ひたすらにマップを埋めたり,キャラクターのレベルを上げたり,アイテムを厳選したり……激しいアクションゲームとは対極の,地味な作業。そういうのを延々とやりたい。
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本日(2026年5月28日)エクスペリエンスが発売したNintendo Switch用ソフト「デモンキルデモン 〜黄泉1984〜」(以下,「デモンキルデモン」)は,そういった欲求を心ゆくまで叶えてくれるRPGだ。
正確にいえば,本作のジャンルは“ダンジョンRPG”にあたる。古くは「Wizardry」などを祖に持ち,3Dの通路を右に行き,左に行き,エンカウントする敵を狩って,経験値や装備を集めてダンジョンを攻略するというものである。
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正直に言ってしまえば,派手さはないのだが,それゆえに延々と続けられてしまう恐ろしさがあるのも,このジャンルの特徴だ。
ダンジョンに潜って,敵を倒して,アイテムを集めて,キャラを強化して……この一連の動きがまるで呼吸のように“馴染む”のである。
本作は,そんな染み入るような面白さが魅力のタイトルだ。
突然の転移による虐殺。絶望の淵から立ち上がれ
1954年,東京・杉並区と入れ替わるように出現した“黄泉”と呼ばれる謎の構造体。この内部より“アルゲン”と呼ばれる新エネルギー物質が見つかったことから,化け物の蔓延(はびこ)る黄泉の内部を探索し,アルゲンを持ち帰る“地下探行士”という職業が登場する。
そんな彼らが人気の職業となり,探行士になるための学校が設立されるほどになった1984年の日本が,「デモンキルデモン」の舞台となる。
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そんな探行士を育成するための学校に通う生徒たちが,突如教室ごと黄泉内の“迷宮”と呼ばれるダンジョンへと転送されてしまう。物語はこの大事件から始まる。
迷宮に蔓延る魔物――デモンと呼ばれる恐ろしい機械生命体に蹂躙されるクラスメイトたち。唯一の生き残りとして,探行士たちが黄泉活動の拠点とするキャンプへと保護された主人公は,黄泉から脱出するために探行士として活動することを余儀なくされる。
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いきなりの大虐殺。壮絶な展開からなんとなく察せられるかもしれないが,シナリオは全体的に仄暗く,ダークな雰囲気が漂う。なんなら探行士として最初に請け負う仕事も,「8割ぐらい原型が残っているクラスメイトの死体を持って帰ってこい」である。
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なにやら,死体を持って帰ってくれば,キャンプにある“融合炉”という怪しい機械で生き返らせてくれるらしい。そして生き返らせたクラスメイトは,新たな探行士として主人公の仲間になってくれる。
つまりは「冒険するためのパーティを組もうね」というチュートリアルなわけだが,そのやり方が「何人か生き残れたから,うまいことやりましょう」ではなく,「死体を蘇生してやるから,持ち帰ってこい」というのだから恐ろしい。いま自分が置かれている状況がどれだけ厳しく,救えないものなのか。否が応でも絶望感が伝わってくる。
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スイッチブーストが生み出す適度な刺激。雑魚戦はサクッと楽しく,ボス戦はより奥深く戦える
ではゲームの難度として見たとき,同じように“絶望”と言えるほどのものなのか。
ここに関しては,「まったくもってそんなことはない」と断言できる。もちろんパーティの編成などにもよるだろうが,基本的には道中の雑魚敵を逃げずに倒していれば,シナリオの終盤までスムーズに進行できた。
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ただ,これは本作の5年前を舞台とした前作「黄泉ヲ裂ク華」のプレイ経験で,筆者がこのゲームの独自要素を理解していたことが,大きいかもしれない。
その独自要素とは“スイッチブースト”だ。プレイヤーは戦闘中,
・“超電”と呼ばれる消費MPなし状態
・“耐電”と呼ばれる敵からのダメージ半減状態
・“神電”と呼ばれるすばやさアップ状態
という,3種類の強化状態を切り替えながら戦う。つまりはブースト(強化状態)をスイッチングしながら戦うシステムになっているわけだ。
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これらの強化状態が持続するのは,それぞれ1ターンだけ。例えば超電の場合は,切り替えたそのターンだけ消費MPをゼロにできる。同じ戦闘中にもう一度超電を使うには,一度“充電”と呼ばれる,なんの強化も入っていないターンを経由しなければならない。
