Razer Lachesis
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2007年8月に発表されてから,注目を集め続けてきたRazerの新型ゲーマー向けマウス
「Razer Lachesis」(ラクシス。以下,Lachesis)。同社が
「Razer 3G Laser Sensor」と呼ぶ,新しいレーザーセンサーを搭載したワイヤードマウスは,いよいよ11月30日に国内発売となる。
Razer Lachesisが「Razer Elite」プログラム加盟店のみの製品展開となることは
11月26日のニュース記事,そしてスペックや機能の詳細は
ファーストインプレッションに詳しいのでぜひ参照してほしい。今回は発売直前となるこのタイミングで,現時点での使用感を,セカンドインプレッションとしてまとめておきたいと思う。
幅広のデザインは好みが分かれる
持ち手を選ぶ形状であることは認識しておくべき
大きく横に広がるメインボタン
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すでに4Gamerでは何度か写真とともに紹介しているが,Lachesisは,メインボタン周辺が横に広がった,やや特徴的なデザインになっている。そしてこのデザインは,特定の持ち方をユーザーに強要するようになっており,持ちやすいと感じるためには,“マウス側の意図”を汲んでやらなければならない。
というのも,左右のメインボタンに人指し指と中指を置いて,薬指をマウスの側面――右利きである筆者の場合,右側面になる――に添えて包むように握ろうとすると,中指と薬指が大きく離れてしまい,指の付け根を中心として中指と薬指部分に負荷がかかってしまうからだ。おそらく(Razerの想定する)正しい持ち方は,左右のメインボタンに人指し指と薬指を置き,スクロールホイールボタンを中指で操作し,親指と小指を両サイドに添える形。
メインボタンの右クリックを中指で行うか薬指で行うかによって,Lachesisの印象は大きく変わってくるだろう。“中指派”の筆者には,正直握りづらい。
サイドボタンの下部にくぼみは用意されている
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現実問題として,マウスの側面下部に用意されたくぼみ以外には親指を置く場所がないという事実も,持ちづらい印象を強くしている。
くぼみに親指を収めようとすると,親指を折り曲げる必要があるのだが,この状態を維持してマウスを長時間操作し続けるのは少々無理がある。かといって,サイドボタンの上に親指を置いておくと,マウスを持ち上げるときなどにうっかりサイドボタンを押してしまうことがしばしばあった。
ボタンやスクロールホイールそのものの完成度はRazerの既存モデルと同様に高いのだが,形状はかなりクセがある。「持ち手を選ぶ」という認識を持っておいたほうがいい。
発売日直前でも「未完成」
現時点では評価の対象外とせざるを得ない
発売日2日前時点でのファームウェアとドライバソフトウェアのバージョンはいずれも1.0で,ファーストインプレッション時から変わっていない
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ファーストインプレッションを掲載したのは,約1か月前のこと。ファームウェアとドライバのバージョンはいずれも1.0だったが,その時点でRazerからは
「柔らかい素材のマウスパッドと組み合わせて,3000dpi以上の設定でマウスのボタンをクリックすると振動でカーソルが動いてしまう」問題が伝えられていた。世界市場ではすでに販売が始まっているので,そのほかにも存在する複数の不具合についての報告がRazerに集まっていることは想像に難くないし,4Gamerでもレポートは入れているが,残念ながら,原稿執筆時点である11月28日(発売日の2日前)においても,ファームウェア&ドライバのアップデートは行われておらず,
ファーストインプレッション掲載時にあった問題は何も解決していない。
