連載
そうだ アニメ,見よう:第127回は野島伸司氏が原案・脚本の「ワンダーエッグ・プライオリティ」。社会の“闇”と戦う4人の少女達を描いた話題作
1993年のドラマ「高校教師」「ひとつ屋根の下」をはじめ,「ストロベリー・オンザ・ショートケーキ」「薔薇のない花屋」など,数多くの話題作を手掛けてきた脚本家・野島伸司氏。いじめや自殺といったセンシティブな題材を取り入れた作風で知られる野島氏が,初めてアニメ作品に挑戦したのが「ワンダーエッグ・プライオリティ」だ。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第127回のタイトルは,2021年1月にスタートしたオリジナルTVアニメ「ワンダーエッグ・プライオリティ」。制作はCloverWorks,キャラクターデザイン・総作画監督を高橋沙妃氏が担当。監督は「22/7 あの日の彼女たち」や「僕はロボットごしの君に恋をする」のPVを手掛けた若林 信氏が務めている。
「ワンダーエッグ・プライオリティ」
アイとくるみはそこで,怪物のような姿をした“ワンダーキラー”と“ミテミヌフリ”に襲われ,なんとかこれを撃退するが,くるみは消えてしまうのだった。
現実へと戻ったアイは,謎の声の正体であるアカ(CV:内田夕夜)と裏アカ(CV:高橋広樹)と遭遇。「エッグ」から出てきた少女を救い続ければ,自殺してしまった友達・小糸(CV:田所あずさ)が生き返ると信じ,戦いに身を投じる。
アイは,やがて自分と同じ境遇の少女・ねいる(CV:楠木ともり)やリカ(CV:斉藤朱夏),そして桃恵(CV:矢野妃菜喜)と出会い,仲良くなるのだが……。
少女達を襲う社会の“闇”がテーマ
14歳の少女達を取り巻く,いじめやDV,パワハラといった“問題”をテーマにした物語が本作「ワンダーエッグ・プライオリティ」だ。作中には,“自殺した少女”を生み出す「ワンダーエッグ」と呼ばれる不思議な卵が登場し,その少女達を救おうとする主人公アイ達4人の活躍が描かれている。
アイ達が戦う相手は,少女達のトラウマが具現化した“ワンダーキラー”で,その戦いを通して,彼女達がなぜ自殺してしまったのかが語られる。いじめだけでなく,体罰やセクハラなど,理由はさまざまだが,自殺にまで追い込まれた彼女達の心情が伝わってくるようで,なんともやり切れない。
4色ボールペンを巨大化させた武器で戦うアイ |
そんなちょっと“重め”のストーリーが展開される本作だが,アイ達のパワフルなアクションと少女期特有の奔放さにあふれる会話,そして,色彩豊かなポップな画面が重苦しさを吹き飛ばしてくれる。社会が抱える“闇”を描きながらも,少女達の持つエネルギッシュさを楽しめる作品なのだ。
人間の悪意をカリカチュアライズした“ミテミヌフリ” |
エッグの世界での傷が現実で致命傷になることも |
コンプレックスに立ち向かう4人の少女達
アイをはじめとした4人の少女達は,自殺してしまった知人を生き返らせるために戦っているが,自身も“闇”を抱えている。
アイはオッドアイ(虹彩異色症)であることでいじめられ,デザイナーベビーのねいるは,自分が優秀すぎるために他人の気持ちを理解できない。元ジュニアアイドルのリカは父親を知らず,アームカットが癖になっているし,桃恵は美少年のような風貌にコンプレックスを抱いている。
アイ(CV:相川奏多) |
ねいる(CV:楠木ともり) |
リカ(CV:斉藤朱夏) |
桃恵(CV:矢野妃菜喜) |
自殺した少女達のトラウマに立ち向かいつつ,アイ達は自分の“闇”と向き合い,乗り越えようともがき続ける。大事な人を生き返らせようと戦う姿は,そのまま自分との戦いを映したものなのかもしれない。
エッグの試練を乗り越えた後に,アイ達がどう成長するのかじっくりと見守りたいところだ。
衝撃の回からクライマックスまでの展開
