
ニュース
「Radeon Software Crimson ReLive Edition 17.7.2」リリース。遅延削減やReLive&Chill強化など盛りだくさんのビッグマイナーチェンジに
![]() |
ここ数年のAMDは,グラフィックスドライバのメジャーアップデートを年に1回行い,それ以外ではゲームアプリケーションに向けた最適化やバグ修正を行うというルーティンになっていた。しかし,今回の17.7.2ドライバは,そのルーティンから外れた大型アップデートとなる。
具体的には,新機能「Enhanced Sync」の採用や,「Radeon ReLive」(以下,ReLive)および「Radeon Chill」(以下,Chill)の拡張,「Radeon Settings」の改修を含んでおり,自動車業界風に言うなら「ビッグマイナーチェンジ」を果たしているわけだが,本稿ではそんな2017年7月版第2弾となるRadeon Software Crimson ReLive Editionのアップデート概要をまとめてみたい。
関連記事:「Radeon Software Crimson ReLive Edition 17.7.2」のリリースノートをチェックしてみる
Fast SyncのAMD版となるEnhanced Sync
17.7.2ドライバにおける新要素のなかで,ゲーマー的に最も注目すべきなのが,AMD独自のディスプレイ同期技術「Enhanced Sync」(エンハンストシンク)だろう。
AMDの説明によると,Enhanced Syncは「Vsync無効化時と同程度の低操作遅延と,テアリングやスタッタ(カクつき)のない美しい描画を,特別なディスプレイデバイスなしに両立する」技術とのことだ。
![]() |
「どこかで聞いたような?」と思った読者は記憶力がいい。ライバルのNVIDIAが,「GeForce GTX 1080」の発表に合わせて発表していた同期技術「Fast Sync」(ファストシンク)と,Enhanced Syncはアピールされる効用が同じなのだ。
![]() |
「操作遅延を低減しテアリングやカクつきを抑える」目的では,現時点における究極の技術として,GPU主導でレンダリング速度とディスプレイ表示を同期させる「FreeSync」や「G-SYNC」が存在するわけだが,これらを利用するには対応のディスプレイデバイスが必須という,ユーザー側から見たハードルがある。それに対してFast Syncや,今回導入を果たしたEnhanced Syncは,利用にあたって特別なディスプレイデバイスを必要としない。
ちなみに,AMDはEnhanced Syncの効用をアピールするのみで,その仕組みをまったく説明していない。だが,Enhanced Syncの効用・効果から考えるに,Fast Syncと同じ仕組みを採用していると見て間違いないだろう。
なので詳しくはFast Syncのテストレポートを参照してもらえればと思うが,Fast Syncではレンダリング用のバッファを新設してレンダリングをVSyncと非同期に実行し,ディスプレイの更新に「最新のレンダリング用のバッファ」の内容を使うことで,操作遅延の低減とテアリングやカクつきを抑える仕組みになっていた。実装にそれほどの困難を伴う手法とも思えないので,Enhanced Syncでもおそらく同じことをしているのだろう。
FreeSync対応のディスプレイでなくてもスムーズな表示と低遅延が得られるというEnhanced Syncが使えるようになるのは,Radeonユーザーにとって文句なしに朗報だろう。
なお,リリース時点だと,Enhanced Syncに対応するのはRadeon RX 500&400シリーズのみ。DirectX 12・11・9世代のゲームにおいて利用できるとのことだ。
![]() |
より高画質な録画が可能になるReLive
ゲームのリアルタイム録画&配信機能であるReLiveでは,まず,録画可能なビットレートの引き上げがトピックとなる。従来は最大50Mbpsだったのが,最大100Mbpsになり,より高画質な録画が可能になるという。
![]() |
![]() |
また,ReLiveにオーディオコントロールの機能が追加され,マイクの音量を制御できるようになった。さらに,マイク音量が不足気味のときに音量を嵩(かさ)上げする「音量ブースト」や,設定したキーやマウスボタンを押している間だけマイク入力が有効になる「プッシュツートーク」機能も追加となっている。
ストリーミングや録画ファイルに記録するマイク音をReLive側でも制御可能になったわけだ。
![]() |
使い勝手も強化を果たしており,リアルタイム配信でオーバーレイさせるカメラの映像の透過率が設定できる。また,画面上のアイコンや通知の機能も一部,改善を見ている。
![]() |
![]() |
![]() |
新しいReLiveでは,以上のような機能強化を果たしつつ,メモリ周りの最適化によって「録画やライブ中継がゲームのフレームレートに与える影響」を低減したとAMDはアピールしており,この点は注目に値する。
