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信長の野望・大志公式サイトへ
  • コーエーテクモゲームス
  • 発売日:2017/11/30
  • 価格:通常版:9800円(+税)
    TREASURE BOX:1万3800円(+税)
    GAMECITY & Amazon.co.jp限定セット:5万2800円(+税)
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「信長の野望・大志」βバージョンのプレイレポート。ストラテジーゲーマーをニヤリとさせる仕掛けが満載
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印刷2017/09/09 00:00

プレイレポート

「信長の野望・大志」βバージョンのプレイレポート。ストラテジーゲーマーをニヤリとさせる仕掛けが満載

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 コーエーテクモゲームスが開発している「信長の野望」シリーズ最新作「信長の野望・大志」PC / PS4 / Nintendo Switch。以下,大志)。特徴的なシステムとなる「志」をはじめとする情報はすでにお伝えしているが,今回PC版のβバージョンをプレイする機会を得たので,その感触をお届けしよう。

 βバージョンということで,グラフィックスやユーザーインタフェース,各種イベント処理,ゲームバランスなどについては今後も改善が進んでいくとのことだが,ゲームシステムの骨格はほぼ完成といった状態である。
 プレイ時間は3時間弱で,ゲームの最序盤を触ってみた,というところだが,この段階で「大志」は従来の「信長の野望」シリーズとはまた違った面白さとテイストを持った作品だということが理解できた。


“お題目”ではない,リアルな「志」


 まずはゲームの大枠から紹介しよう。
 ゲーム進行はセミリアルタイム。基本的に1ターン1か月で進行し,ターンの内部はリアルタイム進行だが,いつでも停止や再開,スピードアップが可能という形だ。

 また「大志」は,いわゆる「大名プレイ」を採用している。プレイヤーは一武将ではなく,戦国大名として天下統一を目指すのだ。このあたりは,「信長の野望」シリーズにおいてスタンダードなものと言えるだろう。

PC版はすべての操作をマウスで行える。マウスホイールで全体マップ(もはや伝統となった「一枚マップ」だ)を拡大・縮小するなど,オーソドックスな操作割り当てだったので,この手のゲームをプレイしたことがあるプレイヤーなら適当にマウスをクリックしたりホールドしたりしているだけで基本操作が理解できるだろう
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 次に,ゲームのタイトルにもなっている「志」システムだ。今回の「大志」では,すべての戦国武将に対して,「志」が設定されている。そして特に大名(当主)の「志」は,かなり具体的なゲームメカニズムとして機能するのだ。

 例えば織田信長は「天下布武」という志を持っており,この志は「兵農分離」「楽市楽座」という2つの特性からなっている。
 「兵農分離」は,戦場で戦う者と,田畑を耕す者を完全に分離させようという方針で,「農兵(戦争に出兵する農民)0,かつ足軽2000以上の拠点を3個以上所持する」といった条件を満たすと,兵糧増加などのボーナスが得られる。「楽市楽座」にも,同様に達成条件とボーナスが設定されているという仕組みだ。

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 ただし特性にはそれぞれデメリットもあり,「兵農分離」では農兵が納める兵糧が減少し,「楽市楽座」では商圏(後述)の独占ができなくなる。デメリットは特に条件を満たさなくても自動的に発生するため,プレイ開始時からしっかりと肝に銘じておきたいところだ。

 「天下統一」や「家名存続」など,汎用型の志も存在するが,有名どころはもちろん,マイナーな大名でも特徴的な志が設定されているので,選んだ大名によって異なる戦略が楽しめるだろう。
 また,中には「敵よりも味方の軍勢のほうが数が少ないと軍勢が強化され,味方の軍勢のほうが数が多いと軍勢が弱体化する」といった非常に癖のある特性もあるようで,このあたりをどう使ってゲームを進めていくかは,面白いチャレンジとなりそうだ。

 なお,「志」による各種能力強化はなかなかに強力なので,プレイ時にはまず「志」の特性に設定されている各種条件を満たすべく動く,というのが無難だと感じた。
 また,これはシリーズ恒例だが,大名によっては個別の歴史イベント(織田家なら桶狭間の戦い)が存在するので,それに沿ってプレイするのも,序盤の動きとしてはいい選択となるだろう。

