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[SIGGRAPH 2015]ゲーム関連の優秀な映像作品をまとめて紹介。「Electronic Theater」レポート(前編)
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印刷2015/08/15 00:00

イベント

[SIGGRAPH 2015]ゲーム関連の優秀な映像作品をまとめて紹介。「Electronic Theater」レポート(前編)

開場直前のElectronic Theater会場
画像集 No.002のサムネイル画像 / [SIGGRAPH 2015]ゲーム関連の優秀な映像作品をまとめて紹介。「Electronic Theater」レポート(前編)
 SIGGRAPHでは毎年,「Computer Animation Festival」(以下,CAF)と呼ばれるプロアマ不問のCG作品コンペが行われる。その入選作品や注目作品を集めて上映するのが,来場者の楽しみとなっている恒例のイベント「Electronic Theater」だ。
 CAFは,ストーリーのある短編映画的な作品から,シミュレーションを可視化した学術的なものまでが,横並びに審査されるという世にも珍しい映像の祭典だが,近年ではゲーム関連映像やリアルタイムグラフィックス作品の入選が増えているのが興味深い。
 SIGGRAPH 2015のCAFでも,ゲーム関連映像の多くが入選を果たしていた。そこで,2回に分けて行うElectronic Theaterレポートの前編では,そうしたゲーム関連作品の入選作を紹介したいと思う。



オープニングセレモニーでは,スマートフォンを使った興味深い実験が


上映に使われていたのは,去年と同じ,4K解像度対応のChristie Digital Systems製3板式DLPプロジェクタだった。2台あるうちの1台は予備機とのこと
画像集 No.004のサムネイル画像 / [SIGGRAPH 2015]ゲーム関連の優秀な映像作品をまとめて紹介。「Electronic Theater」レポート(前編)
 気にしているのは筆者だけという話もあるが,Electronic Theaterが始まる前に,上映に使われたプロジェクタについて取材してみた。
 といっても,使われていた機材は2014年と同じで,Christie Digital Systems製の4K対応3板式DLPプロジェクタ「CP4230」だ。表示解像度はDCI準拠の4Kである4096×2160ピクセルである。

 念のために説明しておくと,3板式というのは,RGBの各色につき,1枚ずつDMD(Digital Micromirror Device)チップを使用していることを示す。液晶プロジェクタでは3板式が今や当たり前だが,DLPはこれまでのところ,1枚のDMDチップを時分割駆動してRGB表示を行う単板式が主流だった。だが,最近の映画館で「デジタルシネマ」と謳っているところは,3板式DLPを入れているところが多い。
 なお,2014年までは,3D立体視作品が上映されていたため,3D対応のセットアップとなっていたのだが,2015年のElectronic Theaterでは,ついに3D立体視に対応しなくなってしまった。最近はハイエンドテレビからも3D立体視機能がなくなっている状況だが,Electronic Theaterでも3D立体視の終息感を覚えることになるとは……。

 イベントの話に戻そう。Electronic Theaterのオープニングセレモニーでは,「Wham City Lights」(関連リンク)と呼ばれる,音楽に連動してスマートフォンの画面が光るインタラクティブアプリの実験が,来場者も参加する形で行われた。
 実験と行っても,別に難しい話ではない。流れる音楽のビートに合わせて手持ちのスマートフォンアプリの色が刻々と変わるので,それを掲げて振るといったものだ。音楽ライブでサイリウムを掲げて振るようなものだ。テキストや写真ではイメージしにくいかと思うので,現場で撮影した動画も掲載しておこう。


 このWham City Lightsで面白いのは,スマートフォンにデータを送る方法だ。「どうせWi-FiかBluetoothで光り方を制御しているんでしょ?」と思われそうだが,不正解。実は,人間の耳では聞こえない,可聴範囲外の音にデータを入れて,スピーカーから流すことでスマートフォンにデータを送っているのだ。アナログモデムやファックスの原理と似たようなものといえば分かる人もいるだろうか。Wham City Lightsアプリを起動するとスマートフォン内蔵のマイクが周囲の音を拾い始め,音楽に折り込まれた可聴範囲外のデータ音によって,スマートフォンの画面が変わるのである。なかなかユニークなアイデアだ。


【Best Game Award】

Assassin's Creed Unity E3 Cinematic Trailer

Istvan Zorkoczy氏ほか,Digic Pictures Ltd


 日本でも人気の高いAssassin's Creedシリーズ。2014年11月に発売された「Assassin's Creed Unity」の公式トレイラーが,なんとBest Game Award(最優秀ゲーム映像作品賞)を受賞した。ちなみに2013年には,同じUbisoft Entertainmentのタイトルである「The Crew」が同賞を受賞しており,2年連続で同社のタイトルが栄冠に輝いたというわけだ。
 受賞作品は以前からYouTubeなどで公開されているため,見たことがあるという人もいるだろう。


