2017年10月5日,任天堂の「
ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」(以下,ミニスーファミ)が7980円(税込8618円)で発売となった。
2016年11月発売の「
ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」(以下,ミニファミコン)に続くミニチュア版ゲーム機の第2弾は,スーパーファミコン用に開発されながら未発売となっていた幻のタイトル「スターフォックス2」を含む21タイトルをプレイ可能というのが大きな特徴だが,ハードウェア的な見どころはどのあたりにあるだろう? 入手した1台を分解してみたので,写真メインでお伝えしてみたい。
※注意
ゲーム機の分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカーはもちろんのこと,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は4Gamerが入手した個体についてのものであって,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。
オリジナルと同じ大きさのゲームパッドが印象的なミニスーファミ
さて,入手したミニスーファミの製品ボックスだが,デザインはオリジナルのスーパーファミコン風,大きさはミニファミコン風といった感じである。
ボックスのサイズは実測約224(W)×164(D)×74(H)mmで,スーパーファミコンの同378(W)×284(D)×101(H)mmと比べると圧倒的に小さいながらも,確かにこれはスーパーファミコンだと感じられる外観だ
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ミニスーファミはUSB給電で駆動するが,USB−ACアダプターは付属していない」という注意書きが製本ボックスの側面にある。ミニファミコン用のACアダプターを流用するとか,市販の給電用機器を別途用意する必要があるので,その点は押さえておきたい。要求スペックは5V 1.0である
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製品ボックスを開けると,本体と2つのゲームパッド,HDMIケーブル,USB給電ケーブル(およびマニュアル)が出てくる。
既報のとおり,ミニスーファミではオリジナルのスーパーファミコンと同じサイズ,同じデザインのゲームパッドが付属するため,ミニファミコンのミニチュア版ゲームパッドを見慣れていると,そのギャップにちょっと驚くだろう。
製品ボックスを開けて付属品を取り出したところ。ミニファミコンと違い(というかスーパーファミコンの仕様を踏襲するため),ミニスーファミでゲームパッドのケーブルは着脱式だ
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ミニスーファミとミニファミコンを並べてみると,ゲームパッドの大きさの違いがよく分かる
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こちらはミニスーファミとスーパーファミコンを並べたところ。ゲームパッドの大きさは完全に同じであり,接続先の大きさを見なければ区別が付かない
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ここまでの写真で気付いた人もいると思うが,ミニスーファミの前面接続端子はダミーのカバーになっており,ここを引っ張って開けると,意外にゴツめの接続端子が顔を覗かせる仕様になっている。ミニスーファミのサイズに比して端子が大きいのは耐久性を確保するためだろうか。
ミニスーファミの本体前面部にある,ゲームパッドの接続インタフェース部。スーパーファミコンの接続端子風なカバーを引っ張って開けると,ゴツめの端子にアクセスできる
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というわけでゲームパッド。入手即撮影なのでまだゲームで使えていないが,第1印象はスーパーファミコンのゲームパッドそのものである。ちなみに型番は「CLV-202」だった
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本体上面にある要素のうち,電源のスライドスイッチと[RESET]ボタンは機能する。カセットのスロットと[EJECT]スイッチはダミーだ
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本体のほうは,もう,見事にミニチュア版スーパーファミコンである。カセットのスロットとカセットを取り出すためのスイッチがダミーというのはミニファミコンと変わらず。背面のインタフェースが給電用のUSB Micro-Bとビデオ出力用のHDMI Type Aというのもミニファミコンと同じだ。
本体サイズは実測約111(W)
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134(D)
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40(H)mm(※突起部除く)で,本体重量は実測約199g。スーパーファミコンだと同201(W)
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242(D)
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112(H)mm,903gなので,オリジナル比で体積はわずかに約11%,重量も約22%しかない計算である。
本体上面(左)と底面(右)。型番は「CLV-301」だった
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本体前面のゲームパッド用ケーブル接続端子がダミーというのは前述のとおり。背面にはUSBとHDMIの接続端子がある
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左右両側面には何もない。吸排気孔もない,古き良きゲーム機の佇まいだ
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中身はミニファミコンとほぼ同じ!?
