本稿では,ショーケースで発表された5作品をまとめるとともに,配信に先駆けて行われたメディア向けプレビューから,「Her Story」「IMMORTALITY」などで知られるSam Barlow(サム・バーロウ)氏への合同インタビューをお届けする。
ショーケースで発表されたレーベル第1弾タイトル
Kinetic Publishingは,協力型ホラーゲーム「Phasmophobia」を手がけるKinetic Gamesが2026年に立ち上げたパブリッシングレーベルだ。資金や制作,マーケティング,PRなどを通じて,開発者のクリエイティブを尊重したサポートを行っていく。
これは,「Phasmophobia」を一人で開発し始めたKinetic Gamesの創設者Daniel Knight氏自身が,個人開発者だった当時に受けたかったような支援を,インディー開発者へ提供したいという思いが出発点になっている。
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その第1弾タイトルとして発表されたのが,「Contact Protocol」「Crescent County」「Shellbound」「Aether Wizard Life」「PRECOGNITION」の5作品。プラットフォームはPCとコンソール(PS5 / XBOX Series X|S / Nintendo Switch 2)のマルチ展開が予定されている。
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■書類を調べ,相手を信じるかを決める「Contact Protocol」
Cold Zephyr Gamesが開発する「Contact Protocol」は,2027年春に発売予定の“宇宙船お仕事シミュレータ”だ。
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プレイヤーは,木星最大の衛星を目指すGalCoの採掘船「Pale Horse」の保安担当者となる。航行中に接近してくる宇宙船から送られた情報を企業の記録などと照合し,相手が何者なのか,船を通過させても安全なのかを判断していく。
送られてきた情報に矛盾があれば追加情報を求め,船体画像を確認し,破損したデータを復旧する。しかし調査を続けているあいだにも,相手の船は刻一刻と近づいてくる。
判断を急いで罪のない船を攻撃するのか。それとも,相手を信用した結果として自分たちの船を危険にさらすのか。大量の情報を処理する“認知負荷”と倫理的な判断を同時に突きつけることが,本作のゲームプレイの軸になるという。
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■魔法の箒で配達とストリートレース。「Crescent County」
Electric Saintが手がける「Crescent County」は,2027年夏に発売予定だ。
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舞台は,三日月形をした魔法の島「Isle of Mor」。新たな土地へ移り住んだ主人公Luが,魔法と機械を組み合わせた乗り物“モーターブルーム”にまたがり,新生活を送っていく。
昼は荷物を届けて収入を得て,夜には島で出会った仲間たちとストリートレース。地元の人々と交流したり,恋愛したり,羊を追ったり,レイラインを修復したりしながら,新しい土地に自分の“home”を作っていく。
モーターブルームではドリフトやブースト,滑空,大ジャンプなどのアクションを楽しめるほか,性能や見た目のカスタマイズも可能。生活と人間関係,そしてスピード感のある走りをひとつにまとめた作品となる。
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■巨大なカタツムリそのものが世界。「Shellbound」
Fake Lobsterの「Shellbound」は,「Hollow Knight」の影響を感じさせるメトロイドヴァニアだ。2028年夏発売予定。
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舞台となるのは,巨大で神格化されたカタツムリの身体そのもの。その背中だけでなく内臓までが探索エリアとなり,カタツムリの生態や身体の変化によって,世界の構造も変わっていく。
主人公は,その世界に生きる寄生生物だ。敵や一部のNPCへ寄生して身体を操り,それぞれが持つ移動能力や戦闘能力を利用して探索やパズル,ボス戦を進める。同じ種類の敵を倒し続けるとその種が進化し,新たな能力を獲得する場合もある。
プレイヤーの行動やカタツムリの状態によって地形自体も変化するため,一度通った場所へ戻ったときにも新たなルートや敵が生まれるという。
