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2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
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印刷2008/02/21 14:05

レビュー

約2年ぶりにPCに帰ってきた「Winning Post」のシリーズ最新作

Winning Post 7 MAXIMUM2008

Text by 水道橋郁夫

「Winning Post 7」の2008年最新データバージョン


PC版「7」としては2回目,「7」通算としては3回目となるボリューム特盛版「Winning Post 7 MAXIMUM2008」。2007年には廉価版及びコンシューマ版「MAXIMUM2007」の発売があったものの,PC版としての新作は2005年以来だ
画像集#001のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
 おかえりなさい,PCへ! 「ダービースタリオン」と並ぶ二大競馬シミュレーションゲーム「Winning Post」のシリーズ最新作が,久々にPCプラットフォームでリリースされた。

 最新作「Winning Post 7 MAXIMUM2008」(以下,MAXIMUM2008)は,2004年12月に発売された「Winning Post 7」の延長線上にあるタイトルで,まだ見ぬ次期ナンバーの「8」ではない。
 「7」の発売から1年後にあたる2005年12月には,拡張版の「Winning Post 7 パワーアップキット」が発売され,コンシューマ版に先駆けてPC版で最初にお目見えするという発売サイクルがとられた。ところが,2006年末には新作がリリースされず,2007年のレースプログラムなどに新規対応した「Winning Post 7 MAXIMUM2007」がコンシューマでのみ発売されるという新たな展開を迎え,ファンの間ではこのシリーズは,もはやPC版では発売されないのではないかといった憶測が囁かれていたほどだった。

画像集#002のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
2008年の最新レースプログラム。GIの施行時期がずらされたうえ,重賞も新設された12月はとくに大きく変わっている
画像集#003のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
2008年2月現在まだ引退していない馬も,現役馬や種牡馬として登場。日本に限らず,新顔の海外馬ももちろんいる

 しかしそんな約1年2か月の沈黙を破り,MAXIMUM2008のPC版が2月15日ついに登場。3月13日に発売予定となっているプレイステーション3,プレイステーション2,Wii版に1か月先駆けての発売となった。
 ちなみに「パワーアップキット」ではなく,「MAXIMUM」を冠したバージョンがPC版として発売されるのは初めてのこと。このシリーズで初めて遊ぼうという人には,どれがシリーズの最新版なのか混乱してしまいそうだが,とりあえず本作MAXIMUM2008は「Winning Post 7 with パワーアップキット」のさらなるパワーアップキットと考えていただいて差し支えない。

画像集#004のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
新たに導入された「名馬列伝」は,辞書としても資料としても読みものとしても面白味がある。収録数は1200頭以上
画像集#005のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
史実にまつわるイベントが拡充された。年季の入ったファンはマニア心をくすぐられ,ビギナーはへぇ〜

 「7」が発売されてからもう3年以上が過ぎたが,当時のレビューでも書いたように,およそほかの競馬シミュレーションゲームで目玉となっている要素については,「7」にはほとんどすべて盛り込まれており,システムの面ではその集大成という形でほぼ完成を見ている。
 本シリーズで「8」を冠した最新作を望む場合には,同じくコーエーの看板シリーズである「信長の野望」でだいたい2作おきにあるような,(リスクを伴う)大きなシステム変更にチャレンジする必要があると推察される。なので,完成された「7」に2008年までの最新データが盛り込まれたMAXIMUM2008は,多少言葉は悪いが,コーエーにとってもファンにとっても無難な最新作なのだ。

画像集#006のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
いきなり最新年からのスタートも可能になった。これはコンシューマ版「MAXIMUM2007」から搭載されたモード
画像集#007のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
JRA苦肉の格付け表記「Jpn」がPC版初登場。外国馬が出走できない日本ダービーは,GIではなくJpnIという事態に

