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「画面の向こうのあの子に逢える」とはどういうことか――。キャラクターフレグランスを手がけるprimaniacsに「日常のときめき」を聞いた
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印刷2026/05/27 12:00

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「画面の向こうのあの子に逢える」とはどういうことか――。キャラクターフレグランスを手がけるprimaniacsに「日常のときめき」を聞いた

 ゲーム・アニメといったIPとコラボレーションしたさまざまなアイテムが,多くのユーザーに親しまれるようになった昨今。

 アクリルスタンド,ぬいぐるみ,キーホルダー,フィギュアなど,パッと思い浮かべるだけでも数は多い。読者の中には日頃から,こうしたアイテムに親しんでいる人も多いだろう。

 そんな中,「画面の向こうのあの子に逢える」をコンセプトに,キャラクターをテーマにしたフレグランス製品を展開する日本のブランド,primaniacs(プリマニアックス)をご存じだろうか。


 遡ること2025年。筆者は日頃からプレイしているMMORPG「FINAL FANTASY XIV」とprimaniacsがコラボレーションした「ファイナルファンタジーXIV×primaniacs フレグランス」をきっかけに,初めてprimaniacsの存在を知った。

 そこで,店舗で実施されたコラボレーション製品のイベント「香りの語り部」に取材へ伺ったところ,primaniacsを展開する株式会社まさめやの代表取締役,加藤絢子氏と偶然お会いした。

 短い時間の立ち話であったが,上述の記事には書ききれないほどの熱い思いを語ってくださったので,改めて取材の機会をいただいたというわけだ。

株式会社まさめや代表取締役 加藤絢子氏
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 だが,筆者は香水に日常的に親しんでいるものの,IPアイテムや推し活といった分野には非常に疎い。そこで,そんな筆者とは真逆の性質を持つ,4Gamer女子部(仮)の編集担当に取材への同席をお願いした。そのためインタビューの場では,基本的に聞き役に回っていたことをお断りしておく。

 そもそも「画面の向こうのあの子に逢えるフレグランス」とは。10周年を迎えたprimaniacsが目指すものなど,加藤氏に幅広い面から話を聞くことができたので,その模様をお届けしよう。



画面の向こうのあの子に逢いに行ってみる


 本文へ入る前に先にお断りしておこう。「フレグランス」というワードは多様な製品のイメージを連想させるため,人体に対して使用することを想定する製品を指す場合,本稿内では「香水」で統一している。ほかの製品については,この限りではない。

4Gamer:
 本日はご多忙のところありがとうございます。

加藤絢子氏(以下,加藤氏):
 こちらこそありがとうございます。またお会いでき,そして機会を設けていただいて大変嬉しいです。

筆者:
 こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。

4Gamer:
 ではさっそくお話をうかがいたいところですが,まず目の前のアイテムに目を奪われますね。

時間の関係ですべてを試すことはできなかったのがとても残念だった
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加藤氏:
 はい。難しいことは抜きに,ご体験いただくことが一番かなと。
 異なる方向性を持ついくつかをご用意させていただいたので,まずは「美少女戦士セーラームーン」より,セーラームーンをお試しください。

4Gamer:
 (ムエットを試しつつ)第一印象から華やかで,とても心地よい香りですね。

加藤氏:
 それは良かったです! リンゴ,シクラメン,レモンといった香りからスタートするのですが,10代の天真爛漫な少女,月野うさぎという等身大の姿を感じていただけるかと思います。恋に恋する女の子という感じですね。タキシード仮面に惹かれて……という。

4Gamer:
 月野うさぎらしい明るさが,最初の印象から伝わってきますね。なかよしを読んでいた頃を思い出します(笑)。

※なかよし:「美少女戦士セーラームーン」が連載されていた講談社の少女漫画誌。

加藤氏:
 今がトップノートと呼ばれる香りでして,ここから約5分〜15分でミドルノート,約30分を目安にラストノートへ変化していきます。

4Gamer:
 香水は,つけた瞬間の印象だけでなく,時間による変化も大きな要素ですよね。

加藤氏:
 そうなんです。primaniacsでは,香水の時間による香りの変化に,キャラクターが持つストーリーをなぞらえることを大切にしています。

 先ほどご説明したかわいらしい香りから,ライラック,ローズといった要素が出てきて,変身した姿を表現していきます。キャピっとした印象が落ち着いて,大人っぽさが出てくる感じでしょうか。

