覚えています。
 それからまたしばらくして,別のパーティで小島さんと会ったときに「ライジング,創らへん?」って軽く言われたんですよ。場所を移すようなこともしなかったので,完全に冗談だと思っていましたね。
 そして3回目はあるイベントの後,今度はちゃんと場所を移して,僕と小島さんと三並(※プラチナゲームズ社長の三並達也氏)の3人で話す中で正式に近い形のオファーを受けました。そこで初めて「あれは本気だったのか」と思いましたね。
 その後,齋藤をはじめとするスタッフに声をかけてプロジェクトを始めることになるんですが,しばらくは社内でもプロジェクト名を言うことができない状況でしたので,社内の隔離された場所で極秘の会議を行うという感じでしたね。

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――それまでプラチナゲームズが開発したのはほとんどが新規タイトルだったわけですが,「メタルギア」の名前を冠するタイトルを開発することについてどう思われましたか。

稲葉氏:
 新規タイトルを作るというのが目的ではなくて,新しいものや驚かせるものを作りたい,というのが僕や会社の考え方です。小島プロダクションとプラチナゲームズのコラボレーションや,これまでのメタルギアシリーズにはないアクション性などが実現すれば,新しい驚きを提示できると判断したので,開発をお引き受けしました。
 小島さんからオファーがあったときは,スタッフにもそれほど空きがなくて,相当厳しい状況ではあったのですが「これはやらないわけにはいかない」と。即答こそしませんでしたけど,気持ちは固まっていました。それほど刺激的なオファーだったんです。

――MGSRのコンセプトは,「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」(以下,MGS4)のカットシーンに収録されている雷電の戦闘をゲームとして再現する,というものだったと聞いています。プラチナゲームズが開発に参加したとき,あのシーンを再現できると思っていましたか。

齋藤氏:
 最初はムービーシーンの再現にそれほどこだわっていなくて,プラチナゲームズができることの中で,何をやれば面白いゲームになるか,ということを考えていました。ゲームの形がある程度見えてきたあたりで,ムービーシーンを参考に雷電ならではのアクションを入れていったという感じです。

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――MGRの制作に当たって,過去の「メタルギア」シリーズで参考や目標にしたタイトルはありましたか。

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稲葉氏:
 MGRのコンセプトは「メタルギア」シリーズを進化させるというものではありませんので,その意味で意識したタイトルはないです。ゲーム性が違うからこそ僕達の持ち味を出せるので,世界観はつながっているけど,まったく別のゲームを作るという気持ちでした。

齋藤氏:
 「斬る」という要素や激しいアクション性など,これまでのシリーズ作品になかったものをメタルギアの世界に落とし込むという作業では,世界観を壊さないという意味で,過去のタイトルを意識しました。非常に難しい作業なので,小島プロダクションとも相談しながら進めました。

――是角さんへの質問です。プラチナゲームズと組むことになったとき,MGSRはどこまで完成していたのでしょうか。

是角氏:
 ストーリーはすべて完成していて,レベルデザインも,あくまで仮組みのものですが,通しでプレイできるものができていたと思います。ただ,ゲームの核になる遊びの部分がまとまらなかったので,プラチナゲームズさんに協力をお願いすることになりました。
 ボスキャラクター達もデザインまで決まっていて,これまでの「メタルギア」シリーズに引けを取らないくらいいい出来だったんですよ。中には「これはみんな驚くぞ」と思っていたものもあったんですけど,齋藤ディレクターから「今回は使いません」と言われてしまって(笑)。

稲葉:
 うちが悪者になるな(笑)。

是角氏:
 プラチナゲームズさんは,まずゲームありき,ゲームデザインを固めてからストーリーやキャラクターを創るという方針なんです。その流れで今のボスキャラクター達が生まれたんですが,アクション性に主軸を置いた今回のMGRに合っていて,なおかつメタルギアらしいボスキャラクターになったので,MGSRのボスキャラクターをお蔵入りにしたのは大正解だったのではないでしょうか。

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――では,MGRの細かい部分についての質問を。「メタルギア」シリーズのアイコン的な要素はゲーム中に入っているのでしょうか。