AMDは「Call of Duty: Infinite Warfare」を用いて例示を行っているのだが,それによれば,「Radeon Software Crimson ReLive Edition 17.7.1」でReLiveを有効化することによってフレームレートは6.3fps低下していたのが,同じシステムへ17.7.2ドライバを導入すると低下量は4.2fpsで済むとのことだ。
![]() |
なお,ここまで紹介してきたReLiveの新要素はGraphics Core Nextアーキテクチャを採用するすべてのGPUで利用可能とのことだ。現時点でReLiveに対応している製品であれば恩恵を受けられるものと考えられる。
ChillがDirectX 12&Vulkanに対応
![]() |
それが,新バージョンではDirectX 12およびVulkan APIベースのゲームにも対応できるようになった。結果として17.7.2ドライバの時点では,合計37タイトルでChillを利用できるようになっている。
![]() |
AMDによると,Chillを有効化することによってグラフィックスカードの消費電力を最大53%下げられるとのこと。そんなChillの対応タイトルが拡充になることを歓迎する人は少なくないだろう。
![]() |
また,対象のハードウェアも拡張となり,マルチGPU構成や,「Radeon XConnect」ベースの外付けグラフィックスボックス,そしてノートPC向けRadeonでもChillを利用できるようになる。発熱が問題になりやすいマルチGPU構成やノートPCでChillをサポートしたことは重要なポイントと言っていいだろう。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
Frame Rate Target ControlもDirectX 12&Vulkan対応
![]() |
この機能はおそらくChillと関連しているので,Chillと同じように新しいグラフィックスAPIに対応できるようになったのだろう。
![]() |
WattManに新たな設定項目が加わる
GPUの動作クロックやファン回転などを制御するWattManに,2つの機能が追加となった。1つは,メモリクロックの上限と下限をそれぞれ設定できる機能,もう1つは,供給電力に制限をかけたり,逆に供給電力の上限を引き上げる機能だ。
AMDは,これらの2つの設定項目を追加したことで,性能と消費電力の最適化を行いやすくしたとしている。
![]() |
WattManの右下に加わった「電力制限」のスライダーで,消費電力の上限を−50%〜+50%まで1%刻みで設定できるようになった。より高い性能を狙うときに上限を引き上げたり,逆に発熱や消費電力を下げるため上限を抑えたりといった設定を行えるわけだ |
![]() |
WattManでメモリクロックの上限と下限をそれぞれ設定できるようになった。メモリクロックを抑えて消費電力の低減を図るといったカスタマイズができそうだ |
ディスプレイ設定のユーザーインタフェースを刷新
![]() |
そこで17.7.2では,これらの設定をRadeon Settings上で行えるように修正が入った。
![]() |
![]() |
![]() |
ちなみにこの機能,ユーザーから寄せられた要望のうち,2番めに多かったものだそうだ。
![]() |
![]() |
フレームレート引き上げだけでなく遅延の低減も目指すRadeon Software
17.7.2における新機能および機能強化点は以上となるが,もちろん性能の向上も入っている。
AMDによると,Radeon Softwareの開発において2016年までは主にフレームレートの向上を目指してきたが,2017年からは「遅延の低減」にも取り組んでいるという。
![]() |
![]() |
![]() |
もちろん,フレームレートの引き上げをおろそかにしているということはないとAMD。また,17.7.2からはDirectX 11&9世代のタイトルでシェーダキャッシュ(※シェーダのコンパイル結果をストレージに保存して次から利用することでコンパイルの時間を削減する技術。DirectX 12用には2015年のRadeon Software Crimson Editionで導入済み)を使えるようにするという改善も入れてあるそうだ。
![]() |
![]() |
なにはともあれ,Radeonユーザーは17.7.2を試してみるといいだろう。ただし,ドライバのアップデート作業は自己責任となるので,その点だけはご注意を。
![]() |
AMDのドライバダウンロードページ(英語)
関連記事:「Radeon Software Crimson ReLive Edition 17.7.2」のリリースノートをチェックしてみる
- 関連タイトル:
AMD Software
- この記事のURL:
(C)2019 Advanced Micro Devices Inc.