4Gamer:
 セーラームーンとしての,芯のある強さと言いますか……。

加藤氏:
 はい。ぜひ,後でラストノートも嗅いでいただければと思います。オゾンを中心とした透明感にあふれる香りに変化するのですが,月の女神という真の姿,地球のために戦う彼女の強さを感じていただけるかと。

4Gamer:
 香りの変化を通して,キャラクターの物語を追体験するという考え方が伝わってきます。ラストノートまでの変化も楽しみです。

加藤氏:
 では次に,対照的な香りとして,「ゴールデンカムイ」の杉元佐一をぜひ。彼自身,日露戦争帰りの退役軍人で,戦争中はその活躍から不死身の杉元とも呼ばれていた背景を持つキャラクターです。試していただくと分かると思うのですが,まず,土埃を立ち上げるような……。

4Gamer:
 本当に土埃を思わせる立ち上がりですね。先ほどのセーラームーンとは,香りの方向性が大きく異なります。

加藤氏:
 印象がまったく違うと思います。土埃の中を,銃を携えて突き進んでいく,戦う兵士としての姿を表した香りですね。primaniacsが手がけさせていただいたアイテムの中でも,かなり強い香りです。

 ですが,ここからミドルノートにかけてレザーが強く出てきて,さらに力強い香りになります。「俺は不死身の杉元だ!」と叫びながらヒグマと戦っているような,北海道で自然を相手に戦う男の香りになりますね。

4Gamer:
 作品に詳しくない人でも,香りをきっかけにキャラクターの人物像を知りたくなりますね。

加藤氏:
 そう感じていただけるのは嬉しいです。一見すると,杉元は荒々しいキャラクターに見えますが,優しさやかわいらしさを持つ青年でもあります。ラストノートでは温かみが出てきまして,焚き火を囲んでおいしいものを食べているような姿を感じていただけるかなと。

※primaniacsの各店舗では,不定期に「香りの語り部」というイベントが開かれる。加藤氏が語ってくれたように,primaniacs店舗のスタッフが,香りの変化に込められた物語を案内するという内容だ。

4Gamer:
 香りの変化に物語を重ねるという考え方が,かなり明確に伝わってきました。
 普段,香りを選ぶときは「さっぱり系」など大まかな印象で捉えがちですが,キャラクターというテーマがあることで,香りの方向性を理解しやすくなりますね。

加藤氏:
 primaniacsで香水そのものを初めて買われるというお客様も多くいらっしゃるのですが,お客様ご自身が使用するシーンを想像しやすいのも大きい理由でしょうか。

筆者:
 一般的な香水を手に取る際,使用するシーンを明確に考えられるのは,香水そのものに興味があったり,日常的に使用している前提の延長線上ではないかなと。自分の好きな傾向も,ある程度は数が揃ってきてから見えてくるものでしょうし,季節によっても変わる。

 ただ,原点はやっぱり「好き・楽しい」から始まる人が多いと思うので,日常の中の楽しさが広がる姿を明確にイメージできるのは,とても素晴らしいと思いました。

加藤氏:
 おっしゃっていただいたように,「〇〇の存在を感じたい。〇〇になった気分で楽しみたい」など,楽しんでいる姿を明確に想像していただきやすいかと思っています。


画面の向こうのあの子に逢いに行くために


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筆者:
 基本的な質問で恐縮ですが,これまでにどれくらいの種類のアイテムを手がけておられるんでしょう。

加藤氏:
 すべて異なるコンセプト,異なる香りで,手がけさせていただいたものは,約2000種類になります。2025年は,国内の方はもちろん,日本国外の方にも多く手に取っていただいた年となりました。

 当然,すべての香りにストーリーを組み込んでいるのですが,primaniacsのコンセプトは「画面の向こうのあの子に逢いに行きましょう」です。香りを嗅いでいただいた時,「〇〇が目の前にいる」と感じていただくことを一番に目指しています。

