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ハイパーカジュアルゲームの現状と今後について語られた,オンラインカンファレンス「Mobile Leaders Summit 2022」のセッションをレポート
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印刷2022/03/24 21:53

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ハイパーカジュアルゲームの現状と今後について語られた,オンラインカンファレンス「Mobile Leaders Summit 2022」のセッションをレポート

 data.ai(旧App Annie)は,オンラインカンファレンス「Mobile Leaders Summit 2022」を,2022年3月23日と24日に開催した。
 モバイル業界の有識者が,関連する事業の紹介や課題解決のためのヒントを発信する本イベントから,芸者東京のCEO・田中泰生氏と,東京通信のCEO・古屋佑樹氏が登壇したセッション「“クセになる”には理由がある。ハイパーカジュアルゲームの今を徹底解析!」をレポートする。
 なお,本セッションのモデレーターを務めたのは,タツマキゲームズの代表取締役である畑佐雄大氏だ。

画像集#001のサムネイル/ハイパーカジュアルゲームの現状と今後について語られた,オンラインカンファレンス「Mobile Leaders Summit 2022」のセッションをレポート

 セッションでは,まず2021年におけるハイパーカジュアルゲームの動向を振り返った。古屋氏は,各国のランキングや自身の肌感覚から「衰え知らずに伸びていると実感している」とし,また「ハイパーカジュアルゲームがランキング上位に位置していることが当たり前となり,ユーザーもその状況になれてきたタイミングである」と語った。
 さらにそれを踏まえたうえで,「ラッキーやまぐれがほぼなくなり,正しいものが正しくヒットする市場になった」と話し,「移り変わりは早いが,入れ替わりが激しいということはなくなってきている」「ハイパーカジュアルゲームで一括りにするのではなく,サブジャンルやカテゴリーが登場してきた」と続けた。

 一方の田中氏は,ironSouceとAppLovinが大手プラットフォームとして台頭したことにより,ハイパーカジュアルゲームがひとつの産業として確立。同時に,それまでの時代が終わりつつあると指摘した。
 またビジネスモデルに関しては,ランキングやダウンロード数を重視するだけでなく,異なるビジネスの組み立て方にチャレンジしているタイトルの登場が印象的だったという。

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 2021年全体に関しては,古屋氏が“コロナ禍によりコンシューマゲームの有名タイトルのヒットが目立ったことや,NFTおよびメタバースが話題になった”ことを挙げつつも,スマートフォンを筆頭とするモバイル端末に匹敵するような手軽さを持つデバイスが登場していないことに言及する。
 そして,「モバイルを扱うビジネスは,今後も引き続き元気だろう」「データを扱う企業としてメタバースなどにも注目はしているが,ユーザーがそれらを扱うためのデバイスはスマホだろうと実感している」と語った。

 なお田中氏は,コロナ禍で,自社のゲームがユーザーに遊ばれる機会が増えたかどうかを問われ,「よく質問されるが,今や誰もがずっとスマホをいじっている時代になった。ひとつのデバイスという存在を超えて,スマホがないと生きていけない,身体の一部というイメージなので,コロナ禍に関係なく今後影響力が大きくなることはあれど,小さくなることはない」との持論を披露した。

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 続いてのテーマは,印象に残った2021年のハイパーカジュアルゲームタイトルについて。
 田中氏は,芸者東京のスタッフから毎朝,「このゲームに触っておいてください」というリストが送られてくるそうだ。そして,それらをスナック菓子を食べるかのように全部プレイし,その中で「今まで食べたことのない味」「こんな不味いのが流行ってるのか」というものをフィードバックしているのだという。
 そのため,個々のタイトルについては,あまり覚えていないとのこと。また古屋氏の指摘したとおり,昨今のランキング上位に位置するタイトルは,すべてきちんと面白いとのことで,「いい意味で印象に残らない」とも表現していた。

 古屋氏は,広告を見ただけ,あるいは3秒触れただけでそのゲームの内容が分かるものがよしとされてきたハイパーカジュアルゲームがさらに洗練され,「3〜5秒触れただけで,“何か成果がないと”プレイしてもらえないくらいになっている」と言う。
 具体的なタイトルとして,Voodooの「Hex Takeover」を挙げ,「面白すぎて時間がどんどん経ってしまう」と話す。最近は,技術的に感銘を受けるタイトルが少なくなっているそうだが,Supersonic Studiosの「Coloring Match」は,「過去にあった仕組みをブラッシュアップして,新しいものに仕上げている」と称賛していた。

