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Tegra
  • NVIDIA
  • 発表日:2008/06/02
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見えてきた次世代Tegra「Kal-El」のアーキテクチャとTegraロードマップ。CUDA Coreは2013年の「Logan」で統合へ
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印刷2011/05/23 00:00

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見えてきた次世代Tegra「Kal-El」のアーキテクチャとTegraロードマップ。CUDA Coreは2013年の「Logan」で統合へ

Google I/O 2011の会場となった「Moscone West」
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 2011年5月10〜11日の2日間,米カリフォルニア州サンフランシスコ市で開催されたGoogle主催のイベント「Google I/O 2011」。世界各国から携帯電話やタブレットなどといったモバイル端末の開発者やソフトウェアデベロッパが集まったこともあり,最新のハードウェア関連情報を収集するのにとても有意義な場となっていた。
 とくに,急成長を続けるタブレット市場は,どのベンダーも力を入れている分野であり,内輪話では次世代プロセッサに関する話題も事欠かなかったのだが,今回は,大手携帯端末ベンダー関係者の話から,NVIDIAの次期Tegra「Kal-El」(カルエル,開発コードネーム)の姿,そしてその先を追ってみたい。


クアッドコア化とGPU強化だけではないKal-El

待機状態ではTegra 2比で2倍のバッテリー駆動時間へ


Michael Rayfield氏(General Manager, Mobile Business Unit, NVIDIA)。写真はCOMPUTEX TAIPEI 2009時のもの
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 今年2月の「Mobile World Congress 2011」で披露されたKal-Elは,すでに大手パートナーへのサンプル提供が開始されている。
 NVIDIAでTegraビジネスを統括するMichael Rayfield(マイケル・レイフィールド)氏は,同社が3月8日に開催した投資家向けイベント「Financial Analyst Day 2011」で,Kal-Elベースのタブレット製品がクリスマス商戦までに市場投入されると断言。「最も早く登場する製品は,第3四半期中にも市場投入される」というRayfield氏によると,タブレットだけでなく,携帯電話でもKal-El搭載端末は登場する見込みだ。

 さて,Mobile World Congress 2011の時点で公表されたKal-Elの特徴は,大別して下記の4点である。

  1. 世界初の携帯端末向けクアッドコアCPU
  2. 12コアのGPU搭載と3D立体視対応
  3. 2560×1600ピクセルの高解像度対応
  4. Tegra 2比5倍の性能

Mobile World Congress 2011で公開されたKal-Elの概要
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 製造プロセスは現行Tegra 2と同じくTSMCの40nmで,ARMの「Cortex-A9」コアを4つ統合。組み合わせる低消費電力版(Ultra Low Power,ULP)GeForceコアの数も現行の8から12へ増えるなど,大幅な機能強化が施される。OEM関係者によれば,「クアッドコア化とグラフィックスの強化で,3Dレンダリング性能はTegra 2と比べ,最大で3〜4倍向上する」とのことだ。

 下に示したのは,OEMベンダーから得られた情報を基に,Kal-ElとTegra 2の主なスペックとブロックダイアグラムをそれぞれまとめたものである。

※1 OEMベンダーからの情報による
※2 LG Electronicsの「Optimas Pad」など,「Tegra 2 3D」とも呼ばれていた高クロック版Tegra 2搭載モデルで実現
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OEMベンダーの情報を基に筆者が作成したKal-El(左)およびTegra 2(右)のブロックダイアグラム
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 具体的に見てみよう。まず,Kal-Elに搭載されるCortex-A9コアは,ARMが「NEON」テクノロジと呼ぶ128bit SIMD(Single Instruction, Multiple Data)アーキテクチャ拡張を果たす。

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Kal-Elで強化されるCortex-A9の128bit SIMD命令拡張,NEON
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Kal-ElのCPU性能をアピールするスライド
 NEONテクノロジが対応する128bit SIMD命令セットは,64/32/16/8bitの整数に固定小数点,単精度動小数点データをサポートし,最大16の並列処理を可能にする。これにより,マルチメディア性能を大幅に向上させたり,より低クロックでのマルチメディア処理を可能にしたりできるようになるのだ。
 合わせて,Kal-ElにおけるCortex-A9コアの動作クロックは最大1.5GHzへと引き上げられ,シングルコア性能も飛躍的に向上する見込みとなっている。

 一方,GeForceコアの強化は,ピクセルパイプラインに割り当てられる。
 現行のTegra 2が「GeForce 6/7世代の設計を踏襲した超低電圧グラフィックスコアを8基搭載する」というのは比較的よく知られているが,この8基は,4基がピクセルシェーダ,4基が頂点シェーダとしてそれぞれ機能する。
 これに対してKal-Elでは,12コア化にあたって増えた4基がすべてピクセルシェーダへ割り当てられている。さらにNVIDIAは,頂点処理の一部やジオメトリ処理をCPUコアへ割り振って,総合的な3D性能の引き上げと3D立体視の対応を果たす計画である。