 そんなわけで,システム面に大きな改良がない分,本作ではデータの拡充に力が注がれている。本作の基本要素については過去のレビューを参考にしてもらいたい。

「Winning Post 7」レビュー


「Winning Post 7 パワーアップキット」レビュー



「MAXIMUM2008」五つの新要素を見ていこう


オリジナル騎手育成も含め,「パワーアップキット」で好評だった馬や人物のエディット機能は本作にも搭載されている。「7」シリーズで盛り込まれてきた既存の要素は,オンラインユーザー認証システムが時に接続不良などの弊害を招いたWP7マルチリンクを除き,ほぼすべて引き継がれている
画像集#008のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
 MAXIMUM2008で追加/更新されたデータの種類は主に以下の五つ。

 一つめは2008年版レースプログラム。12月に新設された重賞カペラSの追加や,日程と共に東京ダート2100mから阪神ダート1800mへと条件が見直されたジャパンCダートといったレース変更のほか,セン馬(去勢された馬)に対する天皇賞への門戸開放や日本ダービーに出走できる外国産馬の出走可能頭数増大など,細かい条件付けに至るまで,最新競馬番組や施行規程がそのまま反映されている。
 つまり2月現在まだ行なわれていない,それらの新条件を,現実に先駆けて体感できるというわけだ。JRA(日本中央競馬会)が行なった最新レースプログラムの変更点は,主に昨今JRAが推し進めている国際交流競走充実の方針に沿ったもの。例えばジャパンCダートの条件変更などは,ダート競馬の本場であるアメリカに2100mを超える長距離のダート重賞がほとんどないという現状に合わせ,アメリカ馬の誘致をしやすくするための策だと言われる。セン馬への天皇賞開放については,2006年にオーストラリア最大のレースであるメルボルンCで日本馬が1,2着を独占したあたりから活発化し始めた,セン馬が多いオーストラリアとの相互交流を踏まえてのものであるようだ。

画像集#009のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
今年から新設されたカペラSもいち早く体験できる。テコ入れされたダート短距離路線のローテーションをつかめ!
画像集#010のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
売りの一つである海外競馬もさらに充実。こちらは2007年に世界最高評価を与えられたドイツ生まれのマンデュロ

 追加/更新された要素の二つめは,競走馬や騎手など人物のデータ。これも2008年版の最新データに合わせた更新で,新規に追加された現役馬としては2007年の2歳牡馬チャンピオンで現3歳のゴスホークケンや,公営川崎の全日本2歳優駿を制した中央馬イイデケンシン,同レースにホッカイドウ競馬から参戦して2着だったディラクエなどの地方馬,また2007年のアメリカ年度代表馬Curlinといった最新の海外馬がいる。
 種牡馬には,2007年のキングジョージと凱旋門賞を制したアイルランドのDylan Thomasや,スペシャル種牡馬としては27本のボルトを埋め込む重度の骨折と戦い続けたBarbaro,生殖不良で引退を撤回して現役復帰するもアメリカで非業の死を遂げたGeorge Washingtonなど,実際には繁殖生活を送れなかった最近の名馬達も追加されており,これらはプレイヤーのお好みで登場させるか否かを選べる。

 三つめは電子書籍の「名馬列伝」。「Winning Post 7」では,重賞のグレード制が導入された「1984年」からスタートし,現在に至るまでの競馬史を実際のプレイで体験できるというシステムが採用されている。しかしこれは根っからの競馬ファンには嬉しいが,このゲームを教材に史実を勉強中という競馬初心者にとっては,ゲームに出てくる馬が実際にはどういう馬だったのかが分からりづらい。
 今回追加された「名馬列伝」では,ゲーム中にライバルや種牡馬などとして登場する1200頭を超える馬達のエピソードが,辞典のように収録されている。もし知らない馬が出てきたら,ゲーム画面でこれを引いてすぐに調べればいいのだ。
 ちなみに,プレイヤーがナリタブライアンの三冠制覇を阻むなどして歴史を変えたとしても,列伝自体の内容には反映されない。あくまで史実を学ぶための資料ということで,単純に読みものとしても面白い代物に仕上がっている。

