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「Microsoft Flight Simulator 2024」では300万種ものユニークミッションが自動生成される!
さまざまな航空機の操作ができる前作「Microsoft Flight Simulator 2020」は,クラウドサーバー,AI,衛星データ,リアルタイム気象システムとの連動など,Microsoftやサードパーティが持つ最新鋭のテクノロジーを使用し,自分が思うがままのフライトを楽しむという本格派シミュレーターだ。
世界中の200万を超える市町村はもちろん,実在する山々や河川,そして現在では4万5000か所にも及ぶ空港とヘリパッドが再現されており,細かなアップデートにより,都市や景勝地の精密化も頻繁に繰り返されている。
これまでも,エアレースやブッシュトリップのタイムを記録するといったゲーム的な要素は存在したものの,「Microsoft Flight Simulator 2024」ではさらに,さまざまな“空のお仕事”をフィーチャーしている。
人員&物資運搬,空中消火,捜査&救命,山岳救助支援,農薬散布,航空宣伝,民間航空業務,建設補助活動,大型物資運搬,気象調査,低空飛行活動,VIPチャーター機,スカイダイビングや気球操作といった観光業務など,その内容は多岐にわたる。
「Microsoft Flight Simulator 2024」には,プレイヤーがパイロットとしての願いを成就させるための,3つの新しいモードが用意されている。それは,「キャリアモード」「チャレンジ」「フォトグラファーモード」の3つになるが,イベントのプレゼンテーションにおいてはAsobo Studioのチープ・オペレーティング・オフィサーであるDavid Dedeine氏(以下,Dedeine氏)が登壇し,「シリーズでもユニークな要素となるため,説明できるのは表面を削るくらい」と話していた。そのDedeine氏にインタビューする機会もあったので,最後にまとめておく。
「Microsoft Flight Simulator 2024」で追加される大きな要素となるのが,プレイヤー自身のアバターとなるプレイヤーキャラクターを作成できることだろう。男性形と女性形それぞれ4つの体型を選んだあとは,40種ほど存在するさまざまな顔を選び,髪型やアイウェアを自由に設定するという仕組みで,パイロットの制服や整備士風のつなぎ,もしくはレスキュー隊員やボンバージャケットなど,プレイヤーがどんな役割を担うかで見た目を設定できるようだ。
もちろん,航空機の外に出て必要なミッションを遂行することもできるし,仕事の依頼をくれる顧客たちと会話したり,自分の飛行機の周囲を歩き回っていろんな角度から眺めてみたりもできる。
自分らしい空の職人を目指せる「キャリアモード」
「Microsoft Flight Simulator 2024」でフィーチャーされる「キャリアモード」は,4万もの空港のうち,国際空港以外のものを自分の本拠に選び,そこからビジネスを拡大していくというモードだ。
経験値(レベル)を上げていくことによって,プレイヤーの「Certification」(免許)と「Specialization」(特化)をスキルツリーのようにアンロックしていき,「Private Pilot License - Airplane」(個人操縦免許 - 航空機)から,商業用や特殊エンジンのアップグレードをとおして,購入できる航空機を増やしていくことになる。
プレイヤーレベルを上げるには,空港内に設置されるオフィスで仕事を受けることになるが,「Missions」というウィンドウをクリックすると上記したような輸送や救助など,さまざまな業務が専用マップ上に表示されて,その中から好みのものを選べるようだ。
Specializationは,さらに「Airplanes」(航空機)と「Rotocraft」(ヘリコプターやドローン)に分かれ,「チャーターサービス」や「航空観光」「軽量物資運搬」「医療輸送」といった内容のミッションをこなしていくことで,さらに難度の高いミッションタイプが加わっていく。
つまり,プレイヤーは自分でどのような航空関連ビジネスに特化したいのかを自由に選べる。例えば「探索&救助」や「航空広告」などの事業に関連するミッションだけを選んでプレイしていくことで,より専門性の高いそれぞれのビジネスの運用に必要な航空機がアンロックされるわけだ。
ミッションには,時間内に作業ができるか,しっかりコミュニケーションしたかといった目標が用意されており,プレイヤーの会社の信頼度を上げることでも,より稼ぎが多いミッションを選べるようになるという。
「チャレンジリーグ」で,ほかのプレイヤーとポイントを競え
「Microsoft Flight Simulator 2024」で最もゲームらしいプレイを楽しめる「チャレンジ」モードは,プレイヤーが週単位で与えられたミッションをこなしていくというもので,「チャレンジリーグ」というリーグ制になっている。
1回のチャレンジリーグにつき3つのチャレンジが与えられ,グランドキャニオンなどの景勝地を部分的に利用したマップで,タイムアタックとなる「Rally race」,低空飛行の正確性とタイムを争う「Low altitude」,そして正確なランディングを競う「Precision landing」など,複数のタイプで競い合うようだ。
