![]() CrytekのCEO,Cevat Yerli氏 |
キーノートスピーチは,8月にライプツィヒで開催されたGames Conventionで行われたものと同一内容で,CryENGINE,CryENGINE 2の開発を俯瞰し,次世代ゲームエンジンに求められるテクノロジーを予想するというものだ。技術の進歩とコンシューマ機のライフサイクルから「2011年にゲームグラフィックスのルネサンスがやってくる」というところがハイライトだ。
id SoftwareのJohn Carmack氏と並ぶ,ゲーム業界きってのテッキー(Techie=テクノロジーオタクのこと)として知られるYerli氏だが,最新作である「Crysis Warhead」の開発も終わり,Crytekの次の一手がいろいろ気になるFPSファンも多いはず。ともあれ,テッキーであると同時にイケメンとしても評判の高いYerli氏の話を聞いてみよう。
![]() GCAで公開された「Crysis Warhead」の最新画像 |
4Gamer:
こんにちは。本日はよろしくお願いします。さて,Crytekの次のタイトルはどういう内容で,どんなプラットフォームでいつ頃の発売を予定されていますか。
Yerli氏:
いや,それはちょっとお話しできません。
4Gamer:
やはり,さりげなく聞いてもダメですね。さて,2009年から次世代Cry ENGINEの開発をスタートさせ,2011年に実現するという話でしたが,次世代CryENGINEにとって,現在どのようなグラフィックス技術が有望だと考えていますか。
Yerli氏:
今は開発前のリサーチを進めている段階ですが,有望なテクノロジーとしてレイトレーシングがあると思っています。
4Gamer:
すべてをレイトレーシングで描くわけですか。
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そうではなく,ポリゴンによるラスタライジングを併用するということです。レイトレーシングは,現在の長すぎるパイプラインや,アンチエイリアシングの難しさなどを解決してくれますが,弱点としてはゲームに使うには遅すぎることと,今のGPUの多くがラスタライジングにフォーカスして作られていて汎用性に乏しいことが挙げられます。ですから,GPUには従来のポリゴンラスタライジングを行わせ,CPUでレイトレーシングを実行するといった方法がいいのではないかと。
ただ,IntelのLarrabee(ララビー,開発コードネーム)のようにシンプルなCPUを組み合わせてGPUにするというものもありますので,はっきりとそうなると決まったわけではありません。
4Gamer:
なるほど。物理エンジンについてはどうお考えですか。
Yerli氏:
CryENGINE 2の物理エンジンは比較的単純だったのですが,今後はこれまで以上に多数のオブジェクトに対し,同時に物理演算を行わせる必要があると思っています。
4Gamer:
木を撃って好きなようにバタバタ倒せる以上のことができるわけですね。
Yerli氏:
ええ。ちなみに「木を倒す」のは,私がぜひやりたかったことです。最初,プログラマーは無理だと主張したのですが,私は「絶対やれるから」と。プロトタイプでは三本の木があって,真ん中の一本を撃ち倒せました。そこから始まって改良を重ね,今では何十本でも大丈夫になりました。
とはいえ,破壊をリアルに見せるフラクチャーシミュレーションや,地形を変化させるデフォーメーションなど,今後やるべきことはたくさんあります。
それらは,プレイヤーがゲームの世界にいると感じること,つまりインタラクティビティをさらに高めてくれます。木が倒れたり敵をつかめたりだけでなく,砲弾が落ちれば地面に穴が開き,建物がアニメーションでなく,よりリアルに破壊されるわけです。
こうしたゲーム世界へのインタラクションを高めることにより,プレイヤーが今その場所にいるという雰囲気を高められるのです。
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4Gamer:
では,AIはどうですか。
Yerli氏:
CryENGINEのAIについてはだいたい満足しています。もともと,FPSのために開発されたもので,それほど高機能なAIを要求したわけではないですからね。5分ぐらいですべてを忘れてしまうような連中です。ただまあ,改良の余地はあるでしょうね。
4Gamer:
忘れっぽいんですね。ところで,Crytekは「Far Cry」「Crysis」,そして「Crysis Warhead」とこれまで三つのタイトルを作ってきたわけですが,それらの開発を通じて何か学んだことはありますか。
Yerli氏:
ええ,それはもうたくさん。スケジューリングなどの開発面でもそうですし,ゲームの内容についてもね。
とりわけ,Far Cryのプレイヤーに喜んでもらえると考えて実装したフィーチャーが受け入れてもらえなかったりと,意外なことがありました。高い自由度を好むプレイヤーもいれば,ストーリーを重視した,リニアな一本道を好むプレイヤーもいるということです。
