テストレポート
ゲーマー向けスマホ「RedMagic 5」をチェック。税込6万円台後半と価格対性能比に優れたハイエンドモデル
手に取りやすい価格のゲーマー向けスマートフォンとして,気になるゲーマーはいるだろう。本稿では,そんなRedMagic 5の実力をチェックしてみた。
デバイス自体は5G対応だが,国内では4G LTEまで
Nubiaは,中国の大手通信機器メーカーであるZTEの傘下にあるスマートフォンメーカーで,2017年からRedMagicブランドでゲーマー向けスマートフォンを展開してきた。最新モデルであるRedMagic 5は,日本の技術基準適合証明(技適)を同社としては初めて取得した製品となる。
いささか気勢を削がれてしまった感もあるが,RedMagic 5の仕様を確認していこう。国内版では,メインメモリ容量が12GBで本体カラーが「Eclipse Black」の上位モデルと,メインメモリ容量が8GBで本体カラーが「Hot Rod Red」下位モデルの2機種をラインナップしている。直販サイトにおける価格は順に649ドル(約6万8800円),629ドル(約6万7600円)だ。主なスペックは表のとおり。本稿では上位モデルを使用している。
メーカー | Nubia |
---|---|
OS | Android 10 |
ディスプレイパネル | 6.65インチ有機EL, |
プロセッサ | Qualcomm製「Snapdragon 865」 ・CPUコア:Kryo 585(最大2.8GHz) ・GPUコア:Adreno 650 |
メインメモリ容量 | 8GB,12GB |
ストレージ | 128GB |
アウトカメラ | 3眼式 ・標準:約6400万画素,F2.0 ・広角:約800万画素,F2.0 ・望遠:約200万画素,F2.0 |
インカメラ | 約800万画素,F2.0 |
対応5Gバンド | Band n41/n78/(※国内使用不可) |
対応LTEバンド | FDD-LTE:Band 1/2/3/4/5/7/8/12/17/18/19/20/26/25/26/28 FDD-LTE:Band 39/40/41 |
対応3Gバンド | Band 1/2/4/5/8/19 |
無線LAN対応 | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) |
Bluetooth対応 | 5.1 |
バッテリー容量 | 4500mAh |
待受時間 | 未公開 |
連続通話時間 | 未公開 |
USBポート | USB 3.0 Type-C |
公称本体サイズ | 78(W) |
公称本体重量 | 約218g |
本体カラー | Eclipse Black,Hot Rod Red |
ゲーマー向け製品らしい外連味溢れたデザイン
続いては,RedMagic 5の外観を見ていこう。背面は,全体に大きく「X」に見える模様が描かれており,その中央にはカラーLEDを内蔵したRedMagicのロゴを配置するという,いかにもゲーマー向け製品らしい外連味溢れたデザインとなっている。表面にガラスカバーを採用しており,光沢感のある仕上がりなのだが,指紋が目立ちやすいのは少し気になる。
背面上部に搭載したアウトカメラは3眼式で,上から順に有効画素数約200万画素の撮像センサーを備えたマクロカメラ,約6400万画素の標準カメラ,約800万画素の広角カメラという構成になっている。
側面にも目を惹く要素が多い。とくに目を惹くのが,左側面の端にある赤いスイッチだ。これはゲーム向けの設定を行うユーティリティ「GameSpace 2.1」を起動するための専用スイッチである。その下側には冷却用の吸気孔,左側面中央には,周辺機器との接続に使う「GamingPort」を備える。
GameSpace 2.1を起動するための赤いスイッチ |
冷却用の吸気孔。横持ち時に下から空気を吸い上げる |
一方の右側面は,中央に[電源/スリープ]ボタンと音量調節ボタンを備える。その上側に排気孔を設けており,左側面の吸気孔と組み合わせて,横持ちしたときに下から上に向かうエアフローを形成する仕組みだ。
さらに右側面には,横持ちしたときの上側面左右端にタッチセンサー「Shoulder Trigger」(ショルダートリガーボタン)を搭載するのも特徴の1つだ。同様の仕組みはASUSTeK ComputerのROG Phoneシリーズにもあるが,Shoulder Triggerにゲーム側の仮想ゲームパッドにおける任意の操作を割り当てることで,ゲームパッドのショルダーボタンのような感覚でゲームを操作できる。
有機ELパネルは144Hz表示に対応
RedMagic 5における特徴の1つがディスプレイだ。先述したとおり,搭載するのは有機ELパネルで,スペックは6.65インチサイズで,解像度1080×2340ドット,横持ち時のアスペクト比が19:9.5となっている。インカメラや前面装備のセンサー類などは,上側のベゼルにまとめており,ノッチ(切り欠け)はない。パネルの四隅は丸められているため,画面全体使って表示するようなゲームの場合は,端の部分がわずかに隠れてしまうこともあるのだが,それほど大きな影響はないだろう。
パネルの最大リフレッシュレートは,144Hz表示に対応しており,設定から60Hz,90Hz,144Hzの3段階で切り替えられる。
少しずつ増えてはいるものの,高フレームレート表示に対応するスマートフォン向けゲームはまだ多くない。Nubiaが公開している144Hz対応タイトルも6つだけであり,90Hzや144Hz表示が有効な場面はまだまだ少ない。
- Real Racing 3
- Dead Trigger 2
- Bullet Force
- Into the Dead
- Subway Surfer
- Trials Frontier(※国内ではTrials Go)
ただし,状況は少しずつ変わりつつある。たとえば,Qualcommは,2019年12月にSnapdragon 865搭載製品で,「PUBG MOBILE」における90fps動作への対応を表明した。また,Android版の「Fortnite」は通常であれば30fps動作までの対応なのだが,一部のスマートフォンで90fps動作が可能となっている(関連リンク)。自分がプレイしているゲームが高フレームレートに対応したときに,すぐに試せるのはゲーマー向け製品として大きなメリットといえるだろう。