衝撃の回「おとなのこども」が放送され,ワンダーエッグの秘密もぼんやりと見えてきた。ネタバレになるので多くは語れないが,野島氏らしいショッキングな内容に,いろいろ考察していた(つもり)の筆者はもちろん,「あっ」と声をあげた人も多いのではないだろうか。
本作の制作にあたって野島氏は,「いつからかドラマにもコンプライアンスが侵食して,僕のような物書きは翼をもがれた感覚で,より自由度の高い場所を模索していました」とアニメに挑戦した理由をコメントしていたが,なるほどこの内容ならアニメのほうがふさわしいと納得できた。
アカと裏アカの正体も第11話で明かされている |
先日の放送で最終回を迎えた本作だが,その続きを描いた「ワンダーエッグ・プライオリティ特別編」が,6月29日深夜に日本テレビほかで放送されることが決定した(Hulu,dアニメストアでは29日24時より配信予定)。小糸が自殺した理由や,教師・沢木(CV:中澤まさとも)の真意といった,ミステリアスな要素も多数残されているだけに,この放送はうれしい限り。詳細な配信時間などのスケジュールは後日発表されるとのことなので,続報に期待しよう。
「ワンダーエッグ・プライオリティ」公式サイト
「ワンダーエッグ・プライオリティ」公式Twitter
放映データ |
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2016年1月〜 |
キャスト | |
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大戸アイ:相川奏多 | |
青沼ねいる:楠木ともり | |
川井リカ:斉藤朱夏 | |
沢木桃恵:矢野妃菜喜 | |
アカ:内田夕夜 | |
裏アカ:高橋広樹 | |
大戸多恵:白石晴香 | |
沢木修一郎:中澤まさとも | |
長瀬小糸:田所あずさ |
スタッフ |
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原案・脚本:野島伸司 |
監督:若林 信 |
キャラクターデザイン・総作画監督:高橋沙妃 |
コンセプトアート:taracod |
副監督:山﨑雄太 |
アクションディレクター:川上雄介 |
コアアニメーター:小林恵祐 |
ゲストキャラクターデザイン:久武伊織 |
プロップデザイン:井上晴日 |
モンスターデザイン:小林麻衣子 |
ミテミヌフリデザイン・アニメーション:大鳥 |
武器デザイン:絵を描くPETER |
アニメ―ション武器デザイン:けろりら |
色彩設計:中島和子 |
美術監督:船隠雄貴 |
撮影監督:荻原猛夫 |
3DCG:Boundary |
編集:平木大輔 |
音響監督:藤田亜紀子 |
音楽:DÉ DÉ MOUSE/ミト(クラムボン) |
音響効果:古谷友二 |
企画プロデュース:植野浩之(日本テレビ)/中山信宏(アニプレックス) |
制作:CloverWorks |
製作:WEP PROJECT |
主題歌:アネモネリア |
■Blu-ray&DVD情報
■ワンダーエッグ・プライオリティ 1【完全生産限定版】
発売日: 2021年3月24日(水)
収録話数: 第1回〜第4回
販売価格:Blu-ray:完全生産限定版 ANZX-15131〜15132 価格:13,000円+税
DVD:完全生産限定版 ANZB-15131〜15132 価格:11,000円+税
完全生産限定版特典
●全巻収納ケース
●キャラクターデザイン・高橋沙妃
描き下ろしジャケットイラスト
●オリジナル・サウンドトラックCD VOL.1
●オーディオコメンタリー
[第3回〜第4回]出演:相川奏多・斉藤朱夏
●特製ブックレット Vol.1
●絵コンテ集 Vol.1
●SDキャラクターシール
●パッケージ発売記念イベント抽選申込券
【応募期間:2021年4月23日(金)23:59まで】
(C)WEP PROJECT
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