もちろん,その戦績はシリーズのグローバルリーダーズボードに掲載される。ほかのプレイヤーとダイレクトに競い合えるので,このフライトシム・シリーズにとってゲーム的な遊びを加える大きな要素となっている。
リーグは,戦績の総合得点によって「ブロンズ」から「ダイアモンド」まで6段階に分かれており,週ごとに評価される。
シリーズは10週間で1つとなっており,つまりクールダウン期間も含めて1年に4回ほどのシリーズをプレイし,自分の腕前を世界のバーチャルパイロットたちに知らしめられるわけだ。
今回のイベントでデモとして用意されていたのは,アリゾナ州にあるグランドキャニオン国立公園の渓谷の中に“エアパイロン”などと呼ばれる巨大ポストが1組2柱ずつ建てられており,それをガイドにしながら”スーパーホーネット”という愛称で知られるF/A-18Eジェット戦闘機で滑空していくというものだった。
現地の風速や気温はリアルタイムなのか,レース条件が同じになるように固定されているのかは不明だったが,ランクインできる速い人なら2分台前半で1レースをこなし,ワールドレコードともなれば1分半ほどで疾走できるらしい。そのシリーズにおけるトップスコアと思われるゴーストも飛んでいるので,プレイヤーはレースをしている気分で楽しめるはずだ。
美しい情景を探求する「フォトグラファー」で,世界中を旅して回ろう
「Microsoft Flight Simulator 2024」で登場するもう1つのゲームモードが「フォトグラファー」で,その名称どおり世界中を飛び回って美しい景観を探し,それをカメラに収めるという,競争よりも探索を重視したいプレイヤーにはうってつけのものとなる。
すでにいくつものミッションが用意されており,ヨーロッパ一帯の城めぐりを楽しむ「Europe Castle Tour」,アメリカの橋に特化した「USA’s Most Spectacular Bridges」,アジアの景勝地をめぐる「Iconic Sights of Asia」,そしてピラミッドなどの世界遺産を旅する「World’ Most Famous Monuments」など,それぞれ15〜20種のミッションを持つカテゴリーに分けられている。
それぞれのカテゴリーのコンプリートを目指すか,ランダムにワールドマップに表示される景勝地を選ぶのかはプレイヤー次第で,世界中の好きな地域だけにこだわっても良さそうだ。
今回,イベントで公開されていたデモで,筆者は「Iconic Sights of Asia」の中にあるミッションの1つ,厳島神社(広島)の撮影セッションを敢行。ミッションにはメインとなる目標のほかに3つのボーナスコンディションがあり,「神社をバックに鳥居を撮影する」「飛行機と鳥居を同時に撮影する」「飛行機の背中を向けて,鳥居と太陽と一緒に撮影する」と,徐々に難度が高くなっていく。
バック(Back)が背中なのか腹部なのか,それとも後方部からの撮影なのか意味がよく分からず最後の目標がクリアできなかったものの,水上機を低空飛行から上昇させたり,機体を傾けながらうまく鳥居の近くで旋回したり,さらには水上に停泊させて撮影してみるなど,さまざまに趣向を凝らすこともできた。もちろんゲームを静止させてボタン1つでカメラをフリーモードにし,自分で角度を調整することも可能だ。
このボーナスコンディションの「太陽と一緒に……」などという,日時や天候に伴う条件はかなりトリッキーなようで,日没時や積雪,もしくは街の夜景といったような記述があれば,その地域の気象や日の入り時刻などの情報をしっかりとチェックしておかなければならない。特定の動物の写真を撮影する場合などは,実際にその場所に群れがいなかったり,雑に航空機を操縦し過ぎて逃げ出してしまったりといったこともあるだろう。
いずれにせよ,時間をかけて自然と向き合い,最高の瞬間を撮影するというのは写真家の醍醐味でもあるはず。それぞれのミッションですべてのボーナスコンディションをクリアして三ツ星を獲得するのもやりがいがあるだろうし,Xbox Game Studiosやゲーマーコミュニティが写真展のようなものを開催する機会もありそうだ。
ちなみに,「Microsoft Flight Simulator 2024」と前作「Microsoft Flight Simulator 2020」の実質的な開発を行うAsobo Studioは,2002年にフランスのボルドーで12人で起業したメーカーで,最近では高い評価を得てシリーズ化したアドベンチャーゲーム「プレイグ テイル -イノセンス」(2020年)も代表作だ。
2008年には1万4400平方kmという広大なオープンワールドでダートレースを楽しむ「Fuel」をCodemastersからリリースしているが,そうしたディテールにこだわる経験がフライトシムシリーズにも生かされているのは間違いなさそうだ。
開発者インタビュー 〜 ミッション300万種は驚愕のほぼ自動生成
4Gamer:
「Microsoft Flight Simulator 2024」を開発するにあたって,Asobo Studioは従業員を拡大していますか?