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方策は,「信長の野望」ならではの技術ツリー


 さて,「信長の野望」に欠かせない要素である内政と合戦要素を紹介していこう。
 「信長の野望」の内政というと,銭と米の生産量マネジメントをベースとして,そこに人材マネジメントが加わる,というのが従来の路線だが,ここは「大志」でも変わってはいない。

 「大志」において注目すべきは「方策」というメカニズムだ。
 方策は,簡単に言ってしまえば技術ツリーである。例えば軍事関係の方策である「小荷駄隊・壱」を習得すれば,軍隊が消費する兵糧が減る(小荷駄隊とは兵糧や弾薬などを運ぶ部隊のこと。兵糧を運ぶ人員も兵糧を消費することを考えれば,兵糧の輸送効率を上げる=消費する兵糧が減るという抽象化は実に正しい)。
 「小荷駄隊・壱」を習得すると,その先は「集団陣形・壱」「干殺し・壱」といった方策につながる。つまり「小荷駄隊・壱」が前提となって,より効果の高い(あるいは異なる効果の)方策が習得できるというわけだ。

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 さて,気になるのは方策の習得方法だが,基本的には「農業」「商業」「軍事」「論議」の4種類が用意される「施策力」を消費して行う(習得時間は不要)。
 そして施策力は自然に溜まっていくのではなく,3か月に1度開かれる「評定」において,どの家臣の提言を採用するかによって発生する。具体的に言えば,例えば「もっと商業を発展させるべきだ」という家臣の提言を採用すれば,商業に+10される,といった具合だ(獲得できる施策力は提言に明記されている)。

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 評定では3人の提言を採用できるので,「いまは農業が大事だが,軍事も放ってはおけない」と思うならば,農業重視の提言を2つ取り入れ,最後の1つは軍事,といった調整は可能。家臣が農業・商業・論議(=外交)の3つにわたって施策力を獲得できる提言を出してくることも多い。
 さらに,家臣の提言には,施策力とは別に,親善効率上昇や交渉成功補正といった「追加効果」が一定期間発動するものがある。状況によっては施策力が低い提案であっても,追加効果を得るために採用する必要も出てくるだろう。

 また,方策には,特定武将が配下にいないと習得できないものもあるので,ここにおいても人材マネジメントは大きく効いてくる(能力値的には微妙でも,特殊な方策を持っている武将もいるとのこと)。

 このような形で,「大志」では,方策習得においても武将の個性を描きつつ,主君と配下の協力関係を“リソースの提供”という直感的なシステムでゲーム内に組み込んでいる。実に良く練られていると感じた。

 なお,今回プレイした範囲では,「農業」「商業」「軍事」「論議」の方策はそれぞれ独立したツリーになっているようだったが,複数領域にまたがる「方策」があっても不思議ではない。
 また,一部の方策は初期状態だと伏せられていて,いくら施策力を溜めようが獲得はできない。その解放には特定の条件を満たす必要があるのだが,どこかの国で特定の方策が獲得されると,「こんな方策がある」という情報が近隣国へと広がって,解放されるというシステムもあるそうだ。こういった「技術の伝播」がゲームシステムとして存在しているのは,ストラテジーゲーマーにとっては嬉しいところだろう。


経済のための戦争か,戦争のための経済か


 内政におけるもう1つの大きな要素は,「商圏」である。
 「大志」においては,今回プレイしたバージョンのバランスで言うと,金銭の融通性が米(兵糧)を圧している。「大志」においては何をするにもだいたい金銭が必要になるので,「金がないのは首がないのと一緒」を地で行くことになるのだ。

 そしてこの重要な金銭収入を支えるのが,商圏だ。
 商圏は,基本的に全国各地の拠点をベースに配置される。例えば織田家であれば「那古野」はひとつの商圏となるわけだ。そしてその拠点(正確に言えば,その拠点のあるエリア)を支配している大名は,その商圏に商人を送り込んで,商圏から収益を得ていくことになる。

 商圏と商圏は線でつながっており,新たに開拓できる商圏は,自勢力が参加済みの商圏に隣接しているところに限られる。このため人口が少ない(=あまり利益が上がらない)商圏であっても,商人を送り込んでおくべきだという状況が発生するのだ。

