2016年3月19日,東京・飯田橋のKADOKAWA富士見ビルにて,富士見ドラゴンブック主催によるイベント
「ドラゴンブック 春の大TRPG祭」が開催された。
同イベントは,同社が展開するテーブルトークRPG(以下,TRPG)のファンを対象にしたユーザー参加型イベントだ。各タイトルのゲームデザイナー陣によるトークショーやサイン会,またそれぞれのタイトルの体験卓なども用意されていて,会場は多くの来場者で賑わっていた。また有志によるゲームセションが楽しめるTRPGコンベンションも併催されていたので,ファンにとってはまさにTRPG三昧のイベントといえるだろう。
各タイトルの体験卓では,「アリアンロッドRPG 2E 改訂版」や「ソード・ワールド2.0」といった定番タイトルから,イベント当日(3月19日)に発売されたばかりの「常夜国騎士譚RPG ドラクルージュ」まで,さまざまなタイトルが体験できた
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本稿では,そのイベントの最後に行われた「新作発表会」で新たに発表された2本の新作タイトル――グループSNEの
「ダイス・オブ・ザ・デッド」と,冒険企画局の
「片道勇者TRPG」を紹介していこう。
トークショーやサイン会には,グループSNEの安田 均氏や冒険企画局の河嶋陶一朗氏といったクリエイター陣が参加。トークショーは「ニコニコ生放送」で配信された
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「ダイスドラフト」システムが新しい,グループSNEの新作「ダイス・オブ・ザ・デッド」
「ダイス・オブ・ザ・デッド」は,2015年12月に開催された
「富士見ドラゴンブック新作TRPG発表会 2015冬」で開発中であることが明かされた,グループSNEの新作TRPG。今回はその続報ということで,ゲームシステムを始めとしたさまざまな情報が明らかにされた。また発表会に合わせ,メディア向けの体験会も実施されたので,ここではそこで判明した内容を合わせて紹介していこう。
「ダイス・オブ・ザ・デッド」。価格は3200円(税込)。版形はB5版で,表紙のイラストは藤井英俊氏が担当する
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本作の舞台となるのは,突如発生したゾンビによって壊滅状態となってしまった現代の東京。万能細胞
「ZOMB細胞」を研究していた施設から,実験動物が逃亡したことに端を発するこのゾンビアポカリプスは,東京23区をとりかこむ巨大な壁「グレートウォール」が完成したことによって,一時的な解決をみる。しかし,その壁の中に取り残された人々もいた。そうした取り残された生存者達の一人であるプレイヤー達は,ときにほかの生存者と力を合わせ,ときに敵対しながら,封鎖された東京を生き抜いていくことになる。
発表会で登壇したゲームデザイナーの
大井雄紀氏によれば,本作のゲームバランスは,かなりキャラクターが死にやすいようにできているとのこと。さらにゾンビに咬まれてしまった仲間などは,
「追放」を行うことでキャラクターロスト状態にできるなど,プレイヤー同士でも対立が起こりえる。まさにゾンビものならではの,極限のサバイバルが楽しめるというわけだ。
また監修を担当したグループSNE社長の
安田 均氏によれば,本作はボードゲームの面白さを取り入れたタイトルでもあり,こうしたプレイヤー同士の対立や駆け引きは,
「人狼ゲーム」を意識しているとのことである。
体験プレイで使用された東京の地図がこちら。「ショピングモール」や「警察署」「学校」といった,ゾンビものではお馴染みの場所が用意されているのが分かる。各地には生存者達の「コミュニティ」が存在し,それがほかのTRPGでいう「国」のような役割を果たしている
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プレイヤーが操るキャラクターは,実を言うと純粋な人間というわけではない。ZOMB細胞に適応した「ハーフゾンビ」と呼ばれる存在である彼らは,人間とゾンビの強さを併せ持ち,身体能力が強化されている一方で,日光を浴びると仮死状態のような
「白昼夢」に陥ってしまう危険性がある。
ハーフゾンビは1度死亡してしまったが,ZOMB細胞に適応することで復活した人間だという。人間と比べて高い身体能力を持つが,相応のデメリットも背負っている
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またZOMB細胞に適応したといっても,完全にゾンビ化してしまう恐れも残っており,敵に攻撃を受けたり日数が経過すると,
「感染度」が上昇して理性を失っていくことになる。感染度が高ければ高いほど身体能力は向上するが,理性を失えば仲間を殺してしまいかねない。具体的には,感染度上昇するとキャラクターシートにある3×3のビンゴが,ランダムに1つずつ埋まっていく仕組みで,列が揃うごとに特殊なイベントが発生。2列が揃うと「ほかのプレイヤー1人を殺害」しなくてはならず,3列揃うとその時点で完全にゾンビ化してしまう。