画像集#011のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
知らない馬や単語が出てきたら「名馬列伝」や「用語辞典」を引こう。競馬入門用ソフトとしてもオススメできるクオリティ
画像集#012のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
イベントは見せ方も多種多様。ちなみに大種牡馬サンデーサイレンスの仔は,2003年生まれの現5歳勢が最後の世代だ

 四つめは「名馬列伝」のイベント版ともいえる,実在馬イベントの追加。プレイによって史実が変わった場合はイベントが起こらないが,名馬が史実どおりに偉業を達成したときなどには,そのエピソードなどがゲーム内で語られる。中には文字と絵だけでなくムービーで紹介されるものもある。今回新たに追加されたイベントは60以上あり,その分だけ史実シナリオはさらに厚みを増したということだ。

 最後の五つめは,2009年開始シナリオの追加だ。
 PC版「7」と「パワーアップキット」では1984年からシナリオがスタートし,現在を経て未来の競馬史を新たに作るという流れでゲームが進行するが,「6」までのように単純に“現在から未来”の歴史だけを作りたいというプレイヤーがいたのも事実。そういったプレイヤーにとっては,1984年からの史実パートを延々消化する作業がおっくうなだけだったわけだが,今回の2009年開始シナリオはまさにそういったプレイヤーの要望に応えたもので,現在から自分だけの競馬史をスタートさせられる。
 ただしこのシナリオでは,馬主を「ノーマルタイプ」しか選択できないという制限事項もある。1984年からの史実シナリオでは初期資金3億円,牧場なしの状態から始める「ノーマルタイプ」のほか,初期資金100億円に加え,ある程度施設の充実した牧場を所有している「大牧場タイプ」の馬主と,同じく初期資金100億円で,能力の高い実在馬などを購入するときに必要なお守りを多数所有している「大馬主タイプ」が選択できる。
 そして「ノーマルタイプ」と「大牧場タイプ」を選択した場合で,かつ10億円以上資金を所有しており2008年以降までプレイしたストーリーデータがある場合は,所持金や牧場施設の引き継ぎができる。

 要するに「2009年開始シナリオ」は,史実シナリオに興味がなく,せっかちな人向け。2009年のスタート時から大資金でいきなりブイブイ言わせたい場合には,オート進行機能を使うなりして先に史実シナリオを消化したほうが賢明というわけだ。ストーリーデータの引き継ぎは旧作である「7」と,その「パワーアップキット」からも可能で,前者の場合は2005年以降,後者の場合は2006年以降まで進めてあれば,そのまま今作にもデータを転用できる。

画像集#013のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
牝馬として64年ぶりに日本ダービーを制したウオッカに完勝した桜花賞と秋華賞を含め,GIを3勝,最優秀3歳牝馬に選ばれたダイワスカーレット
画像集#014のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
おなじみの稲妻配合など,配合理論に大きな変更はない様子。爆発力と総合評価を参考にしながら相手を選ぼう