さて,分解である。
ミニスーファミは,本体底面に貼られた滑り止め用のゴムを外して,その下に隠れている4本のビスをプラスドライバーで外せば,内部へアクセスできるようになっている。基板はメインと,電源のオン/オフおよびリセットを司るサブの2枚構成で,メイン基板にはヒートスプレッダとシールドを兼ねると見られる金属板が取り付けられており,この時点でかなり「ミニファミコンと似ている」雰囲気がある。
絶対にお勧めはしないが,ミニスーファミの作りは非常にシンプルなので,さくさくと分解していける。金属板には熱伝導シートが貼ってあったから,ヒートスプレッダ兼シールドという理解でいいはずだ
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ちなみにこちらはミニファミコンの分解写真。細かな配置の違いはあれど,「金属板付きメイン基板と,電源/リセットスイッチ用サブ基板の組み合わせ」という基本仕様はそっくりだ
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取り出した基板は,端的に述べて,ミニファミコンのそれと非常によく似ている。主要なLSIが5点というだけでなく,搭載するSoC(System
-on
-a
-Chip)がAllwinner Technology製の「R16」で,脇を固めるのが容量2Gbit
(=256MB)のDDR3メモリチップと容量4Gbit
(=512MB)のフラッシュメモリという点も含めて,違いを探すほうが難しいくらいだ。
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ミニスーファミのメイン基板。基板の型番は「FTM-SHVC-Main-01」のようだ。こちらの面には4つのLSIがある |
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こちらがメイン基板の裏側。HDMI端子の近くにLSI,USB端子の近くにコンデンサがある |
というわけで,ミニスーファミとミニファミコンのメイン基板を並べて比較してみたところ,電源パターンの引き回し方法が変わっているのが分かった。マイナーチェンジによって電源の安定化が図られていると見てよさそうだ。
ミニスーファミとミニファミコンのメイン基板を並べたカット。いずれの写真も左がミニスーファミのものだ。表面の違いは基板型番の刻印くらいだが,背面側を見ると,電源周りに手が入っているのが分かる。HDMI出力のところにヒューズっぽいものが追加となっているのも見てとれるだろう
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R16プロセッサ。「H3009BA 63A1」という刻印も確認できる
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ちなみにR16というプロセッサは,「Cortex-A7」CPU IPコアを4基,演算ユニット4基からなるGPU IPコア「Mali-400MP」を2基統合しており(
関連リンク),少なくとも,ファミコンやスーパーファミコンのゲームを動かすには圧倒的に高スペックなものである。なので流用できているということなのだろう。
Allwinner Technologyは,いわゆる中華SoCベンダーの中では情報開示に積極的で,Linuxカーネルもちゃんと移植している。そのあたりが理由で,任天堂はミニファミコンに引き続いてミニスーファミでもR16を採用した,という可能性はありそうだ(※単に安かったから,かもしれないが)。
 入手した個体では,容量2GbitのDDR3メモリチップとしてNanya Technology製の「NT5CC128M16IP-DI」を搭載していた。ごくごく普通のDDR3だ |
 こちらは容量4Gbitのフラッシュメモリ。ここに21本のゲームが入っているわけだ。搭載するのはMacronix International製の「MX30LF4G18AC-TI」である |
X-Powers製の電源制御用コントローラ「AXP223」(左)と,基板裏面側にあるExplore Microelectronics製のHDMIトランスミッタ兼レシーバ「EP952」(右)
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以上,駆け足だがチェックしてみた。
21本のゲームタイトルを脇に置いて,ハードウェアの観点でのみ話をするなら,外観上の見どころは,オリジナルのスーパーファミコンと同じ大きさのゲームパッドが付属するため,ミニファミコンと比べて操作しやすく,しかもゲームパッドの交換が可能であることになるだろう。そして内部的には,採用するSoCがミニファミコンと変わらず,電源周りなどに若干のアップデートが入っているのを除けば基板もほぼ同じ点ということになりそうだ。
ミニファミコンに続いてミニスーファミも入手できた人は,操作性の向上というメリットを享受しつつ,ファミコンは1983年,スーパーファミコンは1990年の発売と,オリジナルの両製品には変遷まで7年もの期間があったにも関わらず,ミニファミコンとミニスーファミで実は中身がほとんど同じという事実にしみじみしてみると乙かもしれない。
※10月5日11:00時点では転売業者が設定した割高な価格でしか購入できないため注意してください。Amazon.co.jpの参考価格は税込8618円です。