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Samsungの新SSD「SSD 840 EVO」詳報。説明会で明かされた高性能の秘密とは?
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印刷2013/07/19 00:00

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Samsungの新SSD「SSD 840 EVO」詳報。説明会で明かされた高性能の秘密とは?

画像集#014のサムネイル/Samsungの新SSD「SSD 840 EVO」詳報。説明会で明かされた高性能の秘密とは?
 既報のとおり,Samsung Electronics(以下,Samsung)は2013年7月18日,SSDの新製品「SSD 840 EVO」シリーズを発表した。同日,Samsungは韓国ソウル市内にあるホテルWestin Chosun Seoulにて,「2013 Samsung SSD Global Summit」と題する製品説明会を開催し,SSD 840 EVOの概要を明らかにした。

 製品説明会の午後の部となるセッションでは,SSD 840 EVOの技術説明が行われ,同製品が上位モデルである「SSD 840 PRO」に匹敵する性能を持つ理由も明らかにされた。ここでは,その概要を紹介してみたい。

Samsung,SATA接続のSSD「SSD 840 EVO」を発表。「SSD 840」の後継モデル



SSD 840 EVOの発売は8月上旬

250GBは約190ドル程度,1TBは約650ドル程度に


 まずは,既報に入れられなかった製品構成と価格,および発売時期について触れておこう。
 SSD 840 EVOの製品は,SSD本体とソフトウェアCD-ROMが含まれる「Basic Kit」と,SSDを取り付けるためのマウンタなどがセットになった「Laptop Kit」および「Desktop Kit」という,3種類のパッケージで提供される。この点は前モデルにあたる「SSD 840」や,SSD 840 PROと変わらない。なお,750GBモデルと1TBモデルはBasic Kitのみが予定されている。

画像集#012のサムネイル/Samsungの新SSD「SSD 840 EVO」詳報。説明会で明かされた高性能の秘密とは? 画像集#013のサムネイル/Samsungの新SSD「SSD 840 EVO」詳報。説明会で明かされた高性能の秘密とは?
Laptop Kit(左)とDesktop Kit(右)の中身。スペーサーやマウンター,使用中のシステムに接続してデータを移行するためのUSBケーブルなどが付属する

 価格は,米ドルによるメーカー想定売価が公開されており,最大容量の1TBモデルは,650ドル(約6万5000円)程度になる。個別のメーカー想定売価は以下の表を参照のこと。日本円による価格は追って明らかになるだろうが,おおむねSSD 840のスタート時と同程度と見てよさそうだ。
 発売時期は8月上旬になるとのこと。あまり待たずに手に入れられるようになるだろう。

120GB 250GB 500GB 750GB 1TB
Basic 109.99ドル 189.99ドル 369.99ドル 529.99ドル 649.99ドル
Laptop 199.99ドル 379.99ドル
Desktop 124.99ドル 204.99ドル


SSD 840 EVOで導入された3つの特徴


 SSD 840 EVOはSSD 840と同様に,1セルあたり3bitを記憶するTLC NAND――Samsungでは「3bit MLC」と称する――を使いながら,SSD 840 PROに迫る性能を実現していることが大きな特徴となっている。

 一般的には,TLC(Triple Level Cell)方式のNANDフラッシュメモリは,MLC(Multiple Level Cell)方式に比べて,とくに書き込み時にNANDコントローラの動作が複雑になるため,書き込み性能で劣るとされている。実際,MLCを採用するSSD 840 PROに比べて,TLCを採用したSSD 840は,シーケンシャルライトを始めとする性能がやや落ちることは,4Gamerでも昨年のレビューで確認している。TLCを採用するSSD 840 EVOが,なぜSSD 840 PRO並の性能を実現できたのだろうか。

Jonathan da Silva氏,Manager, Brand Marketing Team,Samsung Electronics
画像集#002のサムネイル/Samsungの新SSD「SSD 840 EVO」詳報。説明会で明かされた高性能の秘密とは?
 SSD 840 EVOについての説明を担当したのは,Samsungにてブランドマーケティングチームマネージャーを務めるJonathan da Silva氏である。