 Assassin's Creed Unityは,フランス革命まっただ中にある18世紀末のパリが舞台となるステルスアクションゲームだ。公式トレイラーでは,王制側の軍と市民階級との衝突を描くとともに,対立を影から支援する暗殺集団の暗躍ぶりが描かれている。また,本作での新要素となった,最大4人による協力プレイの要素が映像に盛り込まれているあたりも見どころだ。発売直後に表面化したバグの問題などで,ゲームそのものが評価を得られなかったあたりは残念だが。

 公式トレイラーはオフラインレンダリング(プリレンダ)による映像作品である。制作を担当したのは,ハンガリーのCGプロダクションであるDigic Pictures関連リンク)だ。このDigic Picturesという企業は,「Assassin's Creed II」以降,シリーズほぼすべての公式トレイラーを手がけているほか,「Watch_Dogs」や「HALO 4」「The Witcher 3: Wild Hunt」などのオープニング映像の制作も担当しているという,実力派スタジオである。


Tom Clancy's The Division: Take Back New York

Dave Wilson氏ほか,Blur Studio


 2013年10月に亡くなられた,軍事スリラーで名高い作家トム・クランシー氏の作品は,数多くのゲームを生み出したことでも知られている。そうした氏の作品を原作とする最後のゲームになるかもしれないといわれているのが,Ubisoft Entertainmentの「Tom Clancy's The Division」だ。バイオ兵器の散布で地獄と化したニューヨークを舞台に,オープンワールド型RPGスタイルのTPSとして開発が進められている。
 その公式トレイラーがCAFで入選した。


 このトレイラーは,ゲームの世界観を説明する予告映像という位置付けのもので,タイムラプス風の映像により,ニューヨークの街が無秩序になっていく様子が描かれている。
 映像はオフラインレンダリングのもので,制作はゲーム版Batmanシリーズのトレイラーやオープニング映像を手がけてきたアメリカのCGプロダクション,Blur Studio関連リンク)が担当した。


World of WarCraft: Warlords of Draenor Cinematic

Marc Messenger氏ほか,Blizzard Entertainment


 Blizzard Entertainment(以下,Blizzard)の人気MMORPGである「World of WarCraft」の拡張パック第5弾「World of WarCraft: Warlords of Draenor」を題材に,その世界観を描写したオフラインレンダリングムービーが,CAFで入選を果たした。


 Blizzardの凄いところは,これだけのシネマティックな映像作品を社内で制作できる人材を擁している点だろう。
 本作の監督であるMarc Messenger氏は,「DIABLO III」のCGムービー「DIABLO III Black Soulstone Cinematic」でも監督を務めた人物で,プロデューサーを務めるのはTaka Yasuda氏という日本人である。彼らはBlizzardに参加する前にも,「God of War」のCGムービーの制作にも携わっていたという経歴の持ち主だ。
 こちらの作品は,アメリカの映像業界団体「Visual Effects Society」が主催した第10回VES Awardにて「Outstanding Visual Effects in an Animated Commercial or Video Game Trailer」(最優秀特殊映像効果賞 ゲーム映像部門)を受賞している。



Overwatch Cinematic Trailer

Jeff Chamberian氏ほか,Blizzard Entertainment


 Blizzardの内製作品からはもう1本,オンラインFPS「Overwatch」の世界観を解説する公式トレイラーがCAFで入選を果たした。恐るべしBlizzardといったところか。

 悪の超能力者軍団による陰謀で世界が戦火に覆われた近未来。対抗勢力として結成されたのが,彼らと同じ力を持つ平和維持組織「Overwatch」だ。トレイラーは,Overwatchの功績を称える博物館を訪れた兄弟を中心に描かれている。Overwatchのヒーローに憧れるややオタク気味の弟と,反抗期まっただ中でシラケ気味の兄。そんな噛み合わない兄弟が博物館を見て回っているうちに,展示物のアイテムを巡って悪の超能力者対Overwatchによる超能力バトルが博物館内で勃発してしまう。巻き込まれた兄弟の運命やいかに? といったアクションコメディの作品だ。


 本作の監督は,BlizzardにてオフラインCGスーパーバイザーを務めるJeff Chamberlain氏。そしてプロデューサーは前出のTaka Yasuda氏だ。Chamberlain氏はこれ以前にも,World of Warcraftの拡張パック第2弾「World of Warcraft: Wrath of the Lich King」のシネマティックトレイラーを監督している。


Call of Duty: Advanced Warfare Live Action Trailer

"Discover Your Power"

Paul O'Shea氏ほか,MPC LA


 Sledgehammer Games制作の「Call of Duty: Advanced Warfare」(以下,CoD AW)のプレイフィールや世界観を披露するために作られたCGムービーが,CAFに入選した。