Crysis Warheadでは,プレイヤーの声を十分に聞き,Crysisで不満とされた部分を大きく改善したつもりです。
4Gamer:
Crysis Warheadの開発は,Crysisに比べてずいぶんと短期間で終わりました。あなたはGCのキーノートスピーチでアジャイルな開発方法(ソフトウェアを迅速に開発する手法群のこと)の重要性を語っていましたが,グラフィックスのレベルが上がり続ける現在,それは難しくなっていくのではないでしょうか。
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そうかもしれませんが,だからこそアジャイルな開発手法がこれから重要になるのは間違いありません。CryENGINE 2の開発には3年がかかりましたが,そのとき我々はそういう開発手法があることを知らず,昔ながらのやりかたでやっていました。
今後,グラフィックスが複雑になればなるほど,より構造的な手法を採用して,短時間で開発する必要が出てくるはずです。なにしろ,CryENGINE 2では,前世代のエンジンに比べて50%ほど開発経費が上昇しています。同じ割合で経費の上昇を許すわけにはいかないので,アウトソーシングの活用や,よりよいツールの使用,開発ラインの効率化などを通じてリニアではない経費上昇を図っていくつもりです。
4Gamer:
なるほど。ところで,CryENGINE 2のライセンシーは順調ですか。
Yerli氏:
おかげさまで。ご存じのようにMMORPG(というより「Seconf Life」のようなメタバースに近い)タイトルの「Entropia Universe」に使われる予定になっていますし,また,アメリカのデベロッパ2社にライセンスしています。
4Gamer:
ほお。ちなみになんというタイトル……。
Yerli氏:
すいません。今はちょっと言えないのですが,いずれなんらかの発表があると思います。
4Gamer:
それは残念。とはいえ,そうやっていろいろなデベロッパが同じエンジンを使用してゲームを作っていくと,どれも同じような雰囲気になっていくのではないでしょうか。最近,人気の高いUnreal Engine 3を使用したタイトルって,どれも見かけはなんとなく似ているような気がするのです。そのへんはどうお考えですか。
Yerli氏:
それは,CryENGINE 2についての話ですか?
4Gamer:
いや,もうちょっと一般的な話です。
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なるほど。そうですね,今はどのデベロッパもグラフィックスエンジンの限界まで使用しているので,そういうことはいえるかもしれません。ですが,今後はもっとさまざまなオプションが付いていって,同じエンジンでも異なるテイストを引き出せるようになるでしょう。フォトリアルなグラフィックスだけでなく,カートゥーンレンダリングも使えるようになり,自分達の作りたいスタイルに合わせてエンジンを使用するということです。
それに,プレイスタイルとかアクションとか,ゲームには非常にさまざまな要素があるので,我々はグラフィックスだけでなく,そういうところをアピールすべきだろうと思っています。
4Gamer:
分かりました。本日はどうもありがとうございました。
Yerli氏:
いえいえ。それにしても,日本からわざわざ取材に来たんですか。
4Gamer:
そうです,なんというか……成り行きで。
Yerli氏:
なるほど。実をいうと日本のマーケットには非常に興味があるのです。今度,いろいろと聞かせてもらえませんか。
4Gamer:
ええもう。我々でよければ,いつでもどうぞです。
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最後にUbisoft Entertainmentが11月の発売を予定している「Far Cry 2」について聞いてみたところ,やはり思い入れのあるタイトルだけに気になっているとのこと。Yerli氏が見たのは最終ビルドではないため,現在はそうではないかもしれないとしながら,フレームレートの低下が気になり,もう少し最適化が必要ではないかと,まことにテッキーらしい意見。
Far Cryを超える高い自由度を目指すFar Cry 2のゲーム内容については,こちらも「ゲームを終わらせたわけではない」という留保つきながら,将来の方向性として魅力的で,多くのプレイヤーも望んでいるのではないかと語った。
Crysisは結果としてメガヒットにはならなかった――日本のスケールで考えればかなりのヒットだが――ものの,Crytekのテクノロジーへのこだわりは高く評価されている。Yerli氏の言葉の端々から「次回作もFPS」という言葉が聞こえたような気がする(気のせいかもしれない)ので,とりわけFPSファンは楽しみにしていいはずだ。


















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