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あの「ソウ」が非対称ホラーゲームに。「SAW: Genesis」はジャンルの常識に挑戦する意欲作
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印刷2026/06/11 00:00

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あの「ソウ」が非対称ホラーゲームに。「SAW: Genesis」はジャンルの常識に挑戦する意欲作

 Summer Game Fest 2026のライブイベントで初めて姿を見せたBloober Teamの新作「SAW: Genesis」は,その姿からして,ただのライセンスものではないことを予感させた。


 翌日,非公開のプレゼンテーションが行われたので,本稿ではその内容をお伝えする。ここで語られたのは,「Silent Hill 2」リメイクで知られるBloober Teamが,なぜ自社の代名詞であるシングルプレイのサイコロジカルホラーを離れ,3対1の非対称マルチプレイに踏み込んだのか。そして,先行する「Dead by Daylight」を,彼らがどう避けて通ろうとしているのか,という問いへの答えだ。

プレゼンテーション中の撮影は禁止だったので,ブース外の装飾を撮った
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 まずは,本作がどんな設計思想で組み上げられているのかを紹介しよう。

 プレゼンに登壇したのは,Bloober Teamで本作のブランドマネージャーを務めるLukasz氏だ。
 なお開発体制は少し込み入っている。本作はBloober Teamがパブリッシャ兼品質監修を担い,実開発をAnshar Studiosが手がけ,さらにBloober Team内部の共同開発専門レーベルであるBroken Mirror Gamesが加わる。ライセンサーは映画「ソウ」シリーズの権利を持つLionsgate(ライオンズゲート)だ。

 Lukasz氏は,この企画が自社にとって異色であることを,あえて先に認め,「Bloober Teamらしくない選択であることは承知しています。でも私たちの本質はホラー探求者です」と語った。

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 ホラーというジャンルそのものを掘り下げる集団なのだから,その表現形態がシングルプレイである必然はない。マルチプレイという器を選んだとしても,根っこは変わらない――そういう理屈だ。とはいえ,このジャンルに足を踏み入れる以上,避けて通れない名前がある。それはDead by Daylightだ。

 「Dead by Daylightの二番煎じになることは望んでいません。非対称マルチプレイホラーが何であるべきかについて,私たちは独自のビジョンを持っています」

 その独自性がどこにあるのかは後述するが,ブランドコンセプトの段階で,彼らがすでに“先行作との差別化”を企画の中心に据えていることがうかがえた。

 題材も,単に人気ホラー映画の名前を借りてきたものではない。本作は映画「ソウ」公認の前日譚(ぜんじつたん)として位置づけられている。原作「ソウ」は20年の歴史を持ち,映画は10本を数える長寿シリーズだが,「SAW: Genesis」が描くのは,その映画の出来事よりさらに100年前――1920年代の物語だ。

 なぜ100年も遡るのか。Lukasz氏の説明によれば,理由は2つある。
 1つは,映画本編との間に十分な創作的余白を確保するため。映画のジグソウと直接ぶつからない時代を選ぶことで,自由に物語を組めるからだ。
 もう1つは,トラップ表現の質感だ。彼はソウブランドの核にあるものを,「ソウブランドに宿る暴力の根源をつかみたかった。より物理的で,より生々しく,より荒々しいものにしたかった」と定義した。

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 電子的なギミックが介在しない1920年代であれば,仕掛けは鉄や歯車などでできている。その物理性が,シリーズの“痛み”の手ざわりにつながる,ということらしい。そしてこの世界観は,映画とゆるやかに接続している。本作の敵役――作中では「裁判官」と呼ばれる存在――こそが,のちの映画でジグソウが影響を受けた人物である,という設定だ。

 冒頭のナレーションは,その接続を象徴する仕掛けといえる。ただし,このカノン(正史)としての扱いについては,確定というより“公認・承認を得て目指している段階”だと受け止めるのが正確だろう。詳しくは後述する。

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 さて,肝心のゲームシステムについてふれよう。

 本作は3対1,「被告」と呼ばれる3人と「裁判官」1人,計4人でプレイする非対称マルチプレイホラーだ。1マッチの長さは10〜15分。この骨格だけ見ればDead by Daylightと重なるが,Bloober TeamとAnshar Studiosが強調したのは,そこから先の差別化だった。彼らは3つの独自要素(USP)を軸に説明を進めた。

 1つめは,「脆弱な殺人鬼」という発想だ。
 ここで,このジャンルの一般的な前提を確認しておきたい。非対称ホラーにおける殺人鬼役は,通常,圧倒的な腕力や物理的な強さを持つ存在として描かれる。生存者は逃げ惑うしかなく,殺人鬼が返り討ちに遭うことは基本的にない。本作はこの前提を崩す。裁判官は腕力で支配する怪物ではないのだ。Lukasz氏は,このキャラクターを「マスターマインド型」と呼んだ。

