― レビュー ―
エディット機能で競馬史に「神の手」を
Winning Post 7 パワーアップキット
Text by 水道橋郁夫
2006年1月24日

 

■今回のパワーアップキットの目玉はエディット機能

 

データを直接変更できるエディット機能を新規搭載。その気があれば,ある意味競馬史全体をエディットすることも可能だろう

 プレイステーション2版に先駆け,毎年12月の発売が恒例となっているPC版Winning Postシリーズ。新作とパワーアップキットが交互にリリースされている中,2005年12月にはその順番に沿って「Winning Post 7 パワーアップキット」および,本体同梱の「Winning Post 7 with パワーアップキット」が発売された。
 2004年12月にお目見えした「Winning Post 7」本体では,従来のWinning Postのスタイルだった“現在から先の競馬史を作る”システムに変更が加えられ,“1984年から現在までの競馬史を振り返ったうえで,未来の競馬を創造する”形へと進化を遂げた。これは,この作品を教材に競馬を覚えようとするビギナーにとっても,過去の競馬史に一家言あるベテランにとってもうれしい改良点となったが,今回の「Winning Post 7 パワーアップキット」では,どちらかというとコアなファンのために,ゲーム中に登場する何千にもおよぶ「馬」「人物」のデータを,個々にエディットできるようになった点が最大のセールスポイントといえるだろう。
 一口に「馬」や「人物」といっても,その中には日々競走に携わっている最前線から,日本では北海道を基盤とした生産界まで,さまざまな役目を担っている馬と人物がいる。本作でエディットできる「馬」とは,1984年から国内外に登場する「実在競走馬」と「初期種牡馬」,そしてそれ以前の時代に活躍した「スペシャル種牡馬」のこと。そして「人物」とは,「騎手」「調教師」「馬主」「牧場(関係者)」の4業種を指す。それら全7種類のファクターを,直接的な数値の書き換えやABCでのランク変更,特性の有無などにより,自由にいじくれるようになったのが本作だ。

 例えば,自分の馬を勝たせるために強豪の数値を下げたり,自分が関わりを持つ競馬人の能力を伸ばし,世界的なホースマンに押し上げたりすることが可能となったわけで,つまるところそれは,“国内外競馬史の直接なエディット”ができるようになったということにほかならない。一方で,それらゲームの大局に関わることとは別に,非実名の登場人物を自らの手で実名に書き換えたり,デフォルトの状態では納得のいかない能力数値を手直ししたりなど,根っからの競馬ファンにのみに可能と思われる「修正」も,もちろんできる。
 そういったわけで,一見シンプルな内容にも見えるこのエディット機能だが,「パワーアップキット」の名にふさわしく,本編をより充実化させるための大きな可能性に満ちあふれたものだといえるだろう。
 ちなみに,エディットにより揺らいだ競馬史の中には,「もしトウカイテイオーが骨折せず,無事三冠最終戦を迎えていたら……」「もしスペシャルウィークが海外遠征に踏み切っていたら……」など,今回新たに追加された「ifイベント」と連動してくるものもある。これもエディットを行なううえでの,お楽しみ要素の一つとなっている。

 

ジャパンC,有馬記念と,本作発売前後に大きく成長したハーツクライ。データが気に入らなければ,エディット機能で手を加えよう あまりライバル馬を強くしてしまうと,ディープインパクトの三冠が阻止されてしまうことも。もちろん意図的に狙うのも可能 騎手,調教師,馬主ら登場人物全員を,自らの手で実名化するのも一興。一部の人物は初めから実名で登場しているけど

 

騎手に限っては既存の能力の変更だけでなく,新規にオリジナル騎手をエディットすることも可能。もちろんゲーム内で育てられる 1983年以前の名馬も一部登場。実際には種牡馬になれなかったテンポイントなどは,その名のとおり「スペシャル種牡馬」だ 骨折に泣いた無敗の二冠馬もこうしておけば……。エディット内容と連動して,演出された「ifイベント」が発生することもある

 

 

■ディープインパクト大暴れ,競馬界の最新データに対応

 

