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AIの進化の先には何があるのか。「AIの次のフェーズ、AGI/ASI時代におけるプロダクト開発者とAIの関係性」レポート
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印刷2023/07/01 13:27

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AIの進化の先には何があるのか。「AIの次のフェーズ、AGI/ASI時代におけるプロダクト開発者とAIの関係性」レポート

 2023年6月28日から30日,京都市勧業館みやこめっせで開催されたカンファレンス「IVS 2023 / IVS Crypto 2023 KYOTO」において,「AIの次のフェーズ、AGI/ASI時代におけるプロダクト開発者とAIの関係性」と題されたセッションが実施された。
 モデレーターの赤澤直樹氏とスピーカーのTHE GUILD CEO / note CXO 深津貴之氏,Off TopicのCEO 宮武徹郎氏の3人が,AIの次のフェーズについて語ったので,本稿でその模様をお届けしよう。

画像集 No.002のサムネイル画像 / AIの進化の先には何があるのか。「AIの次のフェーズ、AGI/ASI時代におけるプロダクト開発者とAIの関係性」レポート

 まず,モデレーターの赤澤氏からスピーカーに振られたのは,「昨今の生成系AIに関して,どういう見立てをしているか」だ。
 深津氏は,昨年(2022年)8月頃に,「生成系AIで世界が変わるやべー」とnoteに書いて,煽った経緯があることを話し,人類史における蒸気機関や活版印刷レベルの発明ではないかと述べた。世の中のあらゆるものが変わると予測し,個人商店がコンビニやショッピングモールに追いやられたようなインパクトを与えると語った。

 宮武氏も同じように考えていると述べつつ,プロダクトの作り方なども変わってくるとした。現在は既存のアプリでAIを導入しているが,AIネイティブなものが出てきたときに,それがどのくらいの時期に出てきて,どういった変化が訪れるのかが気になるとのことだ。

深津貴之氏
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 続いて赤澤氏は「AIの進化の速さ」に着目し,すさまじい速さの原動力は何かと質問した。
 それに対して深津氏は,原動力の1つに汎用的な「大規模言語モデル」の登場があると分析した。これまでは,AにはA,BにはBというAIが必要だったのだが,汎用AI1つで大半のことができるようになり,大きな資本が集まってきた,といった状況だ。
 宮武氏は,ほかの業界が低調なため,盛り上がっているAIにベンチャーキャピタルが集まってきたことと,プラットフォームシフトに対して乗り遅れないよう,資本が集まる状況だと分析した。

 次に赤澤氏が聞いたのは,「AIが普及していく中で,実際の社会にどういう影響を与えていくのか」についてだ。
 深津氏は,最初に人材の教育コストが高いところでリプレースが始まっていくと語った。一昔前は単純労働がAIに奪われると言われていたが,フタを開けてみたら,経験が必要な仕事のほうが先に,AIによって代替される可能性が高いということだ。
 宮武氏は,大きなコストが必要な課題を解決するサービスが登場してくることを期待するとし,さまざまな領域で,そうした課題に挑戦するスタートアップを見たいと語った。

 赤澤氏はさらに,「これからAIが発展していくうえで,AIは人にとってどういう存在になっていくのか」という問いを投げかけた。
 深津氏は,AIとの関係性は,それぞれの国の文化にも影響を受けるのではないかとする。例えば日本なら,宗教や創作の影響もあり,AIに対して比較的寛容だが,そうではない国や地域もあるという。

宮武徹郎氏
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 話はここで,「AIの権利」の方向に進んでいった。画像生成系AIでは,著作権の衝突が実際に起きているが,これについて宮武氏は,「インプットとアウトプットは個別に考える必要があるのではないか」と話した。
 アウトプットはある程度,法律で守られており,例えば,あるキャラクターをそのまま描いたら著作権を侵害していると見なされる。その一方,インプットについては,「個人的には」と前置きしつつ,人間がある作品を見てインスパイアされて何か描くのと変わらない,との見解を述べた。

 深津氏は,権利関係については適切に利益分配ができるようになればいいとしつつ,インプットに関しては,1900年頃の著作権フリーデータを集めても,時間はかかるだろうが,高性能なものができあがるのではないかという考えを示した。
 深津氏はまた,別の観点からの意見も述べた。これから先,AIがすさまじい進化を遂げ,人間と区別がつかないレベルに至り,AIにも人権を与えようという流れになったとき,現段階であまり規制しすぎると,「初期のAIは迫害されていた」という歴史が刻まれると危惧する。
 そのため,商用利用はともかく,研究レベルではインプットの規制はなくしていったほうがいいという意見だ。もっとも,不特定多数の情報を用いて学習することについては,どんどんしていけばいいという立場だが,個人を対象とした学習は,「やめたほうがいい」という。なぜなら,特定個人を対象とした学習は,対象者の人生に影響を与える可能性があるためだと説明した。

赤澤直樹氏
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 次の話題は,これから発展していくAIに対して,どういう心構えで付き合っていくべきなのか,というものだった。AIを運用するうえでの倫理や,将来発生しうるAIに対しての権利など,広範な内容を含んでいる。
 宮武氏は,倫理の観点はかなり難しい問題であり,そもそもどういう倫理観を持たせるのかで状況が変わると語った。例えば,有名な「トロッコ問題」だが,AIに判断をさせるのではなく,そういう状況をいち早く見つけ,ブレーキをかけることが必要だと説く。

 深津氏も,倫理は難しい問題だと語った。「AIが発展した結果,人類が滅びたら,その責任をとれるのか」と言われることがあるが,反対に「AIの利用で救われる命があるなら,AIの発展を阻害した責任をとれるのか」ということも言える。したがって,特定の倫理で語ることは難しいという。
 その一方で,個人レベルに焦点を合わせると,AIの影響で人の人生を狂わせてしまうことがあるため,そうした面では倫理を使っていくべきではないかと述べた。
 深津氏,宮武氏は共に,AIという技術が出てきた以上,封印するのは難しく,滅ぼすことを考えるよりは,どのように利用していくかを考えていくほうが健全だという意見で一致した。

 ChatGPT-4の登場で急速な変化が訪れているAI技術。産業的な側面で見ると,さまざまな問題がありつつも,我々の生活を少しずつ変えていくことになるだろう。それがゲームなどの娯楽分野で,どのように使われていくのか,将来に期待したい。

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