プレイヤーは「ライザのアトリエ」の主人公・ライザの夢の中に入り,彼女とともに冒険を繰り広げる。彼女の夢の世界では,プレイヤーの想像力次第で何だって起こるのだ。
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夢の中では何でもできる。一緒にプリンを作り,ハイタッチをし,ボオスに関節技を極められる
本作は夢の中のライザとコミュニケーションを取ることでゲームが進んでいく。「枝を拾う」「道を進む」など,チャットアプリの要領で「自分がやりたい行動」や「起こしたい出来事」を発言すると,これがライザの夢(ゲームの世界)に反映されるわけだ。
ライザをゲームマスター(司会役)としてテーブルゲーム,テーブルトークRPG,ゲームブックを遊んでいる感じといえば分かりやすいだろうか。
AIとの会話はとりとめもないものになりがちだが,本作はゲームなのでプレイヤーには「スタミナ(これはソーシャルゲームでいうスタミナではなく,HP的なものだ)」「持ち物」「経験値」「貢献レベル」といったパラメータがあり,ライザが「クエスト(目的)」を指示してくれる。
そして,このライザはタイトルにもあるようにAIのライザであり,いろいろな言葉を理解してくれる。
つまり,クエストの解き方は1つではないし,人間ならではの不条理で突飛な思いつきであっても応えてくれるのだ。
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例えば「新しいカバンを手に入れる」というクエストの場合,どうしても所持金が足りなかったので困っていると,ライザがいろいろな依頼を受けてお金を貯めればいいと提案してくれたので,港で手伝いをすることになった。
同じクエストであっても,発想次第でまったく異なる展開になる。「ライザは錬金術士なのだから,カバンも調合してしまえばいいのではないか」と提案してみたところ,ライザは快諾してくれ,そこからは2人してカバンの材料を探すことに。アトリエのあちこちをひっかきまわしてみると材料になりそうな布と皮が見つかり,お得意の「錬金釜」に入れて調合が始まった。
ところが錬金釜が過熱してしまい,なんとかして冷やさなければならなくなった。「水をかけて」冷やすことで事態は収拾し,無事に新たなカバンが手に入ったのである。
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ここで注目してほしいのが,依頼を受けてお金を稼ぐという原作らしい解決に加え,「カバンを調合しよう」といった人間の突発的な思いつきに対応し,「調合は始まったが,錬金釜が過熱した」というように,さらに広げたシチュエーションを提案してくることだ。これは今までのゲームではなかなかなかった体験である。
少し昔話をさせていただきたい。大昔のアドベンチャーゲームは「アケル マド(開ける 窓)」「カギ トル(鍵 取る)」というように,自分の行動を短文(コマンド)にして打ち込む方式だった。この方式自体は本作と近いが,アドベンチャーゲームでは決められたコマンドしか受け付けてくれない。
カバンを調合したいと思っても,あらかじめ制作者がリアクションをプログラミングしていない限り,「そんなことはできません」と突っぱねられた。
よくできたアドベンチャーゲームは,プレイヤーが思いつきそうな行動にいろいろなリアクションが仕込まれてはいたものの,ゲームの展開や解法を変えるものではなかった。プレイヤーが良いアイデアを思い付いたとしても,制作者が意図した展開ではないために反応がない,なんてことは当たり前だったのだ(もちろん,これは不備ではない。当時の技術的限界だ)。
しかし,AIを使った本作は,突飛な思い付きに応えてくれる。例えば,森で現れた「ぷに(シリーズおなじみの,ゼリーのようなかわいらしい魔物)」の群れと踊ることもできるし,釣った魚を逃がすことも,戦いのあとにライザとハイタッチすることもできる。
もちろんAIとしての限界はあるはずだが,それが「ライザのアトリエ」でともに冒険してきたライザなのだから感謝の念も増すし,“ゲームマスターのライザさん”と呼びたくなってくる。いろいろと試してみよう,ちょっとヘンなことが起こっても笑って許そうという気持ちになる。
状況によってセリフも生成されるのだが,ライザは原作どおりのボイスでしゃべってくれるため,本当に彼女と冒険している気分を味わえるのだ。
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冒頭で行動を入力する以外に「起こしたい出来事を発言すると,ゲームの世界に反映される」と書いたが,これは重要なポイントである。ゲームのプレイヤーであると同時に,ゲームの世界を支配するゲームマスターに近い権限も持っているというわけだ。
依頼を受けて,ライザとともに不思議な卵を探して古城に出かけたときのこと。通常のゲームなら,古城のマップがあり,その中でパズルを解き,魔物を倒し……といった一定の手順を踏まないと,目的の卵は手に入らない。
しかし「目的の品を見つけた」と発言したところ,いきなり卵を発見し,これを守るボスとの戦いになった。プレイヤーの発言で世界が変わりつつも,ゲームマスターのライザさんがボスを出してRPGとしての体裁を保ってくれているのである。
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プレイ中は基本的にプレイヤーとライザの2人旅だが,原作の仲間たちを思い付きで呼び出してもいい。「クラウディアがやってきた」「タオが訪ねてきた」「レントが遊びに来た」と発言すれば,そのとおりのことが起こり,その後の会話にも(ボイスこそないが,原作を再現した口調で)参加してくれる。