 Silva氏によれば,SSD 840とSSD 840 EVOの主な違いは,以下の3点にあるという。
 まず,搭載されているTLC NANDフラッシュメモリの製造プロセスが,従来よりも微細化されているという点。SSD 840では,Samsungが「Advanced 20nm Class」と呼ぶプロセスで製造されていたが,SSD 840 EVOでは「Advanced 10nm Class」と呼ぶ,微細化されたプロセスで製造されるという。
 ちなみに,Samsungは従来,プロセススケールの1桁めを明示していなかったのだが,SSD 840は21nmプロセス,SSD 840 EVOは19nmプロセスであると明らかにしている。

 2点めは,SSDコントローラが従来の「MDX」から,「MEX」に変更されている点だ。
 ARMアーキテクチャのCPUコア「Cortex-R4」を3基集積している点は変わっていないが,動作クロックが300MHzから400MHzに高速化されて,MDXより33%高速化されたという。動作クロック以外の違いは「(MEXのほうが)大容量のSSDに対応でき,SSD 840 EVOのNANDフラッシュに最適化されている」としか説明されなかったので,あるいはコントローラのチップ自体は,MDXと同じ物である可能性もないわけではない。

 3点めはキャッシュメモリの容量増加だ。750GBと1TBの大容量モデルでは,容量1GBのLPDDR2 SDRAMを用いた大容量キャッシュメモリを備えている。

 しかしこの3点だけでは,SSD 840 EVOがSSD 840 PRO並の性能を持つ理由は見えてこない。先に述べたように,TLCはNANDフラッシュメモリの制御にともなうオーバーヘッドが大きいので,SSDコントローラの動作クロックをあげた程度で,それだけの性能を発揮できるとは思えない。そこでSilva氏が明かした高性能の秘密が,SSD 840 EVOに搭載された「TurboWrite Technology」(以下,TurboWrite)である。

SSD 840とSSD 840 EVOのおもな相違点
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予備領域の一部をバッファとして確保

SLCで書き込むTurboWrite Technology


SSD 840 EVOの高性能を実現した技術が「TurboWrite Technology」だ。予備領域の一部を高速なバッファとして使おうというもので,1TBモデルではバッファサイズが12GBになるという
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 TurboWriteとは,フラッシュメモリの劣化に備えて確保されている予備領域のうち,一定量の領域(=容量)を高速バッファとして使うという技術だ。そしてそのバッファに対しては,TLCではなくSLC(Single Level Cell)で書き込みを行うため,非常に高速に処理できるという点が,大きな特徴となっている。

 「TLCではなくSLCで書き込む」と聞いて,「なるほど,そうか」と納得できる人は,フラッシュメモリの仕組みに精通している人くらいなものだ。SSD 840 EVOは予備領域もTLC NANDを用いているのだから,それにSLCで書き込むと聞いても,意味が分からないという人が大半だろう。この技術を理解するには,TLCの仕組みについて説明する必要がある。

 そもそもSLCでは,電圧が“ある”か“ない”かで1bitの情報を記録する方式だ。それに対してMLCでは,メモリセルに蓄えられた電圧(正確に言うと電荷)レベルを変化させることで複数bit,TLCなら3bitの情報を記録する仕組みである。いずれにしても,電圧を保存するという点では,TLCもSLCも変わりがない。
 そこで,複数段階の電圧レベルを見るのではなく,あるなしだけで判断すれば,TLC NANDをSLCと同じように扱える。TLCでは電圧レベルを正しく保存するために,SSDコントローラは余計な動作が必要になるが,SLCならばそれが不要になるので,結果としてTLCより高速に書き込めるというわけだ。前掲のスライドに「Simulated SLC」と書かれているのは,TLC NANDをSLCのように扱うという,TurboWriteの本質を表したものだろう。