ただし,リフレッシュレートが上がれば,その分消費電力が増えてしまうことにも注意したい。RedMagic 5で,90Hz表示に設定したPUBG MOBILEを30分間プレイしたときの消費電力は8〜10%程度であったが,一方144Hz表示でプレイしたときは10%〜12%程度まで増えてしまった。用途やバッテリー残量に合わせて,リフレッシュレートを切り替えるといいだろう。
つけ加えておくと,タッチパネルのサンプリングレートは240Hzで,現行のゲーマー向けスマートフォンでは一般的なスペックだ。
内蔵の空冷ファンによる冷却機構を採用
RedMagic 5の大きな見どころは,冷却機構にある。「ICE 3.0」と称する冷却機構は,ヒートパイプと銅製の放熱板に加えて,PCのように空冷ファンを組み合わせることで,同社の従来製品と比べて,2倍の冷却効率を実現しているというのだ。ただ,空冷ファンを内蔵するため,防水仕様ではない。
RedMagic 5の冷却能力が実際どの程度のものなのか,空冷ファンを有効にした状態と無効にした状態で,それぞれ3Dベンチマークアプリ「3DMark」を10回連続で実行させたときのSoC温度とバッテリー温度を「AnTuTu Benchmark」の温度モニターで調べた。
結果は,空冷ファンを有効にした場合で38.5℃,無効にした場合で40℃となり,空冷ファンによる冷却効果を確認できた。なお,空冷ファンを最大で動作させると,エアコンが稼働している室内でも,ファンの音がかなり耳に付く。ゲームの音量次第ではあるが,たとえばFPSでは,敵の足音が聞き取りにくいというケースもあった。
細かな動作設定が可能なGameSpace 2.1
ハードウェアに続いて,ソフトウェアも紹介しよう。前述したとおり,RedMagic 5の左側面にある赤いスイッチを切り替えると,ゲーム用の動作モードに切り替えるGameSpace 2.1が起動する。GameSpace 2.1を有効にすると,画面録画の操作と設定や,通知や自動輝度調整機能の無効化といったゲーム向けの動作モードへの切り替えや,背面LEDイルミネーションの設定,インストール済みゲームの管理機能といった機能を使えるようになる。ただ,現時点では日本語化されていない点が,人によってはハードルとなりそうだ。
また,GameSpace 2.1が有効な状態では,横持ち時の画面右端を,縦持ち時は下からスワイプすることで,ゲームごとに動作中の設定を細かく指定できる「Game Control Center」を呼び出せる。
Game Control Centerで設定可能な項目は以下のとおりだ。
- Game Enhancement:CPUとGPUの動作クロックを最適化する。さらにCPUとGPUそれぞれ,または両方の動作クロックを最大まで引き上げることも可能
- Screen hang-up:アプリの動作を継続しつつ,画面をロックする
- Shoulder Triggers:左右のShoulder Triggerに任意の位置に対するタップを割り当てたり,Shoulder Triggerが反応するタッチの感度調節を行う
- Controller:Android向けゲームパッドの設定
- Macro:マクロの設定
- Aiming assist:画面中央に照準を表示する
- Fan:空冷ファンのオン/オフ
- 60Hz:ディスプレイのリフレッシュレートを切り替える。設定を切り替えると,アイコンが「90Hz」あるいは「144Hz」と設定した数値に変わる
- 4D Shock:ゲーム内の音声に合わせて端末が振動する機能のオン/オフ
- Block Message:通知の制限
- Block Calls:着信の拒否
- SuperSnap:スクリーンショット
- Record:画面録画
- Docking Station:専用ドックの設定
- Lock Touch:Game Control Centerの呼び出しや,画面上部をスワイプしての設定画面呼び出しを制限
RedMagic 5の性能をベンチマークテストで検証
最後にRedMagic 5の性能をベンチマークテストで検証した。通常の状態に加えて,Game Control CenterのGame Enhancementで,SoC動作クロックを最大にした状態でもテストを行った。
まず総合テストである「AnTuTu Benchmark v8.4.3」の結果から,総合スコア(Overall)とCPU,GPU,MEM,UXの4項目をまとめたものがグラフ1となる。総合スコアは60万を超え,性能の高さがうかがえる。一方で,Game Enhancementの有効/無効によるスコアの差はほとんどない。
続いて,定番の3Dグラフィックスベンチマークアプリである「3DMark」から,Sling Shot Extremeテストの結果をまとめたものがグラフ2となる。なお,Vulkan APIベースのテストでは,画面の暗転時にハングアップしてしまい完走できなかった。そのため,OpenGL ES 3.1ベースのテスト結果のみとしている。
総合スコアが7000を突破しており,非常に高い性能を示したが,こちらもGame Enhancementによる効果は確認できず,わずかだが総合スコアとGraphics scoreが下がってしまった。
価格対性能比の高いゲーマー向けスマートフォン。5Gへの対応に期待したい
設定周りの日本語化が不十分な点や製品サポートページが英語といったハードルの高さはあるが,手に取りやすい製品がほしいというユーザーにとっては魅力的だろう。
それだけに,惜しいのは日本国内において5Gが利用できないという点だ。5Gで通信可能なエリアを考えると仕方がない部分はある。しかし,ハードウェア自体は5Gに対応しているのだから,後日アップデートでもいいので,国内でも使えるようにしてほしいものだ。
NubiaのRedMagic 5の製品情報ページ
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