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本作の舞台はとある集合住宅。主人公は35年ローンを組み,家族3人で暮らす念願のマイホームを手に入れた……はずなのだが,そこは独裁的な理事長と,強大な権限を持つ管理組合に支配された,なかなか面倒なマンションだった。
しかも主人公は,ひょんなことから管理組合の理事に選ばれてしまう。マンションでは次々と問題が起こるが,そのすべてに手を回す余裕はない。1ターンが1週間となっており,情報,資金,住民とのつながりなどをやりくりしながら,限られた行動をどこに使うかを選んでいく。
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ここまで読むと,かなりクセの強い政治シミュレーションに思える。しかしプレイして強く感じたのは,むしろ「アナログゲームっぽさ」だった。
画面にはカードやさまざまなリソースが並び,それらをどこへ回すのかを考えていく。開発者によると,ゲームデザインではボードゲームの「ワーカープレイスメント」も意識しているという。
ワーカープレイスメントをざっくり説明すると,自分が持つ限られた駒をどこかに配置し,その場所に応じた行動や資源を得ていくボードゲームの仕組みだ。「RULES OF RESIDENCE」にもそれに近い「限られたものをどこへ回すか」という感覚がある。
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何でも自由にできるわけではなく,さらにダイスによるジャッジもあるため,プレイヤーがすべてを思いどおりにコントロールすることは難しい。その時点で持っているカードや情報,人とのつながりを確かめ,時に精神を蝕まれながらも次の一手を決めていく。
だからこそ,1つ1つの結果に「そうなったか」という納得感があり,「じゃあ次はこうしてみよう」と別のやり方を試したくなる。このあたりにはTRPGにも通じる手触りがある。
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そして面白いのは,このゲームが「正しいマンションに改革する」ことだけを目的にはしていないところだ。
管理組合にはかなり強大な権限がある。それを利用して自分に都合よく立ち回ることもできるし,一方で住民と協力しながらルールをひとつずつ変え,時間をかけて改革を進める道もある。どちらを選ぶかはプレイヤー次第だ。
もちろん,好き放題すれば住民の不満は高まり,自分自身の立場にも跳ね返ってくる。逆に,全員の要望に応えようとしても時間もリソースも足りない。「何が正解か」というより「限られた状況で何を選んだか」が積み重なり,そのマンションの姿を作っていくゲームなのだろう。
今回の試遊版では15分ほどプレイできた。開発者は,この短い時間でゲームの仕組みを理解してもらうこと自体が難しいと話していた。ただ,最初から何もかも丁寧に説明するタイプのゲームにもしたくはないという。自分で試して失敗して「なるほどこういうことか」と答え合わせをしながら仕組みをつかんでいく。その感覚をゲーム体験として残したいからだ。
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とはいえ,説明を減らしすぎれば,プレイヤーを限定してしまうゲームになりかねない。このあたりのバランスをどうとって遊びやすくするかは,今回の出展で実際にプレイヤーの反応を見る目的のひとつでもあるそうだ。
開発者自身は,「今回は結構易しめ」と考えているそうだが,周囲からはもともと「難しい」と言われることも多いとのこと。そのギャップも含めて,現在はテストプレイのフィードバックを受けながら調整を続けているという。
もうひとつ印象的だったのが,実写を取り込んだような独特のアートだ。
開発初期には,もっと一般的なコミック調のビジュアルなど,さまざまな方向性を検討したという。最終的には,このゲームが「リアルなものを扱っている」という雰囲気を出すため,実写的な質感と独特のイラスト表現を組み合わせた現在のスタイルを目指すことになったそうだ。
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取材のなかでは,「Disco Elysium」のような海外作品のアート,テキスト表現,ゲームの仕組みに話題が及んだ。開発者はとくに北欧や東欧などの作品が持つ独特の空気感が好きで,そうしたものと自身の世界観をうまく混ぜ合わせたいという。
確かに舞台となるのは,剣と魔法の異世界でも宇宙でもなく日本の集合住宅である。理事会や管理規約,住民同士の関係といったあまりにも生活に近いものがゲームのルールになる。だからこそ,この少し生々しく不穏な画面がよく似合っている。
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そして開発チームには,この「日本の集合住宅」という題材そのものを海外にも届けたいという狙いがある。
開発者自身がヨーロッパのゲームを遊び,そこに描かれる社会や文化に独特の魅力を感じたように,海外のプレイヤーにも「日本にはこんな世界があるのか」と感じてもらえる作品にしたいそうだ。
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日本で暮らしていると,集合住宅の管理組合などは,生活に近すぎてゲームの題材として意識することすら少ない。だが一歩引いて眺めてみれば,そこには住民同士の利害,ルール,権力,自治といったゲームになりそうな要素がぎっしり詰まっている。それをカードやダイス,リソース管理と結びつけたところに,「RULES OF RESIDENCE」ならではの面白さがありそうだ。
なお,開発者によれば,現在の完成度はまだ全体の2〜3割ほどという。ゲームの骨格や雰囲気は見えてきたものの,ここからシナリオやキャラクターなどのコンテンツを加え,ゲーム全体を作り込んでいく段階だという。TGS出展で得たフィードバックも取り入れながら開発を進め,2027年内の完成を目指しているとのことだ。
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この設定を初めて見たとき,筆者の頭には,2025年春に刊行され話題になったルポに描かれた,都内某所の“とあるマンション”が浮かんだ。もちろん,現実の出来事とゲームのフィクションを直接結びつけるべきではない。ただ,あのルポを読んだ人なら本作の設定に,あのことを思い浮かべるはずだ。
ちなみに,TGSのトイジアムブースは4Gamerブースのすぐ隣にある。なんともご近所さんな新作なのだが,そのなかで繰り広げられているのは,住民同士の思惑とルールが絡み合う,あまり穏やかではないマンション暮らしだ。気になった人は,35年ローンの先に待っていた理想ならぬ「理事」の暮らしを体験してみてほしい。
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