 予備領域の一部を使うTurboWrite用のバッファサイズは,当然ながらSSDの総容量によって異なる。それを示したのが次のスライドだ。
 売れ線とされる250GBモデルや120GBモデルの場合,バッファサイズは3GBで,あまり大きくない。その理由についてSilva氏は,「一般的な利用で,3GBのデータ量を一度に書き込むことは,そう多くない」という同社の見解を示した。動画ファイルなら3GBを超えるデータ量も珍しくないが,120〜250GBクラスのSSDに,巨大な動画ファイルを頻繁に保存するというのは,確かにあまり考えにくいかもしれず,3GBのバッファでも十分だろうと考えるのは,間違いではないだろう。

SSDの容量別に示したTurboWriteのバッファサイズ。120GB,250GBモデルは3GBに止まるが,500GBモデル以上では段階的に増えていく
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 TurboWriteはあくまで,高速に書き込めるバッファを使って性能を上げる技術であるから,バッファサイズを超えるデータ量を一気に書き込もうとすれば,当然ながら遅くなる。Silva氏はこうした場合に,どの程度遅くなるかのデータも示した。製品の容量によって大きく差がある理由は説明されなかったが,TurboWriteが無効になることで,シーケンシャルライトの速度は20〜65%程度低下するという。これだけ差があるのならば,TurboWriteの効果がSSD 840 EVOの高速化に,大きな影響を与えているというのも頷ける。

TurboWriteの有効時(中段)と無効時(下段)の,シーケンシャルライト速度を比較した表。容量が少ないほど,無効時の速度低下が大きくなる理由は説明されなかった
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 なお,TurboWriteが無効になるのは,大きなデータを書き込もうとしてバッファがあふれたときだけでなく,SSDが長期間使われることで劣化が進み,バッファに回せる予備領域が減少して使えなくなった場合にも,無効になることがあるという。SSDの特性を考えると,これは致し方ないことだろう。
 「そもそも信頼性を担保するための予備領域を,高速化用のバッファに使ってしまっていいのか?」という疑問もあるのだが,その点についてSilva氏は,「TLCは極めて信頼性が高いことがSSD 840で立証できている」ために,実用上問題はないという見解を示した。

 ちなみに,バッファに書き込まれたデータは,SSDのアイドル時にTLCの領域に自動で移動させられるが,それには7秒以上かかるという。つまり,バッファに大量のデータが書き込まれている場合,バッファを整理してTurboWriteが有効になるまで7秒以上の時間がかかることもあり,その間は書き込み速度が低下する可能性があるといえそうだ。

 いずれにしても,TurboWriteがこうした仕組みである以上,ベンチマークテストで書き込みサイズを大きくすると,SSD 840 EVOは顕著に性能が低下するという特性を示すはずだ。SSD 840 EVOを評価するうえで,注意しておくべきポイントになるかもしれない。

 なお,SSD 840 EVOではシーケンシャルアクセスだけでなく,ランダムアクセス性能の向上にも力を入れている。とくに力を入れたのが,「Queue Depth=1」(以下,QD1)での性能だという。Queue Depthとは,先行して発行できるコマンドキューの数のことで,SATAでは最大32のコマンドをまとめて発行できる。
 しかしSilva氏は,「WindowsにおいてはQD1のアクセスが多発する」と述べる。つまり,実際は細切れのアクセスのほうが多いので,SSDコントローラのアルゴリズムを改良してQD1の性能を向上させることで,ユーザーが体感するランダムアクセス性能を引き上げたというわけだ。

SSD 840と比べて,SSD 840 EVOではQD1でのランダムアクセス性能向上に注力したという
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SSD 840 EVOに導入された信頼性向上の仕組み