画像集#004のサムネイル/ハイパーカジュアルゲームの現状と今後について語られた,オンラインカンファレンス「Mobile Leaders Summit 2022」のセッションをレポート

 話題は,「日本からハイパーカジュアルゲームに参入することについて」にも及んだ。
 古屋氏は,日本市場が世界的に見ても重要なマーケットであることに言及し,「そこを主軸として戦えるのはアドバンテージ」とし,「世界展開するうえで日本が強みになることはあまりないが,まぐれヒットがなくなっていることを踏まえると,日本から発信することがネガティブということはない」と語った。

 ハイパーカジュアルゲームにIPを使うことについて問われた田中氏は,「アドネットワークをマーケティングのエンジンに使っているゲームなので,ビジネスとしては薄利多売の100均ショップのようなもの。そのビジネスモデルでIPのロイヤリティを支払うのは,かなり厳しい」との見解を示した。

 セッションの後半は,ハイパーカジュアルゲームの現状と未来についてのトークが披露された。
 ハイパーカジュアルゲームのビジネスについて問われた古屋氏は,「上場して,支援していただけるほどにはいいビジネスになっている」「数人で作って億単位稼げるなど,大規模タイトルの開発と比較したときに圧倒的に安定しているので,非常にポジティブ」としつつ,「ヒットが出ないことが地獄」とも話していた。

 また開発体制に関しては,東京通信はディレクター,エンジニア,デザイナーの小規模チームを複数組み,各チームが次々に新作を作っているという。
 芸者東京は,タイトルごとにメインとなるディレクター,エンジニア,デザイナーを設けてはいるが,基本的には社内のスタッフ全員が全タイトルに関わり,最終仕様を田中氏が決定するという体制を取っているとのこと。
 これは設立当時から変わらないそうで,田中氏は「今いるスタッフの中から,何人をリードディレクターやリードエンジニア,リードデザイナーにするかによって,将来の会社のスケールが変わると意識していた」という。また,「全員がそれぞれ得意な分野を持ちつつ,それ以外のゲーム開発に必要な最低限の知識を持ち,マネジメントができればもっといいゲームが作れるだろうと考えた」とも話していた。

 今後,ハイパーカジュアルゲームがどうなっていくかという質問には,古屋氏が「行ける」と回答。さらに「そう思っていることが大事」とし,「『ヒットを出したい』という考え方ですら遅いときがある。『ヒットを出せる』と思い込むことで,行動できることや選択できることもある。これはただのビッグマウスではなく,東京通信の実績を振り返れば,そのときどきの苦しみはあっても,安定して成長してきたのはそうしたヒットがあったから」と説明した。

 ランキング以外で注目しているデータを問われた古屋氏は,トレンド予測に活用可能なキーワードの抽出や変遷を挙げ,その確認のためにSNSや動画配信サイトを初め,書籍などを常にチェックし分析していることを明かした。
 また田中氏は,世界的なマーケットの動向を挙げた。例えば現在,トルコにおけるハイパーカジュアルゲームはバブリーな状況にあるそうで,それが一時的な現象なのか,そうでないのかといったことを正確に読み取れるようなデータがほしいとのこと。

 セッションの最後には,田中氏ハイパーカジュアルゲームの魅力について,「老若男女を問わず,スマホというもはや身体の一部のようなデバイスで展開しているメディア。いわば“エッセンシャル×エッセンシャル”という存在で,戦争中のウクライナでも遊ばれている」と話し,さらに「今後もなくなることはなく,ビジネスモデルもジャンルも多種多様に変化・進化していくので,柔軟に対応してより多くの皆さんに遊んでもらえるもの作っていく」と意気込みを述べた。

 また古屋氏は,「そもそもカジュアルゲームは,ダイレクトマーケティングのできる貴重なビジネス。仮にデバイスチェンジがあったとしても,シンプルなゲームはずっと需要があるので存在し続ける」と述べ,さらに「年齢や性別,国や地域を問わずオールターゲットでマーケティングできて,多くの人々に手元で触れていただけるメディアは珍しい」として,今後も引き続きハイパーカジュアルゲームに注力していくと語っていた。
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