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ガソリンを必要とする車たちが今もわずかに通り過ぎる田舎町クローブン・ピーク。
打ち捨てられた給油所の前オーナーは,ある夜を境に忽然と姿を消したという。
新たに鍵を受け取ったレッサーパンダは,誰もが「夜は外に出るな」と囁くこの場所で,看板の灯を点し直す。
本日は,「Beholder」シリーズや「Do Not Feed the Monkeys」で知られるAlawarが手掛ける「The Last Gas Station」を紹介しよう。
本作は,電気自動車が普及し旧来の文明が崩れつつある世界で,ガソリン車が残る最後の田舎町を舞台にした経営シミュレーションゲームだ。
プレイヤーはレッサーパンダの新オーナーとなり,前任者が謎の失踪を遂げた古びたガソリンスタンドを再建していく。
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本作の特徴は,2D横スクロールで描かれる屋外と,見下ろし視点に切り替わる屋内の店舗を行き来しながら,給油作業,レジ打ち,棚の補充,洗車,整備サービスといった一連の業務を一人でこなしていく構造にある。
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朝・夕・夜のサイクルで時間が流れ,売上を貯めて壊れた給油機を直し,看板を架け替え,外装や床材まで好みに改装していくと,常連客の足取りもにわかに増えていく。
また,「文明度」と「神秘度」という二つのパラメータがあり,そのバランスがエンディングを左右する設計となっている。
昼と夜で表情を変える世界
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本作の魅力を語るうえで欠かせないのが,明るく軽快な昼と,どこか不穏な空気に包まれる夜の落差である。
日中はチャーミングなシンセ調の音楽に乗せて接客や改装に没頭できる一方,夜になると音色が一変し,囁き声に誘われて外へ出るか,あるいは灯りを消して何事もなかったかのようにやり過ごすかの選択をプレイヤーに委ねてくる。
前オーナーの失踪と地元住民の警告が常に背中に張り付き,経営シムとしての心地よさの只中に,じわりとした緊張感が同居しているのだ。
物語が経営に組み込まれる仕掛け
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町に伝わるUFOやビッグフットといった奇妙な噂,そして各地で見つかるボイスレコーダー「D.I.A.N.A.」の断片が,謎の輪郭を少しずつ浮かび上がらせていく。
注目すべきは,こうして発掘した謎の存在が,関連グッズを店頭で販売できるという経営面のメリットへと還元される点である。
物語を追う行為そのものが収益に結び付き,土産物の売上が次の改装費用となって店を育てる。物語と経営のループが密接に編み込まれた構造は,ありそうでなかなか見ない設計だと言える。
数値の天秤で分岐するマルチエンディング
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ガソリンスタンドの繁盛度合いを示す「文明度」と,町の謎をどこまで掘り下げたかを示す「神秘度」。設置する装飾や設備にはそれぞれ両者へのプラス・マイナスが設定されており,どんな店に育てるかという日々の選択が,そのまま二つの数値の天秤を傾けていく。
最終的にどちらへ振れたか,あるいは均衡を保ったかによって物語の結末が複数に枝分かれする仕組みだ。経営に専念して町を発展させるか,禁忌に踏み込んで真相を追うか。
個性豊かな動物の住民たちと交わすやり取りも積み重なり,自分の選択が物語を形作っていく感覚を味わえる。
「The Last Gas Station」は,丁寧に描き込まれたピクセルアートと心地よい経営ループ,そして奥に沈む不穏な物語が見事に噛み合った一作である。
ガソリンスタンド経営という素朴な題材に,マルチエンディングとミステリー要素を巧みに織り込み,毎日の業務に明確な目的意識を与えてくれる。
地味な作業の積み重ねを愛せる人,少しダークな寓話的世界観に惹かれる人,そして癒しと謎解きを同時に味わいたい人に,ぜひ手に取ってほしい。
