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 また,1つの商圏には,最大で3勢力しか入れないという制限がある。例えば那古野商圏に織田・浅井・斎藤の商人が入ってしまうと,徳川だろうが武田だろうがもう入れないという仕組みだ(織田家は志の特性である「楽市楽座」の効果によって4勢力めとして参入できるが,これは例外中の例外)。また当然ながら,1つの商圏に複数勢力が入っている場合,その商圏での利益は複数の家で分け合う。

 商圏の参入争いは要するに「早い者勝ち」なので,積極的に商圏を広げていこうと思っても,ある地点から先に進めない……ということは,普通に起こる。
 さらに,他勢力の領地にある商圏に商人を送り込むには,外交を通じて「通商条約」を結ばねばならない。敵対している国には商圏を広げられないし,戦争が始まったら敵国の商圏からは自国の商人は追い出される。このあたり,外交と内政が部分的に連続しているのだ。

 そして実際,「1つの商圏には3勢力まで」のルールは,戦争すら引き起こす可能性がある。簡単に言えば,他勢力の商人によって埋まっている商圏に割り込むには,その商圏があるエリアを軍事的に制圧し,敵対的な勢力の商人を追い出すしかないからだ。
 細かな手順やテクニックはいろいろとあるが,この「市場を獲得したかったら軍隊で殴れ」というシステムによって,内政・外交・戦争の連続性をうまく構築できている。

 これに加えて,「商圏を成長させていくためには競争相手があったほうがいい」(=独占状態の商圏は成長速度が遅い)というギミックも,実に良いジレンマをもたらすことになると思われる。軍隊で重要な商圏を確保し,そこを独占するという脳筋プレイは効率が悪く,うまく商圏を広げる勢力にやがて追い抜かれ,経済的優位を失う可能性があるのだ。ストラテジーゲーマーにとっては,実にたまらないシチュエーションだ。

 なお,「信長の野望」において,伝統的にもうひとつの大きな内政要素となってきた「農業」だが,「大志」では,かけるべき手間がだいぶ省かれており,「所領のすべてを1つ1つクリックして『開墾』『治水』を選んで回る」といった操作は必要ない。農業部門に対してコマンドが発行できるのは3か月に1度で,そのコマンドにしても,発行に特別なリソースが必要になる場合もある。

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 だからといって,農業(ひいては兵糧)の価値が低いわけではない。今回のプレイでは,軍隊がなかなかのペースで兵糧を消費するという印象を受けた。
 そして金銭で兵糧を買おうと思っても,これが実に渋い交換レートとなっている。これはあくまで「現時点におけるバランス」ということであり,製品版でどうなるかは未定だが,「操作における農業コマンドの比重は低いが,兵糧はとても貴重なリソース」という感触は,なかなか面白いバランスだった。


合戦は,ままなりそうで,ままならぬもの


 次は合戦だ。軍勢同士がぶつかる野戦(本作では「決戦」と呼ばれる)は「同時プロット制」の進行で,各部隊に対して命令を出す「命令フェイズ」と,命令に従って部隊が動く「進行フェイズ」(この間は武将の特殊スキル発動以外の操作は不可)を繰り返すという形になっている。

 このため,刻々と変化する状況に合わせて細かく部隊に指示を出し,敵AIを翻弄する戦い方は事実上不可能。移動中の部隊が敵の挟撃(挟撃された部隊は士気低下が早い)に遭っても,ほかの部隊を即座に救出へ向かわせるといったことはできないのだ。歯がゆく感じるところもあるが,このテンポは当時の通信手段などを考えれば,納得が行くだろう。

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 とはいえ,部隊をうまく回り込ませて挟撃したり,敵陣の薄い部分を集中攻撃したりといった戦術は十分に有効。倍の数の敵を相手にしても,武将の能力と部隊の運用次第で相当に戦えると感じた。逆に言えば,数の暴力で勝つことは決して簡単ではない。

 そんな決戦を面白くしているのは,「味方部隊の視界の外にいる敵部隊は見えない」という,いわゆる“戦場の霧”のような視界の要素だ。このため,小規模な分隊で戦場を偵察し,敵部隊を発見したうえで,敵の視界外から鉄砲隊で攻撃するといった作戦も遂行できる(なお筆者はAI相手にそれをやられた)。同じように,機動力を生かして敵ユニットの視界の外から突撃する(奇襲効果が得られる)といったことも可能だ。

