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Access Accepted第574回:欧米各国で加速するルートボックス規制
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印刷2018/05/07 12:00

業界動向

Access Accepted第574回:欧米各国で加速するルートボックス規制


 オランダを皮切りに,ベルギーなどの周辺諸国でも議論が広がりつつある「ルートボックス問題」だが,各国政府や関連機関の動きは勢いを増しており,ゲーム企業やゲーム団体は対処を迫られている。レアアイテムが入手できる確率も不明確なまま,ルートボックスにお小遣いを注ぎ込んでいる子供達も少なからず存在する中,欧米ゲーム業界はどのような対応をしていくのだろうか。


ヨーロッパ各地でルートボックス規制の動き


 「ルートボックス問題」が欧米で過熱している。賭博関連の行政を担当するオランダの政府機関Nederlandse Kansspelautoriteitが人気の高い10タイトルを調査し,うち4作品に対してギャンブル性があるとして販売元に改善命令を出したというニュースは,すでにお伝えしたとおり

 オランダに続きベルギー政府も2018年4月25日,同国法務省の下にあるBelgische Kansspelcommissie (ベルギー賭博委員会)が,Blizzard Entertainmentの「Overwatch」,Electronic Artsの「STAR WARS バトルフロント II」「FIFA 18」,そしてValveの「Counter-Strike: Global Offensive」を名指ししたうえで,ルートボックス機能が「Game of Chance」(ルーレットなど,スキルではなく運によって勝敗が決まるという,賭博の定義の1つ)に接触しているという声明を出した

 ベルギー法務省のクーン・へーンス大臣自身のブログで,「ゲームと賭博を混在させることは,とくに未成年にとって,精神の健康に良くない」とし,上記のタイトルからルートボックス機能が取り除かれない場合,5年以下の懲役もしくは80万ユーロ以下の罰金を求める意向であると述べている。もっとも,実際に法的措置が取られるのかどうか,現時点では不明だ。

ギャンブルが基本的に違法である中国では,「Overwatch」のルートボックスからレジェンダリーアイテムが獲得できる確率が(おそらく当局の命令により)Blizzard Entertainmentから発表されている
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 ルートボックスとは,リアルマネーと引き換えに箱やパックを購入し,中に入っているゲームアイテムなどを手に入れるというもの。自分の幸運を信じるプレイヤーの射幸性を煽ることで人気を得ているが,とくに対戦ゲームの場合,より資金を投入したほうがレアアイテムを得て有利になるなど,いわゆる「Pay to Win」のゲームデザインが嫌われることもある。
 欧米では,賭博ができる年齢に達していないゲーマーでも利用できることが,これまでモバイルゲーム市場で問題視されてきたが,今回のルートボックス問題の発端になったのは,本連載の第556回「大きな議論になったルートボックス」でもお伝えしたとおり,Electronic Artsが2017年11月にリリースした大作ソフト「STAR WARS バトルフロント II」だった。

 問題が大きくなった2017年末の時点でElectronic Artsは,「ルートボックスはギャンブルではない」と反論していたが,2018年3月21日のアップデートですべてのプレイアブルヒーローをアンロックしている。また,ゲーム内通貨を購入してアイテムを手に入れるという仕組みそのものは継続しているものの,入手できるのは見た目を変えるアイテムのみになっている。

Electronic Artsは,ベルギーで賭博と認定される以前の2018年3月,「STAR WARS バトルフロント II」のルートボックスに関係したシステムを変更した。そして,発売予定の「Anthem」では,マイクロトランザクションを採用しないとしている
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 「STAR WARS バトルフロント II」の現在までの販売本数は現在までに約900万本と,Electronic Artsの販売予想を下回る結果に終わっている。同社の副社長で,チーフデザインオフィサーとして全タイトルを統括するパトリック・ソダールンド(Patrick Söderlund)氏は業績報告において,「Electronic Artsは,『STAR WARS バトルフロント II』に起きたことから,マイクロトランザクションやルートボックスに対する考え方を見直すための体制変更を行った。次期タイトルにおいて,同じ間違いは繰り返さない」と発言している。


ついに,アメリカ政府が動き始める


 ルートボックス規制の動きは,オランダやベルギーだけでなく,アメリカ,イギリス,ドイツ,スウェーデン,そして中国などへも広がっており,ルートボックへの圧力は加速しつつある。

 イギリス政府はすでに,英国賭博委員会のエグゼクティブディレクターの名義で,「ルートボックスそのものは問題ではなく,そこで得られたものを現金化できるかどうかで,スキン賭博(Skin gambling)であるかどうかが決まる」という判断を明らかにしている。スキン賭博とは,「Counter-Strike: Global Offensive」にキャラクタースキンの転売機能が追加され,スキンを賭けた賭博が行われて未成年者が大金を失うなど,大きな社会問題になった2013年頃に生まれた言葉だ(関連記事)。
 英国賭博委員会は2017年2月,「FIFA」シリーズのゲーム内通貨FUTを転売していたサイト「FutGalaxy」を営業停止処分にしているが,ルートボックスの問題にも感心が高い。

「Counter-Strike: Global Offensive」では,多数のギャンブルサイトがスキン賭博を提供している

 アメリカでは,「STAR WARS バトルフロント II」のルートボックス問題が起きた2017年11月から動きを見せており,ハワイ州が21歳以下の消費者にマイクロトランザクションを含んだゲームを販売しないようにする法案をまとめ,近々,議会の審議が始まる予定になっている。
 また,ニューハンプシャー州選出のマギー・ハッサン(Maggie Hassan)議員は,ESRB(Entertainment Software Rating Board)がルートボックス問題について何も行動を起こさない場合,連邦取引委員会(Federal Trade Commission)へ調査を要請すると,かなり強硬な姿勢を見せている。

 「STAR WARS バトルフロント II」や「Overwatch」などの作品は,暴力表現をなるべく減らすことで,現状では13歳以上が購入できるESRBの「T」レーティングに指定されているが,17歳以上が対象になる「M」レーティング,あるいは成人指定に変更された場合,販売数への影響は少なくないだろう。

「In-Game Purchases」の記入決定後,Twitterに投稿されたESRBのメッセージ。なんというか,読んでもらおうという努力がほとんど感じられない
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 ESRBも,ハッサン議員らを中心とした世論に敏感に反応しており,2018年2月末に発表したプレスリリースで,マイクロトランザクションが取り入れられたゲームに対して,「In-Game Purchases」(ゲーム内での購入要素あり)という文言を追加するとしている。

 もっとも,「ルートボックス」が「In-Game Purchases」という言葉に変わっても,多くの親はもともとゲームの知識をあまり持っておらず,せがまれるままに子供達に買い与えるのではないかという意見もある。ESRBは公式ページを作成して啓蒙にあたってはいるが,小さな表示をパッケージや販売サイトの注釈に書き込むだけで効果があるのか,確かに疑問は残る。

 以上のように,ルートボックスへの規制強化は疑いようがなく,欧米ゲーム業界への圧力が高まっている。ベルギー政府によって名指しされたBlizzard Entertainment,Electronic Arts,Valveといった大企業だけでなく,中小のパブリッシャやデベロッパ,そしてモバイルゲーム市場に対しても,規制の動きが広がる可能性が高い。おそらく,集団訴訟のようなことも起きるだろう。
 アメリカという大きな市場でどのような法律が成立するのか,そして,ルートボックスというビジネスモデルで利益を得てきたゲーム業界はこれにどう対応していくのか,今後しばらくは,多くのゲーマーやメディアの注目を集め続けることになるだろう。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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