こちらが本作のキャラクターシート(開発版)。能力値は「頭」「腕」「足」の3つで,それぞれ0〜3の数値で表される。0なら苦手で1で人並,2なら得意で3なら天才的という基準だ。HPは「頭」「右腕」「左腕」「右足」「左足」の5つの部位に分かれていて,例えば足にダメージが集中したりすると歩けなくなるといった効果が発生。ちなみに頭のHPが0になると即死してしまう
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完全にゾンビ化するとキャラクターはロスト扱いになるので,ゲーム中は感染度をいかに抑えるかが重要になる。感染度は一部アイテムのほか,ほかの人間との接触による「繋がり」によって抑制できるが,自身の感染度は非公開情報として扱われるため,自己申告でしかほかのプレイヤーに伝えることができない。詳しい勝利条件が不明なので,感染度を秘匿することでどういったメリットがあるのかは分からないが,このあたりもまたプレイヤー間の疑心暗鬼を煽る要素になっているようだ。
アイテムも多種多様なものが用意されている。意外な使い方をするアイテムもあるそうで,例えば週刊誌は体に巻くことで防具として使える。バットは武器として使えるが,ハーフゾンビの力では数度使っただけで折れてしまうようだ。銃器もあるが,銃声でほかのゾンビをおびき寄せてしまう定番のシチュエーションには注意が必要だ
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感染度はアイテムの「抗ゾンビ薬」で回復できるほか,ほかの人間との接触によっても抑えられる。あるいは,ほかのプレイヤーを殺害することでも一時的に抑えられるが,それは本末転倒というものだろう
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行為判定では,本作独自の
「ダイスドラフト」システムが面白い。使用するダイスは一般的な6面のものだが,ダイスを振るのは行為判定の直前ではなく,そのシーンの最初である。プレイヤーとゲームマスターが,それぞれ3つのダイス(3D6)を振り,出目を中央にプールしておく。ゲームマスターと各プレイヤーは,そこから使用するダイスを1つずつ選んでいく仕組みだ。
ダイスドラフトの様子
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プレイヤーが行う行動には,それぞれ1〜6の出目が割り振られていて,それぞれに対応した出目が必要になる。例えば「足」を使った行動を行うには1か2のダイス目が必要なので,その目をプールから拾ってくるわけだ。プールに対応する出目が残っていれば行動は自動成功となるが,なければそもそも行動ができない。行動の達成値は
「対応する能力値×必要な出目の数」なので,より高い達成値が求められるなら,複数のダイスを拾ってこなければならないこともあるだろう。
面白いのは,このダイスドラフトにはゲームマスターも参加しなくてはならないという点で,つまり敵キャラクターの行動やイベントの発生でさえも,プールされたダイスの影響を受けることになる。言い方を変えれば,プレイヤーはそのことも考慮したうえで,ダイス目を選ぶ必要がある。例えば「この出目がゲームマスターにわたると,悪いイベントが起こってしまう」という場合なら,先んじてその出目を枯渇させることを考えるべきだろう。こうしたダイスドラフトを駆使した駆け引きもまた,ボードゲームを参考にしたという本作の特徴の一つだろう。
ダイスドラフトでは,手番プレイヤーから時計回りで使用するダイスを1個ずつ選び,プールのダイスが尽きるまで繰り返す。なお,手番プレイヤーはダイスドラフトが行われるたびに左隣に移る仕組み
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今回は時間の都合で最後までプレイできなかったが,ダイスドラフトを一度理解してしまえば,複雑な判定がないぶん展開はスピーディと感じられた。戦闘もダイスドラフトで行われ,達成値がそのままダメージとなるためシンプルで分かりやすい。大井氏によれば,想定しているプレイ時間は1〜4時間程度で,「できる限りプレイ時間を短く,けれどもしっかりと遊んだ感覚が残るようなゲームを目指している」とのことだった。
本作に登場する多種多様なゾンビ達。「攻撃時に感染度を上昇させる」といった特殊能力を持つものもいて,プレイヤー達を苦しめる。戦うにあたっては,やはり頭を狙う(ダイスドラフトの出目を余分に使うことで部位指定が可能)のがセオリーとなる。しかし大井氏によれば,強い敵と相対した時には逃げることも大切だそうだ
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なお,本作はボードゲーム版の制作も進められており,こちらはTRPG版から少し遅れて発売される予定だという。基本的な世界観はTRPG版と同だが,安田氏によれば「TRPG版ではできなかったことを楽しんでもらいたい」とのことで,プレイヤーにはよりスケールの大きなミッションが課せられることになるようだ。