齋藤氏:
 僕の中では,敵兵の頭に出る「!」がないとメタルギアじゃないと思っていたので,それは最初から入れようと思っていました。あとはサイボーグに代表されるミリタリー要素も,メタルギアになくてはならない要素ですね。

――ユーモアとかジョークもメタルギアに欠かせないものだと思いますが,そちらはどうでしょうか。

齋藤氏:
 はい,ダンボールやグラビアアイドルのポスターも用意しています。

――TGSで「ブレードウルフ」というキャラクターが初公開されましたが,ゲーム内ではどのように活躍するのでしょうか。

齋藤氏:
 ブレードウルフは最初「LQ-84i」として登場し,雷電と戦います。雷電に敗れた後,改造されて雷電のサポート役になるのですが,直接戦闘に参加するのではなく,雷電より先に行って状況を知らせてくれるという斥候的な役割のキャラクターです。

――MGSRのときから用意されていて,MGRにもそのまま使われたストーリーやキャラクターはあるのでしょうか。

齋藤氏:
 ボリスは当初から設定されていたキャラクターですね。これはそのまま流用していますが,ゲームに必要なアクションを考えた上で,こちらから新しいキャラクターのデザインを提案することもあります。

ボリスは,雷電が所属するマヴェリック・セキュリティ・コンサルティング社の代表
画像集#046のサムネイル/自由切断の刀はともに世界へ斬り込む意志。「メタルギア ライジング リベンジェンス」制作陣インタビューとスタジオツアー

稲葉氏:
 そうやってうちから出したものに関しても,新川さん(※KONAMI 小島プロダクションの新川洋司氏)の監修を受けています。

――メインとなる刀以外にもサブウェポンが用意されているようですが,どのようなものがあるのでしょうか。

齋藤氏:
 ロケットランチャーやグレネードなどがあります。メインの武器をカスタマイズすることもできますよ。

――そういったサブウェポンを入れるとき,どのようにしてゲームバランスを取っているのでしょうか。

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齋藤氏:
 「近づいて斬る」というだけではゲームが単調になるので,サブウェポンで「遠くから撃つ」という要素を入れるといった感じです。メインは刀での攻撃ですから,飛び道具でもダメージは与えられるけれど,とどめは刀での攻撃に限定するといったことをやっています。

――TGS 2012でMGRを試遊しましたが,「斬る」というアクションが素晴らしい出来だと感じました。実現までにいろいろな挑戦があったと思いますが。

齋藤氏:
 やはり自由切断がウリになりますので,力を入れました。現状のものに仕上がるまでにはかなりの苦労がありましたね。技術的なことはもちろんですが,何が斬れて何が斬れなければゲームとして成立するのか,それを決める過程が難しかったです。

――小島監督は,プラチナゲームズを選んだ理由を聞かれて「刀のゲームだから日本のスタジオでやりたいと思った」と答えたそうですが。

稲葉氏:
 それは小島監督が「刀」という言葉を象徴的に使った「日本のスタジオ同士,手を組んで一緒に世界へ斬り込んでいこう」というメッセージではないでしょうか。(一緒に開発を行うだけでなく)そういう意味でもパートナーに選んでいただいたことは,とても嬉しいです。

――開発もいよいよ大詰めかと思いますが,ここまで一緒に作業してきて,小島プロダクションとプラチナゲームズで,仕事の進め方に似たところを感じたことはありましたか。

齋藤:
 こだわりを持っているというか,議論しながら作るところは似ていますし,気に入らなかったらハッキリと言う,というのは同じじゃないでしょうか。

稲葉氏:
 ただ,「設定の緻密さ」というところでは,小島プロダクションは僕達が「常軌を逸している」「民族が違う」と思うくらい細かかったですね。あ,悪口じゃないですからね(笑)。
 僕達の場合,そのあたりはおおざっぱというか,ゲームが面白ければいいと思っているので。ものすごく刺激になりましたし,スタッフにもいい経験になったと思います。

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――日本のゲームメーカーが海外で苦戦する中,プラチナゲームズが海外で高い評価を得ている理由は何だと思いますか。

