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Access Accepted第695回:5年で50億ドルに達する「ポケモンGO」のNianticが考えるメタバースの未来
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印刷2021/08/16 10:30

業界動向

Access Accepted第695回:5年で50億ドルに達する「ポケモンGO」のNianticが考えるメタバースの未来

画像集#006のサムネイル/Access Accepted第695回:5年で50億ドルに達する「ポケモンGO」のNianticが考えるメタバースの未来

 2016年7月のローンチから5周年が経過したモバイルARゲーム「ポケモンGO」を開発したNiantic。1年半を超えるCOVID-19の自粛ムードにもかかわらず,2021年度上半期もも非常に順調だったという。最近では,ゲームに関連するテクノロジー企業の買収にも乗り出しているNianticだが,同社CEOのジョン・ハンケ(John Hanke)氏は8月10日に「メタバースはディストピアの悪夢。より良い現実を作ろう」と題したブログエントリーを投稿し,ここ最近のゲーム業界で注目されるメタバースに一石を投じた。


ARゲームの先駆者Nianticが見据えるメタバース


 Nianticの創業者でありCEOのジョン・ハンケ(John Hanke)氏は,アメリカ現地時間の8月10日に「メタバースはディストピアの悪夢。より良い現実を作ろう」外部リンク)と題したブログエントリーを公開した。“メタバース”という用語については,「第674回:ゲームが牽引するメタバースという近未来」関連記事)で詳しく紹介したこともあるように,“サイバースペース”をちょっとおしゃれにしたような用語であり,最近ではEpic Gamesなどが盛んに利用している,ゲーム業界の一種のバズワードだ。
 今月に入ってからも,グリーが子会社REALITYを中核にして再編した“メタバース事業”を立ち上げたことをアナウンス(関連記事)しているし,Facebookのマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerburg)氏も,投資家に向けたオンライン総会において,同社がメタバースを実現させる旗頭になることを改めて表明している。それぞれが思い描くメタバースの将来像に差異はあれど,“ゲームの一歩先”を目指していることに違いはない。

 2016年7月6日,北米など一部の地域でAR(拡張現実)ゲーム「ポケモンGO」iOS / Android)がリリースされた。現実の位置情報と連動してポケモンを集めていく「ポケモンGO」は,現実と仮想をつなぐ“メタバース”という考えに近いタイトルだ。
 そんな「ポケモンGO」は2016年8月1日までに1億ダウンロードを記録し,さらに8月5日までのリリースから約1か月間で2億ドル(約220億円)もの収益を得るというモンスターヒット作品となった。このモバイルゲーム市場における1億ダウンロード最速到達(※)と1億ドルの最速収益達成は,どちらもギネスブックに記録されている。
 世界中で大きな波紋を投げかけるほどのブームも懐かしく感じられるほどだが,この7月であれから5年が経過し,記念イベントである「ポケモンGO Fest 2021」も盛況のうちに終わった。

※正確には「リリースから1か月で最もダウンロードされたモバイルゲーム」という記録

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 モバイルアプリの市場動向を調査するリサーチ企業Sensor Towerが公表したところによると,「ポケモンGO」は過去5年間で,50億ドル(約550億円)に到達したと試算されている。しかも,毎年の売り上げは前年比で順調に成長を続けており,2021年上半期の6か月間だけでも,前年同期比で34%アップとなる6億4200万ドル(約71億円)を得たという。5年経ってマンネリ化が懸念されているのかと思いきや,色違いポケモンやレイドバトル,メガシンカなどのやり込み要素,交換機能やコミュニティデイ・イベントなどで着実にコンテンツを拡充させて,リピーターを確保しているようだ。

5周年で今なお継続的に高い収益をあげている「ポケモンGO」 (Sensor Towerの資料より)
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 2012年の「イングレス」から「ポケモンGO」,そして2019年の「ハリー・ポッター: 魔法同盟」とジオロケーション型ARアプリを生み出してきたNianticだが,2020年には「Niantic Real World Platform」外部リンク)というARアプリのゲームプラットフォームの開設をアナウンスしており,ニュージーランド,シンガポール,スイスなど一部地域で「Catan: World Explorers」のアーリーアクセス版を公開している。現時点では詳細は明らかにされていないものの,同社は「ARグラス」への開発投資を行っていることを公言しており,今後はソフトだけでなくハードウェアプラットフォーマーとして立脚していくものと思われる。

 そのため,2021年1月にはコミュニティサービスを提供する「MAYHAM」を買収したほか,最近ではLiDAR(Light Detection and Ranging/ライダー)を活用する3Dモバイルスキャニングアプリ「Scaniverse」を開発したToolbox AIを買収するなど,技術確保に余念がないといった印象だ。Nianticはさらに,「ゲームと演劇を融合する」という複数のプロジェクトについて,ニューヨークでさまざまなパフォーマンス活動を行うPunchdrunk Internationalとも提携しているが,いったいここから何が生まれてくるのか,気になるところである。

Nianticが買収したソーシャルプラットフォーム「MAYHAM」が,今後ARでどのように利用されていくことになるのだろうか?
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テクノロジーに振り回されない未来のために


 ハンケ氏が「ディストピアの悪夢」と表現するのは,このメタバースという言葉が初めて登場した1992年のSF小説「スノウ・クラッシュ」や2018年のスピルバーグ監督作品「レディ・プレイヤー1」などで描かれた,抑圧する政府や貧困などからの逃避行動としてテクノロジーに依存するという描写である。「そうした事態にならないようにするのが我々の任務」とするハンケ氏は,記事の中で,以下のように語っている。
 「私たちは,テクノロジーを使用して拡張現実の“現実”に傾倒できると信じています。その現実とは,すべての人が外に出て,周囲の人々や世界とつながることを奨励するものです。この衝動は私たち人間が持って生まれたものであり,200万年の人間の進化の結果として,私たちを最も幸せに感じさせるのです。テクノロジーは,これらの根本的な人間の経験をより良くするために使用されるべきであり,それらに取って代わるものではありません。」

 ハンケ氏が呼び掛けているのは,そうしたテクノロジーを拒否することではない。あらゆる情報だけでなく,友人や家族と瞬時につなげてくれるという絶大な恩恵がある一方で,「実際に面と向かえば絶対に許容しないであろう失礼な行動を増幅し,最も極端な考え方をアルゴリズム的に強化したバブルの中に,人々を押し込むことによって私たちの社会を分割している」ことを,防いでいかなければならないとしている。
 これは,ゲームやソーシャルネットワークのコミュニケーションにおいては,その匿名性から他人を簡単に罵ったり,政治思想の違いから相手の言動を頭ごなしに否定する“キャンセル・カルチャー”(Cancel Culture)や,寄ってたかって特定の人物を馬鹿にする“オンライン・シェイミング”(Online Shaming)がはびこり始めた,現在のインターネット世界を憂慮しているものと思われる。

「Fortnite」では,ポップシンガーのアリアナ・グランデさんが「バーチャルツアー」を開催した。メタバースは,「1つの新しいメディア」として成長しつつあるのだ
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 そうした,ハンケ氏の言う「ディストピアではない,平和で安全なメタバース」を実現するため,億単位の人をシシンクロナイズさせる“仮想”と,それを実世界に結び付ける“現実”の橋渡しできるものとしてNianticが手掛けたのが,ARアプリ用開発キット「Lightship」であるとしている。
 また,将来的にはARのウェアラブルテクノロジーの開発を継続するとともに,そこから見える世界にさまざまな情報を上乗せする「Reality Channels」という仕組みについて語っているが,このあたりはFacebookが2019年に公表している「LiveMaps」外部リンク)を連想させるものである。
 はたして,我々の未来に待つメタバースは,テクノロジーに支配されたものなのか,それともテクノロジーと共存するものなのか。我々消費者にとっては,ハンケ氏らビジョナリーや開発者たちのモラルの高さに全てを委ねるしかないというあたりが不安要素ではあるが,彼らがこうした想いや情報をオープンに発信してくれる限り,その奮闘に期待したい気持ちにもなるのだ。

ハンケ氏は,ブログの中で「ARグラスから覗くと,あなたの近所のショッピングモールにジムがそびえてたり,良く行く公園にポケモンたちが群れを成していたら……」と表現しているが,そういう構想が存在するのかもしれない(画像はNianticが昨年公開した自社プロモ映像より)
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著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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