また,ボードゲーム的なダイスドラフトを採用したTRPG版とは逆に,ボードゲーム版ではTRPG的なダイス判定が用いられることも匂わせていた。なおボードゲーム版は,5月5日に東京ビッグサイトで開催される
「ゲームマーケット2016春」で試遊できるとのこと。TRPG版と合わせて,続報に期待しておこう。
TRPG版には,「シナリオクラフト」や「GMレスルール」といった初心者用のシステムも搭載されている
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グループSNEの安田均社長(左)と大井雄紀氏(右)。本作が生まれたきっかけについて聞いてみると,同じくグループSNEの秋口ぎぐる氏と大井氏が,「女子大生とゲームを遊びたい!」と盛り上がったのがそもそもの発端だという。そのためにファンタジーではなくゾンビものを選んだとのことだが,分かるような分からないような……
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名作インディーズゲームをTRPG化,冒険企画局新作「片道勇者TRPG」
「ダイス・オブ・ザ・デッド」に続いて,今回発表されたもう一つの新作タイトル,冒険企画局の「片道勇者TRPG」を紹介しよう。本作は,全世界で60万ダウンロードを記録したインディーズゲーム
「片道勇者」を,作者の
SmokingWOLF氏自らの監修のもとTRPG化したタイトルだ。ゲームデザインを手がけたのは
,「リアリティショーRPG キルデスビジネス」などで知られる
齋藤高吉氏で,イラストは
「グランクレスト・リプレイ かけだし君主の魔王修業」シリーズなどでお馴染みの
モタ氏が担当する。
原作の「片道勇者」は,“強制横スクロールローグライクRPG”を謳う,2Dグラフィックスのタイトルだ。画面左から迫る闇に飲まれないよう,ひたすら右方向へと進んで行かなくてはならない。現在は拡張版である「片道勇者プラス」がPLAYISMで配信されている
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原作の世界観を踏襲した本作は,原作に登場するクラスがすべて収録されているほか,原作の人気のNPCが多数登場。本作を使って原作のストーリーを再現することも可能だという。
1プレイにかかる時間はオンラインセッションでも2時間から3時間程度で,キャラクターの作成や成長システムも,かなり手軽なものとなっているとのこと。さらにゲームマスターはシナリオの骨子となる「クエスト」に,「ランダムイベント」を組み合わせるだけで手軽にドラマ性のある物語を作成できるとのことで,まさに原作を再現したかのような「美しい悲劇」が楽しめるという。その詳細は明らかにされなかったが,かなりスピーディーに楽しめるタイトルであるようだ。
また,本作は原作がローグライクRPGであるということもあって,キャラクターが比較的死亡しやすいのが特徴だという。しかし,「キャラクターの死亡」は世界観に予め組み込まれているため,何度でも転生を行って,新しい冒険にチャレンジできる。
転生するたびに時間軸が最初に巻き戻るため,もし前回の冒険で誰かが死亡してしまったとしても,次の冒険では助けられる可能性がある。冒険を繰り返す度に強くなっていくキャラクターで,より良い未来を目指すのだ
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ルールブックにはSmokingWOLF氏や人気動画制作者であるブリッツP氏など,豪華メンバーによるリプレイが掲載される。また,SmokingWOLF氏によるリプレイが,KADOKAWAの小説投稿サイト「カクヨム」で連載予定。ほかブリッツP氏による公式リプレイ動画なども予定されている
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齋藤氏は最後に,「本作はサクッと遊べて,終わった後には満足感があるような,軽くて良いゲームと言われるゲームを目指しています。新しいものをたくさん詰め込んだものとなっていますので,自分達でも何が起きるのかが分からない企画です。ご期待ください」と意気込みを語っていた。まだまだ謎に包まれた部分も多い本作だが,こちらも続報に期待したいタイトルだ。
「片道勇者TRPG」では,ほかにも様々な展開が予定されている。7月にはキャンペーンシナリオが配信されるほか,「神話創世RPG アマデウス」とコラボしたリアル冒険ゲームが開催されるとのこと
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プレゼンターを担当した齋藤高吉氏(左)と富士見ドラゴンブック編集部のヘンシャル・エイマン氏(右)
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