男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ：第648回「必ずしもゲイムに“オール5”は必要ない」

　5段階評価で通知表がオール5になるのって凄いよね。
　そして，子供の頃はとくに本人も含めてオール5がもてはやされる傾向にあるよね。実際，オール5は凄い。ただ，大人になって思うのは，必要なのはオール5を目指すことよりも，自分に必要な教科は何かを見極める力なのかなーって。

　というのもね，社会に出て働くにあたって，全方向で優れた能力が必要な仕事ってあまりないと思うのですよ。私が知らないだけかもしれないんで，まったくないとは言わないけどね。となると，自分が使いたい能力，もしくは自分の仕事に必要な能力を見極めて高めることができれば，それで十分って話になる。
　オール5を目指すなって意味じゃないのよ。幼少期の成績なんて，大ざっぱな評価に過ぎないんだから。例えば体育の成績が5だった場合でも，野球は5でサッカーは3かもしれない。そこまでは，「体育の成績が5」という情報だけでは分からない。でも，走るのが速ければ体育としては5。小学校の通知表ってそういうことなんです。
　オール5を目指すのはとてもいいことよ。多少なりとも頑張らないと達成できないからね。あと，私かそうだっただけかもしれないけども，子供は自分が特別だって思い込みがちなのよ。かめはめ波を撃てると思っていたからね，私。何なら今でももうちょい頑張れば撃てるだろうって気持ちは残っているけども。
　とにかく，自分に特別な能力があると思っちゃう。だから，何でもできることに憧れ，目指す。まあ，それはたぶん間違ってはいない。子供の可能性なんて，誰にも判定できないからね。いくら伸びやすい能力があったとしても，好きでなければ努力が続かないこともあるわけで。一方で，嫌々ながらも何かを続けているうちに途中から好きになることだってあるだろうし。
　そんな中，オール5が目的になってしまったら，ちょっとまずいぞ，とは思う。なぜなら，自分は何が得意で何が苦手かが分かりにくくなってしまうから。したがって「自分は何でもできる」っていうのは罠なんですよ。なまじ結果が出てしまったら，自分が本当は何をヤりたいか，適性はどこにあるのかがハッキリしにくい。うまく選べるならいいの。選択肢が多いのはいい事だし。
　ただ，選べない，選ばないまま大人になると苦労することが増えると思う。人生は選択の連続だからね。私の考えで言うと，能力そのものももちろん大切だけど，現状持っている能力でより良い道を選ぶ能力こそが重要じゃないかしら。

　……ここまで長々とゲイムに関係ないことを述べてまいりましたが，何が言いたいかというと「必ずしもゲイムに“オール5”は必要ない」ってことです。
　今週紹介するゲイムは「MistWorld the after」。元々は約10年前にiOS用としてリリースされた「Mist World」を起点とした個人開発のシリーズ作品があって，その新作として今年2月にiOS向けの「MistWorld-TA」が登場。それが先月，Nintendo Switchに移植され，ダウンロード専用タイトルとしてもリリースされたという形みたい。
　申し訳ない話だけど，私はMist Worldをプレイどころか知らない状態で今作をプレイしたわ。で，感じたのが上記の「必ずしもゲイムにオール5は必要ない」ってこと。これね，ものすごい割り切りでできているRPGなのよ。
　続編だけども，続編だってことを知らなくても成立する世界観。で，要するにほとんどのモンスターが5％の確率で武器を落とすから、それを手に入れて強くなりなさいっていうゲイムなの。
　もちろん店で売られている装備もあるんだけど，それよりも敵が落とす武器のほうが強いから，集めたくなっちゃう。それで結局戦闘を繰り返すことになる。この感じがとても面白い。


　正直なところ，プレイしていて「なんか大ざっぱだなー」って思う部分も多いのよ。レベルが上がったらやたら自分の能力が強くなるとか。フィールドから戦闘シーンに切り替わるとき，画面が止まったようになるからドキッとするとか，それなのにエンカウントが多くてその都度ドキッとするとか。
　ただ，それらは捨て要素。恐らく作るほうも割り切ってこのあたりを捨てている。すなわち，ゲイムとしてオール5ではないわけです。でも，このゲイムが面白いか面白くないかで言えば，面白いと答えざるを得ない。
　この連載でいわゆるインディーズゲイムおよび大規模ではないタイトルを紹介するときにいつも思うんだけど，割り切りがうまくできてるかどうかが，ゲイムを面白くする要素なのかなーって。それこそ，何を選ぶか。どの要素を留年しない最低限に抑えるか。割り切りすぎてマイナス要素がプラス要素の足を引っ張ってしまってもダメなわけで。
　そういう意味で，このMistWorld the afterの割り切り方はかなり質がいい。アイテムドロップが楽しいんだもん。5％ってのがちょうどいい。単純計算だと20回に1回。それを引けた瞬間のカタルシスこそが、このゲイムの楽しみなんですよ。その確率で同じアイテムを拾ってしまったときの悲しみもまた味わいの一部。
　次に行くべき場所も分かりやすいし，仲間もできやすいし，RPGの楽しさは十二分に味わえるかと。サラッとRPGをプレイしたい人に強くオススメです。


　夏が終わりましたね。まだ暑いけれども。とはいえここからゲイム業界は東京ゲイムショウやら年末商戦やらに向けて熱を帯びてまいります。去年，今年は人類の歴史からしてみても特殊な時代と言えるでしょう。その中で，どういうゲイムが世に産み出されるのか。
　ひとまず，今回紹介したMistWorld the afterのように，インディーズゲイムが面白いのは，ゲイムファンからしてもとても嬉しいことです。大手のゲイムだけがゲイムではないですから。生き方なんていくらでもある。オール5じゃなくても，ゲイムを通して楽しい時間を選ぶことができれば，それが一番じゃないか。
　これからも勝手にだけれどもすべてのゲイムクリエイターさん，期待しておりますよ。ではまた来週。

今週のハマりゲイム
PlayStation 5：「eFootball ウイニングイレブン 2021 SEASON UPDATE」※PlayStation 4版
Nintendo Switch：「MistWorld the after」
iOS：「龍が如く ONLINE」
iOS：「今三国志」
iOS：「ウイニングイレブン カードコレクション」

■■男色ディーノ（プロレスラー）■■ 男色“ダンディ”ディーノ選手が所属するDDTプロレスは，今週末の9月4日に愛知・名古屋国際会議場イベントホール大会「DRAMATIC SURVIVOR 2021」，翌5日に大阪・アゼリア大正大会「Who's Gonna TOP？ 2021 TOUR in OSAKA」を開催します。ディーノ選手は名古屋大会では飯野“セクシー”雄貴選手とのチーム「フェロモンズ」として，高木三四郎選手＆アントーニオ本多選手と対戦。大阪大会では勝俣瞬馬とのシングルマッチが予定されています。どちらの試合も「ぺんぺん草も生えなくなるぐらい悩殺する」そうです。