4Gamer:
 香りによって,キャラクターの存在をすぐそばに感じられるような体験を目指しているのでしょうか。

加藤氏:
 おっしゃる通りです。シュッと一吹きすれば目の前にあの子が現れる。そのうえで,香りの変化を通して納得していただける。だからこそ,あの子がいる生活を送っていただけると思っておりますので,「画面の向こうのあの子に逢える」ことにこだわっています。

4Gamer:
 香りを設計するうえで,作品やキャラクターをどのように読み込んでいくのでしょうか。

加藤氏:
 これは,とある大学の講義に参加させていただいた際の資料なのですが……。

※詳細は割愛するが,キャラクターが持つ一面性だけを取り上げるのではなく,キャラクターを構成する,ありとあらゆる面を分析するという内容だった。

 primaniacsには,調香デザイナーという職がありまして,ひたすら作品を読み込んで,「このキャラクターを好きな方はどこに惹かれているのか」というポイントを,浮かび上がらせていきます。そこで,いろいろなメンバーが「いやいや。ベースにこういう性格があるから,こういう場面で際立つのであって……」と,熱く語るわけです。

筆者:
 以前,制作でもっとも大変なのは「解釈づくり」とおっしゃっていましたよね。

加藤氏:
 はい。そこから話し合いを経て,ご紹介したセーラームーンでしたら,「セーラームーンとしての姿は素敵だけど,月野うさぎちゃんがあってこそのセーラームーンだよね。だからこそ,トップノートは等身大の女の子感を出そう」というように,設計図を作り,香りの制作へ入っていきます。

4Gamer:
 これだけ作品を読み込んで作られていると,作品への深い理解が香りの説得力につながっているのだと感じます。

加藤氏:
 ですので毎回,原作,アニメ,設定資料集など,あらゆるものを読み込みます。そのキャラクターを好きでいらっしゃる方のリアクションも見たりします。

オフィスの一角にはこれまでに用いられた資料の一部が保管されており,誰でも読み返せるようになっている。大量のメモや付箋が挟み込まれているのが印象深い
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4Gamer:
 たとえば,ひとりのキャラクターで何種類か作るということもあるのでしょうか。

加藤氏:
 イメージがブレてしまうので,基本的には1種類のみです。ただ,子供と大人の時代など,物語の中で非常に大きくイメージが変わる場合もあります。そのような場合には2種類,お届けする場合もございます。

4Gamer:
 制作には,おおよそどのくらいの期間がかかるのでしょうか。

加藤氏:
 場合にもよりますが,制作開始からリリースまで,およそ8カ月でしょうか。作者様に確認をいただく機会も多いのですが,仕上がりにご納得いただけたり,「ここまで丁寧に作ってくださるとは思わなかった」というお声を頂戴したりすることも多く,とても光栄に思っています。

 ですが,制作開始からリリースまではタイムラグがあるので,時に「世の中にはまだ出ていない展開を,香りとして表現しておいてほしい」というオファーを頂戴することもありまして。

4Gamer:
 未公開の展開を踏まえて香りを設計するとなると,キャラクターの変化や物語の先をどう香りに込めるかも難しくなりそうですね。

加藤氏:
 苦悩しているような姿を表現したり,儚く消えていくように設計したり。そういったこともよくあるんです。

 ただ単に「いい香り」では,キャラクターを思い出していただくことは難しい。香りの変化とキャラクターが紐づくからこそ,画面の向こうのあの子に逢える。お客様の日常の中で,存在として感じていただけるようになると考えています。


「香水=人につけるもの」を覆す


4Gamer:
 存在として感じたいときに,なにかおすすめの使い方はありますか。

加藤氏:
 私もよくやるのですが,ハンカチにワンプッシュしておくのがおすすめです。

4Gamer:
 なるほど。日常の中で気持ちを切り替えたい場面にも合いそうですね。

加藤氏:
 ぜひ(笑)。「〇〇がいてくれるから大丈夫」と感じていただけたら嬉しいです。香りは言語化しにくいものだからこそ,脳に直結するという表現が正しいかは分かりませんが,ダイレクトに感じられるものだと思いますので。