とはいえ,プレイヤーの発言だからといって,世界を好き放題に作り変えられるわけではない。クラウディアがライザに重めの感情を抱いているのは有名だが「ライザとクラウディアが結婚することになった!」と発言しても,ライザには「それくらい仲がいいってことだね!」とうまくかわされてしまった。
このあたりは,クエストの脇道に逸れたがるプレイヤーと,自由度を認めつつうまく捌く有能ゲームマスターというテーブルトークRPGの光景だ。発言が通るか否かというより,お互いの相互作用で展開が即興的に変わっていくのが楽しい。
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“有能ゲームマスターのライザさん”は,相当に変な発言にも対応してくれる。
ライザが住む「クーケン島」の有力者モリッツとクエストの話をしていたときのことだ。モリッツがいるのだから,息子のボオスに会いたくなって「ボオスが現れた」と彼を呼び出してみた。
ふと,この平和な状態からいきなりバトル展開にできるだろうか,ゲームマスターのライザさんがどう回避するだろうか……と「ボオスが戦いを挑んできた」と発言したところ,「ライザと一緒に冒険できるくらいの力があるか試してやる」と模擬試合のような展開になった。
普段はライザたちに憎まれ口を叩き,1作目ではいじめっ子のような振る舞いをしつつも,のちに和解して一緒に旅するまでになった,味のある人物がボオスである。プレイヤーのような新参者が現れたら,ライザを心配してこういう行動にも出るだろうという納得感がある。
とはいえ,相手は剣を持っていて,プレイヤーは素手だ。ここからプレイヤーが勝つなり負けるなり,納得できるような展開を考えなければならない。
作中世界の人物として長いボオスと,ぽっと出のプレイヤー。格の違いを考えると負けて平伏すべきではあるが,ちょっとイタズラ心で「ボオスに関節技を極めた」と発言したら,なんとボオスの腕を取ったと返してくれたではないか。
さらに,勝利を決定的なものとすべく「チキンウィングフェイスロックに極めた」「パロスペシャルにシフトした」と発言したところ,「背後に回り込んで首と腕を複雑に絡めとった」「ボオスの背中に乗って,両腕を天高く引き絞った」と,技の形の正確な描写とともにボオスが痛がってくれたのだから,正直驚いた(それぞれが関節技であり,関節技から関節技へ“シフト”するという概念も理解していた)。
このあたりは,いろいろな知識を網羅したAIとしての利点だろう(メアリー・スー的な展開をお見せしてしまい,シリーズファンの方には重ね重ねお詫びしたい。ただ,AIの対応力の話をするには,実際の例を引くよりほかなかったのだ)。
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このように,ライザは実に優れたゲームマスターである。プレイ中には次の行動のヒントも出してくれるのがとくにありがたい。常にプレイヤーを元気づける,明るく前向きな姿は原作そのままであり,好感度も高い。行動を入力するアドベンチャーゲーム的な遊び方ができるのに加え,何を起こしたいかの発言にも対応してくれて懐が広い。
そして,多少無茶な発言をしても,ゲームとしての体裁を整えてくれるのも注目すべき点である。
例えば,モリッツに高難度の依頼を頼まれた際,タダで装備を手に入れたくて「モリッツが武器と防具を持ってやってきた」と発言したのだが,“この装備はレンタルで,代金は報酬から天引き”だと,ゲームとしてつじつまが合った展開にしてくれた。原作に存在しない人物を呼び出した場合も,その人物がクエストの依頼人だといった,世界観に合わせたものに修正してくれるため,安心して無茶な発言ができる。
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ストーリーを進めずに話だけしたい場合には「雑談モード」がある。通常の喋り方のほかに,ASMRっぽい喋りも指定できる。雑談といっても,ライザがこちらに話を振ってくれるため,話題が思いつかなくても安心だ。
「何をしていたか」と聞かれて都会で仕事をしていると答えたところ,「王都アスラ・アム・バートみたいなところかな」と,原作の地名を引いての受け答えをしてくれた。2作目で田舎の島から大都会の王都に出て苦労した姿を知っているだけに,本当のライザがここにいる,と感じられたのだ。
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AIをゲームマスター的に使う取り組みも進んでいるが,自分で設定する必要なしに「ライザのアトリエ」の世界で遊べ,ライザが原作どおりのボイスで喋ってくれるのが本作のポイントだろう。
もちろんAIも完璧ではない。「すでに出会ったはずの人物が初対面として自己紹介を始める」「カバンを手に入れるクエストで,アトリエにあった材料でカバンを調合したはずが,なぜか購入したときと同額のお金を取られる」など,少々の矛盾が出ることもあった。
とはいえ,ゲームマスターであるライザさんが諸々を処理するなかにちょっと間違いがあった,と納得できる。AIがライザという見立てになっていることの効果は大きいと感じられた。
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個人的には,こちらの思い付きにゲームマスターのライザさんがちょっとした展開を加えて応えてくれ,そこからこちらが話を広げていくという,即興と相互作用的な側面がとくに楽しかった。セーブスロットが3つ用意されていることと相まって,いろいろな展開を試したくなる。
なお,本作はAIを使うだけにサブスクリプション制となっている。3日間の無料トライアルもあるので,興味のある人は試してみてはいかがだろうか。
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