 性能の向上も重要だが,SSD 840 EVOで気になるのは,10nmクラスに微細化されたNANDフラッシュの耐久性だ。SSD 840 EVOではSSDコントローラの制御が改良され,「Advanced Signal Processing」という技術を使って信頼性を確保したという。
 このAdvanced Signal Processingが,具体的に何をやっているのかについては言及されなかったが,SSDコントローラのアルゴリズムを改良したことで,20nmクラスと同じ信頼性を確保したという。Silva氏は,社内での耐久テストでも,良好な結果が得られていると主張した。

NANDフラッシュメモリの信頼性に関するグラフ。横軸がプロセス技術で,右に行くほど微細化が進む。縦軸は信頼性で,下に行くほど低下する。SSDは信頼性の高いNANDフラッシュメモリを必要とするが,微細化が進むと信頼性は低下する。そこを「Advanced Signal Processing」によって補完しているという
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 また,信頼性の点で面白い特徴が,「Dynamic Thermal Guard」という機能だ。NANDフラッシュは温度が上昇するとエラーが増えるが,SSD 840 EVOでは信頼性の低下が始まる目安の70℃を超えると,内部的に速度を落とすことで発熱を抑えて熱を冷ますのだという。
 とはいえ,デスクトップPCに関して言えば,SSDが70℃を超えるほどの高温になることは,あまりないのではないかと思われるので,これによる性能低下が頻繁に起こることはないだろう。

Dynamic Thermal Guardの説明図。信頼性が低下する70度を超えると性能を落として冷えるのを待つ
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付属ソフトウェア「Magician」もバージョンアップ

SSDを大幅に高速化するRAPID Modeを搭載


「Magician 4.2」から,RAPID Modeというキャッシュ機能が備わる。一種のソフトウェアキャッシュだ
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 SSD 840 EVOに合わせて,SSD用に提供されるユーティリティソフトもバージョンアップされる。Samsung製SSDの専用ユーティリティ「Samsung Magician」(旧SSD Magician,以下,Magician)は,現在の4.0から4.2にバージョンアップされるが,Silva氏がその目玉としてアピールしたのが,「RAPID Mode」と呼ばれる一種のキャッシュ機能である。

 RAPID Modeとは,Samsungが2012年に買収した企業,NVELOの技術を使った,ソフトウェアキャッシュの一種だ。NVELOで副社長を務め,現在はSamsung SSD Solutionsの副社長を務めるDavid Lin氏によれば,RAPID Modeは「頻繁に使うアプリケーションやデータをDRAM(メインメモリ)上に保存して,読み込みの高速化を行う」ものだという。
 これと似たような仕組みには,Windows自身が持つキャッシュ機能「SuperFetch」がある。SuperFetchはアプリケーション起動の高速化だけを目的とした技術だが,RAPID Modeはデータに対しても有効である点が異なるそうで,使用するデータやアプリケーションをインテリジェントに判断すると,Lin氏は述べていた。また,書き込みキャッシュに関しては,詳細は明かされなかったものの,「SSD 840 EVOに最適化することで,高速化を図っている」(Lin氏)とのことだ。

ディスク性能ベンチマークソフト「Crystal Disk Mark」での比較。右側がRAPID Mode有効時で,左側が無効時。シーケンシャル書き込みに関しては1GB/sを超えている
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 RAPID Modeの効果は驚異的と言っていいほどで,最近登場し始めたPCI Express接続のSSDに匹敵する性能が得られると,Lin氏はデモを交えて強調していた。ちなみに,メインメモリ上に確保されるキャッシュサイズは,最大でも1GBに抑えられているとのことで,OSやアプリケーション用のメモリを圧迫しないような工夫も行われているそうだ。

 以上のように,TLC NANDを使いながら,TurboWriteというユニークな工夫によってMLC NANDのSSD 840 PROと肩を並べる性能を持つSSD 840 EVOは,謳い文句どおりであれば,なかなか面白い製品となりそうだ。店頭に並ぶのが楽しみという読者も多いのではないか。実機がどのくらいの性能を示すのか,今から楽しみでならない。

ITGマーケティング(Samsung製SSD販売代理店)

Samsung SSD 製品情報

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