2005年の競馬を沸騰させたディープインパクト世代はもちろん,競走馬データの充実はその1歳下の現3歳世代にまで及んでいる

 英雄ディープインパクトが無敗で三冠を制し,NHKをはじめ一般のテレビ番組などでも大きく取り上げられた2005年。中央競馬に無敗の三冠馬が現われたこの年は,約100年にもおよぶ日本競馬史上,シンボリルドルフが最初に達成した1985年以外存在しない,非常にレアな1年となった。
 Winning Post 7 パワーアップキットでは,そんな「大2005年」の様相も新たにフォローされており,競走馬データに至ってはディープインパクトを追う1歳下の世代となる,2006年の現3歳分までが収録されている。
 レーシングプログラムもディープインパクト三冠達成時の2005年版に新規対応し,それに加えて1〜3着馬を順番に当てる「3連単馬券」も新登場。海外においては,芝1400m以下18戦無敗で日本のスプリンターズSを制した香港馬王サイレントウィットネスなどが話題を作った,「グローバル・スプリント・チャレンジ」や「アジア・マイル・チャレンジ」など,海外と日本を股にかけて戦う新シリーズも,今回から初お目見えとなった。
 難度の面では,「Winning Post 7」本編では通用した「最初に購入すると効果的な競走馬」など一部の攻略セオリーが無効化されたほか,「HARD」の上の「EXPERT」モードが追加されるなど,経験者に対しての挑戦的な変更が加えられたが,これはむしろ,今までをぬるま湯に感じ始めていたプレイヤーにとっては望むところだろう。逆に初心者にとっては,今まで同様「EASY」モードがあるうえ,「Winning Post 6」に存在していた馬主タイプの選択が再び可能となったため,うまく使えば最初から資金や設備が潤沢な状態でプレイ可能だ。

 用意された馬主タイプは,従来の“初期資金3億円,牧場なし”の状態でスタートする「ノーマルタイプ」に加え,初期資金が100億円と余裕のある「大牧場タイプ」「大馬主タイプ」の計三つ。「大牧場タイプ」では実在競走馬の所有ができないものの,ある程度設備の充実した牧場を最初から所有しており,セールに限り実在繁殖牝馬の購入や,そのほか海外種牡馬との種付けも制限から外されている。「大馬主タイプ」は,有力馬購入に必要なアイテム「お守り」を大量に持っている点と,一部の海外競走馬の購入が可能な点で有利だが,自分の牧場は一切開設できず,しかも2005年末でゲーム終了という,専業馬主としての制限が設けられている。
 あえて苦難の道を選ばないのであれば,最初はまず「大牧場タイプ」の「EASY」モードを選択するのが賢明だ。そして1年間のスキップができる「オート進行」が使えるようになるまで適当にプレイし,それが使用可能になったあとは2006年まで進め,「ノーマルタイプ」でやり直すときにデータを引き継げば,1984年から何の制限もなく100億円の資金,ある程度の牧場施設,お守りを持った状態でスタートさせられる。「大馬主タイプ」はゲーム内での有利不利よりも,単純に現実の競馬史をおさらいしたい人にオススメしたい。オリジナルの馬を自分で生産しない代わりに正史に混入する異物も少なく,史上初めて無敗の三冠馬が現われた1984年から,2頭めのディープインパクトが現われた2005年まで,三冠馬の歴史を振り返る意味でも,今が旬のモードといえるだろう。

 

2005年のレーシングプログラムに新規対応。日本も含めて各国をサーキットする,新型GIシリーズへの参戦もついに叶った 1〜3着の完全的中を狙う3連単馬券も新登場。1000倍を超える配当も珍しくないが,史実を知っていてもなお的中は困難だ 馬主タイプの選択肢が二つ増えたことで,プレイヤーが目指す方向性も明確化された。最難関モード「EXPERT」も選択可能に

 

2006年以降まで進めて牧場を開設済みのデータがあれば,それを引き継いで再スタートすることも可能。いきなり「皇帝」も買える 現実の競馬史を通過したあとには,歴代のシリーズでもおなじみの馬達が登場。しかしどんな歴史を作るかは,あくまでプレイヤー次第だ オンラインの対戦場,「マルチリンク」も健在。ただしエディットした種牡馬から生まれた仔には,能力補正がかかることもあるので注意

 

タイトル Winning Post 7 パワーアップキット(Qualityイチキュッパ)
開発元 コーエー 発売元 ソースネクスト
発売日 2007/07/27 価格 1980円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP(+DirectX 8.1),CPU:Pentium II/333MHz以上[Pentium III/700MHz以上推奨],メインメモリ:128MB以上[256MB以上推奨],グラフィックスメモリ:8MB以上[16MB以上推奨],HDD空き容量:200MB以上,ネットワーク環境:1Mbps以上

(C)2004-2005 KOEI Co., Ltd. All rights reserved.

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/wp7puk/wp7puk.shtml