マウスクリック時の問題については,いろいろ分かってきたので,もう少し細かくお伝えしよう。プラスチック系硬質素材を採用したRazer製のマウスパッド「Razer eXactMat」では,高解像度設定でもこの問題は発生しないが,同じ硬質系でもX-ray Technologyの「Thunder 9 BK1(Smooth)」だと,2000dpiを超える解像度を設定したときに問題が発生。「Fatal1ty FatPad」や「SteelPad QcK mass」のような,布系で無地の柔らかいマウスパッドだと,500dpiまで設定を下げてもボタンをクリックしたときにマウスカーソルが動いてしまう。同じく布素材に近い「QPAD Gamer LowSence」だと,無地ではないためか,動きの幅こそ若干小さめであるものの,現象そのものは同じだった。
傾向として,柔らかい素材のマウスパッドと組み合わせた場合,解像度設定が低いときは致命的でないものの,解像度設定を高くするにつれて,問題が顕在化してくる。結果,シビアなカーソル操作が求められるFPSなどをプレイする場合に期待される高い精度や追従性は発揮できていない。一方,硬質素材ならまったく問題ないというわけでもないが,それでも
いますぐ“実戦投入”する場合は,硬いマウスパッドの用意が必須だ。
なおRazer eXactMatでは,操作してとくに問題は感じなかった。今後,状況が大きく変わる可能性もあるため深くは突っ込まないが,(4000dpiという設定に意味があるのかはさておき)同マウスパッドと組み合わせて利用する限り,現時点でも操作への追従性に不満をおぼえることはまずないのではなかろうか。
また,Razerいわく「公式にデータは出していないけれども,最も相性のいいマウスパッドとの組み合わせでは0.6mm」とされるリフトオフディスタンス(※マウスを持ち上げたときにカーソルが反応する距離)だが,少なくとも現時点では,
「Razer DeathAdder」(以下,DeathAdder)の第3世代赤外線センサーとそう変わらない印象。筆者の自宅では0.6mmという設定を行えなかったので,ひとまず1mmでテストしたが,今回テストしたすべてのサーフェスでポインタは反応し,DeathAdderのリフトオフディスタンスである2.1mmでテストしても,まったく反応しなかったのは「QPAD Gamer LowSence」「Razer eXactMat」と色の薄い木目調テーブルで試したときだけだった。「Thunder 9 BK1(Smooth)」だと,色が着いているロゴ部分だけ微妙に反応があり,布系マウスパッドであるFatal1ty FatPad」「SteelPad QcK mass」や色の濃い木目調フローリングでは,マウスの動きに合わせて“普通に”カーソルが反応してしまう。このあたりも要調整といったところだ。
若干余談気味に続けると,センサーの部分を指で数秒ふさいで,その後マウスパッド上で操作したとき,最初の数秒間,マウスポインタがまったく反応しない症状が確認された。ゲーム中にそんな動作を行うことはまずないが,今まで触ってきたマウスだとこういった挙動は一切起きなかったので,センサーの挙動に関する不安要素のひとつとして明記しておきたい。
製品ボックス
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このほか,ファーストインプレッションで指摘のあったソフトウェア周りの不具合は,筆者の環境でも(当たり前だが)確認されている。内蔵するフラッシュメモリ「Razer Synapse」にキーバインド設定を保存しておくと,アプリケーションに連動して自動的にプロファイルが切り替わるはずが,正常に動作しなかったり,キーボードコマンドを割り当てると,特定のキーの動作に若干の遅延が発生したりと,過去のRazer製品にあったような不安定さは,今回も見受けられた。
「ひとまず発売し,世界中からフィードバックを受けてファームウェアやドライバをアップデートすることで,“完成形”に近づけていく」というスタンスは,Razerのいつものやり方であり,理解できなくもない。しかし,バージョン1.0におけるこの完成度の低さと,1万290円(税込)という価格を考えたとき,現時点でゲーマー向けとしてお勧めできるレベルにはないのも確かだ。
いまある問題がファームウェアやドライバ,あるいは追加ユーティリティソフトで本当に改善するのかの判断が難しく,どういう状況で最高のパフォーマンスを発揮できるのかも分からない現状では,とても製品としての評価は行えない。今後,製品評価に足るレベルになったとき,あらためてレビューを行いたいと思う。