4Gamer:
 どうしても昔からの印象で,(手で指し示しつつ)香水はこことここにつけるものというイメージで固まっていました。人以外につけるという発想がなかったです。

加藤氏:
 多くのお客様が固定観念にとらわれない使い方を生み出してくださっておりますが,もっとも多いのはぬいぐるみでしょうか。

4Gamer:
 キャラクターぬいと組み合わせて楽しむ人も多そうです。

筆者:
 以前,お会いした時にそのことを聞いて驚いたんですよ。まったくそういう発想がなかったもので,なるほどなぁと。

加藤氏:
 ほかには,クッションにお使いいただいたり,お部屋に飾られているお召し物にお使いいただいたり,寝具の枕にお使いいただいたりするのもよくお聞きしますね。玄関にワンプッシュして残り香として感じていただくなど……。

 記憶に新しいものですと,バスルームにワンプッシュしていただくというものもありました。疲労困憊でも入浴に対するモチベーションを上げるという。

4Gamer:
 バスルームで使うという発想は意外ですが,空間の気分を変える使い方として分かりやすいですね。

カスタマーから寄せられた声が通路に貼られている。「推し香水に目覚めた。責任をもって再販してください」など,フフっとなるものも多い
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加藤氏:
 法律で定められているわけではないのですが,劣化の可能性もありますので,冷暗所で保管しつつ,長くても2年程度で使い切っていただくことをおすすめしています。

4Gamer:
 直射日光や高温を避けて保管することが,香りを長く楽しむうえでも大切になるわけですね。

加藤氏:
 やはり直射日光や暑さには弱いです。変色してしまう場合もあるため,冷暗所での保管をおすすめしております。

 ただ,本当にいろいろな楽しみ方で楽しんでくださっているので,香水あるあるの「減らなくて困る」ということはあまりないとも思います。

筆者:
 「推し活」という言葉もよく聞くようになって久しいですが,楽しみ方の幅が広がるって素敵なことですよ。それだけ人生の豊かさも増しますし,誰かにとっての生きがいみたいなものにもつながるのかな。

加藤氏:
 コレクションしてくださる方も大変多いです。作品で並べてくださる方や,お好きなキャラクターのアイテムを継続して,数十本お使いいただいている方もいらっしゃいます。香りがあるだけで,一気に「目の前にいる」感じが出ますよね。

4Gamer:
 香りによって存在感が強まるという点では,ほかの没入型の体験とも相性が良さそうです。

加藤氏:
 意外な組み合わせかと思われるのですが,VRとの相性も良くて。ご体験されたことがある方はお分かりいただけるかと思いますが,非常に現実感がありますよね。そこに香りという要素を組み合わせることで,さらに没入感が増します。非常に楽しいです。

4Gamer:
 香りを加えることで,作品体験の没入感そのものを広げられるわけですね。そこまで含めて設計されていることに驚きました。

加藤氏:
 ありがとうございます。「〇〇に会いたい」「〇〇と一緒にいたい」「〇〇から勇気をもらいたい」など,好きなキャラクターだからこそ抱く感情があると考えています。

 そこに対し,フレグランスという形で体験をお届けできていることが,お客様に受け入れていただいている大きな理由でしょうか。

4Gamer:
 やはり,商品化を望む声は多いのでしょうか。

加藤氏:
 ありがたいことに日々,大変多くのお声を頂戴しております。参考にさせていただく場合も多いため,ぜひ,今後ともお声を頂戴できれば幸いです。


老若男女が楽しめる,香りという楽しみ


4Gamer:
 今年で10周年を迎えられるとうかがっております。ブランドを立ち上げた頃から現在とで,どのような変化を感じられていますか。

加藤氏:
 先ほどおっしゃっていただいたことに繋がるのですが,お客様が楽しみ方をどんどん見つけてくださったからこそ,primaniacsとしての幅が広がってきたと感じています。10年間,さまざまな作品のアイテムをお届けする中で,その作品がお好きな方ならではの楽しみ方を見つけてくださることも多くありまして。