Dedeine氏:
はい。現在のところはAsobo Studioには300人の従業員がおり,そのうち200人が本プロジェクトに参加しています。一気に増えたのではなく,「Microsoft Flight Simulator 2020」のライブサービスが軌道に乗るに従って徐々に新しいメンバーを加えていったという感じでしょうか。
面白いのは,もともとフライトシムというジャンルの開発を目指していたり,飛行機を趣味にしていたり,さらには技術的な側面での自分のスキルを生かしてみたいという理由だったりで,我々に履歴書を送ってきた開発者が多いということでしょうか。私は忙しくて試験までに手が回らず,セスナのレッスンを受けたままになっていますが,我々のチームには元々パイロットとしての経験を持っていた者も多いのが特徴だと思います。
4Gamer:
300万種ものミッションがあるということですが,自動生成されているということですか。
Dedeine氏:
99.99%は自動生成されています。ゲーム序盤のチュートリアル部分はカスタマイズされたものですが,残りはサーバー側が作り出しているわけです。システム的には1億ミッションだって作り出せますが,本作におけるミッション生成の仕組みはどれだけ多くのユニークミッションを生み出すのかではなく,どうやってフィルターにかけて条件を絞っていくかということです。
例えば,農業の土壌検査のミッションがあったとして,そのミッションが発生するのは地域に大きな規模の農場がある田舎の空港でなければいけません。農薬散布が伴うのであれば近くに民家がない場所でなければいけないわけです。スキー場で骨折した人を救助するミッションであれば,近くにスキー場があり,さらに病院がある町が近隣にあるというような条件が伴います。
4Gamer:
すごいですね。そういう農場や病院など隠しデータのようなものは前作にはなかったはずですが,どのように検出するのでしょう。世界に億単位で存在するであろう施設や地区情報を手動でインプットしたのですか。
Dedeine氏:
Bingマップのデータ情報をもとにして,AIが「この建物は病院だ」とか「この広さの農場はミッションに適していて,この空港を拠点にすると利用できる範囲にある」などと判断したうえで,データマネージャーがミッションのストーリーを生成します。かなり精度は良いと思いますよ。
4Gamer:
スキー場などでのミッションは季節も考慮されるのですか?
Dedeine氏:
もちろん。夏場にスキー場での救助ミッションが発生する確率は低いですよね。その年の地域が寒くて山に積雪があるとか,ひょっとしたらサーバーが岩山を検知してトレッキング客の救助ミッションを排出することはあるでしょうが,夏ならビーチとか観光客が集まる海岸地帯で宣伝業務ができるようになるとか,より季節に合ったアクティビティが生成されます。
4Gamer:
今回のデモでは,仕事を依頼してくる人にも名前がありました。
Dedeine氏:
ゲーム中にはNPCが多くいますが,それぞれの国の名前の平均的なものを生成し,クライアントや業者,顧客,病人などに与えられます。例えば旅客機の中のお客さんも,旅客機の出発地と目的地に合わせた人たちが混成して搭乗します。
4Gamer:
キャリアモードでは自分の会社が大きくなって複数の商業機を抱えていく中で,NPCのパイロットに航路を任せるような経営シムの側面も出てくるのでしょうか。
Dedeine氏:
例えば,プレイヤーがNPCのパイロットを雇用して経営に専念するというのは,ある意味“フライトシム”の在り方に反するので,経営やマネージメントのシミュレーション要素については,極力手を付けていません。プレイヤーが自らパイロットとして仕事をこなし,報酬を貯めて新しい機体を購入します。
しかし,機体は劣化するので修理やパーツの交換も必要になり,それを怠ると墜落してしまい,プレイヤーキャラクターがキルされることはないですが,一機失ってしまうリスクがあります。そうした,しっかりと整備を行うための資金も動かしていくという意味で,経営シム的な要素もあると言えますが,我々はやはり皆さんに空の仕事を楽しんでほしいと願っています。
4Gamer:
これまで,さまざまなタイアップが行われてきましたが,Dedeineさん個人の夢で,「Microsoft Flight Simulator 2024」でやってほしいものがあるとすれば?
Dedeine氏:
私は宮崎 駿さんの大ファンでして,空にまつわる作品が多いので,チャンスがあったらタイアップしてほしいですね。「紅の豚」や「天空の城ラピュタ」「風立ちぬ」とか,空にまつわるアニメ映画を多く手掛けてらっしゃいますが,「魔女の宅急便」なんて,空のお仕事そのままじゃないですか(笑)。
4Gamer:
ほうきに乗って配達になるのでしょうか(笑)。本日はありがとうございました。
「Microsoft Flight Simulator 2024」公式サイト
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