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■歩く城を拠点に魔法使いとして暮らす「Aether Wizard Life」
タイのVonder Gamesが開発する「Aether Wizard Life」は,2028年秋発売予定の魔法使いライフシミュレーションだ。
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プレイヤーは,幽霊の出る町「Starfall」で暮らす若き魔法使い見習いとなり,自分好みにカスタマイズできる“歩く城”を拠点に生活していく。
魔法の植物を育てる,珍しい生き物を世話する,ポーションを作る,酒場を経営する,ダンジョンへ潜るなど,日々の過ごし方はさまざま。町の住人たちと関係を深め,恋愛や結婚をすることもできる。
一方,Starfallでは魔法使いたちが何者かに誘拐される事件が起きている。穏やかな魔法使い生活を送りながら手掛かりを集め,町に隠された謎を追っていくことになる。
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■Sam Barlow氏×Brandon Cronenberg氏の実写SFホラー「PRECOGNITION」
ショーケースの最後に発表されたのが,Half Mermaid Productionsの「PRECOGNITION」だ。2028年春の発売が予定されている。
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これまで「Project C」という仮称で存在が明かされていた作品で,「Her Story」「Telling Lies」「IMMORTALITY」を手がけたSam Barlow氏と,映画「アンチヴァイラル」「ポゼッサー」「インフィニティ・プール」などで知られる映画監督Brandon Cronenberg氏が共同で物語を制作する,実写映像を用いたSFホラーとなる。
テキストは“墨塗り”だらけ。「Her Story」「IMMORTALITY」などを手がけたサム・バーロウ氏による新作2本のSteamストアページが公開に
「Her Story」「IMMORTALITY」などを手がけたサム・バーロウ氏の新作2本の情報がSteamで公開された。いずれもジャンルはアドベンチャーだが,テキストは“墨塗り”の状態で,スクリーンショットも抽象的なものが多く,詳細はうかがい知れない。
主人公のDianaは,記憶能力を補助するための実験的なインプラントを脳に埋め込まれ,その副作用によって“自分自身の未来”を見るようになる。
プレイヤーはその未来のビジョンを探索し,特定の瞬間をDianaの“記憶”として現在へ持ち帰る。しかし,未来で得た情報を知ればDianaの行動も変わり,それまで見えていた未来そのものが変化してしまう。
過去の映像から物語を探ってきたBarlow氏のこれまでの作品とは異なり,未来から情報を持ち帰ることで,これから起きる出来事そのものへ干渉していくわけだ。
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未来を“記憶”して,自分の人生を書き換える。Sam Barlow氏に聞く「PRECOGNITION」
では,膨大に枝分かれする未来をどのようなゲームとして成立させるのか。メディア向けプレビューで行われた合同インタビューでは,Barlow氏自身に「PRECOGNITION」のゲームシステムやCronenberg氏との共同制作,その発想の原点について聞くことができた。
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――Brandon Cronenberg氏とのコラボレーションは,どのように始まったのでしょうか。
Sam Barlow氏:
私は以前から,ほかの人(ゲーム業界外のクリエイター)を制作に招き入れて,一緒に作品を作ることを楽しんできました。
「Telling Lies」ではAmelia Grayに参加してもらいましたし,「IMMORTALITY」で3本の架空映画を作ったときにも,映画や文学の世界からさまざまな人に加わってもらっています。異なるメディアからきた人たちは,ゲームについて「これはできる」「これはできない」という先入観をあまり持っていません。それがすごく役に立つんです。
「IMMORTALITY」では明確にホラーゲームを作ろうとしていました。ただ,私たちがホラーだと思って作っていても,かなり遅い段階までそれに気づかなかったプレイヤーもいたと思います。
本作ではそこからさらに進んで,“5分先の未来”にあるようなSFホラーを作りたかった。いまの世界にある怖いことや壊れているものが,ほんの少し先まで進んだらどうなるのか。そういう物語です。
