PlayStation VRを用いてプレイするVRモードは,空戦や対地攻撃はもちろん,空母および飛行場からの離発着,ハンガーでの戦闘機の鑑賞,エアショーの観覧など,パイロットとしての総合体験を楽しめるもの。キャンペーンモードやオンラインモードとは切り離された,独立した設計となっている。
VRモード自体の詳細については,別途掲載した記事にて確認してほしい。本稿では,東京ゲームショウ2018に先立って実施されたメディア向けプレゼンテーションの場で行った,インタビューの模様をお届けしたい。
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VRならではの空戦体験とは
4Gamer:
まず,ゲームプレイについてうかがわせていただきます。VRモードでの空戦はオフボアサイト(※)によるQAAM(高機動ミサイル)のターゲッティングが特徴的ですが,これはVRモードだけの要素なのでしょうか。
※非砲口照準。機体前方に限らず,広範囲の敵機をターゲッティングすること。ここではとくに,視界に捉えた任意方向の敵機をロックオンすることを指している。
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これまでの「エースコンバット」シリーズでもQAAMは機体正面以外の敵機をロックオンできるのですが,ターゲットチェンジするときは空間的距離や機首方向(通常は画面中央)からの距離で次の目標を選んでいました。VRモードでは,機首方向だけではなく,プレイヤーが見ている方向を基点として,ターゲットを選ぶようになっています。QAAMだけでなくマルチロック兵装も基本的には目で見ている順でターゲットチェンジできるようになっているので,慣れたプレイヤーだと「倒したい敵の方へ頭を向けて,視界中央に捉えて△ボタンを押し,ターゲット」を繰り返すことで,敵機を手早く倒せるようになっています。
4Gamer:
「エースコンバット ゼロ ザ・ベルカン・ウォー」のときに,マーカーを目標に重ねることで任意の対象にロックするシステムがありましたが,それの延長的な形でしょうか。
玉置氏:
「ゼロ」はけっこう参考にしていますが,「ゼロ」のボアサイトモードのような円形のUI表示はありません。VRモードの対応兵装利用時には,ターゲット切り替えのシステムが自動でVR視界優先の判定へと切り替わるため,より自然で直感的と言えます。慣れるまで,UIを頼りに戦う場合には,自分の見ている視界の中央に最も近いコンテナに「NEXT」表示が付くので,参考にしてください。その状態で△ボタンを押せばターゲット状態になります。
4Gamer:
私がVRモードをプレイするのはPlayStation Experience 2016出展版以来(関連記事)なのですが,当時はインターフェイスがホログラフ形式でちょっと見づらかったところ,しっかりとコックピット内のMFD(マルチファンクションディスプレイ)に表示される形に変わっていて驚きました。
玉置氏:
当時のホログラフ形式には同じことを思っていました。あのころはまだコンセプトが固まりきっていなかったのですが,その後に「VRモードでやるべきなのは,“本物のパイロット体験”だろう」という意見がまとまり,それを軸に作り直しました。プレイヤーが遊びやすいようにバランスも取りつつ,今の形になっています。
4Gamer:
旧作では「ミサイル発射ボタンを長押しするとカメラがミサイル追従視点になる」という要素がありましたが,VRモードではどうなるのでしょう。
玉置氏:
結論から言うと,無効化されています。というのも,開発中,いろいろなルールを決めていったんですが,そのときに“絶対に守らなければいけない”部分として,「VRモードではパイロット視点以外のカメラになる瞬間を作ってはいけない」というのがありました。なので,ミサイル追従視点はVRだと機能しないようになっています。
河野一聡(以下,河野)氏:
徹頭徹尾,起動した瞬間からゲームを終える瞬間まで,プレイヤーが「自分はパイロットだ」と錯覚し続けられることをルールにしているんです。
下元 学(以下,下元)氏:
一方で,キャンペーンモードでは,ミサイル発射ボタンを押し続けていると従来どおりミサイル追従カメラになります。魅せプレイとして,SHAREプレイなどで楽しんでいただきたいところです。VRと本編,それぞれのベストの形を追求しています。
4Gamer:
VRモードでは,ずっと自分がメビウス1だと錯覚できると……確認させていただきたいのですが,VRモードのプレイヤーにあたるのは,「エースコンバット04 シャッタードスカイ」のメビウス1本人なのでしょうか。
玉置氏:
そうです。「04」や,「エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー」のアーケードモードよりも後の話になっています。
4Gamer:
VRモードのブリーフィング画面では,「2014年5月28日」と表示されているのが見えました。エースコンバット7の本編は2019年ですから,それよりも5年前なんですね。
下元氏:
そして敵は自由エルジアなんですよ。
4Gamer:
「5」のアーケードモードでの敵勢力が,8年後の時点でも活動していたわけですね。舞台背景のほか,演出的な本編とのつながりはあるのでしょうか。
河野氏:
そこは,ありません。VRモードをすべてのプレイヤーが体験するわけではないと思うので,本編は本編で,VRモードはVRモードできっちり分ける……といった形です。
4Gamer:
機内火災のような表現についてうかがいたいのですが,そのほかにもダメージ表現はあったりするのでしょうか。
玉置氏:
ダメージ値が蓄積されて「もうすぐ撃墜される!」という状態になると,コックピット内で警告ランプが光ります。今までのエースコンバットにはなかった要素ですが,けっこう“ピンチ感”があっていいですよ。現世代機のパワーでランプの光り方もリアルにできているので,「ダメージを食らってみてほしい」という気持ちがちょっとあったりします(笑)。
河野氏:
ダメージで操作は鈍るんだっけ?