 逆に,自軍の大部隊で敵の小部隊の群れに躍り込み,敵陣を内部から蹴散らすといった戦い方も(ある程度までは)可能だった。戦闘における工夫の余地はかなり大きいと思われる。

 もう少し大きな視点,戦略レベルで捉えると,「大志」の合戦には2つの大きな要素がある。

 1つは兵の種類だ。
 「大志」に登場する兵は,大別すると「農兵」と「足軽」の2種類。農兵は農民を兵士として徴募したもので,足軽はプロの兵士だ。
 農兵の徴募と維持に金銭は不要だが,当然ながら彼らは農民なので徴募した地域の農業生産力が下がる。また,戦いが本業ではないので,戦力としては少々心許ないし,何より士気崩壊が早い(特に長期戦になると,その傾向が強くなる)。

 一方の「足軽」は維持するために金銭が必要だが,戦場で期待を裏切らない働きをしてくれる。軍の主力は可能な限り足軽で編成したいのだが,それを実現するには相応の経済力が必要……ということで,「大志」では合戦においても経済力が非常に重要になってくる。
 商圏を広げにくかったり,得られる収入が大きい商圏が近くになかったりする勢力は,農兵を主体とした戦いをしなくてはならない。もちろん,農兵主体では勝てないというバランスではなく,これはプレイスタイルの幅を広げる要素と言えそうだ。

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 2つめの要素は,戦場の規模
 「大志」では,日本地図が細かなエリアで区切られており,決戦はこのエリアで発生する。
 ここだけなら従来のシリーズ作品とそう変わりはないが,「大志」では,各エリアに対して「投入できる軍勢の数」が決まっている。平野部であれば数万(事実上無制限)だが,山岳部においては2000〜4000といった数だ。このため,たとえ数万の軍勢を動員できる勢力であっても,上限2000のエリアで待ち構える敵に対しては,2000の軍勢しか送り込めないということになる。

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 これはときに劇的な効果を引き起こす。上限4000くらいの「狭い」山岳地帯に構えられた堅城を攻め落とすとなると,こちらが数万の軍勢を有していようとも,実際は4000対4000で城に籠もる敵の精鋭に勝たねばならないのである。ましてやここで敵方が防御戦に優れた武将に率いられていると,苦戦は免れない。

 そして当然ながら,どこで決戦に突入するかの駆け引きも重要だ。各エリアには兵数の制限だけでなく,攻撃側/防御側のどちらかが有利になったり,特定の戦術の効果が上がったりといった特徴もあるので,兵の数だけ気にしていると痛い目を見ることになる。

 このように,大小さまざまな要素が絡み合う合戦だが,今回プレイしたうえで最も重要だと感じたのは,部隊の「士気」と勢力の「戦意」だ。決戦で兵士がどれだけいても,士気がなくなれば部隊は潰走(一定時間前線から退く)し,戦況が悪化する。戦意は勢力全体の合戦へのやる気のようなもので,決戦や籠城戦の勝敗で変動する。戦意が高いと,決戦では部隊の士気が高まり,籠城戦では大軍に囲まれても非常に良く粘ってくれるのだ。

 そのため,大国に攻められても,まずは打って出ることを考えたほうがいいだろう。狭いエリアで迎え撃って緒戦に勝ち,戦意を高めたうえで城に籠もれば,有利に立ち回れる。前述したように,今回のプレイでは軍勢がかなりの勢いで兵糧を消費していたので,このバランスのままなら,大名の采配で大軍を追い返すこともそう難しくないはずだ。

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外交では筆まめであれ――さもなくば家は滅びる


 最後に外交要素も紹介しておきたい。

 これまでのシリーズ作品と同様に,「大志」でも外交は重要だ。しかもそれは決して「同盟締結や単独講和で一発逆転」といった,言葉は悪いが大味なものとは,かなりニュアンスが異なる。

 「大志」の外交は2段階に分かれる。最初は使者(奏者)を送って相手国との関係を深め,続いて具体的に相手国と各種条約を結ぶ,という構造だ。ここまでは,かなり一般的な外交システムと言えるだろう。