 また,国内ではこの10年で香水という文化そのものも,それ以前と比較すると拡大してきた体感がありますね。「出かけるときは〇〇,家にいるときは△△」というような楽しみ方は,普段から香水をお使いになられている方ならではだと思います。

4Gamer:
 さまざまな作品のフレグランスを手がけられていますが,作品によって方向性の違いなどはあるのでしょうか。

加藤氏:
 基本的なプロセスは変わりませんが,作品の世界観は影響してきますね。泥臭いのか,ヒリヒリするのか,ほんわかしているのか。たとえば「美少女戦士セーラームーン」と「カイジ」では,キャラクター以前に世界観がまるっきり違います。

 また,近頃ですと松平健さんにご監修いただいて,「マツケンサンバII」のフレグランスをお作りしたこともありました。思わず元気が出て,笑顔になるようなゴージャスな香りです。

筆者:
 ちなみに,購入される方の年齢層や傾向には,どのような特徴がありますか。

加藤氏:
 松平健さんの長年のファンの方はもちろんなのですが,「マツケンサンバII」から入られた若い世代の方も多くいらっしゃいます。

筆者:
 再ブームと定義してしまっていいのか難しいところなんですが,たしかにここ数年,若い世代にも広く知られている印象があります。ちょうど,SNSネイティブの世代ですよね。

加藤氏:
 そうですね。作品や人物の持つイメージが,世代を越えて受け取られているのだと思います。
 世界観という観点に付け加えると,「明日、私は誰かのカノジョ」「エヴァンゲリオン」など,キャラクターの等身大の姿を描くような作品ですと,現実っぽい香りを追求するケースもあります。

 和風な作風でしたら香りも和を基調としたり,世界観を香りに込めたりすることを重視しています。「その世界に,そこにいるキャラクター」というのがポイントですね。

4Gamer:
 作品によって,手に取られる方の傾向も変わってくるのでしょうか。

加藤氏:
 全体としては女性のほうが多いですが,作品によって変動があります。ご夫婦でご愛用いただいている方にお会いしたこともありますし,年齢層も幅広い方にお楽しみいただいております。

オフィスの一角にある調香室。壁面に並べられているのが香料サンプルで,取材日もデザイナーの方が真剣に作業に取り組んでいた
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4Gamer:
 お時間が限られている中で恐縮ですが,机の上に置かれているリヴァイの香りについても,ぜひうかがいたいです。

加藤氏:
 もちろんです。「TVアニメ 進撃の巨人 The Final Season」より,マーレ編のリヴァイです。荒涼とした世界観をまず出すのか,それとも……。と,非常に悩みました。

 彼の良さは,清々しさや,仲間の信念を引き継いで歩み続けるような高潔さにあると思いまして,結果として,とてもクリーンな香りになっています。

4Gamer:
 たしかに,香りの輪郭はあるのに,とても澄んだ印象がありますね。

加藤氏:
 清潔感と一口に言っても,消毒液のような清潔感と,好青年のような清潔感は違ってきます。こちらはロータス(蓮の花)の香りが入っているのですが,混じり気のないみずみずしさを透明感として感じていただけるのではないかなと。

 過酷な荒涼とした世界の中で,死にゆく仲間たちを見送る役目にならざるを得ない。それでも託された思いと信念を引き継ぎ,前を向いて戦い続ける男を表現した香りです。

4Gamer:
 香水でありながら,清潔感や透明感のほうが先に立つのが印象的です。

加藤氏:
 香水として考えても,あまりないタイプの香りかもしれません。

筆者:
 あくまで私個人の意見ですが,石鹸とか緑っぽさの要素を感じるんですね。ただ,その中でも掴みきれないような感覚がありまして。世の中にはもっとグリーンを押し出した香りはあるんですが,このアイテムで緑を前面に押し出すとそれは違うとなりますし,安易に清潔感を出そうとすれば単に安っぽいだけになってしまう。

 すごく絶妙なバランスで,だからこそ透明感が生まれる。その繊細な調整が,透明感につながっているように感じました。

加藤氏:
 浮遊感のような感覚もありますね。これからのラストノートにかけて少し柔らかくなっていくのですが,ぜひ,最後のシーンを思い出していただければと思います。

4Gamer:
 一般的な香水としての心地よさだけでなく,作品の文脈まで感じられる香りですね。

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ゲーム。場所。そして人ならざる者の香りとは?