そこで早い段階からコラボレーターを探していましたが,Brandonはかなり早くから有力な候補でした。彼はすでに私たちのゲームを遊んでいて,こちらが何をやろうとしているのかもすぐ理解してくれた。
この初期段階で物語の大きな柱をいくつか作っていたんですが,そのひとつを見たBrandonが「これは自分には意味が分からない」と言ったんです(笑)。そして,まったく違う方向を提案してくれた。それを取り入れた瞬間に,一気に良くなりました。
少し奇妙になって,かなり暗くなりましたけどね(笑)。
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――「IMMORTALITY」など,これまでの作品と比べてプロジェクトの規模はどうでしょう。
Barlow氏:
「IMMORTALITY」はCOVIDの状況下でどうにか完成させた作品で,本当に大変でした。だから次に作る作品はもう少し小さく,分かりやすいものを作ろうと思ったんです。
……少なくとも数日間は,チームのみんなにも「今回はそういうプロジェクトだ」と言っていました。でも,すぐに手に負えない規模になりました(笑)。
私は「ゼルダ」の話をしすぎて,そのたびに罰金箱にお金を入れなければならないくらいなんですが(笑),「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」のような作品が優れている理由のひとつは,“寛大さ”にあると思っています。
プレイヤーに「北でも南でも東でも西でも好きなところへ行っていい」と自由を渡すのは,実はかなり大きな要求です。自由すぎると不安にもなる。でも,あのゲームは「どこへ行っても面白いものがありますよ」と,コンテンツの側が約束してくれるんです。
「PRECOGNITION」でもプレイヤーに大きな自由を渡しています。しかも今回は,ひとつの物語ではなく,何百もの物語がある。
だから,その自由に見合うだけのものをこちらも用意しなくてはいけない。結果として,「IMMORTALITY」以上に大きく,複雑なゲームになっています。
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――「IMMORTALITY」のマッチカットのような,本作を象徴するゲームの仕組みはどのようなものなのでしょう。
Barlow氏:
Dianaは,かつて神童と呼ばれた人物で,写真のように物事を記憶できる能力を持っています。
彼女は記憶能力を強化,修復するための実験に参加し,脳へインプラントを埋め込まれる。ところがその副作用として,被験者たちは“未来の記憶”を受け取るようになります。
普通の被験者はそれをすぐに忘れてしまいます。夢から目覚めたときに,夢の記憶が消えていくようなものですね。でもDianaの特殊な脳だけは,その未来の記憶を見ることができる。そして,そのなかの一瞬を選んで“記憶として保存”できるんです。
プレイヤーは未来のビジョンを見て,そこから一瞬を選ぶ。コントローラのトリガーを引くと,それを記憶として確定します。
映画「Memento」で主人公がポラロイド写真を持ち歩いていますよね。Dianaも,いわば“未来のポラロイド”を集めていくわけです。どの情報が重要なのか,何を現在へ持ち帰れば役立つのかは,プレイヤーが自由に決められます。
そして,記憶をひとつ持ち帰った瞬間に未来が変わり,新しいビジョンが現れる。プレイヤーはさまざまな可能性から情報を集めて,自分なりの“未来を導くためのインベントリ”を作り,それを使ってDianaの人生を少しずつ形作っていきます。
すごく退屈な使い方をするなら,未来から宝くじの当選番号を持ち帰って大金持ちになることもできるでしょう。でも,たとえば10年間一緒にいたパートナーが自分の兄弟と浮気していることを未来で知ってしまったら,どうするのか。
未来から何を持ち帰るかによって,まったく違う問題が生まれるんです。
――これまでの作品から学んだことは,「PRECOGNITION」にどうつながっていますか。
Barlow氏:
私はずっと,「これはすごく面白そうだけど,こんなゲームを遊んだことがない」と思うものを作ってきました。
「Her Story」も,「探偵ゲームは好きだけど,本当に自分で捜査していると思えるほど自由な探偵ゲームを見たことがない」というところから始まっています。
今回はそれと同じように,「タイムトラベルというアイデアを,本当に自由にいじくり回せるゲームを遊んだことがない」と思ったんです。
ゲームに時間旅行の場面があると,私はそれだけで嬉しくなるんですが,たいていは作品の一部分に限定されていますよね。小さな場所をやり直して,行動を変えて,その結果を見るくらいです。
でも今回は,蝶の羽ばたきから無数の可能性が生まれていくように,時間そのものを自由に扱える感覚を作りたかった。
もちろん,誰もやっていないのには理由があります。ものすごく複雑で難しいからです(笑)。
でも自分なら,そんなゲームを見たら大喜びする。だったら完成させられれば,同じように喜んでくれる人もきっといると思っています。