稲葉氏:
 1つは僕達が得意とするのがアクションゲームであること。ゲームの面白さを伝えるのに言葉,国の壁がないというのが理由だと思います。
 もう1つは,最初から「世界の中のプラチナゲームズ」という意識でいたことではないでしょうか。
 これは個人的な意見ですが,日本のメーカーが苦戦するようになった理由は,日本のゲーム業界全体に対する評価を,自分達個々への評価だと勘違いして,努力を怠ってしまったことにあると思っています。
 現在海外で評価されていることはもちろん嬉しいのですが,一方で常に危機感を持って仕事をしたいと思っています。

齋藤氏:
 アクションゲームの分かりやすさに加えて,キャラクターの魅力もあると思っています。「BAYONETTA(ベヨネッタ)」や「MAX ANARCHY」に出てくるキャラクターは,どれも濃くて分かりやすいので,海外でも受けるのだろうと。アクションと濃いキャラクターという要素はMGRでも活かされていますね。

――是角氏から見て,プラチナゲームズが海外で評価される理由は何だと感じますか。

是角氏:
 1ユーザーとしての意見になりますが,創り手側の愛情ですね。ゲームを好きでたまらない人達が開発して「俺たちが大好きなこのゲームを遊んでみろよ」と挑戦してくるような感じが,言葉じゃなくて,感覚で伝わってくる。そこが世界で受ける理由じゃないでしょうか。

――私がTGSで取材したある開発会社は,自分達のゲームに自信を持てていないようでした。プラチナゲームズのみなさんからは強い自信を感じますが,その源はなんでしょうか。

稲葉氏:
 誰でもゲームを作っているときに不安になるとは思いますし,それが新しいジャンルであればなおさらでしょう。ただ,自分を信じられなくなったらこの仕事は辞めたほうがいいと思うし,面白いかどうかが分からないのなら,そのタイトルは出さない方がいいと思います。それで被害を受けるのはユーザーですから。
 僕達は自分を信じてものを作っているだけで,それがもし世間とずれるようであれば,自分が変わらなければならないと思っています。そして変わった自分も信じますね。

――今回は小島プロダクション以外のスタジオが参加するメタルギアということで不安を感じているプレイヤーもいるようなのですが,その人達を説得するとしたらどのような言葉をかけますか。

稲葉氏:
 発売前に説得することはできないですね。「信じてくれ」と言い続けるしかありません。ソフトが発売されれば,ユーザーが判断してくれると思います。ただ,MGRを買うのはギャンブルではないし,損もさせませんよ。

――稲葉さんと齋藤さんが好きな小島監督のゲームタイトル,そして,もしご存じだったら小島監督が好きなプラチナゲームズのゲームタイトルを教えてください。

稲葉氏:
 僕は初代「METAL GEAR SOLID」ですね。小島監督が好きなゲームは僕も知りたいですが,クローバースタジオのとき「大神」を評価していただいたということを聞いたことがあります。

齋藤氏:
 僕も「METAL GEAR SOLID」です。ゲーム中に登場するキャラクターの「サイボーグ忍者」や,スナイパーライフルの「PSG-1」がすごく好きなんです。PSG-1は,手ぶれで狙いが定まらなかったり,その手ぶれが薬で抑えられたりというところまで再現されていることに衝撃を受けました。

――齋藤さんへの質問です。「METAL GEAR SOLID 2 SONS OF LIBERTY」(以下,MGS2)に登場した雷電をどう思いましたか。そして今,MGRの雷電を作っているわけですが,雷電はどのように変わったのでしょうか。

齋藤氏:
 MGS2をプレイしたのは学生のときでしたが,最初は「なよっとした奴がスネークの次に出てきやがって」と思っていました(笑)。ただ,嫌いというわけではなくて,雷電なりの魅力は感じていましたね。
 MGRでは間にMGS4を挟んで,立場や思想も変わった大人の雷電を見せられると思っていますが,MGS2の雰囲気も感じさせるようなシナリオにもなっています。

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――少々個人的な質問になりますが,なぜゲームを好きになったのかを聞かせてください。

稲葉氏:
 僕は1980年頃,PCでゲームというものに初めて触れました。そのころはゲームを遊ぶことと作ることの境界があいまいで,遊ぶのに飽きたらプログラムを改造する,という感じでした。その頃からゲームを作り続けているので,ゲームはもう体の一部という感覚です。