玉置氏:
操作が鈍ったりはしないですね。そこはプレイアビリティを重視しています。ただ,ランプがピカピカしていると,どうしても目に入ってしまうので,追い込まれた気持ちになります。
4Gamer:
ダメージを受けていくと,ベイルアウト(脱出)したくなってきますが,そういった機能はあるのでしょうか。
玉置氏:
試しはしましたが……。
下元氏:
ベイルアウトは酔いますね。
玉置氏:
VRモードは「エースコンバットの未来をプレゼンテーションする」という任務を負っています。そのため最初に「可能な限り多くの人に体験してほしい」という前提があるので,「より多くの人が快適にプレイできる範囲で,何ができるか」という考え方をしています。ベイルアウトは猛スピードで射出されたあと,ふわっと止まって,ゆっくり落ちていくわけですが,この上下動がけっこう酔うので,今回は入れていません。
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当然ながら検討はしたのですが,「これでは気持ち悪くなるから,お客さんに出しちゃダメ」というわけでバッサリ切りました。
そもそも,VRモードはクラッシュ&ビルドが続いていたんですよ。一番最初の段階では,正面と左右しか見られない,3画面切り替え式だったんです。これなら酔わないと……でも全然面白くなかった。自由視点と3D酔いはトレードオフなので,いろいろな技術を詰め込んで今の形にしています。
下元氏:
その結果,「焼け死ぬ」という恐怖が強化されたという。
河野氏:
「焼け死ぬ」恐怖の強化はしてないよ(笑)。
下元氏:
でも,あれはすごいですよ(笑)。
玉置氏:
機体が炎上するとコックピットに煙がだんだん上がってくるんですけど,実際に息苦しさを感じてくるんです。
河野氏:
VRモードは製品全体の分量としては小さくて,あくまで「エースコンバットがVRになるというのは,こういうことなんだよ」という,未来の可能性の1つ,お客様へのプレゼンテーションなんです。でも,その中で玉置には,エースコンバットを構成する根幹的な要素は体験できるように詰め込んで欲しいし,さらに素材の繊細なところまでこだわって,根本的なパイロット体験をVRによって拡張して欲しいとお願いしました。その経緯もあって,火災とかMFDとか,ひとつひとつディテールの質を上げるようにしています。
玉置氏:
まず多くの人が酔わない,快適に遊べる……というところからスタートして,それだけだと全然足りないリアリティの部分を,とにかく全部のシーンで作り込んでいます。
河野氏:
「小さい中でいかに丁寧に作るか」というのが玉置のVRモードで,「片渕監督のシナリオや映画的な演出で,ナンバリングにふさわしい大きなものを作る」というのが下元のキャンペーンモードなんですよ。
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キャンペーンモードでは,「今までのエースコンバットファンが喜ぶもの」という,正当進化の形で作っています。同じゲームなのに,全然違うコンセプトなんですよね。
4Gamer:
ところで,火災がいつまで続くのがが気になるのですが……例えば雨雲に突っ込んだり,低酸素の高空に上昇したりすると,どうなるのでしょう。
玉置氏:
ここまで炎上していると,さすがに消火のしようはありません(笑)。そこまで火が回ると,現実だと飛べないくらいですからね。
4Gamer:
プレイ中に僚機でオメガ11が出てきましたが,彼は「お約束」としてベイルアウトするのでしょうか。
玉置氏:
残念ながら,しません(笑)。04からだいぶ年月が経っていますので。
4Gamer:
彼も上達したというわけですか。
玉置氏:
もうベテラン的な立ち位置ですね。逆にヴァイパー2という僚機が出てきまして,彼は若きエリート的な立ち位置です。
下元氏:
ロートルに対して冷たくあたるんですよね。
玉置氏:
そうそう。「メビウス1だか何だか,そんなロートルパイロットは知らない!」っていうのがヴァイパー2です。
河野氏:
おまえら,さっきから俺への当てつけで悪口言ってる?(笑)
玉置氏:
何のことか分かりません。考えすぎですよ(笑)
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4Gamer:
エアショーモードで選べる機体は,プレイアブルな4種類からなのでしょうか。
玉置氏:
エアショーで出てくるのはスーパーホーネット(F/A-18F)だけとなっています。そもそも艦載機じゃないと空母からの離発着ができないですし,マニューバの機動を作り込むにあたっても,1機に絞り込んだほうがいいだろうと。
河野氏:
BGMのオンオフができたり,マニューバを22種類から自由に選べたりといったプレイアビリティはあります。
4Gamer:
鑑賞は空母からだけなのでしょうか。
玉置氏:
エアショーって,普通は航空基地じゃないですか。空母からというのは,なかなか現実的には難しいですから,「せっかくVRなので,夢の体験をしてみたい!」ということで空母からとなっています。