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――プレイヤーに最も体験してほしい部分はどこでしょうか。
Barlow氏:
それを言ったらネタバレになりそうですね(笑)。
それと,お願いだからこれだけを切り取ってクリックベイト的な見出しにはしないでほしいんですが……「PRECOGNITION」のかなり初期のアイデアは,「FMV(Full Motion Video / 実写)版のメトロイドを作りたい」という私の妄想から始まっています。
私は「メトロイド」の大ファンです。昔から私の投稿を見ていた人なら,「Her Story」が「メトロイドプライム」から影響を受けていることも知っていると思います。
画面に自分自身が反射して見える表現も,「メトロイドプライム」でバイザーにSamusの顔が映るのがすごく格好いいと思ったことから来ています。
一瞬だけ没入感を壊して,「あなた自身ではなく,Samus Aranなんですよ」と思い出させる。でも,その結果として逆に没入感が強くなる。「Her Story」以降の作品でも,「ゲームのなかのあなたは誰なのか」というところでは,その考え方を使っています。
それでずっと“FMV版メトロイド”を考えていたんですが,そのアイデアだけでは100%しっくりこなかった。私は,アイデアを頭のなかの棚に置いておいて,「これはひとつの体験として完全に成立する」と思えるまで待つことがあります。
ある日,そこへすごく暗いひねりを加えたらどうだろうと気づいた。すると突然,構造もテーマもメカニクスも全部がつながりました。ゲームを始めて5分くらいで,「こんなことができるのか」とプレイヤーが気づく瞬間を楽しみにしています。
「本当に自由に未来をいじれるんだ」と感じてもらいたいですね。
――本作に影響を与えた映画や小説などはありますか。
Barlow氏:
私は,ちょっと悲しい気持ちになるタイムトラベル作品が好きなんです。
時間を操る力を得れば,最初は人間としての制約から逃れられるように思える。でも,やがてどうしても避けられないものが見えてくる。未来や自分自身を変える力を持ったとして,それでも逃れられないものは何なのか。そこに興味があります。
それから,本作は1990年代から始まります。
未来へ進んだときに,「未来世界はどんな見た目なのか」というSFガジェットの話ばかりにはしたくなかったんです。
ロボットと暮らす未来を描きたいわけではない。未来を知ることができたら,自分の人生をどう変えられるのか。それを描きたいんです。
90年代末のダークSFやSFホラーには独特の味もあります。「Strange Days」のように,「当時の人はほんの少し先の未来をどう想像していたのか。それは何が当たっていて,何が外れていたのか」という視点ですね。
そうしたものが,作品に荒々しく,地に足のついた感覚を与えてくれると思っています。
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――開発するうえで,特に難しいと感じている部分はありますか。
Barlow氏:
一番難しいことのひとつは,世界が変化する速度ですね。
数年間このゲームを作りながら,ライターズルームでいろいろな暗い未来を考えてきました。すると何度も,誰かがニュース記事を持ってきて,「ねえ,1年前に俺たちが考えたあれ,現実でやっちゃったよ」と言うんです(笑)。
実際に起きた出来事を,そのまま風刺しているだけのようにはしたくない。でもゲーム開発より現実世界のほうが速いくらいの勢いで変わっていくなかで,「いま世界がどこにいて,この先どこへ向かうのか」を考えなければならない。
物語の始まりを少し過去へ移して,そこから枝分かれした独自の世界として描くことは,その問題へのひとつの助けになっています。
同時に,いま起きていることをそのまま作品へ映し返していくのは,ある意味ではカタルシスにもなっています。ゲームが発売されるころまでには,世界も少し落ち着いてくれるといいですね(笑)。
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映像の断片からすでに起きた出来事を読み解くのではなく,未来の断片から情報を持ち帰ることで,その先に起きること自体を変えていく。
「Her Story」から「Telling Lies」,そして「IMMORTALITY」と,プレイヤー自身に物語を“発見させる”作品を作ってきたBarlow氏だが,「PRECOGNITION」ではそこへさらに,プレイヤー自身が“結果を生み出す”仕組みが加わる。
膨大な未来の分岐と実写映像を用いた表現が,最終的にどのようなゲームとしてまとまるのか。2028年春の発売に向け,今後明かされる情報にも注目したい。
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