齋藤氏:
 僕は「スーパーマリオブラザーズ」でゲームというものを知りました。自分で「誰よりもうまい」と思うくらいやり込むうちに「ゲームを作りたい」という思いが出てきて。そこで「ゲームを作るにはどうすればいいのか」と考えて出した答えが「プログラマーになるべきだ」だったんです。そうして学校でプログラミングを学んでカプコンに入り,今につながるというわけです。

稲葉氏:
 カプコンに入社したという話がありましたけど,カプコンで齋藤を採用したのは僕で,MGRのディレクターに抜擢したのも僕なので,齋藤にはいつか恩返ししてもらいたいですね(笑)。

――最後に,是角さんへ少々聞きづらい質問をします。プラチナゲームズが参加することになったとき,小島プロダクションの雰囲気はどうだったのでしょうか。みなさん好きでMGSRを作っていたと思うので,複雑な心境だったと思うのですが。

稲葉氏:
 あまり聞きたくないな(笑)。

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是角氏:
 (笑)。
 それはもう,どんよりというか……。実は稲葉さん達へMGSRのプレゼンテーションをしたのは私なんです。そのときに感じた「このままだとこのゲームは世に出ないかもしれない」「でも自分達で創り続けたい」という葛藤は,今でも良く覚えています。正直,悔しかったし,おそらくほかのスタッフも同じ思いだったのではないでしょうか。
 幸い私は引き続き開発に関われることになり,気持ちも前向きになれました。サブタイトルの「リベンジェンス」(※復讐や雪辱といった意味)じゃないですけど「前よりもいいものを創らなくちゃいけない」という思いでここまで来たという感じです。
 ほかのスタッフに,今のMGRをどのように思っているかを改まって聞いたことはないのですが,プロモーションムービーを見たり,体験版をプレイしたりといったときに出る感想は,いい意味での「うちだけじゃ出来なかった」ですね。2つのスタジオが組んだことで新しいものが生まれた,ということは,みんな感じているのではないでしょうか。


コジプロスタッフ用の机も用意された

プラチナゲームズの開発フロア


 さて,お伝えしたインタビューに合わせて,MGRの開発フロアを含むプラチナゲームズ社内の様子が公開されたのだが,それに先駆け,稲葉氏がプラチナゲームズの生い立ちを語ったので,まずそちらを紹介しよう。

 稲葉氏によると,プラチナゲームズの“源流”は,カプコンの子会社として2004年に設立されたクローバースタジオにあるという。稲葉氏や神谷英樹氏などのクリエイターが所属し,「大神」「GOD HAND」など,独創性の高いタイトルを生んだスタジオだ。

 クローバースタジオは2007年に再びカプコンに吸収される形で解散となるのだが,稲葉氏や神谷氏はその際に,メーカーから独立した開発スタジオの設立を目指したのだという。そうして生まれたのがプラチナゲームズというわけだ。 

 稲葉氏の会社紹介に続いて,いよいよプラチナゲームズのオフィス見学へ。同社のエントランスには社名ロゴが大きく掲げられ,これまでに発売されたゲームタイトルのパッケージや,ハードウェアメーカーから送られた賞の盾などが並べられていた。
 これだけならほかのゲームメーカーや開発スタジオでも見られる風景だが,驚いたのは足下。カーペットにこれまでプラチナゲームズが開発したタイトルの名前が描かれていたのだ。おそらくこれから新作が発表される度に,名前は増えていくのだろう。

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 そしていよいよ開発部門があるフロアへ。機密のかたまりのような場所だけに,写真が撮影できるポイントは限られていたが,MGRの制作現場がどのようなものなのか,可能な限り紹介していこう。

 開発部門のオフィスは,およそ50m×30mほどの広さ。いくつかの机があつまった“島”が並んでいるのは一般的なオフィスと同様だが,フロア内に柱や仕切りがなく,オフィスの端から端まで見通せたのが印象的だった。

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 稲葉氏がまず案内してくれたのは,齋藤氏の机だった。机の配置は基本的に業務内容ごとに分けられているのだが,齋藤氏の机がある一角にはグループのリーダーなど,コアスタッフの机が集められているとのこと。この配置によって,自分とは違う部門のスタッフが話す内容も耳に入り,自然とグループをまたいだ情報共有ができるのだそうだ。
 齋藤氏は「仕様変更なども正式な連絡前になんとなく分かりますし,悪口もすぐ伝わります(笑)」とプレス達を笑わせていた。