4Gamer:
個人的にはヘリコプター等に乗って,マニューバを横から見てみたいとも思うのですが。
河野氏:
そんな風に,今回の体験から「こういうこともできるんじゃないか」という考えを広げていくための,プレゼンテーションなんですよ(笑)。
「サマーレッスン」コアメンバーが挑んだ“戦闘機のVR”
4Gamer:
玉置さんが開発に参加されたのは,どのタイミングからだったのでしょう。
玉置氏:
3画面切り替え式が「これはダメだ」となったタイミングくらいですね。
河野氏:
「サマーレッスン」と被ってるよね。
玉置氏:
その末期くらいからですね。そこで急に……。
河野氏:
「お前,VR得意らしいな?」って(笑)。
下元氏:
「そんなやついるの!?」みたいな(笑)。
玉置氏:
「らしいな」って,ずっと上司と部下の関係じゃないですか(笑)。
私はもともと,「ACE COMBAT INFINITY」のリードゲームデザイナーをやっていたのですが,なんだかうまいことにVRとエースコンバットがつながっちゃいました。
河野氏:
「あいつのVRのブランドネーム利用しようぜ」とか言ってね(笑)。
玉置氏:
「ハンガーに女の子出ないの?」ってずっと言ってましたよね。そういうゲームじゃないのに(笑)。
河野氏:
宮本ひかりちゃん,いつ出てくるの?
下元氏:
あんまりそういうことを言ってると,「サマーレッスンはエースコンバット7のVRモードを作るための前哨戦だった」と勘違いされてしまいますよ(笑)。
玉置氏:
もちろん,そういうわけではないんです(笑)。
下元氏:
でも,一時期「ひかりちゃん,複座に乗せてみたら」って話はしてましたね。
河野氏:
ただ,ずっと後ろを向いているとゲームにならない(笑)。
4Gamer:
VRとはいえ,サマーレッスンとエースコンバットではプレイヤーの置かれる環境が大きく異なるので,一筋縄ではいかないのでは……と思うのですが。
玉置氏:
最初は「参ったな」って思ったんです。社内でいろいろなタイトルのVR酔いが問題になっている中,サマーレッスンはカメラ位置が動かないので,割と“のほほん”としていました。「うちは酔いとは無縁だよね〜」とメインプログラマやーUIデザイナーと話していたのですが,そのメンバーでエースコンバット7のVRモードを作ることになってしまい,「とうとうカメラ動くようになっちゃったよ。どうしよう……」と。
そこで,過去の業務用筐体の仕様経緯だったり,いろんな経験則を集めて検証したんです。そこで最初に分かったのは,「空をジェット機で飛ぶゲームはもともと酔いにくい」ということでした。
4Gamer:
と言いますと?
玉置氏:
すぐ両脇を建物が高速で通過していくようなレースゲームなどとは違い,空中だと,間近で大きな物体が高速で移動することはまずありません。それに,すごいスピードで飛んでいるのが怖いので,前方をまっすぐ見ることになります。車酔いと同じで,移動方向の先の風景を見ているあいだは酔いにくいんです。また,ジェット機というモチーフ上,ロボットアクションのように急に曲がることはないので,プレイヤーが動きを予測して身構えやすい,というのもありますね。
また,万全を期すためコックピットの内装をきちんと作りました。コックピットはプレイヤーに対して動かないので,視点の基準となって酔いにくくなる効果があるんです。あとは,タキシングやカタパルトなど,例外的に地上を動く場所は何回も作り直して「これだったら大多数の人が酔わないし,かつ迫力や浮遊感は楽しめるだろう」というバランスに整えています。
4Gamer:
逆に,共通点はありますでしょうか。
玉置氏:
「VRで何ができるんだろう」というアイデアをいっぱい出して詰め込んでいくというやり方は,けっこう似ていましたね。タキシング中に輸送機のいろんな残骸が落ちてきたり,墜落してきた戦闘機が爆発したりといったシチュエーションは,そういう過程で作られています。
4Gamer:
本日はどうも,ありがとうございました。
いよいよ全容が見えてきた「エースコンバット7」のVRモード。あくまで“将来的なエースコンバットの姿”を示すものだが,単なる「自由視点&立体視」に留まらない作り込みには,強い感銘を受ける。
筆者は初期のPlayStation Experience出展版から,東京ゲームショウ2017出展版,C3AFA TOKYO 2018出展版,そして今回の東京ゲームショウ2018出展版と試遊を重ねているのだが,そのたびにクオリティの上昇が感じられ,どんどん製品版が楽しみになってきている。正直言って,ここまで期待がストレートに高まっていくようなタイトルはそうそうない。もちろん実際のところは製品版を全編通してプレイしてみるまでは分からないが,発売まで残り4カ月を切った発売日に,大いに期待したい。

















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