 もう1つ,Kal-Elではプラットフォーム全体の強化も果たされる見込み。OEM関係者によれば,Kal-Elでは32bit幅のLPDDR2-800に加えて,DDR3L-1600のサポートも計画されているとのこと。さらに最大7.1chのHD AudioやSerial ATA 2も追加されるなど,より多機能なモバイル端末を実現できる方向での拡張が行われている印象だ。

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Tegra 2の電力制御機構を説明スライド。Kal-Elでも,利用していないユニットに対する電源供給を遮断する仕組みに変わりはない
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デュアルコアCortex-A9仕様のTegra 2が,シングルコアよりも省電力性が高いとした説明。OEM関係者によれば,クアッドコアのKal-Elは同じ理由で,平均的な消費電力でTegra 2よりも低くなるという
 ただ,同社のパートナー達からしてみると,むしろ最大のポイントは消費電力周りの改善である。彼らは「省電力性では『Tegra 3』――Kal-Elのほうが格段に優れており,アイドル状態ではTegra 2比で倍近いバッテリー駆動時間を実現する」と口を揃えている。

 NVIDIAは,クアッドコア化とグラフィックスの強化を図りながら,Kal-Elで省電力性を向上させるために,Tegra 2よりも積極的な電力管理を施すだけでなく,同社独自の「Ultra Low Power」動作モードも追加する計画だ。
 OEM関係者によれば,このUltra Low Powerモードでは,クアッドCPUコアのうち3基の完全な電源断が可能になり,さらに,残る1基のCortex-A9コアも動作クロックを500MHzに落とせるとのこと。Tegra 2でも,「Low Power」モードはあり,CPUコアクロックが550MHzにまで落ちるが,コア単位の電源断には対応しておらず,デュアルコア動作のままなので,この点で劇的な改善が図られるというわけである。

Kal-ElとTegra 2の待機モード比較。Kal-Elにおいては,3つのCortex-A9コアを完全に停止し,しかも残る1基もTegra 2よりさらに低いクロック動作させることで,省電力性を高める
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 これにより,モデムと無線LANコントローラをオフにした機内モード(Flight Mode,飛行機モードともいう)の待機では,Tegra 2端末比で2倍というバッテリー駆動時間を実現するという。


Windows 8を見据え,CUDA対応を目指していくTegra

CUDA Coreの統合は“次次次”Tegraからの公算大


 NVIDIAは,Microsoftから2012年後半にも市場投入されると噂される次期Windows,「Windows 8」(開発コードネーム)がARMアーキテクチャをサポートするのを受け,TegraファミリーをノートPC市場へも展開する計画を持っている。

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2010年に開催されたGPU Technology Conference 2010でARMベースのパーソナルモバイルコンピュータについて語るJen-Hsun Huang氏(Co-Founder, President, and Chief Executive Officer, NVIDIA)
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今年1月の2011 International CESで,次期WindowsにおけるARM対応を表明する,MicrosoftのSteve Ballmer(スティーブ・バルマー)CEO。写真で同氏の脇にあるのがTegra 2で動作するWindows 8システムだ

Cortex-A15ベースと思われるNVIDIA独自のCPUコア計画,Project Denver
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 NVIDIAのJen-Hsun Huang(ジェンスン・フアン)社長兼CEOは,Financial Analyst Day 2011において,同社がARMからのライセンスを受けて開発を進めているCPU開発計画「Project Denver」について言及。Denverコアが将来のTegraに搭載されると明らかにした。氏は「3年半あまり,秘密裏に開発を続けてきたProject Denverにおいては,ARMコアCPUのパフォーマンスレベルを引き上げることが最大の目的だ」と述べ,1Wという消費電力をターゲットに,Netbookや低価格ノートPCの置き換えが可能なパフォーマンスレベルまでTegraのCPUコア性能を引き上げたい考えを示している。

「PC向けグラフィックス製品ベンダー」から「GPUベンダー」へと転換し,今度は「コンピューティングカンパニー」へと転換を図るNVIDIA。2009年からCPU開発のための投資を強化してきたのが,Financial Analyst Day 2011の資料から読み取れる
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 「1WのCPUなら,完全なファンレスを実現したうえで,現行の『MacBook Air』よりも薄くできる。さらに,今日(こんにち)的なノートPCのバッテリーユニットと組み合わせれば,3〜4日は充電せずに使い続けられるようになるはずだ」と述べたHuang氏は,2012年にも,「パーソナルモバイルコンピュータ」の新しいカタチとして,TegraベースのモバイルPCが登場すると予言する。

