ニュース
[GTC]NVIDIAがTegraプラットフォームのさらなる強化を表明。裸眼3D立体視に対応した搭載端末の公開も
しかし,GTC 2010の会期中においては,それ以上の詳細情報は公開されなかった。初代TegraやTegra 2に関する情報のアップデートは,毎年6月に開催されるCOMPUTEX TAIPEIの会期中に行われてきた。その意味で,2010年6月にはTegra 3に関する何らかの発表があってもよかったのだが,今年は9月を迎えても関連情報の発表が行われていないということになる。
Tegraの情報アップデートがされなかったのは,Tegraがターゲットにする携帯デバイスだと,各国の通信技術適合審査などの認証が必要となる点などが絡み,Tegra搭載機器がPCよりも長い開発期間を必要とする事情が大きい,ということのようである。
Tegra端末の裸眼3D立体視デモが展示
ただしTegraのバージョンは公開されず
これは,日本の大手映画館などに3Dシステムを提供する韓MASTERIMAGE 3Dが,GTC 2010の初日にのみ公開したもの。MASTERIMAGE 3Dは,自社で開発した裸眼立体視対応の液晶パネルを搭載したTegraベースの試作機を展示。来場者に3D立体視映像を見せていた。
また,Tegra搭載タブレットなどを発売している米ICDも,技術セッション内でTegraベースの超薄型セットトップボックス「Floob」を公開し,同製品による3D立体視動画の再生デモを行った。これらのデモからは,Tegraプラットフォームでの3D立体視対応が着実に進んでいることが窺える。
ただ,筆者がMASTERIMAGE 3DやICDの関係者に「この3Dデモが次世代Tegraベースなのか現行のTegra 2ベースのものか」と尋ねたところ,両社ともそれらを明らかにすることはなかった。この点については前出のWuebbling氏も「どの世代のTegraで3D立体視対応をサポートするかは,現時点では公式にコメントできない。しかし,Tegraが3D立体視をサポートするのは,見たとおりだ」と述べるに留まった。
ところで,3D立体視を自然に楽しむためは,ユーザースクリーン(あるいはディスプレイ)の大きさや距離が重要な要素となる。そして現在の3D立体視用コンテンツは,映画など,ある程度大きな画面サイズを前提として作られたものが主流だ。
しかしTegraがターゲットとする携帯端末では,ディスプレイの解像度が低いなどの理由により,コンテンツ側が携帯端末に合わせて調整をしなければ,快適な3D立体視体験は難しくなると思われる。
こういった点から,Tegra端末に3D立体視を持ち込むには,コンテンツの開発ツールが重要になる。このことはWuebbling氏もよく理解しており,「ゲームコンテンツの制作には,すでに登場している3D Visionのエコシステムが利用できる」とコメント。現在PC向けに提供されている3D Vision用のツールなどの流用体制を作ることで,携帯端末向けに最適化された3Dゲームなどの開発がサポートできる体制を整えられると見ているようだ。
ゲーム端末としての性能強化も継続
将来世代ではDirectXサポートも?
もう1つ注目しておきたいのは,ゲーム端末向けとしてのTegraプラットフォームが持つ可能性だ。現行のTegraは,GeForce 7シリーズベースとされる超低消費電力版GeForceを搭載することから,携帯端末用プロセッサとしては強力な3Dグラフィックス性能を備える。しかし一方で,APIとしてはOpenGLやOpenGL ES,OpenVGなどをサポートするものの,DirectXには非対応といった,(PCベースのゲームタイトルを移植するにあたっての)弱点もあった。
この状況に対してWuebbling氏は「今後の新製品ではDirectX対応も果たすことになる」とコメントしており,Tegraはグラフィックス性能を高めていくと同時に,より広範囲のゲームを動作させられる環境を整備しようとしているようだ。ただしWuebbling氏は「現時点でのTegraプラットフォームは,完全にAndroid端末をターゲットに開発されている」とも語ったことから,DirectXの対応は早急な話ではないようである。
またNVIDIAは,Tegra自体の性能強化という観点でも,ますます力を入れるようだ。
最新のWebブラウザやAdobe Flashでは,GPUによるハードウェアアクセラレーションを有効にし,CPU負荷を減らす方向に動いている。このトレンドは,グラフィックス技術に強みを持つNVIDIAにとって,大きな追い風となる。
NVIDIAは,今年1月のTegra 2の正式発表時でも,次世代TegraではTegra 1から2への移行と同じく,同じ消費電力でパフォーマンスを約4倍向上させるという意向を示していた。
Wuebbling氏は「今後の製品でも,より高性能な固定機能ユニットを統合することでパフォーマンスを向上させつつ,現行製品と同じか,より優れた省電力性能を実現していく」という。
その一方で,Intelの「Intel Turbo Boost Technology」のような,CPUやグラフィックスコアの動的なオーバークロック動作についても「チップの消費電力設計内で柔軟にコアクロックを制御することは,自然な実装形態だ」として,将来製品での採用に興味を示した。
もっとも,「オーバークロックで一時的にパフォーマンスを向上させることは,バッテリー駆動時間などへの悪影響も少なくない」とWuebbling氏。Tegraで同様の技術を実装することは難しくないが,それを有効活用できるプラットフォームやアプリケーションが整うのを待つ必要があるという見解も示している。
将来的にはGeForceの売り上げの低下を
Tegraシリーズが補う構図も(?)
NVIDIAがTegraで目指すのは,同社が「スーパーフォン」と呼ぶ,現在のスマートフォンよりも高機能な携帯端末だ。Huang氏は「将来的にノートPCの多くは,タブレット端末や携帯電話に置き換えられるだろう」という見解を打ち出しているが,これはともすれば,PC市場をベースにするGeForceシリーズの売り上げが落ち込んだ場合でも,今後成長が続くと目されるTegraシリーズで補いたいという考えのようにも見える。
NVIDIAは現在も,Tegra関連のビジネスに対する投資を増している。2011年前半には,次世代Tegraに関する詳細情報の公開や,Tegra 2を採用したAndroidベースのタブレット端末など,多数の製品が市場投入される見通しだ。
Android版Backbreakerのデモ。選手の動きはPhysXでシミュレーションしたデータをアニメーションで実装したもので,TegraでのPhysX対応は「もう少し先」とのこと |
Android採用タブレットの市場に関しては,Androidマーケットの動向次第といった部分もあるのだが,Tegraプラットフォームの今後が4Gamer読者にとっても目が離せない存在になりつつあるとはいえそうである。
- 関連タイトル:
Tegra
- この記事のURL: