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Access Accepted第597回:「Dead by Daylight」などで知られるスウェーデンのStarbreezeが経営危機に
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印刷2018/12/10 12:00

業界動向

Access Accepted第597回:「Dead by Daylight」などで知られるスウェーデンのStarbreezeが経営危機に

画像(001)Access Accepted第597回:「Dead by Daylight」などで知られるスウェーデンのStarbreezeが経営危機に

 「Dead by Daylight」「PAYDAY」といった,日本でも知られる作品を販売してきたスウェーデンのパブリッシャStarbreeze Studiosが,2018年11月23日に同国の倒産法に則って更生手続きを開始したという。ところがその後,当局がインサイダー取引の容疑で強制捜査に入り,1人が逮捕されたというニュースが聞こえてきた。最近はパブリッシング事業に乗り出し,今年で創設から20年を迎えた同社だが,何が起きているのだろうか。


スウェーデンのゲーム産業の一翼を担うStarbreeze Studios


 人口960万人ほどのスウェーデンは,カナダやポーランドと同様,政府の後押しによるIT教育や投資,税優遇政策などの施策によって,今では欧米ゲーム業界に欠かせない「ソフトウェア生産国」になっている。2010年以前と比べると,ゲーム開発会社は3倍近い287社に,またゲーム産業の就労人口は約4倍の4800人に増え,全体の収益は10倍を超えるという急激な成長ぶりだ。

2016年に上場したStarbreeze Studios。ゲーム開発・販売だけでなく,VR対応デバイスも手がけるなど,順風満帆に見えたが,現在,大きな危機に直面している
画像(002)Access Accepted第597回:「Dead by Daylight」などで知られるスウェーデンのStarbreezeが経営危機に
 首都ストックホルムにある王宮の南の高台には,「ゲーム業界関係者の人口密度が世界一高い場所」と言われるセーデルマルム地区があり,ここには従業員500人を超えるEA DICEのほか,ストラテジーゲームで知られるParadox Entertainment,「ジャストコーズ」シリーズを開発するAvalanche Studios,「Minecraft」のMojangなど,本連載の読者なら知らないはずのない有名企業がオフィスを並べている。

 さらに,2011年に掲載した本連載の第291回「Minecraftを生み出したスウェーデンのゲーム事情」でも紹介したとおり,Demoscene(デモシーン)というゲームのサブカルチャーから生まれた個人の開発者や,少数チームの開発者達も数多く存在しており(関連記事),現在のスウェーデンはまさにゲーム大国と呼んでもいい状況だ。

 王宮の北側にある,いかにもビジネス街と言った雰囲気のノルマルム地区に本拠を置くのが,「Dead by Daylight」や「PAYDAY」シリーズで日本でも知られるStarbreeze Studiosだ。1998年にマグナス・ホグダール(Magnus Högdahl)氏が4人の仲間と設立した同社は,処女作のパブリッシングを担当してくれるはずだったイギリスの企業が買収されたために解約され,作品をリリースする前に解散しそうになっていたところ,近所のO3 Interactiveと統合することでからくも生き延びたという経歴を持つ。2002年にPC/Xbox向けの「Enclave」というゲームを発売し,業界デビューを果たした。

 ゲーマーの間で話題になったのが,Starbreeze Studiosとしては3作めにあたる「The Chronicles of Riddick: Escape from Butcher Bay」(2004年)だ。同時期に公開されたSF映画「リディック」をライセンスし,ステルス,シューティング,そしてアドベンチャーの要素をうまく配分した作品として高い評価を得た。
 その後,2K Gamesから「The Darkness」を発売したが,こちらは商業的に成功せず,そのため多くのスタッフを解雇することになった。このときに去ったメンバーの中には,開発の指揮をとっていたホグダール氏や,O3 InteractiveからCEOに就任したラース・ヨハンソン(Lars Johansson)氏らが含まれる。ちなみに彼らはその後,Machine Gamesを設立し,ZeniMax Media傘下のスタジオとして「Wolfenstein」シリーズを手がけている。

Starbreeze Studiosを中堅企業へ押し上げたのが,2013年にリリースされた「PAYDAY 2」だったが,2015年末には,マイクロトランザクションでファンの批判を受け,ビジネスモデルの転換を図っている
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 Starbreeze Studiosはボー・アンデルソン・クリント(Bo Andersson Klint)氏を新たなCEOに据えて立て直しを図り,2012年にはElectronic Artsから「Syndicate」をリリースすると共に,地元のOverkill Softwareを買収。2013年にはイタリアの505 Gamesと組んで発売した「PAYDAY 2」「Brothers: a Tale of Two Sons」がヒット作になり,とくに「PAYDAY 2」は1年あまりの期間で900万人に愛されるゲームへと成長,これを機に資金が集まるようになっていく。

 2015年にはNASDAQ Nordicに上場を果たすと,505 Gamesから「PAYDAY 2」の版権を買い戻し,さらに同年にはフランスのハードウェアメーカーInfinitEye VRを買収した。この買収によって,商業施設向けのVR対応ヘッドマウントディスプレイ「StarVR」を発売。さらにパブリッシングビジネスへも進出し,2016年にリリースされたBehaviour Interactiveの「Dead by Daylight」は大ヒット作になった。こうしてStarbreeze Studiosは,スウェーデンのゲーム産業の一翼を担う企業として,急速にビジネスを拡大してきたのだ。


絶頂期からの急転落


 Starbreeze Studiosは2016年6月に開催されたE3 2016で,新作「OVERKILL's The Walking Dead」のアートワークを会場内に大きく飾る一方,「StarVR」の一般向けデモを公開し,存在感を発揮した(関連記事)。この段階で,ストックホルム本社とパリ本社に加え,サンフランシスコ,ロサンゼルス,バルセロナ,ブリュッセル,そしてバンガロールとデヘラードゥーン(いずれもインド)などに支社を持つまでになっていた。

 おそらく,このときが同社の絶頂期であり,上場から1年を経ずして同社の株価は下降していく。理由としては,VR市場が当初期待されていたほどではなかったうえに,流通面では505 Gamesに頼らざるを得ず,また,1つのプロジェクトが遅延したり失敗した場合,ほかのプロジェクトで補えるような体制も整っていなかったことが挙げられるだろう。上場企業としての手数の少なさが,市場に疑問視されたわけで,事実,そのとおりだった。

 2016年,2017年と発売延期を繰り返した「OVERKILL's The Walking Dead」は,2018年11月の始めにようやく発売された。協力プレイにフォーカスした「PAYDAY 2」のゲームシステムを利用し,グラフィックスノベルやドラマで根強い人気を持つ「ザ・ウォーキング・デッド」をライセンスした同作は,期待されていたが結果として振るわなかった。繰り返された発売延期のために発売時にフレッシュさがなくなっていたうえに,2018年は「Fallout 76」「レッド・デッド・リデンプション 2」などの超大作が発売されており,タイミングも悪かった。

Starbreeze Studiosのオフィス。筆者も,こんな環境で仕事がしたいと思わせるほどで,ストックホルムに多くの開発者が集まるのも納得できる。各メーカーがあまりにも密集しているため,レストランやバーなどではほかのメーカーの内輪話が聞けたりするらしい
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 「OVERKILL's The Walking Dead」の販売は最初から低迷していたようで,さらに505 Gamesから受け取るはずだったコンシューマ機版の版権1000万ドルが2019年以降でなければ支払われないことで,運用資金が底をついてしまったと,リリース2週間後の11月23日に発表された。

 Starbreeze Studiosはコストを見直すと発表したが,12月3日にはスウェーデンの倒産法に則った更生手続きがストックホルム地区裁判所に認められ,ボー・アンデルソン・クリント氏はCEOを解任された。
 更生手続きとは厳密には倒産ではなく,株式やIPなどの資産を売却したりして再建と経営健全化を図るものだという。手続き中は雇用者の賃金を保護するという条項もあり,規模を縮小してStarbreeze Studiosを存続させるか,投資家達に被害が及ばないようにしながらソフトランディングを目指すかといったことが模索されるようだ。

スタートダッシュに失敗した「OVERKILL's The Walking Dead」。Starbreeze Studiosは,Double Fine Productionsの「Psychonauts 2」やOtherSide Entertainmentの「System Shock 3」などに出資しており,IPを保有しているようだが,これらの作品がどうなるかについては今のところ不明だ
画像(005)Access Accepted第597回:「Dead by Daylight」などで知られるスウェーデンのStarbreezeが経営危機に

 しかし,その直後の12月5日に事態は急変した。Swedish Economic Crime Authority(スウェーデン語ではEkobrottsmyndigheten)がインサイダー取引の容疑でStarbreeze Studiosへ強制捜査を行い,PCや書類を押収したうえで1人を逮捕したと公式Twitterで発表したのだ。現時点で,逮捕された人物の名前は公表されていないようだが,ゲーム業界ではほとんど聞かない,驚くべき展開だといえる。

 先週の本連載でも触れたように,過去20年にわたってEA DICEの作品に関わってきたパトリック・ソダールンド(Patrick Söderlund)氏が8月に辞職し,さらに1999年の創設時からParadox Entertainmentを率いてきたフレドリック・ウェスタ―(Frederik Wester)氏が,CEOから会長職への格上げという形で第一線から退くなど,このところスウェーデンのゲーム産業にまつわるニュースをよく耳にする。我々ゲーマーとしては,Starbreeze Studiosの保有していた人気作のIPがどうなるかという点が最も気になるところだが,急成長を遂げてきた同国のゲーム企業になんらかの転機が訪れている……というのは考えすぎだろうが,いずれにせよ今後の展開に注目していくべきだろう。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をレポートし続けている。
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