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自分の机を紹介する齋藤氏。机にはPC用のディスプレイ2台に加えて,おそらくデバッグ機用と思われるテレビが置かれていた。ゲームキャラクターのフィギュアが並んでいたのは,やはりといったところだろうか

 続いて3Dモデリングのグループへ。ここでは,ボスキャラクターの1人「ミストラル」や,MGRの体験版(PlayStation 3用ソフト「ZONE OF THE ENDERS HD EDITION」の数量限定特典)にも登場する「LQ-84i」のモデリングを担当したデザイナーが,実際にLQ-84iの3Dモデルを開発機上で扱う様子が紹介された。

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 LQ-84iはAIによって人との会話も可能な無人機という設定で,会話時に光る頭部の赤い半透明パーツが印象的なキャラクターだ。デザイナーは3Dモデルからこの半透明パーツを外し,中の様子を見せてくれた。これはなかなか貴重なカットかもしれない。

ゲーム中は見えないような部分であっても,しっかりと作り込まれている
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 オフィス見学の最後はカットシーンの編集を行うグループへ。ここでは,これまで公開されたプロモーションムービーにも収録されている,「サンダウナー」「ンマニ首相」の会話シーンを編集する模様が紹介された。

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 MGRの開発は,アクション部分はプラチナゲームズ,カットシーンは小島プロダクションという形で分担されているが,厳密に言うと,カットシーンは小島プロダクションがディレクションし,実際の編集作業をプラチナゲームズが担当する形で行なわれているそうだ。
 そのため,カットシーンを担当するKONAMI 小島プロダクションの小林政哉氏が頻繁にプラチナゲームズを訪れているという。

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カットシーンのグループには小島プロ・小林氏の机も用意されている。残念ながら取材当日は不在だったが,長期にわたり滞在しているとのことだ


MGRのプロローグシーンでは

いきなり改造型METAL GEAR RAYとのバトルが展開


 スタジオツアーの最後には,MGRのプロローグシーンが公開された。プロローグといっても,カットシーンが流れるのではなく,プレイアブルな状態になっているものだ。残念ながら写真撮影は不可だったのだが,齋藤氏によるプレイの模様を簡単に紹介しておこう。

 ここに登場する雷電のボディは,体験版に登場するものとは違う,白を基調としたものになっていた。MGRでは,ミストラルやサンダウナーらの「デスペラード・エンフォースメント」によるンマニ首相への襲撃を護衛しきれず,深手を負った雷電が,外見を度外視した改造を受けて復讐戦に挑むという物語が描かれるのだが,このプロローグは改造を受ける前,おそらく首相が襲撃されたシーンを描いたものと思われる。

 その白い雷電の前に,いきなり「改造型METAL GEAR RAY」が登場し,バトルがスタートする。
 相手が巨大なだけに,脚や腕を各個撃破していくような戦い方が必要になるようで,緒戦からかなり手ごたえのあるバトルになりそうだ。

 戦いの途中,雷電がンマニ首相を担ぐサンダウナーを追いかける場面があったのだが,そこで印象的だったのは,雷電が通路をふさぐ扉を斬って近道したシーン。本編中にも隠し通路のようなものが用意されているのかもしれない。

 戦いも終盤に近づくと,改造型METAL GEAR RAYの攻撃が激しさを増し,ミサイルを連発してくるようになる。雷電はそのミサイルを次々に斬り落としたり,ニンジャランでミサイルに飛び乗りながら移動したりと,アクロバティックなアクションを挟みながら攻撃を続け,改造型METAL GEAR RAYを撃破。見事なプレイを披露した齋藤氏へプレスから拍手が贈られた。

 これでスタジオツアーは終了となった。開発現場の雰囲気を感じられたのは非常に貴重な体験だったが,個人的にそれと同じくらい印象的だったのは,稲葉氏が「やらないわけにはいかない」,是角氏が「悔しかった」と率直に語った,共同開発決定時のエピソードだった。対照的ではあるが,どちらも強い思いを持って臨んだMGRの共同開発がどう結実するのか,発売が今から楽しみだ。

「メタルギア ライジング リベンジェンス」公式サイト

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    メタルギア ライジング リベンジェンス

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