「Winning Post 7」の史実モードが抱える問題


エディットで用意されたスペシャル種牡馬達は,レース中に死亡するなどして現実では種牡馬になれなかったり種牡馬として不遇だったりしたものがほとんど。これらをゲーム中に登場させると大きく歴史を変えてしまうことにもつながるが,登場させるか否かはプレイヤーの自由だ
画像集#015のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
 「Winning Post 7」はオリジナル版の発売以降,パワーアップキットとMAXIMUM2008,そしてコンシューマ向けに発売された「MAXIMUM2007」も加えれば,計3度の拡張が行われてきた。
 MAXIMUM2008では,「7」のウリである“史実シナリオ”のさらなる強化が施され,ゲーム性に厚みが増したのは事実だが,それと反比例してまた色濃くなってしまった問題もある。それは仕様上,最新のレースプログラムや,改修が重ねられてきた新しい競馬場の形など現在あるものの大半が,それらが存在しなかった過去の史実中でも使われてしまう部分だ。
 いくつか具体的に例を挙げると,ダート路線で地方と中央との垣根が大きく取り外され,地方交流元年と呼ばれた年は1995年で,GI・NHKマイルCやドバイワールドCの第1回が行なわれたのは1996年。新潟競馬場の改修が完了して,それまでの右回りから左回りとなり,1000mという国内最長の直線コースを備えたのは2001年のことだった。
 MAXIMUM2008では1984年の段階で,それらすべてが存在してしまっており,史実シナリオと銘打たれてはいるものの,史実とは決定的にかけ離れた箇所が多数見受けられる。単に攻略要素として考えるならば,実在の強い勝ち馬が存在しない大レースはプレイヤー所有馬にとっての狙い目であり,NHKマイルCなどは初のGI勝ちを狙う場として,賞金相場が現在と変わらない地方交流重賞は稼ぎ場として有益ではあるが,これらの矛盾を抱えたまま史実を強化していくという方針は,もうそろそろ限界にきているのではないだろうか。

画像集#016のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
史実シナリオには日本だけでなく海外の競馬史も盛り込まれている。サンデーサイレンスとEasy Goerの対決を見よ!
画像集#017のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
新規追加された若駒に関しては現実的にまだ評価が定まりきっていない。能力が気に入らなければ自分の手で修正するのもアリだ

 Winning Postシリーズはシステム面で毎回新しい取り組みを盛り込み,ほかに類を見ないほど貪欲に進化を続けてきた競馬シミュレーションゲームである。お手軽さが追求され,基本システムが初期からほとんどいじられていない「ダービースタリオン」シリーズとは,その点まったく対照的といっていい。「クラシックロード」の売りだった種牡馬系統の育成や海外競馬のフォロー,「サラブレッドブリーダー」の売りだった史実シナリオ,そして「ダビスタ」的な配合理論や対戦機能。Winning Postシリーズとリンクしている,コーエーの騎手ゲーム「ジーワンジョッキー」も含めれば,もはや導入されていない競馬の魅力的要素は少ないように思える。もし「8」が今後制作されるのであれば,史実に沿った番組や競馬場,調教施設の変化までをフォローして,より完璧な,文字通りの競馬シミュレーションゲームを見せてほしい。

画像集#018のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
有名な競馬評論家をモデルとした井崎……もとい,井坂先生。得意のうんちくも新たに追加され,その量もいよいよマキシマム
画像集#019のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
初代「Winning Post」から,「5」を除いて登場し続けている架空の名馬サードステージは本作でも登場する。強いんだこれが

 2007年には日本が競馬の最上級国を意味するパートI国に昇格し,重賞競走の一部が国際格付けを持つことが認められたが,その弊害としてGI・GII・GIIIとJpnI・JpnII・JpnIII(呼び方はどちらもジーワン,ジーツー,ジースリー)という,変な格付け表記を併用せざるを得ないという問題も生まれてしまった。
 この表記分けはもちろん今作の中でも見られるが,国際的に通用するステータスを持つことで,そのレースの位置付けも変化していくことだろう。馬やホースマン,サイアーラインの次は,レースを育てるという楽しみ方があってもよさそうなものだ。あとは20年近く競馬ゲーム制作者の前に立ちはだかっている文字どおりの大障害,ジャンプ競走の導入も,次こそはぜひ!

画像集#020のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
システム面で改良すべき点が多く見受けられたWP7マルチリンクは今回外されたが,各種対戦モードは健在だ
画像集#021のサムネイル/2008年版最新データ収録「Winning Post 7 MAXIMUM2008」のレビューを掲載
史実とは異なり,なぜか1984年から存在しているJCダート。このあたりのフォローは今後の課題の一つだろう
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    Winning Post 7 MAXIMUM2008

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