スマートフォンとタブレット端末の登場で急拡大するパーソナルコンピューティングデバイス市場。Windows 8でARM対応が果たされることにより,Tegraのターゲットはモバイルコンピュータにも広がる。なお,右のスライドで「WoA」とあるのは「Windows on ARM」の略
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 ちなみにNVIDIAはいまのところ,Denverコアをどの世代のTegraに搭載するかを明らかにしていないが,そのヒントは,同社が示しているロードマップにありそうだ。

もはやお馴染み(?)のTegraロードマップ。ちなみにKal-Elはスーパーマン,Wayneは「バットマン」の主人公であるBruce Wayne,Loganは「X-men」の主人公,Starkは「アイアンマン」の主人公であるAnthony Edward“Tony”Starkといった具合で,アメコミのヒーローにそれぞれ由来する。性能を示す縦軸の縮尺に注目しておいてほしい
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NVIDIAがFinancial Analyst Day 2011で公開したTegra投入スケジュール
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 そもそもNVIDIAが独自にCPUの開発を始めた背景には,より高い性能のグラフィックス機能をTegraへ統合する計画がある。Huang氏は,「200基のCUDA CoreをSoCに統合できたとしても,CPU性能が低ければ,その性能を引き出せない」と述べ,TegraのCUDA対応には,CPU性能を引き上げる必要があるという認識を示していた。
 現行のTegra 2で搭載されるULP GeForceは,上で紹介したとおり,固定機能のシェーダユニットからなる。それに対して,GeForce 8以降で採用された統合型シェーダアーキテクチャに基づくシェーダプロセッサたるCUDA Coreを利用すれば,GeForceやQuadro,Teslaと同じようにCUDAアプリケーションを利用できるようになるわけだ。NVIDIAの目的は,サーバーからスマートフォンまで,あらゆる環境で(同社独自のプログラム規格である)CUDAが動くこと。Project Denverはあくまでも,その目的に向けた,「TegraにおけるCUDA」を前提とする動きというわけである。

ARMが公開した,Cortex A-15性能指標。同じ1GHz動作でCortex-A9と比べ1.5倍の整数演算性能を実現。28nmプロセスでは1.5GHz以上の動作が可能になるとされる
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 それを踏まえたうえで,NVIDIAに近いOEM関係者は,「『TegraのDenverコア採用』と『CUDAのサポート』は,同時には行われないだろう」と見ている。28nmプロセスを採用して製造される次次世代Tegra「Wayne」(ウェイン,開発コードネーム)で「Cortex-A15」ベースのDenverコアがひとまず採用され,“その次”の「Logan」(ローガン,同)でCUDA Coreを統合する流れになるという。
 「Tegraのロードマップで,WayneがTegra 2比10倍の性能なのに対し,Loganで一気に50倍となるのは,ここでCUDA Coreの統合が果たされるからだ」(同関係者)。

 また,半導体業界関係者も,「NVIDIAが仮にCPUとGPUの両アーキテクチャを同じ世代で変更するというリスクを取る場合,2012年のWayne投入は難しいだろう」と述べ,OEM関係者の発言を裏付けている。

 GPU性能にこだわるNVIDIAがなぜTegraでグラフィックスコアの世代交代を急がないのかについては,Play Station 3やXbox 360の後継となる次世代ゲームコンソール機のロードマップが不透明な状況も大きく関係していると,ゲーム業界関係者が指摘している点を紹介しておきたい。
 実際,Huang氏は「現行のゲームコンソール機向けGPUは,おおむねGeForce 6世代と同等だ」とFinancial Analyst Day 2011で発言しており,CUDA Coreの省電力性を大きく向上させてからTegraに実装しても十分間に合うと認識しているように見える。


 ……まとめてみよう。関係者の話を総合すると,NVIDIAは,Wayne以降のTegraで,CPUとGPUとを交互に,下記のとおり進化させていくと見るのが自然だ。

  • Wayne:2012年,28nm,Denverクアッドコア(Cortex-A15ベース)CPU,ULP GeForceコアGPU
  • Logan:2013年,28nm,DenverオクタコアCPU,CUDA Core GPU
  • Stark:2014年,20nm,次世代コアCPU,CUDA Core GPU

 そして,NVIDIAがモバイルPC市場で大きく飛躍するとするならば,CUDA Coreを実装し,Windows 8のフル機能をグラフィックス面でもサポートできるLoganこそが起爆剤になると見るべきだろう。
 タブレット端末向けCPUとして大成功を収めているTegraは,アメリカンヒーローの名をコードネームに取り入れたKal-El世代以降,「携帯端末向けプロセッサ」から,「パーソナルモバイルコンピュータ向けプロセッサ」へと舵を切ることになりそうだ。
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