 だが「大志」における外交の実際は,なかなかに複雑怪奇だ。

 極端な例を挙げると,「大志」ではある国と戦争をしながら,同時に協調関係になることがある。織田家と斎藤家が合戦中,その双方が友好関係にある本願寺から「三好家との戦いに協力してほしい」と申し出が両家に対してなされ,この申し出を両家が受諾するといった場合だ。「織田家対斎藤家」と「三好家対本願寺+織田家+斎藤家」という状況が並行するのである。

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 また,「大志」では,いざ合戦ということになると,日頃の友好度がものを言う傾向が強い。筆者は今回織田家でプレイしたのだが,斎藤家が織田家に宣戦してきた際,斎藤家と仲が良かった武田家や今川家(の残党)が一斉に織田家に対して宣戦してきた。早すぎる信長包囲網である(ちなみに本願寺は織田家の味方になった。これはこれで良い歴史ifだ)。

 この信長包囲網が成立した背景には,斎藤家と織田家での「筆まめさの違い」があったようだ。要するに織田家は“ご近所様との普段からのお付き合い”が足りなかったのである。
 特に条約を結ぶあてがなくても,とにかく奏者は派遣しておいて,各家との最低限の“仲良し度”は確保しておくことで,いざどこかと戦争ということになったとしても「義によって助太刀いたす!」の連鎖で包囲網を作られるような失策は防げるという。

 いやはや,戦国大名が数多くの書状を送っていたのは史料が裏付けているが,「大志」においても,彼ら同様に筆まめでなくては生き延びていけないのである(もっとも操作自体は煩雑ではない)。このあたりのプレイ感覚は,従来の「信長の野望」にはなかったものだろう。


既存システムの「信長の野望」流再解釈が,シリーズに新しい風を吹き込む


 今回のプレイをまとめるなら,現状の「大志」は,ユーザーインタフェースやゲームバランス,テンポなどの点において改善点を残しつつも,既に面白いストラテジーゲームになっていると感じた。
 βバージョンとはいえ,海外のデベロッパだと,この程度の完成度やゲームバランスでリリースしちゃうことも多いよな……と感じたほどだ。

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 「大志」のデザインには,「これってどこかで見たような」と感じるシステムがあちこちに見受けられる。
 「方策」は,ストラテジーゲームではかなり一般的な技術ツリーだ。「商圏」は「Europe Universalis」シリーズのCoT(Centre of Trade),外交における条約締結画面は,「Civilization」の外交画面を思い出す人もいるかもしれない。

 個人的には,これらの「面白いことが確定しているゲームシステム」,あるいは「コンセプトは良いが微妙に機能していないシステム」をテーマに合わせて再解釈し,そのゲームならではの形で実装するというやり方には,両手を上げて賛成したい。

 実際,「方策」システムは,社会からのアプローチではなく,武将の能力という人間からのアプローチで進む技術ツリーとして,「信長の野望」シリーズに合わせてきっちり再解釈してきたと思う。また,商圏にしても,「ライバル商人を追い出したいなら殴って追い出せ」という割り切りは,戦乱の世を表現するにあたってうまく機能する可能性が高い。

 こういったシステムが戦国時代を正しく表現しているかどうかはともかく,ゲームとして見たとき,「技術ツリーは超つまらないし大っ嫌いだ」というプレイヤーは,決して多数派ではないだろう(筆者は理念的に技術ツリー反対派だが,「ゲーマーはみんな技術ツリーが好き」とも思っている)。そしてゲームにおいて,「面白い」とは重要なことだ。

 無論,ゲームは水物である。特に各種数値バランスがデリケートなストラテジーゲームにおいては,思いがけないところからゲームシステムが機能不全を起こすことが珍しくない。専門的なことを言えば,縦が60マスのマップか,縦が61マスのマップかの差によって(表現している地形は一緒でも),ゲームの流れがまるで変わってしまうこともあるのだ。
 従って,現状で本作を評価するのはさすがに時期尚早なのだが,今までとは違った「信長の野望」として,大変に興味深いゲームに仕上がってきているようだとは感じられた。

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 なお,本作は東京ゲームショウ2017にプレイアブル出展される。ただし完全招待制なので,興味のある人は公式サイトで詳細を確認したうえで応募してほしい。

「信長の野望・大志」公式サイト

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