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Samsung,SATA比で16倍速いと謳う「NVM Express」対応のSSDを発表
これらはSamsungのOEMとなるノートPCメーカーやサーバーメーカー向けの製品であり,すぐにゲーマーが店頭で購入できるようになるようなものではないのだが,そのスペックには見るべきものが多く,また,興味深いロードマップも示されたりしたので,本稿ではそのあたりをまとめてみたいと思う。
なお,同じタイミングで発表した店頭市場向けSSD「SSD 840 EVO」シリーズについてはすでにレポートを掲載済みなので,そちらも合わせてチェックしてほしい。
Samsungの新SSD「SSD 840 EVO」詳報。説明会で明かされた高性能の秘密とは?
M.2フォームファクタ対応のノートPC用SSD
XP941
現在のSSDが接続インタフェースとして使っているのはSerial ATA(以下,SATA)だが,その帯域幅や機能が不十分になりつつあるいうのは,2012年9月に開催されたSamsungのイベントでも語られていたことだ。そして,その代わりとなるインタフェースの本命が,PCIeである。
2012年のイベントでSamsungは,2013年第1半期にPCIe接続のSSDをリリースすると予告していた。そして,予告どおりに登場した同社製のPCIe接続SSDがXP941だ。本製品は,2013年6月に発売されたAppleの新型「MacBook Air」に採用されたほか,ソニーのUltrabook「VAIO Pro 13」にも,BTOで選択できるストレージとしてXP941が用意されている。
XP941は,Intelが「NGFF」(Next Generation Form Factor)として提案し,PCIeなどの規格策定に携わる業界団体「PCI-SIG」が標準化した,「M.2」フォームファクタに準拠するSSDとなる。M.2はSATAとPCIeの双方に対応し,PCIeの場合はGen.2 x2接続だ。
Jo氏は,PCIeはSSDのインタフェースとして帯域幅が十分である点と同時に,将来性も高いことを強調していた。いわく,「PCIe(接続のSSD)はSATAに続き,10年間使われるテクノロジといえる。なぜならPCIeには4つの特徴,帯域幅が広く,拡張性が高く,レイテンシは低く,消費電力あたりの性能が高いという特徴があるからだ」とのことである。
たとえば,帯域幅は1レーンあたり実質1000MB/sある。拡張性は「コネクタをどうするかという問題はあるが,16レーンまでは技術的に見えている」とJo氏。また,SATAではCPUとSSDの間にSATAコントローラ――左下のスライドではHBAとある「Host Bus Adapter」のこと――が必要となり,これらはチップセットに搭載されているが,PCIe接続SSDに変われば,HBAが不要となるため,レイテンシを低減できるという。
レイテンシを低減できれば,短時間で大量のコマンドのやり取りが可能になり,IOPS(I/Os Per Second,1秒間に実行できるI/O数)あたりのワット性能も向上する。つまり処理性能あたりの消費電力を低くできるわけだ。
XP941は,まさにこうした特徴を持つPCIe接続SSDで,「Samsungは他社に先駆けてリリースした」と,Jo氏は胸を張る。
下のスライドで示されているとおり,XP941のシーケンシャルリード性能は,SATA 6Gbpsに対して2.5倍もの最大1400MB/sが謳われている。実際,これを採用した新しいMacBook AirやVAIO Pro 13では,PCIe接続SSDが持つ性能の高さが話題になっているほどである。
しかし,Jo氏は「これで十分だろうか?」という疑問を提示する。XP941でAHCIプロトコルを使わざるを得なかったが,「AHCIプロトコルはHDDのために作られているので,SSDの特性を考慮していない。そのためSSDでは最善の性能が出せていない」(Jo氏)ためだ。そして,そんな状況を大きく変えるかもしれないのが,「NVM Express」というプロトコルだと,氏は訴えている。
SSDを16倍速くする? 高速プロトコル「NVM Express」
NVMとは,「Non-Volatile Memory」の略で,要は,フラッシュメモリを代表とする不揮発性メモリのこと。実のところ2012年11月に「Revision 1.1」の仕様がリリースされており,WindowsやLinuxなど各種OS向けのドライバも公開済みである。
Jo氏はNVMeの利点を以下のスライドで示したが,とくに重点を置いて説明したのが,「Maximum Queue Depth」の違いだった。
既存のAHCIでは,最大32のコマンドをキューに発行できるが,NVMeではこれが最大6万4000まで大幅に増大するという。
一方SSDの場合,内部に多数のNAND型フラッシュメモリを抱えるため,特定の組み合わせでコマンドの並列実行が可能になるなどといった,HDDとは異なる特性を持つ。そのためHDDに比べると,大量のコマンドを最適化して実行することにより,性能が向上できる余地が大きい。
「だから,6万4000ものコマンドをキューに発行できるようになると,よりレイテンシの少ない高速なアクセスができるようになる」(Jo氏)。
では,そのNVMe対応のSSDがいつ登場するかという話になるが,Samsungにとって初の製品となるのが,冒頭でも紹介したサーバー向けのXS1715となる。Jo氏は「2013年末にも,実際に動作する製品をお見せできるだろう」と述べていたので,開発は順調と見ていいのではなかろうか。
また,詳しい説明はなかったものの,示されたロードマップによれば,2014年にはノートPC向けに「NVMe Gen.3 x4」対応SSDが登場する気配もある。
NVMe対応SSDの登場で,ゲーマー向けノートPCにも“地殻変動”の気配
Samsungのイベントでは,「将来のSSDが発揮する素晴らしい性能」が語られたわけだが,先のロードマップに,デスクトップPC向けのNVMe対応SSDがないことに気づいた読者もいるのではないか。
Jo氏の説明後に行われたQ&Aセッションでは,当然のように「デスクトップPC向けのNVMe対応SSDDはどうなるのか?」という質問があったが,その答えは,ある意味では衝撃的なものだった。
Jo氏は,「ご存知のように,ここ数年のイノベーションはモバイルを中心に起きている」と前置きしたうえで,「新しい規格を進めるためには,誰かが率先してそれをやらなければならない。しかし,デスクトップPCでは,まだそれを“誰がやるのか”さえ決まっていない状況だ」と述べていたのだ。
この発言からすれば,少なくともSamsungがそれを率先してやろうという気はさらさらないようだ。これまでPCの進化を牽引する役割を担っていたのはIntelであるが,同社も今ではモバイル分野に重点を置いている。PCの中核を担う企業がモバイル分野にシフトしたことで,デスクトップPCが置き去りにされつつあるということを,今更かもしれないが痛感させられたJo氏の発言だった。
とはいえ,デスクトップPC向けSSDに対しても,NVMeの導入が取りざたされてはいる。しかし,SSDメーカー大手であるSamsungさえも,デスクトップPC向けに関して語れる情報を持ち合わせていない,というのは興味深い。一般ユーザー向けPCで,ノートPCにおける革新がデスクトップPCに先行するというのは当たり前に起こっているが,いよいよゲーマー向けPCの世界でも,ノートがデスクトップよりも先に新技術を取り込む時代がやってきそうな気配だ。
ITGマーケティング(Samsung製SSD販売代理店)
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