 つまり裁判官は,トラップの配置と発動,情報の操作,盤面のコントロールによって優位を築く。その力は知略に由来するため,被告側が連携すれば,裁判官が返り討ちに遭う可能性すらある。殺す側が常に強者ではない――この緊張関係が,本作の非対称性の根幹をなしているという。

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 2つめは,レベルデザインの構造だ。
 本作のマップは2層構造になっている。被告が歩き回る通常のフロアの裏側に,裁判官だけが使える隠し通路が張り巡らされているのだ。裁判官はこの隠し通路を通って盤面を高速で移動し,被告の予期しない地点に現れ,トラップを仕掛ける。被告から見れば,敵がどこから来るのか読めない。この“見えない裏導線”が,先述したマスターマインド性を空間的に裏づけている。

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 3つめが,「リハビリテーション・トラップ」と呼ばれる仕掛けだ。
 これは映画「ソウ」へのオマージュであり,本作の残酷さの象徴でもある。被告がトラップにかかると,手足を切断して生き残るか,あるいは死ぬかという究極の選択を迫られる。映画のジグソウが被害者に突きつけた“命の対価”を,そのままゲームのルールに落とし込んだわけだ。

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 ここまでが裁判官側の話だが,被告側のゲームループも語られた。

 被告はプロシージャル生成によって毎回構成が変わるマップを探索し,3人で協力しながら脱出を目指す。現状,被告キャラクターは4人から選択できる。1マッチのなかには複数のチャレンジルームが用意されており,この時点では2部屋を突破し,3つめが脱出地点になるという構成だ。

 被告は連携して仕掛けを解き,トラップを回避し,あるいは仲間がトラップにかかったときに助けるかどうかを判断しながら,出口を目指す。

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 続いて,実際のゲームプレイ映像が披露された。
 映像では被告たちが薄暗い1920年代の建物を慎重に進み,仕掛けを探る。その裏で,裁判官が隠し通路をすべるように移動し,被告の死角に回り込んでいく。

 裁判官が状況を操作するためのツールの一端も垣間見えた。被告に怪物の姿が見える幻覚を引き起こす「幻覚グレネード」や,映画のジグソウが従えた共犯者のように大柄な人物を呼び出して被告を引きずる「共犯者(Accomplice)スキル」など,盤面を支配するための手札は多彩だ。

 被告の1人がトラップにかかった瞬間,先述の“究極の選択”が突きつけられる。手足を犠牲にして脱出経路を確保するか,それとも別の手を探すのか。被告側の3人が情報を共有しながら次の部屋へ向かう一連の動きは,鬼ごっこというより,閉じた屋敷内で繰り広げられる頭脳戦に近い雰囲気だ。

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 最後に,リリース計画とマネタイズ方針が語られた。本作はSteamでアーリーアクセスとしてリリースされる。目標は2026年第4四半期。あくまでも目標である点が強調されていた。なお,コンソール版の展開は未定だ。
 
 また,本作は買い切り型のプレミアムモデルであり,F2P(基本プレイ無料)でもなければ,課金で有利になるPay to Winでもない。非対称マルチプレイというジャンルは基本プレイ無料との相性がよいとされてきただけに,この選択もまた“ジャンルの定石”からの距離を意図したものにみえる。

 ロードマップも示された。7月に第1回のクローズドアルファ,8月に第2回のクローズドアルファを予定しており,8月にはgamescomと,アメリカのホラーイベントMidsummer Screamへの参加も計画されているという。

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 「Silent Hill 2」リメイクのBloober Teamが,自社の本流から外れて3対1の非対称ホラーに挑む。題材は映画「ソウ」の100年前を描く公認の前日譚である。

 脆弱な「マスターマインド型」の裁判官,裁判官専用の隠し通路による2層レベルデザイン,そして手足の切断を迫るリハビリテーション・トラップ。この3点を軸に,先行作との差別化が意識されていた。

 非対称ホラーの面白さは,「圧倒的な脅威から逃げる恐怖」に支えられてきた面がある。だが本作は,殺人鬼から物理的な強さを奪い,知略だけを残す。返り討ちにされうる殺人鬼というのは,言葉にすれば矛盾めいているが,それこそが「ソウ」という題材――暴力そのものではなく,暴力を“設計する”知性を描いた物語――との,接点なのだろう。

 映画のジグソウが腕力ではなく仕掛けで人を試したように,本作の裁判官もまた,盤面を支配する者として存在する。題材選びとシステム設計が地続きになっている点に,このチームの企画の芯が見えた気がした。


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    SAW Genesis

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