 今さら説明するまでもないが,CoD AWは近未来の戦闘をテーマにしたFPSだ。FPSのトレイラーといえば,ゲーム内シーンをつなげたものが一般的だが,このトレイラーはちょっと変わった趣向が凝らされている。“実際のゲームシーンのような映像”を,最新の実写撮影技術とCG合成技術を使って制作したものなのだ。
 プレイヤーを先導するヒーロー役を演じるのは,俳優のTaylor Kitsch氏。長篇SF映画「バトルシップ」の主役を務めた映画俳優だ。そして,この作品の監督を務めたのは,バトルシップの監督でもあるPeter Berg氏。つまり,この作品は,バトルシップのコンビによって制作されたわけだ。

 CG合成や特殊効果を担当したのは,イギリスの名門CGスタジオであるMoving Picture Company(以下,MPC)で,中でもVFXを担当したのは,映画「アンストッパブル」や「トランスフォーマー/リベンジ」などの特殊効果を担当した経歴を持つ,MPCのエースであるPaul O'Shea氏である。詳細なメイキングがMPCの公式サイトで公開されているので,興味のある人は見てみるといいだろう。

ライブアクション映像(左)とCG合成後のファイナルショット(右)を比較してみた
画像集 No.014のサムネイル画像 / [SIGGRAPH 2015]ゲーム関連の優秀な映像作品をまとめて紹介。「Electronic Theater」レポート(前編) 画像集 No.015のサムネイル画像 / [SIGGRAPH 2015]ゲーム関連の優秀な映像作品をまとめて紹介。「Electronic Theater」レポート(前編)
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 本作はゲームに登場する要素を面白おかしく紹介したジョークのノリが強いものだが,MPCはこれ以前にも,悪ノリ度の高いCoD AWの公式コメディ作品を発表している。CoD AWでは,プレイ中にプレイヤーが死亡したときに,死亡に至るまでの状況を別視点でプレイバックする「Kill Camera」という仕様があるのだが,「あれを撮影しているのはオレだ!」と言い張るカメラマンを主人公にしたトンデモ作品がそれだ。


 こちらは入選しなかったものの,でき映えは入選作に劣らないレベルで,しかも爆笑必至の内容である。CoD AWのファンなら一見の価値ありだ。


Kite

Gavin Moran氏,Kim Libreri氏ほか,Epic Games


 Epic Gamesは,2015年3月に開催された「Game Developers Conference 2015」で,同社製ゲームエンジン「Unreal Engine 4」(以下,UE4)のリアルタイム技術デモ「Kite」(カイト)を公開した(関連記事)。4Gamer読者にも,見たことのあるという人は多いだろう。
 この作品が,下馬評どおり,CAFの入選を果たした。

 広大な自然の中で凧を上げて遊ぶ少年。突風に煽られて糸が切れた凧は,遠くへ飛び続けたすえに,岩穴へと吸い込まれていく。凧を追って岩穴に入り込んだ少年が見た不思議な光景とは……という作品だ。


 豊かな自然を背景に心温まるショートストーリーが展開されるという内容なので,Epic Gamesが「人が死なず,流血すらもないEpic最初の作品」と自虐ネタを展開したこともある本作品は,UE4のデモとして作られたものなので,PC上で実際にリアルタイム動作するというのが特徴だ。

 短編映像作品を制作するだけであれば,16×16kmという広大な自然環境を再現する必要はないのだが,UE4が広大なオープンワールド表現に対応できるゲームエンジンであることを証明するために,あえて挑戦したという。
 さらに,最新版のUE 4.8では,広大なマップをシームレスに表現するプロシージャル植物生成システムや,テクスチャー&3Dモデルの動的ローディングシステムも搭載された。これらの詳細については,Game Tools & Middleware Forum 2015でのEpic Gamesセッションレポートで詳しく説明しているので,そちらも参照してほしい。


 なお,Kiteの制作を担当した,Gavin Moran氏とKim Libreri氏についても,簡単に触れておこう。この2人はゲーム業界ではなく,ハリウッドの映画制作現場から,Epic Gamesに転職してきた経歴を持つ。

 本作でアニメーション等を担当したMoran氏は,「Alice in Wonderland」や「スパイダーマン2」を始めとして,多くのハリウッド映画でCGアニメーターを担当してきた。一方のLibreri氏は,CG特殊効果のエキスパートで,代表作はマトリックスシリーズ。そのうえ技術アドバイザーとして,今年公開予定のスター・ウォーズシリーズ最新作「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」にも携わっていたという。これだけの実績を持つ2人が作成したとあれば,Kiteの完成度にも納得がいくというものである。
 最近では,UE4がゲーム制作ではなく,映像制作の現場にも導入されるようになっているが,今後は彼らの知見が,そうした用途に向けた機能拡張に活かされていくのかもしれない。

 Electronic Theaterレポートの前編はここまで。後編では,各部門受賞作品を紹介する予定だ。

SIGGRAPH 2015 公式Webサイト(英語)

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