消費MPの多い強力な攻撃を使って,攻めたいときは超電,相手が強い攻撃を撃つ予兆を見せたときや,パーティが半壊しそうなときは耐電……など,戦闘中は適宜その状況に応じた強化状態に移行させる。これこそが本作における戦闘の醍醐味だと言える。
![]() 「おっ,溜めた」と思ったら, |
![]() 即座に耐電に変更。これでダメージが大幅に抑えられる |
さらに,このスイッチブーストのおかげで,雑魚戦にもメリハリが出る。このゲームでは,神電(すばやさアップ)状態で敵のパーティを倒すと,獲得できる経験値とドロップするアイテムの量が増大する。
なので雑魚戦のときは,「どのタイミングで神電に切り替えるのか?」という読みが必要になる。
まずは超電状態で強力な技を使って相手を倒し,耐電で反撃を防ぎつつ通常攻撃で残った敵を削る。そして敵が最後の1体になったら,神電でフィニッシュ……と,こんな感じで動ければ最高だ。
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いちいち自分で行動を選択しなくても,直前に選んだコマンドをパーティ全体が即座に実行する“リピート行動”と,全員が通常攻撃を行う“全員攻撃”という,2種類の簡易的なコマンドがあるのもありがたい。
一瞬で敵味方の行動が終わる“高速戦闘”と併用すれば,しっかりスイッチブーストを切り替えながら戦闘を行っても,雑魚戦は10秒ぐらいあれば十分に終わるだろう。
戦闘のテンポがとても速く,その上で「神電状態で倒したい」という適度な目標と刺激がある。そのため,RPGでネックになりがちな雑魚戦におけるストレスがとても低い。
前作「黄泉ヲ裂ク華」にもあった特徴だが,「デモンキルデモン」にもしっかりその良さは受け継がれている。
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職種と職能,いわゆるクラスとスキルポイントまわりのシステムも,非常に自由度が高い。
まず,スキルポイントは戦闘中でなければいつでもどこでも振り分けられる。例えば,ダンジョンを攻略中に「あ,このあたりの敵を相手にするなら,水属性がほしいな」となったときに,ササッとスキルポイントの割り振りを変えて,水属性の攻撃を習得できる。
ボスまでの道中は,複数体に攻撃できるスキルを中心に覚えて攻略し,ボス戦ではバフ/デバフと強力な単体攻撃を扱えるボス戦仕様にする,なんてことも可能だ。この柔軟さがありがたい。
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クラスは全部で8種類あるが,拠点であるキャンプに帰ればキャラクターごとのクラスやステータスの成長具合も好きに変えられるため,いろいろなクラスを実戦で試しやすい。キャラのレベルがクラスに依存しないのも嬉しい。
上級職を開放する“昇進”だけは使い切りのリソースを使用する。ここは取り返しがつかない要素であるものの,そのころには初心者でも「なんとなくこういう方向性がいいかも」という気づきを得ているはずだ。
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さらに「デモンキルデモン」では,職能を覚えられる“チップ”という種別の装備が登場する。完全に「黄泉ヲ裂ク華」プレイヤー向けの説明になるが,これは「専門斬術工(のクラス)が,旋風撃を覚えられる」というシロモノだ。
前作プレイヤー向けすぎたのでちゃんと説明すると,“火力は高いけれど単体攻撃しか扱えず雑魚戦が得意じゃなかったクラスでも,チップを装備させれば全体攻撃を覚えられて雑魚戦に強くなれる”ということ。とても便利で,とても強い。
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ステータスに関係なく,MPやHPを直接増やすアイテムも登場する。そのおかげで燃費が悪いスキルも,より扱いやすくなった。
こうした,スキルを習得できるパッチとも相まって,編成の自由度は前作以上に高い。より自分の好きなクラスをパーティに組み込みやすくなった印象だ。
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絶望の中から一縷の希望を掴む──重い話でありながら,シナリオの厚みが非常に適度
戦闘の手触りがよく,好きなキャラを存分に扱える「デモンキルデモン」。本作はこの2点に加え,シナリオの存在が中毒性に拍車をかけているように思える。
率直に書くと,展開がとても面白い。一行は黄泉から脱出するために,かつて同様の事故で黄泉に閉じ込められた探行士の動きをなぞることになる。その方法は,各迷宮に存在する“特異体”と呼ばれる強力なデモンを倒し,“遺物”を入手して,融合炉へとくべることだ。
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遺物をくべられた融合炉は,迷宮を作り替える力を持った“黄泉の華”を生み出す。新たな遺物を見つけてどんどんくべていけば,最終的には黄泉から直接脱出できるような黄泉の華を生み出せるはずだ。一行は,それだけを希望に,この絶望に立ち向かう。