筆者:
 さまざまな作品のアイテムを手がけておられますが,ゲームタイトルをテーマにする際のポイントはあるのでしょうか。

加藤氏:
 タイトルによっても異なるのですが,ゲーム内でキャラクターを操作するということで,「キャラクター=プレイヤー自身」という感覚に近いものがあるのかなと,個人的には考えています。

4Gamer:
 なるほど。ゲームはプレイヤー自身が操作し,世界に関わっていくメディアですから,キャラクターとの距離感も変わりますね。

加藤氏:
 観るというよりは,世界に入るという感覚でしょうか。そこに大きな違いがあると感じていますね。最近ですと「都市伝説解体センター」や「SILENT HILL f」を手がけさせていただいたのですが,どちらも世界に没入できるような濃さのある香りです。

4Gamer:
 「SILENT HILL f」の主人公である深水雛子は,内面の揺らぎや解釈の余地が大きいキャラクターですよね。そうした複雑さを,どのように香りで表現されたのか気になります。

筆者:
 ゲームにはマルチエンディングのものもありますよね。場合にもよると思いますが,いわゆる「ベストエンド」とか「真エンド」をベースにされることが多い?

加藤氏:
 たとえば「SILENT HILL f」の深水雛子の場合,キャラクター性を表現しつつ,解釈に余白を残したいという意図で香りを設計しています。複数のエンディングがある以上,どれかひとつだけがエンディングではないと。

 ただし,どのエンディングでも自分の未来を選択していく点は共通しているので,そこは感じられるようにしたい。でも,結末は霧の中に隠れていて見えない。担当した調香デザイナーもかなり苦労していました。

筆者:
 マルチエンディングというゲームならではの構造を,香りでは余白として表現するわけですね。

4Gamer:
 同じ「SILENT HILL f」の中でも,印象的な狐面の男は,どのような香りになっているのでしょうか。

加藤氏:
 かなりしっとりとしていて,お着物から香ってくるような,どこか妖艶さも感じさせる和風の香りです。

4Gamer:
 キャラクターの印象をかなり強く感じられる香りになっているのですね。

手がけた製品の一部が展示されていた。人間,人ならざる者,メカ……。同じ香水であっても,そうした視点から見てみるのも興味深い
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加藤氏:
 ゲーム作品という意味では,シリーズ作品のいくつかを手がけさせていただくこともあります。例を挙げると「ペルソナ」シリーズなのですが,「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」「ペルソナ3 リロード」の3作品です。

筆者:
 シリーズ作品には共通する方向性や空気感もあるので,香りを比べることで作品ごとの違いも見えてきそうです。

加藤氏:
 また,ゲームに限った話ではありませんが,キャラクターが人間ではない場合もあります。モフモフしていたりですとか……。

4Gamer:
 人間のキャラクターと,動物やメカのようなキャラクターでは,香りの考え方も変わるのでしょうか。

加藤氏:
 言語化が非常に難しいのですが,人間の場合は人間感といいますか,ヒトっぽい香りを目指しています。動物の場合は人間感を消すといいますか,ある意味で香水っぽくないものを目指す部分があります。動物ならではの柔らかさ,羽毛の雰囲気などですね。

 近いものですと,「Livly Island」のアイテムが挙げられるかもしれません。

4Gamer:
 「Livly Island」のようなキャラクターの場合,人間のキャラクターとは違い,香りの出発点をどこに置くのかが気になります。

加藤氏:
 ピグミーは日だまりの中で遊んでいるというイメージを持っているので,穏やかなひだまりや温かさを表現しました。「もし抱っこできたら,絶対ホカホカしてるよね〜」みたいな。

4Gamer:
 たしかに,抱っこしたときの温かさまで想像できますね。ぬいぐるみと組み合わせたくなる香りです。一方で,ケマリのようなキャラクターでは,また違った方向性になりそうです。

加藤氏:
 フワフワ感,浮遊感を表現するために,砂糖菓子のようなスイートな香りです。

4Gamer:
 「Livly Island」だと,キャラクターごとに明確な個別ストーリーがあるわけでもないので,世界観であったり雰囲気が中心となるのでしょうか。

加藤氏:
 好きな食べ物,生まれ方,歩き方……。いろいろですね。ちょこちょこ歩くのか,テクテク歩くのか,フワッと移動するのか。キャラクター性が出る部分なので,そういった部分から読み取ることもあります。

筆者:
 人間ではないけど動物でもない,メカ系のキャラクターは,どのように表現されるのでしょう。

加藤氏:
 金属っぽい香りや,オイルのような香りを取り入れることもあります。一口に金属といっても,ヒンヤリなのか,存在感のある鋼鉄のような金属かで分かれてくるので,キャラクター次第ですね。

筆者:
 メカ要素が身体の一部なのか,全体に関わるものなのかによっても,香りの設計は変わりそうですね。

加藤氏:
 はい。どこまでメカ感を出すのかも難しいところでして,「全身が機械化されているわけでもないし,ここまでしなくてもよくない?」といった具合に,逆にメカ要素を削っていくこともあります。

筆者:
 お話を聞いていて思ったのですが,調香デザイナーの方には,とにかく言語化が求められるのだろうと感じました。香りという言葉にしにくいものを扱いながら,作品やキャラクターの魅力を表現しなくてはならない。幅広い教養と表現力が必要になるところに,香り作りの奥深さがありますね。

加藤氏:
 その考え方は,キャラクターだけでなく場所を表現する場合にも通じています。実は,香水だけでなくルームフレグランスもご用意しておりまして,こちらは作品の中の場所そのものを香りで表現するものです。「行けないけど行ってみよう」がコンセプトですね。

 一例を挙げさせていただくと,「BANANA FISH」で2人が暮らしていた59丁目のアパートの部屋の香りですとか。

4Gamer:
 キャラクターの香りと場所の香りを組み合わせると,体験としてかなり立体的になりますね。

加藤氏:
 はい(笑)。皆さん,行きたいですよね! 行きましょう! という感じです。

4Gamer:
 香りによって,作品の中の場所や人物をより近くに感じられる体験になっているのですね。

 本日は長時間ありがとうございました。最後に,メッセージをいただけますでしょうか。

加藤氏:
 弊社は「ときめきを仕掛けろ」というテーマを掲げているのですが,日常の中の幸せの積み重ねであったり,作品やキャラクターから勇気やパワーをもらえること。そのことを「ときめき」と称しています。

 香水やルームフレグランスをお使いいただくことによって,日々の中で存在をより強く感じていただく。皆様の日々をもっと楽しいものにできるのが,primaniacsのポイントだと思いますので,この点はさらに広げていきたいと考えております。

 これまでの10年で約2000種類を手がけさせていただいたので,今後の10年でさらに2000種類を目指したいですね。

筆者:
 日本のゲーム,漫画,アニメが海外でも広く楽しまれているように,香りという楽しみ方もさらに広がってほしいです。

加藤氏:
 視覚や聴覚だけでは楽しめなかったものを,嗅覚でも楽しめるということを,さらに多くの国に発信していきたいです。現在,国外では台湾に店舗を構えているのですが,毎日がもっと楽しくなり,面白くなることは,全世界共通で喜んでいただけると実感しております。

筆者:
 日本発の新しい楽しみ方として,海外にも広がっていくといいですよね。香水の文化が根付いている国や,エンタメへの関心が高い地域でも,毎日を楽しくする体験として受け入れられてほしいです。

加藤氏:
 今後もぜひ,ご期待いただけますと幸いです。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

ずいぶんとしゃれたバーカウンター。世にアイテムを送り出す以上,単に趣味が合うだけではなく,チームとしての結束力は欠かせない(ノンアルコールにも対応しています)
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――2026年5月13日収録

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