しかし1体目の特異体を倒したところで主人公の体に異変が。そしてそれは,2体目を討伐した時点で確信に変わる。身体が,デモンへと作り替わっていくのだ。
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再構築現象。アルゲンを持たない物質/生命が,主人公たちの飛ばされた特殊な黄泉・X行区に入った際に起こる現象で,性質や構造を作り替えられ,まったく別の存在へと変えられてしまう。敵であるデモンも,この再構築現象により変えられてしまった存在なのだ。
そんな現象が自分の身に起こる。でも探索をやめればすべてが終わる。主人公は自分の体が再構築されながらも,探索を続けるしかない。
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絶望に絶望を重ねるような展開だが,これ以上は語りすぎてしまうのでここまでとしよう。筆者としてはシナリオを追うのがとても楽しいゲームだった。
そして,このシナリオの文量が非常に適切な厚さだ。決して分厚すぎず,かといって薄すぎず,ゲーム体験のテンポの良さを殺さない程度に文章が挟まれていく。結果的に,ゲームを遊ぶ手が止まらないのだ。
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キャラクターも魅力的だ。学生の身で探行士となり,その身にすべての希望を背負うことになった主人公を,ときに優しく,ときに厳しく支える“立派な大人”であるマイケル・ゴンド中佐。
主人公と同じくデモンと化しながらも,理性を保ち続け主人公を明るく励ましてくれる天川羽衣里。
味方NPCと呼べるのは主にこの2人なのだが,それだけで十分すぎるぐらいに“味”がする。
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“重要物資”というアイテムをNPCに見せれば,いろいろな会話が可能なのも嬉しい。筆者はアイテムとして手に入った“仲間の遺体”を融合炉に入れず,ずっと持ち歩いていろいろな人に見せていたのだが,それぞれ反応が違うのだ。いや,文字にすると最悪だけども……セリフをコンプしたくて,つい。
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止まらないダンジョン探索。RPGとしての手触りも最高な一作
ここまで書いて改めて言うのもなんだが,筆者は「デモンキルデモン」にずっぷりとハマった。万人にウケるかと言われれば「難しい」タイトルではあるが,ダンジョンRPG的な,黙々と進めるゲーム性が好きな人なら間違いなく楽しめるはずだ。
システム面,テキスト面,そのどちらにも隙はない。ちゃんと真正面から「面白い!」と感じられる一作である。
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攻略する必要はないものの,前作「黄泉ヲ裂ク華」のダンジョンも登場する。機械的なデモンの造形も好きだが,前作の敵であった黄泉属たちの持つ有機的なグロテスクさが好みだったため,「デモンキルデモン」でも再会できたのは嬉しい。
もちろん,前作を遊んでいなくても本作はしっかりと楽しめるのだが,こうしたニヤリとできる要素がファンにはたまらない。
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ボリュームもたっぷりで,前作ダンジョンも攻略しつつ進めるのであれば,本編である「転移編」だけでも20〜25時間以上は遊べてしまう。筆者はダンジョンのマップをすべて埋めたりしながらプレイしていたので,一般のプレイヤーよりは少々長めにカウントされているかもしれない。
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息つく間もなくゲームに没頭するというよりは,最初に書いたようにゲームプレイが呼吸のように馴染む感覚がある。
マップを埋める快楽,神電でのトドメがキレイに決まったときの気持ちよさ,自由に組み替えられるビルド,適度な分量で投げられるテキスト,そのすべてが染み入るような面白さを提供してくれるのだ。
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「デモンキルデモン」は,ダウンロード版であれば,転移編と追加DLCとなる「復讐編」をそれぞれ個別で購入できる(パッケージ版はどちらも入って8800円)。通しで買えば7800円だが,片方だけなら3900円(いずれも税抜)だ。
「そもそもゲーム自体が合うかどうか分からないし……」という人は,ひとまず転移編だけを購入して遊んでみるのもいいだろう。きっと無二のゲーム体験になるはずだ。


















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